挫折なしで英会話ができる「英語耳」9つの法則 (アスキー新書 9)松澤 喜好アスキーこのアイテムの詳細を見る |
いよいよゴールデンウィーク後半です。
私は来週から地元の手話通訳者養成講習会、その次の週には市の手話奉仕員養成講座が始まるということで、この休みはその準備に充てようと思っていましたが、初っぱなからいろいろ予定が狂っています。
今日は「ある言葉」を思い出せなくて午後はずっとその言葉を探すので終わってしまいました。
最初は「意味の固まり」という言葉で探してみました。
そうすると英語関係のサイトがごっそり検索されます。
その中で面白かったのが、英会話学校のアルクの「ライティング基礎コース」の紹介文です。
考えや情報の最小単位は単語ですが、実際のコミュニケーションでは「チャンク(chunk)」です。「チャンク」とは考えや情報を形成する「単語のかたまり」のことで、例えば、a writing courseがそれです。これに、“何か”を相手に示す場合の「チャンク」This isが加われば、This is a writing course. という英文ができる訳です。本コースの演習は全てが、この「チャンク」でアプローチするようにデザインされています。
2 つ目は「構造の文法」によるアプローチです。「構造の文法」とは、換言すれば「語順のルール」です。上の英文をA writing course this is. のように書けば、意図したことは伝わりません。本コースの演習のヒントである「チャンク」は、常にこの「語順のルール」に従って提供されます。このため、コース終了時には英語の「構造の文法」が学習者の中で習慣化されることになります。
3つ目の「脱和文英訳」とは、1.2を実行することで「はじめに和文ありき」式の翻訳作業から脱皮することです。伝えたい考えや情報を英語で直接表現するといった作業に慣れることを目指します。このため本コースでは英訳されるべき和文が最初から活字で与えられることはありません。
この「英語」を「手話」に置き換えても同じことが言えるように思います。
また「意味の固まり」ではこんなサイト(「シリコンバレー的英語学習法」)も勉強になりました。
ネイティブスピーカーは単語をひとつひとつ積み上げて文を作っていく感覚では話してなく、大きな意味のかたまりをいくつか重ねるような具合に文を組み立てている。なので、聞き取る時にもこの「かたまり」を見抜き、その「かたまり」ごとに、文頭からどんどん意味をつかんで理解しながら聞いていく必要がある。そのためには、慣用句、パターン表現、パターン構文をたくさん身に付けたり、まず大くくりの結論を述べてから詳しい情報が付け加えられていく「英語の文のつくり」に慣れておかなければならない。
慣用句やパターン表現などを身に付けるには、日常生活で遭遇する具体的な状況を思い浮かべて、五感を通して「体験する」ようにすると良い。
あるいは名古屋外国語大学のサイトには、同時通訳者の新崎隆子さんの講演録も載ってました。
とりわけ同時通訳の場合は、発言者の言葉は切れ間なく続いていくので、時間が勝負。意味の固まりごとに情報処理しないと、長い文章を聞いているうちに、途中で忘れてしまい分からなくなってしまいます。「意味が分かるから大丈夫」とゆっくり聞いているのではなく、固まりごとに捉えて次から次へと訳していくトレーニングが必要です。
さらには「受験英語の部屋」さんもなかなかわかりやすかったです。
それから「ニートからのキャリアアップ」さんは「スラッシュリーディングのススメ」という記事で
コツとしては以下がある。
・あまり細かく分割しすぎない。
・ネイティブが読み上げ時にポーズを入れる箇所に入れる。
細かくスラッシュを入れすぎると、「意味の固まりごとに英文を捉える」という目的が達せられなくなる。
と書かれていて「なるほど!」と感じました。手話の場合も「単語の切れ目」ごとにスラッシュを入れて細かく読むというのをやりますが、私はそれに加えて「意味の固まりごとにダブルスラッシュ(//)を入れて読み取り練習するのが良いのではないかと思います。
でも、私が思い出したかったのは「チャンク」ではないのだなぁ~。
そういえば佐々木瑞恵さんの書かれた本の中にあったのではなかったかなぁ~と思って「外国語としての日本語」(講談社現代新書)を読み直してみたら「プロミネンス」(卓立)という用語が重要だと書かれていました。
「同じ文章でも特定の語句を強く発音する(プロミネンスを置く)ことで、文章のニュアンスがずいぶん代わってくる。」
