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多様を阻むもの 6 進路指導不能

2012-09-01 21:45:16 | 学校の呪術

受験指導と資格取得指導という丸投げ

 進路指導というのは、現在の学校ではほとんどしていないと考えていいと思いますね。正確に言うと、進路指導は現在の仕組みではほとんどできないんです。能力がないってことです。やっていることは、たんに受験の刺激を前提にしたものです。職業高校では資格をとることですね。
 だいたい、学校の先生は学校にずっといるだけです。世間のみなさんがうすうす気ずいており、近年、とみに叫ばれるようになったとおり、学校の先生は基本が世間知らずです。学校以外知らないんです。その学校の先生にできる進路指導は、基本的に自分たちがやってきたことを反復することです。ほとんど、現在、進路指導は丸投げです。これは、例外がありません。
何をやっているかをざっと列記してみましょう。 
 まず、やっているのは、「性格占い」です。これは、もう業者への丸投げです。それから、学力検査、これも丸投げです。どこかの会社や出版社が出している進路意識調査をやったり、それようのVTRを流す程度のことなのです。クイズまがいの適性検査をしたりする程度のことなんです。
 それをもとに面談をします。
 ちょっと言い訳をさせてもらいましょう。生徒も学校の先生も学校と家の往復を重ねるだけです。学校には、経済という行為から根こそぎになっているのです。この問いに真剣に向かっている進路担当者などいませんね。大体、学校の先生自体が、経済行為をしていません。競争にもさらされていません。学歴競争をし、大学に入り、そこでもう勉強とは縁を切り、あとは、資格試験をがんばった。これが一般的な学校の先生の経歴です。この経歴からどうやって進路の多様へのインセンティブが出てくるのでしょう。だから、学校の先生の進路指導はその一点だけです。つまり、それを本田由紀にしたがって「学校経由の就職」という指導だけが学校ができる進路指導ということになるのです。端的に言えば、

「受験の刺激」「資格取得の刺激」

これだけだ、といっていいんです。私はこれから学校がまじめに分業化と専門化をはたし、おそらく私たちの給料を減らしながら、進路の専門会社を学校に入れていくという道を、それも複数の選択肢があるという前提にしなければ、まったくお話ならないと思っています。

従って、学校の先生は、教科に意味をみいだすことができない生徒、受験に興味を持たない生徒に対する進路意識を喚起することができません。
学校の授業に興味を失い、資格取得への興味を失った生徒に対しては、一頃はやったNHKの「平成若者仕事図鑑」を流すこと、その変速バージョンの番組をただ流すこと、これ以外に進路指導はできないのです。

受験指導という教務的指導

 したがって、受験の関心、資格取得の関心を促すこと、そして、毎日授業にでること、これらをうながすのが進路指導なのです。
 たんに、現在行われている数学や理科がおもしろくないだけで、進路意識としての理系が生徒から脱落させられるのです。本当は、理科的な現実や、事実や、謎のインセンティブがあったとき、その同じ彼や彼女は理科的になるかもしれないのに。しかし、ここの視点は絶対に表に出ません。受験問題を解くというのが普通の教員の理科系の進路指導なのです。
 数学の受験問題への関心ではなく、本当に理科的な興味関心!これを喚起する能力がないのです。
 ここからどうして、多様な進路の指導が可能となるのでしょう。

総合学習

 総合学習というものは、そうしたなかから生まれてきた発想です。しかし、本校の現状を見ればわかりますが、総合学習を単純な受験や資格取得の関心としか認識できず、あとは、性格占いをして業者模試を行うという、「学校経由の就職」にそった手配士的指導しか残念ながら現状ではできません。
 総合学習は、まさに専門を社会とつなぐこと、社会を学校に注ぎ込むこと、そこをとおして学校を活性化させることを目的にしています。その趣旨は正しいのです。社会の多様な価値の所在を進路意識へと接続する発想こそ「総合学習」にふさわしい。

でもね、「受験」以外ないんです。それしかできないのです。それ以外の発想がないのです。



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進路指導にはお金が掛る (setuna)
2012-09-06 22:50:16
 他の公立高校はわかりません。しかし、私の通っていた定時制・単位制高校では、進路指導費というものが徴収されます。

私が高校に通っている途中で、有難いことに公立高校は授業料が無償化になりました。
高校はそれ以外の諸費の中で、「進路指導費」というものを徴収しているのです。

私は、一度事務員に聞いたことがありました。私は成人なので、進路指導は結構です。教員からも指導を受けるつもりはありません。にも関わらずなぜ進路指導費を払うのでしょう?と。

進路指導費は何に使われているのか。大変、疑問でした。

教員が、成人の多く所属する単位制高校で、進路を指導することが可能でしょうか?進路って進学だけでしょうか?

少なくとも、私の周りで大学に進学した生徒もいましたが、教員から進路について促され、刺激を受けた人はいません。

進路指導費は、年に数回ある、外部の誰かを呼ん行う講演を、生徒に聞かせるためなどに使われると聞きました。

冷たい体育館の板の上に1時間以上座らされて、聞く進路講演は、大変タメになりません。

そして、呼ばれる講演者は、一見成功しているように見える人たちばかりです。
まるで、感覚が昭和なのです。
成功者を子供たちに見せつけて、ああなるんだよというのです。
成功=幸福 でしょうか・・・

私は毎年、ホームレスになった人を呼んでほしいと思っていました。彼らから聞く話しの方が、数倍は「考える」ために頭を使います。

現在、学校の「進路」は=(イコール)「昭和」なのです。
平成になって、すでに四半世紀、早くこの昭和感覚を脱しない限り、本当の進路など見つけられません。
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