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木のつぶやき

主に手話やろう重複の仲間たちのこと、それと新聞記事や本から感じたことを書き込んでいきます。皆様よろしくお願いします。

全国ろうあ者大会in島根報告10_研究分科会「労働」報告 08パネルディスカッション(1)

2010年07月09日 00時16分57秒 | sign language
後半はパネルディスカッションでした。
テーマ「合理的配慮-私たちはこう考える」
コーディネーター(進行役);(財)全日ろう連 労働対策部長 中橋道紀
パネラー
(1)使用者の立場から;(株)出雲村田製作所 管理部人事課 早見岳志課長
(2)働くろう者の立場から;(株)出雲村田製作所勤務 片寄忠之
(3)コミュニケーション支援者(手話通訳者)の立場から;有限会社リベルタス興産 専任手話通訳者 梅田晶子
(4)行政の立場から;中島圭子


 まず使用者の立場から(株)出雲村田製作所 管理部人事課 早見岳志課長が発表されました。
(1)-1会社概要

(1)-2障がい者就労状況
  ①身体障害者37名(重度22名、軽度15名)、知的障害者2名。うち聴覚障害者15名(重度14名、軽度1名)
  ②聴覚障害者の担当業務;機械操作(カット工程のマシンオペレーション)、非機械操作(焼成工程のサヤ詰め・サヤ空け)、外観検査などの手作業や目視検査。機械操作業務は、年々高度化する技術を吸収できるだけのスキルが求められます。


 出雲村田製作所さんは携帯電話などに使われている「積層セラミックコンデンサ」を開発・製造している会社で、従業員数約3000名とのこと。単純計算すると37名÷3000=1.23%ですねぇ。
 「年々高度化する技術を吸収できるスキル」っていうのが大変ですよねぇ。マニュアルは当然あるんでしょうが、聴覚障害者の場合「声の説明を聞きながら操作を見て覚える」ということに困難がある(説明も「眼で見て」理解するわけですから、操作対象と同時には見られない)ので、聴者のように指導者が実際に操作してみせながら「ここんところで右のレバーをちょっと傾けてから、こう一気に左に倒して・・」などという形で「説明と操作を同時に指導する」というのがなかなか難しいのではないかと思います。(逆にろう者自身が「実際にやってみながら指導者からの説明を受ける」というのも同様ですね。)
 ちなみにもし、手話通訳者が入ったとしても手話通訳者自身も実際の操作が分かってないわけですから、説明者の「こうやって」とか「○○機と同じように操作する」なんて説明に対する手話表現も非常に難しいと思います。

(1)-3就労にあたっての配慮
  ①朝礼などの情報伝達時に、口頭だけでなくプロジェクターなどを使用。
   場合によっては原稿文書を配布。
   昇格試験の受験時なども試験官からの説明事項を文書にして配布。
  ②1つの職場に障がい者が複数在籍するようにし、交代勤務のシフトを同じシフトとしてる。
  ③機械操作担当者に対しては、異常発生を知らせるランプを設置。
  ④パートナーと呼ばれる同僚を1対1で配置。
  ⑤障がい者の交流会「みどりの会」を設置。
  ⑥携帯電話のメールアドレスを登録していつでも連絡が取れる体制を取っている。
  ⑦採用面接には手話通訳を依頼。


 研修会への手話通訳の派遣はなく、基本的に仕事を覚えるのは筆談とのことでした。
 また、昇格試験のことが書かれていますが、人事考課面接には手話通訳は付けていないとのこと。その理由は「指摘すべきところは言わなきゃいけないし、本人のマイナス面への評価などもあるので第三者に入ってもらうのは慎重になる」との説明がありました。
 手話通訳者が「守秘義務」というルールを踏まえて派遣されることがキチンと理解されていないことを感じましたが、現実に狭い地域で同じ通訳者が同じ現場に繰り返し派遣されるような場合に「本人のマイナス評価」を聞いてる手話通訳者にろう者自身もあまり会いたくないという感情が生まれるのではないかなどと感じてしまいました。
 いくら手話通訳者が「支援者」という側面を持っているとしても、私だったら「マイナス評価」を他人に聞かれたくないと思ってしまいます。こうした「人に知られたくない」感情って、病院などへの通訳の同行の場合も病気のタイプによっては起きうるなぁ~と思いました。
 それから「異常発生を知らせるランプ」の設置費用について質問が出ましたが、特に助成金等の申請はしてなくて「設備の付属機能」という認識で会社負担で設置しているとのこと。補助金・助成制度の有効活用というのも難しいテーマですねぇ~。というのも日本のこうした制度は「使いにくい、申請が面倒」という場合が多いので総務・人事担当者から面倒くさがられるんだろうなぁ~などと思ってしまう。

