製作年度 2010年
上映時間 106分
映倫 R15+
原作 湊かなえ
脚本 中島哲也
監督 中島哲也
出演 松たか子//岡田将生/木村佳乃
2009年の本屋大賞に輝いた湊かなえの同名ベストセラーを中島哲也監督が映画化。
とある中学校の終業日。1年B組の担任・森口悠子は、ある告白を始める。数ヵ月前、シングルマザーの森口が学校に連れてきていた一人娘の愛美がプールで死亡した事件は、警察が断定した事故などではなく、このクラスの生徒、犯人Aと犯人Bによる殺人だったと。そして、少年法に守られた彼らを警察に委ねるのではなく、自分の手で処罰すると宣言するのだった。その後、森口は学校を辞め、事情を知らない熱血教師のウェルテルこと寺田良輝が新担任としてクラスにやってくる。そんな中、以前と変らぬ様子の犯人Aはクラスでイジメの標的となり、一方の犯人Bはひきこもりとなってしまうのだが…。
これは先月の「中島哲也映画祭」で鑑賞したものの、なかなか感想を書く気にならず、避けていました。
つまらなかったとか、面白かったとか単純に言えない。言いたくない。絶賛もしたくない。
学校という小さな社会の中の、また一つ小さな社会、「教室」
その中で次第にむき出しになる覆われていた狂気。
炙りだす教師と、晒される犯人―残りの生徒―。
日常の子供たちのざわめきの中で、静かに長い、朗読のような森口の告白は、
他人の痛みに無関心な生徒たちに、動揺と恐怖を与えて、犯人には疑惑の花を咲かせる。
そして、告白は犯人や関係者に引き継がれていく…
いつもの中島作品の甘い、可愛いカラーはどこにもないけれど、
しれっと、ポップに凶気を描いている部分もあり、子供を相手に本気の大人の戦う姿が、怖くも哀しくも、
共感を誘ってしまう。
それは、愛するものを奪われたら――誰の胸にも芽生える、打ち消せないどす黒い怒りが、
現実に繰り返される、虐めや、それによって失われる標的になった子供の命、引きも切らないそういう事件が起こる度に湧いていたものだから。
仄暗い画面に登場する彼らは一様に、みな自己中心。
自分を支配している感情の原因を、他者のせいにしている。
そして、、だから、、告白は全てが真実とは限らない。
子供の持つ残酷さ、子供を守る「少年法」―。しかし.....!
劣等感と優越感、妄想と願望、理解と誤解。拒絶と甘え。そして、希望と絶望―。
誰もが子供の頃から体験してきた負の感情。だれもがそれと戦ってこれたのは何故か―。改めて思い知らされる。
R15+ということになっているけど、本来観るべきは子供たち。ここは本当にジレンマ。
もちろん大人も子供を知らなくては、KY熱血教師ウェルテルみたいなのが量産されても困るのだけど。
「下妻物語」の中島監督らしいハードボイルドな作品ですが、
これは大人が子供に贈るコワイ話。
ある意味
アンデルセンやイソップの童話のように、日本の昔話のように、大人が子供に読み聞かせるべき類のものかも知れません。
幼児期に読み聞かせる「赤ずきんちゃん」や「舌きりすずめ」「瘤取りじいさん」のように、
これからの児童にはこういうお話をしていくべきなのでしょうか。
ふとそんな事を真面目に考えてしまいました。
ただ、中学生の犯罪をテーマにしているところで、やはり恐怖はこの上ない恐怖として描かれないと、本当の意味で、
命の授業にはならないと感じました。
余談ですが、
私が子供の頃に出会った「みっつのねがいごと」や「ないたあかおに」は子供ながら衝撃でしたが、それなりに罪とか罰とか、虐めや報復とかは、
子供心に刻まれていったと思います。
今のように、小さな子供でも大人と同じ情報も早くに手に入れられると、
子供でいられる短い時期の親子の向き合い方が、とても貴重なんだという気がしました。