俺は石畳の上に両足で立っていた。
光の保護を失った代わりに肉体を得ていた。
はて・・・。
この肉体は誰のモノ・・・。
光の中には俺以外に人はいなかったはず。
正確には俺の霊体に座敷童子が居候しているが、女児は妖精なので無関係。
ここまでを、どう振り返っても、この肉体の持ち主は存在しなかった。
俺の目を眩まして、途中で紛れ込むのも不可能。
なのに俺は肉体を得た。
もしかして神の仕業か。
神が存在するとすればだが。
安易な方法だが、死亡寸前の肉体に憑依する。
そして記憶を喰らって乗っ取る。
今回は段階を省略し、人間が存在しない空間で肉体を得た。
好むと好まざるに関わらず、これが事実だ。
真相は不明でも事態は現在進行中。
そこで疑問を一旦、凍結した。
暇を見つけて後で謎解きすれば良い。
肉体を得た幸運に感謝し、大きく深呼吸した。
すると摩訶不思議な力が体内に満ち溢れて行く。
それも自信を形作るほどに。
根拠は知らぬが、何も恐くなかった。
気概を持って室内を見回した。
床に座っていた中には女子供もいた。
彼女等が悲鳴を上げた。
「いやー」
「きゃー」
「なにー」と。
俺は自分を見下ろした。
驚きを通り越して言葉を失った。
布切れの一つも身に着けていない。
裸体なのだ。
驚愕は続いた。
首の下に豊満な胸と尻を見たのだ。
さらに下の陰でも金色の毛がフサフサ。
どこから見ても、これは女の身体ではないか。
何がどうなっているのか。
見間違えたかと我が目を疑った。
まさか・・・。
見直しても結果は変わらなかった。
もう一つ別の驚き。
俺の右隣に女児が並んで立っていた。
女児も裸体。
見下ろす俺に気付いて、「でっけ、どんず」と俺の尻を引っぱたくではないか。
元気な女児だ。
金髪で、おかっぱ頭。
頭髪の色は違うが心当たりがあった。
もしかすると、するかも知れない。
思わず尋ねた。
「座敷童子か」
女児が顔を上げて頷いた。
知らぬ顔、幼いけれど美しい。
十年もすれば大輪の花を咲かせるに違いない。
その対極にあるのは凛とした百合の花以外には思い付かない。
「んだ、んだ。おもへ、おもへ」訛りは座敷童子そのもの。
ところが言葉や口調は別人であった。
双子の怪物から逃げていた頃とは打って変わって堂々たるもの。
弱々しさは欠片もない。
どこをどう捏ねくり回せば、こうも人格が一変するのやら。
もしかして新しい身体の影響か。
とかく人生は移ろいやすいもの、ままなぬもの。
成るようにしか成らない。
座敷童子の耳元に囁いた。
「俺に任せろ。
恐いと思ったら、遠慮なく俺の後ろに隠れれば良い」
座敷童子はニコリと笑い返した。
裸体を恥じる様子は一切みせない。
身体は女児でも、実際は年齢不詳の長寿な妖精、ということか。
俺も裸体だからといって恥ずかしがる年齢ではない。
この肉体の年齢は知らないが、実際の俺は四十手前。
大股開きで室内を見回し、祈祷の中心にいた老人で目を止めた。
老人は口を半分開けたまま。
祈祷の結果が予想に反していたのだろう。
こういう場合は最初が肝心なのだ。
俺は老人を叱りつけた。
「この馬鹿者が。
・・・。
これでは二人とも風邪をひく。
何か着る物を持ってこさせろ。直ちにだ、急がせろ」厳しい口調で註文した。
老人は居眠りしているところを叩き起こされたかのように、身体をビクッと震わせた。
困って口籠もっていると、後ろにいた女子供が立ち上がった。
「はい、持って来ます」
「私は貴女の服」
「私は子供さんの服」口々に言いながら五人が地下室から駆け出して行った。
残った男達は無言。
灯りを持って来た者達もだ。
視線を泳がせ、時折、俺と女児の裸体に目を遣るだけ。
部屋の片隅に大きな鏡を見つけた。
俺は座敷童子の手を引き、そちらに歩いた。
鏡は等身大で、多少曇っていたが使用には問題なかった。
灯りを呼び、座敷童子と二人して鏡の前に立った。
似通った顔が並んでいた。
年の離れた金髪の姉妹と言っても差し支えないだろう。
咲き誇る薔薇の花と、時期を待っている蕾。
俺には太い棘があった。
豊満な胸と尻は良いとして、手足に太い筋肉がついていたのだ。
首も太い。
加えて長身。
これではアマゾネスではないか。
並みの男なら尻込みするに違いない。
気になって座敷童子の身体特徴を仔細に観察した。
すると女児にもアマゾネスの傾向が見られた。
俺に似て手足が長い。
胸も尻も筋肉も、年頃には大輪の花を咲かせることだろう。
女子供五人が息せき切って、大量の衣服を抱えて駆け戻って来た。
先頭の若い金髪娘が、みんなを代表して言う。
「お持ちしました」丁寧な物言い。
「すまないが、この時代の衣服は着慣れていない。
着替えを手伝ってくれないか」
すると黙っていた男達が次々に立ち上がった。
「貴様、何様だ」
「我が国の姫様に着替えさせてくれだと」
「姫様は侍女ではないぞ」
「死罪に値する」口々に喚く。