(1)-4今後の課題
  ①専門用語が多いことなどなかなか手話によるコミュニケーションが広がらないのが現実。
  ②障がい者の交流会をもっと機能させ、お互いの情報交換をさらにやりやすくするで、安心感を高めることが必要。
  ③従業員の困りごとを職制が吸収しやすい職場にすることが重要。


 今回、分科会に参加して改めて「企業内」「労働現場」の手話通訳って難しいなぁ~と感じました。職場って極めてクローズドな世界で、しかも使用者対労働者とか、管理職対一般職員、さらには近頃は正職員対派遣職員など結構「格差」や「利害の対立」があることが当たり前の社会です。
 「クローズド」という面では「専門用語」「専門的な内容」さらには「略語」「記号」が頻繁に飛び交うことが日常茶飯事ですから、ただ単に手話通訳を付ければ(外部から派遣されれば)いいとは言い切れない面があると思いました。
 また、早見人事課長さんが最後におっしゃってましたが、企業が大きくなるにつれて大企業病(社内コミュニケーションの悪化)に陥りつつあるとのこと。ろう者だけでなく企業全体の風通しが悪くなっているなかで「第三者である手話通訳者」を招き入れることへの抵抗もあるように感じました。
 こうした企業内手話通訳への対応は、やっぱり「プロの手話通訳」(守秘義務の遵守や、専門用語への対応などが可能であること)という社会的な理解が進まないといけないのではないでしょうか。もちろん地域の手話通訳者自身が「守秘義務の遵守」「専門用語への対応」が可能です!と胸を張って言えるような状況を作らないと話になりませんが。
(つづく)

全国ろうあ者大会in島根報告09_研究分科会「労働」報告 07「合理的配慮」についての論点と課題

2010年07月08日 17時13分02秒 | sign language
5.国内での議論(取り組み)

(3)「合理的配慮」についての論点と課題

 ようやく本題に入ったって感じですが、当然のことながら中島圭子さんは聴覚障害者問題の専門家ではないので、レジュメもここは一般的な書き方になります。

●合理的配慮を行うことを使用者の義務とするか、労働者の請求権とするか。
●合理的配慮の拒否を、差別として違法とするか
●何らかの問題が生じた場合の救済措置のあり方

いずれの論点も今の労働現場を考えるとかなり難しい(実現へのハードルが高い)テーマですよねぇ~などとつい使用者側へ配慮した思考になってしまうのが何とも自分が情けないです。
昨夜載っけた去年政権交代前の「中間整理」にも、”どんな配慮が必要かわからねぇから自分で要求しろ。”とか”合理的配慮は各企業の理解に基づいてやるもんだ”とか”採用に当たっても合理的配慮について企業と一定の合意をしておけ!”とかずいぶん企業よりな「意見」が書いてありましたよねぇ。
まして「合理的配慮をしなかったら違法」だなんてとんでもねぇ~というのが企業側の本音でしょう。そしてそれって、自分の中で「もし障がい者を雇うために合理的配慮が必要でその経費がかかるために今いる社員(ほぼ健常者)の人件費を削らなきゃいけなかったりしたら、僕は賛成って言えるだろうか?」という自信のなさにつながっていきます。例えば聴覚障害者を雇うために専任の手話通訳者を派遣職員として雇うとなると人件費は倍かかるわけです。それって小さな会社(私の職場は100名そこそこ)には無理だろう!って自分で思ってしまうのです。
民間会社であれば、価格破壊+それでもものが売れない不況の現在、経費アップにつながる「合理的配慮」を「使用者の義務」とすることへの抵抗は大きいものがあるでしょう・・・と私は考えてしまう。
サラリーマン管理職はいかんですねぇ。ついつい会社側の発想になってしまう。会社の経営を守ることが大事になってしまう。私のような中間管理職でさえこうです。例えばスロープを付けるとかイニシャルコスト(初期の設備投資)で完結するものはまだいい。でも手話通訳はずっと必要なランニングコストというのが(企業には)辛い。などと愚痴ばかり書いていては、この労働分科会に参加した意義が薄れてしまいますが、具体的な「論点と課題」となるとやはりコストの問題が一番のネックになりますよねぇ~。ビデオ手話通訳サービスとかならコストを低減させる可能性があるだろうか?でも、例えば企業の朝礼の時間なんてどこも同じような時間帯だから、どうかなぁ~。
合理的配慮は「使用者の義務」であり「罰則あり」っていうのが当然だぁ~と頭では理解できるのですが・・・。

