高校公民Blog

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龍馬伝 5 尊王攘夷

2010-09-23 22:31:29 | 映画・演劇・ドラマ
白札

 「龍馬伝2」で書きましたが、土佐藩は大変身分制のきびしい藩でした。武士の中でも、上士と下士に分かれ、被征服民の長宗我部氏の子孫である下士たちは、藩政においても参加をほとんど認められていなかったのです。その下士のなかで、有能な人物が白札という階層として藩政に抜擢される、ということがあったのでした。



 龍馬の朋友である大森南朋(上左・写真)演ずる、武市半平太(上右・写真)は、まさに、白札だったのです。剣術に優れていた武市は、その才能を買われたのでした。そして、武市は最後まで藩という枠のなかで、下士という身分制度を変えようと努力し、最後、切腹という処分を下されることになったのでした。

土佐勤皇党

  折しも、ペリーが来航し、開国を求めてきました。京都の公家たちを中心に、排外的な攘夷運動が日本国中に起きます。弱腰の徳川幕府に対し、日本国を守る、という大義のもと、異国を討つのだ、という運動が起きるわけです。その運動をまとめて 「尊王攘夷」 と呼ぶことは、日本史の教科書でもご存じのとおりです。
 武市は土佐藩の下士たちを中心に、尊王攘夷の旗の下、土佐藩をリードします。そして、上士のなかで藩政をつかさどっていた吉田東洋を暗殺します。こうした動きをみていると、武市たちが、一体何を目指して運動していたか、という、根本を考えさせられます。
 土佐藩という、閉じ切った世界でのまったく未来のない階層としての下士たち。彼らの鬱積したエネルギーは、もちろん、反差別、上士と下士という理不尽の解消、いえ、もっと露骨に本当の欲動としては、下士による上士階層の転覆ということがあったにちがいありません。そこには、抑圧された階層の、抑圧している階層へのルサンチマン、怨念が渦巻いていたはずです。心の底をみていけば、 「尊王攘夷もへちまもない、下士による上士の転覆」 これがあったはずです。映像は、武市が忠義を尽くす、という、形式に跪(ひざまず)きながら、復讐を遂げていく姿を描き出します。忠義を尽くすことによって、出世し、仲間の下士たちが、世に出ていく、いや、世に出ることによって、デカい面をしてきた上士どもへの復讐怨念を晴らしていく姿を、私たちは垣間見ていくのです。

 人が、世界とか、日本とか、という大きな世界のために、と言い出した時は考えるべきですね。人は、本当にそのようなレベルで動くものなのか?
 武市たちは、「尊王攘夷」という口実の下、藩の外の力を借りて、土佐藩の権力奪取に成功したのです。もちろん、それは、一瞬のことでした。尊王攘夷の運動そのものが下火になり、京都の公家たちが失墜し、大体、攘夷などできない、開国以外の選択肢はない、ということが明らかになったとき、武市たちの転落が始まるのです。
 藩主容堂は、土佐勤皇党の弾圧を始めます。それは、上士の下士のなまいきな動きへの抑圧です。身分による抑圧なのです。

黙れ!下士ども!

 吉田東洋殺しの下手人を探し出しながら、下士どもの制裁へと乗り出すのです。しかし、武市はなお、諦めませんでした。「尊王攘夷」という旗がほとんど意味がなくなって、しかも藩主からの、恨みともつかない弾圧にあっても、なお、藩というなかで、下士という身分差別の世界そのもののなかで、解決を模索するのです。物語では、最後まで武市は、大殿様容堂のためにと、藩のため、という形式のもとで下士たちの救済を求めて行くのです。
 しかし、身分制は揺らぎません。わが坂本龍馬は、朋友との道を分かつのです。龍馬が取った選択は、藩という世界そのものを捨てることでした。
 おもしろいと思うのは、私も、静岡藩という公務員教員を務めてきて、少しでも学校がよくなれば、と思ってきました。努力もしたつもりでいます。しかし、自分と武市を重ねた時、複雑な思いがありますね(笑)。
 龍馬ならいうんでしょうね。

「おまん、無駄ぜよ。今のシステムでは改革などできんぜよ!」

龍馬伝 1 坂本龍馬像
龍馬伝 2 身分制度という絶望
龍馬伝 3 身分の起源としての征服
龍馬伝 4 昭和と平成の竜馬/龍馬像
龍馬伝 6 脱藩という場所  

 
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