とのこと。用語の響きとしては何となく近い気がするんだけど意味が違うなぁ。
英語関係の本や翻訳関係、はたまた言語学関係の本まで片っ端から探し回って、夜の9時前にようやく見つけたのが、表題の「挫折なしで英会話ができる「英語耳」9つの法則」だったのです。
その「ある言葉と」は「プロソディ」だったのです。
「プロソディ」もグーグルで検索するととても参考になるサイトがごっそり検索されますので、是非ご自分でいろいろ読んでいただきたいのですが、この松澤喜好さんの本には
「強弱がついた音の流れをプロソディ(Prosody)と言います。英語では、「1つ1つの単語の発音」以上に「複数の単語をどのような強弱やスピードで発音するのか」というプロソディの方が重要なのです。」(87ページ)と書かれています。
日本語に訳すと「韻律」と呼ぶようですが、そのすぐあとの90ページには「プロソディとスピード」という小見出しで
「プロソディとは、要は「英文を構成する子音・母音の強弱と、単語の発音のスピード」のことです。ここでいうスピードとは、会話のスピードではなく、文中の単語それぞれを発音するスピードのことです。」と書かれているのです。
これって、まさに手話をマスターする上で聴者にとって一番難しいところと同じなんじゃないかと思います。つまり、手話の強弱・スピードの強弱の変化に聴者はついて行けないように思うのです。
というわけでこの本、もう一度最初からちゃんと読み直してみようと思います。(2008-05-03 23:39:29)
<その2>
5ページ 「正しい発音」を最重要視して英語を学び始めれば良いのです。
6ページ いますぐに学ぶべきなのは、正しい「英語の子音・母音の音」です。
7ページ 実は、「音節」さえ聞き取れれば、相手の使用単語を即座にほぼ特定できるようになってしまう。
以前にも読んだはずなんですが、「発音」から入るべし、というのは 面白いですね。手話で言えば「表現」から入るべしということになると思うのですが、「英語の子音・母音」を読んでふと思ったのですが、手話の場合「子音」というのがどういうことになるのか私にはよく分かりませんが、手話に付随する「口形」をキチンと読めるかどうかも大きいのではないでしょうか。もちろん全く口形をつけない年配のろうもいらっしゃいますから、あくまでもこれは口話教育を受けたろう者の場合ということになりますが。
昨夜、地元の手話奉仕員養成講座の準備をするために米内山さんの「DVDですぐできるやさしい手話」(成美堂出版)を見たのですが、そのDVDの中でも、対応手話で自己紹介した西村知美さんに対して「そういう音声語のリズムじゃなくて、手話のリズムはこうやるのよ」と高野さんが教える場面が最初に出てきます。
これも一番最初に手話の「発音」に注意を喚起しているように思えました。
<その3>
第1法則 スピードが全て。最終目標は3倍速での理解
私もあまり意識してなかったのですが、確かに「ろう手話のスピードに慣れる」ということをもっと意識的に勉強することが重要なのかもしれません。いくらなんでも3倍はきついので「当面は1.5倍くらいを目標にしましょう」と書かれています。手話通訳の読み取りも(1)相手の話を理解して聞き、(2)同時に手話でこう表現しようと考えながら、(3)さらに、この表現であのろう者に分かるだろうか?と考える必要がありますから、3倍必要ですね。
第7法則 単語はJACETの8,000語を覚えれば必要十分
松澤先生によれば「受容語彙2万語」「発信語彙(自分で話せる語彙)8,000語」とのこと。
また、初級者なら「日常会話でなんとか通じるレベルは発信語彙1,000語からと言われています。発信語彙が1,000語もあると、受信語彙はその3倍の3,000語にもなります。」とのことでした。これは市町村の手話奉仕員養成講座で2年間に目指すべき水準なのではないかと思いましたが、厚労省カリキュラムでは、時間数も極端に短いことから「入門35時間で300語、基礎45時間でプラス300語」となっています。ただし、全日ろう連が発行している「「新・手話教室 入門」対応 実用手話単語集」には約900語弱(もくじの見出し語数)が掲載されていますから、実際のテキスト上は2年間で2000語以上学べるようになっているものと思われます。入門レベルで1,000語をマスターしようというのは一つの基準になると思います。
次に、第2章は具体的な手法として以下の4つのステップについて書かれています。
ステップ1 子音・母音の発音方法を習得
ステップ2 音節と単語の発音方法の習得