中島さんのレジュメはこの次の行に
Ⅲ.聴覚障害者にかかる合理的配慮の例
と書かれて終わっています。つまり具体的な例はこの分科会で議論しよう!ということでした。
ここまでが基調講演。
いったん休憩のあとパネルディスカッションに入りました。

全国ろうあ者大会in島根報告08_研究分科会「労働」報告 06障がい者制度改革推進本部

2010年07月08日 15時03分08秒 | sign language
5.国内での議論(取り組み)

(2)内閣府「障がい者制度改革推進本部」
 政権交代があって、長妻厚生労働大臣が障害者自立支援法の廃止を明言したのが、9月19日。今後4年間をメドに新制度「障がい者総合福祉法(仮称)」への移行する方針が示されました。(2009.12.26土 読売新聞朝刊より)

中島さんのレジュメには以下のとおりポイントが書かれています。
内閣府「障がい者制度改革推進本部」
 ●2009年12月8日に「障がい者制度改革推進本部」が設置されました。(閣議決定)
 ●その下に「障がい者制度改革推進会議」が開催され国内法整備の論点について審議が進められてきています。
 ●我が国の障害者雇用との関係で、焦点になるのは「差別禁止」と「合理的配慮」のありかたです。

この「障がい者制度改革推進本部」や「推進会議」の会議の様子や配布された資料は、日本障害者協議会のホームページにある「ウォッチング推進会議」のページで詳細に知ることができます。各回に簡単なコメントが書かれていて、それだけを読んでも大まかな流れが分かります。
ちなみに今後の推進会議の予定は、
7月12日(月)=基本法改正につながる議論
7月26日(月)=文科省ヒヤリング
8月 9日
と書かれています。いずれの日にも『目で聴くテレビ』により生中継されます。私の地元でも「視聴する会」が開催されます。
時間は、両日とも12:30~17:30とのことです。
なお、6月29日には、障がい者制度改革推進本部の会合が開催され、菅内閣総理大臣に第一次意見が手交されたとあります。
これも相当長いですが、重要な資料と思いますので、以下に転記します。
皆さん(って誰?)頑張って読みましょう!
障害者制度改革の推進のための基本的な方向について
〔平成22年6月 日閣議決定案〕
 政府は、障がい者制度改革推進会議(以下「推進会議」という。)の「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」(平成22年6月7日)(以下「第一次意見」という。)を最大限に尊重し、下記のとおり、障害者の権利に関する条約(仮称)(以下「障害者権利条約」という。)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革の推進を図るものとする。



第1 障害者制度改革の基本的考え方
 あらゆる障害者が障害のない人と等しく自らの決定・選択に基づき、社会のあらゆる分野の活動に参加・参画し、地域において自立した生活を営む主体であることを改めて確認する。
 また、日常生活又は社会生活において障害者が受ける制限は、社会の在り方との関係によって生ずるものとの視点に立ち、障害者やその家族等の生活実態も踏まえ、制度の谷間なく必要な支援を提供するとともに、障害を理由とする差別のない社会づくりを目指す。
 これにより、障害の有無にかかわらず、相互に個性の差異と多様性を尊重し、人格を認め合う共生社会の実現を図る。
第2 障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方
 第一次意見の第3を踏まえ、以下のとおり障害者制度改革の推進を図るものとする。
 1 基礎的な課題における改革の方向性
   (1)地域生活の実現とインクルーシブな社会の構築

 障害者があらゆる分野において社会から分け隔てられることなく、日常生活や社会生活を営めるよう留意しつつ、障害者が自ら選択する地域への移行支援や移行後の生活支援の充実、及び平等な社会参加を柱に据えた施策を展開するとともに、そのために必要な財源を確保し、財政上の措置を講ずるよう努める。また、障害者に対する虐待のない社会づくりを目指す。
   (2)障害のとらえ方と諸定義の明確化
 上記第1の「障害者制度改革の基本的考え方」を踏まえ、障害の定義を見直すとともに、合理的配慮(障害者権利条約に定めるものをいう。以下同じ。)が提供されない場合を含む障害を理由とする差別や、手話及びその他の非音声言語の定義を明確化し、法整備も含めた必要な措置を講ずる。
 2 横断的課題における改革の基本的方向と今後の進め方
   (1)障害者基本法の改正と改革の推進体制

