俺がフルーツを眺めながら考えていると、アリスが近付いて来た。
「良い香りがするでしょう」
疑問で一杯で鼻が留守になっていた。
辺りはフルーツショップの店内のような香りで溢れていた。
キャロルが鼻をピクピクさせて大笑い。
「い、いーいーいー、めったらだ」
キャロルに纏わり付いている子供達も、訛りを真似て大笑い。
馬鹿にしているのではない。
心底からキャロルに懐いている様子。
それを横目にアリスが説明した。
「この城はフルーツの、ゆりかご、そう呼ばれているの。
・・・。
この島の神話によるとね、この城を築いた一族の魔術師が、
一族が食べ物に困らないように城に魔法をかけた、というの」
「それが本当だとすると、魔法は今も利いているみたいだな」
「そうなの。
長く続いた寒冷期も、たわわに実っていたわ」
「雪の中でもフルーツが実ったのか」
「そうよ。
雪が降り続いた頃の話しよ。
雪は城にも降った。
でも積もることはなかった。
町に積もることはあっても、城に降った雪は一夜で解け、
フルーツには何の害も及ばさなかった。
そう伝えられているわ。
実際、去年の冬もそうだった。
雪は降っても城だけには積もらなかったの」
「へえー、魔術師様々だな」
「でもね、その一族は滅んだわ。
本家が途絶えたのを契機に分家同士が玉座を巡って相争い、
主立った者達は悉く戦死したそうよ。
それで最後の女后の実家である我が一族に国丸ごとが譲られたの。
なんだか悲しい結末よね」
「そうだな。
フルーツの種は途絶えないのに、一族の種は途絶えた。
・・・。
魔術師は一族の種にも魔法をかけるべきだったな」
アリスが俺の肩をパーンと叩いた。
「笑えない冗談ね」
笑えない。
そのような言い伝えがあるのなら、世間一般にも少なからず知られているはず。
ことに欧州のことなら我が国のマスコミ、旅行会社が飛びつく。
マスコミは取材チームを送り出して色物として扱う。
旅行会社もツアーを募集する。
なのに始めて聞く話だ。
「アリス、質問がある。
この城の名前は」
「ノースパレス」
聞いたことがない。
「国の名前は」
「我が一族の名を冠して、ハリマ」
これも聞いたことがない。
でも、なにやら播磨を連想した。
「最初にこの島の神話と言ったよな。
この島の名前は」
「フルーツランド」
これも初耳。
笑ってしまいたくなるような島の名前だ。
表情に表れたのだろう。
アリスに尋ねられた。
「どうしたの、変よ。
貴女達はこの島のどこかから召喚されたのじゃなかったの」
「違う。この島とは違うようだ。
君たちが全く知らない別の島で俺達姉妹は生まれた。
文化も風習も違っている。
信じてくれるかい」
アリスは顎に手を当て、遠くを見る目色。
「そうそう、貴女、この時代の着物は着慣れていない、着るのを手伝ってくれ、
そう言ってたわね」
「そうだ、そう言った」
話しが聞こえたのだろう。
みんなの足が止まった。
俺とキャロルに物珍しげな視線を送ってきた。
アリスが祈祷した老人に言う。
「タツヤ殿、召喚には失敗したけれど、祈祷自体には力があったみたい。
自信を持ちなさい。力を蓄えなおしたら再度挑むわよ」
タツヤと呼ばれた老人が胸を撫で下ろした。
「十日ほど頂ければ力が蓄えられます」
俺はアリスに尋ねた。
「簡単に召喚と言うが、一体なにを召喚するつもりだ」
「魔物でも怪物でも何でもいいの。
私達を助けてくれるモノなら、なんでも」
魔物や怪物に助けを求めるとは、呆れてものが言えない
追い詰められているのか。
でもそこまでは突っ込めない。
「特定のモノを名指しして召喚した分けじゃないんだ」
「名指しは無理よ。
タツヤ殿は祈祷師で、魔物等の召喚は専門じゃないわ。
とにかく何か召喚してくれれば充分なの。
後は出たとこ勝負」
「出てから相手を見て交渉するということか」
「そうよ、
まず召喚することが大事なの
それだけ我が国は追い詰められているの」
自分から追い詰められている、と認めた。
乗じて聞き出すしかない。
「誰に追い詰められているんだ」
「色んなものに。
・・・。
ここまでの城の様子から何か気付かない」
俺は辺りを見回しながら、地下室から、ここまでの足取りを振り返った。
何か手掛かりが・・・。
アリスがお腹に手を当てた。
「お腹がすいたわ。
続きは食べながらにしましょう」
