情報収集にたけた元新聞記者の友人に誘われて、
「平穏死を迎えるために」がテーマの
東名古屋医師会主催の公開講座に参加してきた。
若い頃から「生き方」については
本を読んだり先輩から教わったりしたが
未だに良い生き方をしてきたとの実感は持てない。
せめて「死に方」ぐらいは
予備知識や心構えをしっかり持って
まともに死にたいと、仲間4人で受講してきた。
基調講演は「平穏死」を提唱する医師の長尾和宏氏の
「穏やかな最期を迎えるためにやっておきたいこと」で
第2部は東名病院名誉院長村瀬充也氏、名古屋大学脳卒中センター長水野正明氏や
医師会役員も加わり、専門分野のレクチャーや質疑も行われた。
長尾氏は、
・多くの人は、不治かつ末期の状態になった時、平穏な死を望んでいるが
現状はそれと程遠い死を迎えている。
・高度医療の場である病院は、延命治療に力点が置かれ
緩和治療が後回しになりがちである。
・患者が衰弱してくると、高カロリー輸液を行い
腹水や胸水が溜まるとそれを抜き、抜いた分をまた輸液し
水膨れになって苦しみ最期を迎える。
・終末期医療において、自己決定は容易でなく
一度始まった胃ろうなどの延命治療を、本人家族が中止したいと言っても
現在の法的環境で中止は難しい。
以上のような終末医療の実態に触れ
平穏な死を迎えるには、本人が元気なうちに
延命治療の意思を文書に残すべきと説いている。
それが「リビング・ウイル」で
延命治療をしない自然な最期を希望する「生前発行の遺言書」である。
まさに、「自分の最後は医者でなく自分で決める」であったが
果たして究極の選択を委ねられて
冷静に判断できるだろうかと、一抹の不安は感じた。
かつて、自宅死が80パーセント、病院死が10パーセントであったが
現在は病院死が80パーセントを越している。
これは超高齢化が進む日本特有の現象で
欧米では考えられない数字とのことだ。
今後、毎年160万人が死亡し
その内、医療や介護施設からあぶれる人が50万に程出ると
恐ろしい数字も示された。
そのために、地域の中で、そこが病院や自宅、老人施設であれ
人間として尊厳が最後まで守られる社会でなければならないし
終末医療についての価値観を、すり合わせる作業が必要であると締めくくられた。
他人事であった死を
様々なケースで見せつけられると
自分のものとして、真剣に考えざるを得ないように思えてきた。
重いテーマであったが
現実の問題として向き合わなければならない。