◆~水素を食べる微生物が拓く未来の水浄化技術~◆
皆さんこんにちは!市民レポーターの「てらはる」です。
甲府市広報誌の8月号「とびだせ!市民レポーター」では、山梨大学甲府キャンパスで水の浄化技術を専門に研究されている亀井樹(かめいたつる)助教にお話を伺いました。
今回は誌面に書ききれなかった「こぼれ話」をブログで紹介します。
亀井先生が研究されている水の浄化技術では、汚染された水を浄化する技術の一つとして、水素をエネルギーとする微生物を活用し、持続的に水をきれいにする仕組みを検討しています。
◆世界の水不足問題
日本にいると、水道からきれいな水が出てくることは当たり前のように感じますが、世界には安心して水を飲むことができない地域がたくさんあります。
▲カトマンズ近郊を流れる河川の様子(悪臭を放つ川)
例えばネパールの首都カトマンズでは、屋上に設置した貯水タンクや井戸から水をまかなっていますが、下水道設備が追いついていないことから地下水汚染が深刻化しており、多くの地域で健康被害が発生してしまっています。
実際に水質検査をすると、多くの地点でアンモニア性窒素や硝酸性窒素と呼ばれる有害物質が検出され、基準値を大きく超えているケースもあるそうです。
◆微生物の活用
研究室では、この課題を解決するために「微生物の力を活かした小規模水処理技術」を研究しています。
▲小規模水処理装置
この水処理装置には、微生物が住む「微生物担体(びせいぶつたんたい)」と水素ガスを発生させる装置が組み込まれています。水素を食べる微生物に水素ガスを与えることで、微生物がアンモニアや硝酸を人体に無害な物質に変換することにより、汚水を浄化するという仕組みです。
この装置を使うことで、汚染された地下水を飲料水レベルにまで浄化することが可能になり、環境負荷の低い処理法として注目されています。
◆研究の課題
しかし研究には課題も残ります。水素ガス供給の安定性、装置の運用コスト、現地での維持管理体制など、実用化に向けて克服すべき点は多いのです。
▲微生物がついているスポンジに水素を含む水を垂らすことによる水質浄化効率の研究設備
今回の研究室訪問で見せていただいた実験室では、既存の課題に対し、より効率的に水素ガスを供給するための実験をしていました。
◆今後の展望
世界の水不足問題に限らず、地震などの自然災害が多い日本では、このような水処理技術が災害時の代替水源確保にも活用できると思われます。
▲亀井研究室でのニジマス飼育の様子
また、将来的には宇宙探査基地での養殖システムや家庭菜園への応用も検討しているそうです。
宇宙への荷物輸送費は1kgで約100万円!コストを考えるとそう簡単に水や食料は運べないため、現地で食料生産できる技術が必須になります。
研究室では、飼育水を繰り返し使用したニジマスの養殖研究も行っていました。
水素と微生物の力を結びつけ、世界的課題を解決するスケールの大きな研究が、なんとこの甲府市で行われているとは驚きでした。
市では水素に関するイベントなども多く開催されているので、是非注目してみてください!