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金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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なりすまし。(122)

2017-01-29 05:39:55 | Weblog
 何かあるとは思っていた。
しかし、まさか実力行使に出るとは。
普通であれば城中での乱暴狼藉は言語道断。
発見されしだい当事者は拘束され、裁かれる。
ところが女官長やスグルの言動をみた限り、
人目を憚っている様子が全く感じ取れないのだ。
逆に、法に則っているとしか思えない。
背後に、それ相応の力を有している者が控えているのだろうか。
白を黒と認定できる者が。
 対応に迷っていると、背後で風が巻いた。
慌てて振り返った。
キャロルが後方から来る敵に敢然と立ち向かった。
猛ダッシュで、一人目が踏み出した足に組み付いた。
地下室でスグルに組み付いた時の再現だ。
あの時はスグルが困惑顔で動きを止めたように見えた。
今回も相手は困惑顔。
足を止めてキャロルを捕まえようと両手を伸ばした。
 相手の挙動がおかしい。
下半身が微動だにしない。
まるで固まったかのよう。
女児だからと手加減している分けではなく、本当に止められているように見えた。
まさか・・・。
 信じられぬ光景が展開された。
キャロルが。
相手の両手を難なく払い除け、股間を思い切り蹴り上げたのだ。
くぐもる音。
短い悲鳴。
 人の心配どころではなかった。
俺は背後から右肩を掴まれた。
鷲掴み。
俺は素速く身体を反転させ、その勢いで相手の体勢を崩した。
相手の動きが、よく見えた。
隙だらけの首筋に裏拳を飛ばした。
極めは、こちらも股間に蹴り一発。
続けて二人目、三人目。
軽くあしらい、いずれにも極めは股間への蹴り。
 四人目を求めて見回した。
二本足で立っていたのはキャロル一人。
そのキャロルが俺を見て、得意気に指四本を立てた。
彼女に息の乱れはない。
色を見るに、意気軒昂。
新たな敵が現れれば躊躇なく襲いかかるだろう。
 俺は物足りなく思った。
敵があまりに弱すぎた。
力を遣い尽くす前に倒してしまった。
俺は力を持て余していた。
持て余しているというのに、困った事に新たな力が涌いてくる。
沸々と、湧き上がる温泉のよう。
どうしてくれよう。
 見回すと七人が股間を押さえ、呻き声を上げ、のたうち回っていた。
スグルはと見れば、彼は表情を一変させていた。
家来達の惨憺たる有様に怒りを覚えたのだろう。
拳を握り締め、視線を俺に向けて来た。
殺意の籠もった目。
どうしてくれよう、とばかり。
女官長は彼の陰に隠れているので表情が分からない。
 そこへ新たな集団が現れた。
建物の陰から衛兵、およそ二十数人。
上番か下番かは知らぬが、交替の時刻なのだろう。
甲冑姿で整然と行進して来た。
 彼等がこちらの状況に気付いた。
先頭の衛兵が隊長らしい。
きびきびと指示を下した。
「全体とまれ。
一番隊、ただちに横隊つくれ。
二番隊は待機」
 こちらに向けて十人が横隊となるや、次の指示で槍を構えた。
 それを見たスグルが凍り付いた。
彼は実に分かり易い。
表情から混乱しているのが手に取るように分かった。
これは偶然の遭遇らしい。
衛兵の行動を止めようとするが、慌てているので声にならない。
 命令が下された。
「槍で押し包み、捕らえよ」
 事情を説明する暇は与えられなかった。
槍の穂先が俺とキャロルに向けられた。
抵抗すれば問答無用で槍が繰り出される。
さっきまでの喧嘩沙汰とは明らかに違う。
俺は覚悟した。
捕まるつもりは更々ない。
売られた喧嘩なので喜んで買う。
一度でも逃げると、逃げ癖が身に付く。
とにかく、まず買う。
勝ってから考える。
負け前提なんぞは論外。
 のたうち回っている奴のサーベルに手を伸ばし、白刃を抜いた。
軽く振ってみた。
手頃な重さでバランスが良い。
 俺を真似てキャロルもサーベルを手にした。
長いので持て余すかと思ったが、違った。
駆けて来る衛兵をチラ見しながら、サーベルを巫山戯るように大きく振り回した。
 俺は思わず聞いた。
「人の斬り方が分かるのか」
「知らやね。
・・・。
カルメン、真似る」標準語も真似る気になったらしい。
 俺達がサーベルを手にしたのを見て、
横一線になって駆けて来る衛兵達が残虐な色を浮かべた。
槍の穂先も上向いた。
相手が女児を含む姉妹と分かっても、手加減せぬつもりらしい。




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