
◆〜甲府市が”ある文学”の発祥の地であることをご存じでしょうか~◆
こんにちは。市民レポーターの植松です。
甲府市の酒折宮は、短詩形文学の一つ「連歌」の発祥の地と言われています。
酒折宮は、「古事記」や「日本書紀」にも登場する歴史ある神社ですが、これら記紀によると、
伝承上の英雄ヤマトタケルノミコトが東征を終えて大和に帰る途中、甲斐酒折宮に逗留して
「新治筑波を過ぎて幾夜か寝つる(にいばりつくばをすぎていくよかねつる)」
とかがり火をたいていた老人に問いかけたところ
「かがなべて夜には九夜日には十日を(かがなべてよにはここのよひにはとおかを)」
と老人が答えたという。
この五七七による問答が連歌の起源とされたことから、酒折宮が連歌発祥の地と言われるようになりました。
これに因んで1999年(平成11年)、酒折にある山梨学院大学によって酒折連歌賞が誕生しました。
「酒折連歌」は、五七七の問いの片歌に対し五七七の片歌で答えるというものですが、
「酒折連歌賞」の目的は多くの人に連歌へ興味を持ってもらい、衰退していた連歌をよみがえらせ、普及させ、文学の振興を図ろうというものです。
「酒折連歌賞」は、俳人や歌人ら5人の選者が問いの片歌を作り、これに対する答えの片歌を全国から募集します。
去年で26回目を数え、最高賞の文部科学大臣賞は北海道の78歳の男性が受賞しました。
受賞作品
問いの片歌:満天の星を巡らせ指揮棒止まる
答えの片歌:振り向いてベートーヴェンは喝采を知る
また「酒折連歌」の普及・発展を目指して2011年(平成23年)には、一般県民を対象に「酒折連歌の会」が創設されました。
「酒折連歌の会」では、会員が問いの片歌と答えの片歌をそれぞれ作り、これをグループ形式で鑑賞し、それぞれが推す作品を発表し合います。
今年の会員は60代から90代の男女あわせて33人。
毎月第2土曜日の午後、山梨学院大学クリスタルタワー7階の広報スタジオで開催されています。
上野美穂子会長は、酒折連歌の魅力について次のように語っています。
「酒折連歌について、創始者の川手千興先生は『言葉を連ね心を繋ぐ』と述べられています。
酒折連歌には”問いの片歌”と”答えの片歌”の作者の心と心が響き合い、通い合う喜びがあります。
片歌を作りだす生みの苦しみと喜び、そして出来上がった片歌を存分に鑑賞し合う楽しい時間は、会員にとって明日の英気を養うものになっております。」
これまで26回行われた「酒折連歌賞」で、大賞を受賞した山梨県民は3人。
また「酒折連歌の会」の会員の中で「酒折連歌賞」百選に選ばれたのは、これまでに私を含め8人います。
現役の会員の中では5人。このうち2人はなんと、複数回受賞しています!
最後に現役会員の受賞者の、受賞作品を紹介します。
◆第26回教育長賞 小倉正一(61)
問いの片歌:大丈夫霊峰富士の声が聞こえる
答えの片歌:新学期教室の窓まず開けてみる
◆第26回優秀賞 埜村和美(73)
問いの片歌:イヤホンをはずして月の光を浴びる
答えの片歌:かぐや姫のかな文字の文ひらりと届く
◆第25回優良賞 曽根珠子(85)
問いの片歌:ひとつぶの豆をまく朝ひかりこぼれて
答えの片歌:アフガンで命の水を中村医師は
◆第20回優良賞 植松裕二(60)
問いの片歌:まっすぐにまっすぐに降る雨を見ている
答えの片歌:雨だれはマジョルカ島のあの日のショパン
◆第7回次点 斉藤幸三(66)
問いの片歌:繰り返す大波小波船べりの音
答えの片歌:一本のテープに託す思いさまざま
「酒折連歌賞」の応募作品は、去年は約3万。今年もすでに募集は始まっています。
「酒折連歌賞」のホームページから応募が出来ますので、挑戦してみてはいかがでしょうか。
尚、「酒折連歌の会」は、毎月の例会を自由に見学できます。
ご興味のある方は、下記へご連絡ください。
問い合わせ先:090-8816-1950 酒折連歌の会会長 上野美穂子