ステップ3 文の発音の習得
ステップ4 長い文章の発音の習得(Parrot効果とシャドウイング)
この第3ステップのところに「プロソディ」のことが書かれているのです。
英語に日本語のプロソディを期待している間は、英語の聞き取りはできないわけです。(93ページ)
これぞ手話読み取りの「キモ(肝)=最重要ポイント」じゃないですかねぇ~。手話を読み取るときに日本語のプロソディを頭の中に浮かべてしまうから、私はいつまでたっても手話を読めないのだと思います。これは難しい。
この1文のあとには、
単語の音は、すべてつながっている
ちなみに、ネイティブは、”均等に””単語ごとに区切って”英文を発音するのが苦手なようです。
と書かれています。これって、ろうの手話も全く同じことが言えるんじゃないでしょうか。さっき米内山さんの「DVDですぐできるやさしい手話」のことを書いたところで私は「リズム」という言葉を使ったのですが、まさにそれは「プロソディ」という概念なんだと思います。ろうの手話では手話の動きは均等でないし、単語と単語がつながって表現され、音声語の単語の切れ目とは違った部分で意味の切れ目がある、そこが読めないのですよねぇ~。
<その4>
ステップ4 長い文章の発音の習得(Parrot効果とシャドウイング)
さて最後はいよいよ「長い文章の発音」なんですが、これは「オウムにひとこと目を教えるのには、同じ音を2000回繰り返」して教えるが、「ふたこと目の言葉は200回で覚える」という点から「Parrot効果」と呼んでいるそうです。
「一つの英文をひたすら繰り返して聞く1点突破式のほうが、短時間でかなりのレベルに達することができ」「一人の話者が自分の興味ある題材で話していることを繰り返し聞いてリスニング力をどんどん高めておくと、ほかの話者の言うことも、その高めたレベルで聞き取れる。」「全20章ある英会話の音声を使って練習する場合、全20章を各4~5回ずつ聞いても効果は薄い」「むしろ、1章分だけでも、100回繰り返して聞くほうがいい」
とのことです。
松澤先生はその上でParrot効果を得られる具体的練習方法として、
(1)なるべくスローな歌をひたすら繰り返して聞き、一緒に歌う。
(2)次に、3分ほどの会話をひたすら繰り返して聞く。
(3)10~15分の会話をひたすら繰り返して聞く。
をそれぞれ300回ずつ繰り返すことを勧めておられます。
さらに(1)-1はひたすら歌に聞き入るのを100回、(1)-2 歌詞を見ながら意味も理解し発音記号も確認した上で100回、(1)-3 一緒に歌いながら100回で合計300回繰り返すとのこと。この3回目の100回が「シャドウイング」です。このシャドウイングで気をつけることは、
ネイティブの音をきちんと聞き取らず、脳内に最初からあるカタカナの音に置き換えてシャドウイングを実行する人がとても多いのですが、それでは効果が上がりません。
きちんと、英語の子音・母音の「音の記憶」を脳内にすり込んでから実行してください。
とのことでした。なるほどただシャドウイングすれば良いというものではないのですね。その前にひたすら100回見て、次は内容を理解した上で100回見て、それでようやくシャドウイング100回にたどり着くわけですねぇ~。
養成講座の中でこれを実践するのはかなり難しいですが、考え方として「事前に自宅で繰り返し見てきてもらったものを講座の中でシャドウイング練習するのでなければ、ただいきなり手話を見てシャドウイングをやっても効果が低い」というのはとても参考になる知見だと思います。
(2)についても最初の100回と最後の100回はテキストを見ないでやるのが良いとのことです。
これを読んで昨年度、県の「手話通訳士」養成講座を受講したある女性が、それまでなかなか手話のリズムが表現に出てなかったのが、とってもいい感じになっていたのを思い出しました。その講座スタッフに「どんな内容だったの、彼女とっても上手になってたけど・・」と質問したところ「短い文を何度も何度も繰り返して表現練習しただけだよ」と教えてくれました。松澤先生のお話と通ずるところがありますよね。その指導スタッフも以前から「100回繰り返せ」という10箇条をいろんなところで強調していた女性なんです。
(3)は映画の1シーンを使うと良いとしてアルパチーノの「セント・オブ・ア・ウーマン」がお気に入りだったそうです。
私はとりえず「驚きの手話」DVDを100回目指して繰り返し見ていきたいと思います。100回見たら坂田さんの手話もすっと読めるようになるだろうか。頑張ります。
<おわり>