立ち上がった中に一人だけ無言の男がいた。
見るからに偉丈夫、皆より首一つ高い大男で屈強そのもの。
首から肩胸にかけての筋肉の盛り上がりはゴリラを連想させた。
彼が一歩踏み出した。
拳を固め、俺をグッと睨みつけながら、大きな歩幅で歩み寄って来た。
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俺の目を眩まして、途中で紛れ込むのも不可能。
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真相は不明でも事態は現在進行中。
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それも自信を形作るほどに。
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床に座っていた中には女子供もいた。
彼女等が悲鳴を上げた。
「いやー」
「きゃー」
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俺は自分を見下ろした。
驚きを通り越して言葉を失った。
布切れの一つも身に着けていない。
裸体なのだ。
驚愕は続いた。
首の下に豊満な胸と尻を見たのだ。
さらに下の陰でも金色の毛がフサフサ。
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何がどうなっているのか。
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見直しても結果は変わらなかった。
もう一つ別の驚き。
俺の右隣に女児が並んで立っていた。
女児も裸体。
見下ろす俺に気付いて、「でっけ、どんず」と俺の尻を引っぱたくではないか。
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金髪で、おかっぱ頭。
頭髪の色は違うが心当たりがあった。
もしかすると、するかも知れない。
思わず尋ねた。
「座敷童子か」
女児が顔を上げて頷いた。
知らぬ顔、幼いけれど美しい。
十年もすれば大輪の花を咲かせるに違いない。
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とかく人生は移ろいやすいもの、ままなぬもの。
成るようにしか成らない。
座敷童子の耳元に囁いた。
「俺に任せろ。
恐いと思ったら、遠慮なく俺の後ろに隠れれば良い」
座敷童子はニコリと笑い返した。
裸体を恥じる様子は一切みせない。
身体は女児でも、実際は年齢不詳の長寿な妖精、ということか。
俺も裸体だからといって恥ずかしがる年齢ではない。
この肉体の年齢は知らないが、実際の俺は四十手前。
大股開きで室内を見回し、祈祷の中心にいた老人で目を止めた。
老人は口を半分開けたまま。
祈祷の結果が予想に反していたのだろう。
こういう場合は最初が肝心なのだ。
俺は老人を叱りつけた。
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・・・。
これでは二人とも風邪をひく。
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老人は居眠りしているところを叩き起こされたかのように、身体をビクッと震わせた。
困って口籠もっていると、後ろにいた女子供が立ち上がった。
「はい、持って来ます」
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「私は子供さんの服」口々に言いながら五人が地下室から駆け出して行った。
残った男達は無言。
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視線を泳がせ、時折、俺と女児の裸体に目を遣るだけ。
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豊満な胸と尻は良いとして、手足に太い筋肉がついていたのだ。
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胸も尻も筋肉も、年頃には大輪の花を咲かせることだろう。
女子供五人が息せき切って、大量の衣服を抱えて駆け戻って来た。
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「姫様は侍女ではないぞ」
「死罪に値する」口々に喚く。
立ち上がった中に一人だけ無言の男がいた。
見るからに偉丈夫、皆より首一つ高い大男で屈強そのもの。
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