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★
触れる必要はありません。
ただの飾りです。
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心底からキャロルに懐いている様子。
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「この城はフルーツの、ゆりかご、そう呼ばれているの。
・・・。
この島の神話によるとね、この城を築いた一族の魔術師が、
一族が食べ物に困らないように城に魔法をかけた、というの」
「それが本当だとすると、魔法は今も利いているみたいだな」
「そうなの。
長く続いた寒冷期も、たわわに実っていたわ」
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雪が降り続いた頃の話しよ。
雪は城にも降った。
でも積もることはなかった。
町に積もることはあっても、城に降った雪は一夜で解け、
フルーツには何の害も及ばさなかった。
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実際、去年の冬もそうだった。
雪は降っても城だけには積もらなかったの」
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本家が途絶えたのを契機に分家同士が玉座を巡って相争い、
主立った者達は悉く戦死したそうよ。
それで最後の女后の実家である我が一族に国丸ごとが譲られたの。
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「そうだな。
フルーツの種は途絶えないのに、一族の種は途絶えた。
・・・。
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アリスが俺の肩をパーンと叩いた。
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この城の名前は」
「ノースパレス」
聞いたことがない。
「国の名前は」
「我が一族の名を冠して、ハリマ」
これも聞いたことがない。
でも、なにやら播磨を連想した。
「最初にこの島の神話と言ったよな。
この島の名前は」
「フルーツランド」
これも初耳。
笑ってしまいたくなるような島の名前だ。
表情に表れたのだろう。
アリスに尋ねられた。
「どうしたの、変よ。
貴女達はこの島のどこかから召喚されたのじゃなかったの」
「違う。この島とは違うようだ。
君たちが全く知らない別の島で俺達姉妹は生まれた。
文化も風習も違っている。
信じてくれるかい」
アリスは顎に手を当て、遠くを見る目色。
「そうそう、貴女、この時代の着物は着慣れていない、着るのを手伝ってくれ、
そう言ってたわね」
「そうだ、そう言った」
話しが聞こえたのだろう。
みんなの足が止まった。
俺とキャロルに物珍しげな視線を送ってきた。
アリスが祈祷した老人に言う。
「タツヤ殿、召喚には失敗したけれど、祈祷自体には力があったみたい。
自信を持ちなさい。力を蓄えなおしたら再度挑むわよ」
タツヤと呼ばれた老人が胸を撫で下ろした。
「十日ほど頂ければ力が蓄えられます」
俺はアリスに尋ねた。
「簡単に召喚と言うが、一体なにを召喚するつもりだ」
「魔物でも怪物でも何でもいいの。
私達を助けてくれるモノなら、なんでも」
魔物や怪物に助けを求めるとは、呆れてものが言えない
追い詰められているのか。
でもそこまでは突っ込めない。
「特定のモノを名指しして召喚した分けじゃないんだ」
「名指しは無理よ。
タツヤ殿は祈祷師で、魔物等の召喚は専門じゃないわ。
とにかく何か召喚してくれれば充分なの。
後は出たとこ勝負」
「出てから相手を見て交渉するということか」
「そうよ、
まず召喚することが大事なの
それだけ我が国は追い詰められているの」
自分から追い詰められている、と認めた。
乗じて聞き出すしかない。
「誰に追い詰められているんだ」
「色んなものに。
・・・。
ここまでの城の様子から何か気付かない」
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