 障害者基本法(昭和45 年法律第84 号)の改正や改革の推進体制について、第一次意見に沿って、障害や差別の定義を始め、基本的施策に関する規定の見直し・追加、改革の集中期間(「障がい者制度改革推進本部の設置について」(平成21年12月8日閣議決定)に定めるものをいう。以下同じ。)内における改革の推進等を担う審議会組織の設置や、改革の集中期間終了後に同組織を継承し障害者権利条約の実施状況の監視等を担ういわゆるモニタリング機関の法的位置付け等も含め、必要な法整備の在り方を検討し、平成23年常会への法案提出を目指す
   (2)障害を理由とする差別の禁止に関する法律の制定等
 障害を理由とする差別を禁止するとともに、差別による人権被害を受けた場合の救済等を目的とした法制度の在り方について、第一次意見に沿って必要な検討を行い、平成25年常会への法案提出を目指す
 これに関連し、現在検討中の人権救済制度に関する法律案についても、早急に提出ができるよう検討を行う。
   (3)「障害者総合福祉法」(仮称)の制定
 応益負担を原則とする現行の障害者自立支援法(平成17年法律第123 号)を廃止し、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を内容とする「障害者総合福祉法」(仮称)の制定に向け、第一次意見に沿って必要な検討を行い、平成24年常会への法案提出、25年8月までの施行を目指す
 個別分野における基本的方向と今後の進め方
 以下の各個別分野については、改革の集中期間内に必要な対応を図るよう、横断的課題の検討過程や次期障害者基本計画の策定時期等も念頭に置きつつ、改革の工程表としてそれぞれ検討期間を定め、事項ごとに関係府省において検討し、所要の期間内に結論を得た上で、必要な措置を講ずるものとする。
   (1)労働及び雇用
○ 障害者雇用促進制度における「障害者」の範囲について、就労の困難さに視点を置いて見直すことについて検討し、平成24年度内を目途にその結論を得る。
○ 障害者雇用率制度について、雇用の促進と平等な取扱いという視点から、いわゆるダブルカウント制度の有効性について平成22年度内に検証するとともに、精神障害者の雇用義務化を図ることを含め、積極的差別是正措置としてより実効性のある具体的方策を検討し、平成24年度内を目途にその結論を得る。
○ いわゆる福祉的就労の在り方について、労働法規の適用と工賃の水準等を含めて、推進会議の意見を踏まえるとともに、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会(以下「総合福祉部会」という。)における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。
○ 国及び地方公共団体における物品、役務等の調達に関し、適正で効率的な調達の実施という現行制度の考え方の下で、障害者就労施設等に対する発注拡大に努めることとし、調達に際しての評価の在り方等の面から、障害者の雇用・就業の促進に資する具体的方策について必要な検討を行う。
○ 労働・雇用分野における障害を理由とする差別の禁止、職場における合理的配慮の提供を確保するための措置、これらに関する労使間の紛争解決手続の整備等の具体的方策について検討を行い、平成24年度内を目途にその結論を得る。
○ 障害者に対する通勤支援、身体介助、職場介助、コミュニケーション支援、ジョブコーチ等の職場における支援の在り方について、平成23年内を目途に得られる総合福祉部会の検討結果等を踏まえ、必要な措置を講ずる。
   (2)教育
○ 障害のある子どもが障害のない子どもと共に教育を受けるという障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、平成22 年度内に障害者基本法の改正にもかかわる制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行う。
手話・点字等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員等の確保や、教員の専門性向上のための具体的方策の検討の在り方について、平成24年内を目途にその基本的方向性についての結論を得る。
   (3)所得保障等
○ 障害者が地域において自立した生活を営むために必要な所得保障の在り方について、給付水準と負担の在り方も含め、平成25年常会への法案提出を予定している公的年金制度の抜本的見直しと併せて検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。
○ 特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成16年法律第166 号)の附則において、給付金の支給対象とならなかった在日外国人障害者等に対する福祉的措置の検討規定が設けられており、この法律附則の検討規定に基づき、立法府その他の関係者の議論を踏まえつつ検討する。
○ 障害者の地域における自立した生活を可能とする観点から、障害者の住宅確保のために必要な支援の在り方について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成24年内にその結論を得る。
   (4)医療
○ 精神障害者に対する強制入院、強制医療介入等について、いわゆる「保護者制度」の見直し等も含め、その在り方を検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。
○ 「社会的入院」を解消するため、精神障害者に対する退院支援や地域生活における医療、生活面の支援に係る体制の整備について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。
○ 精神科医療現場における医師や看護師等の人員体制の充実のための具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成24 年内を目途にその結論を得る。
○ 自立支援医療の利用者負担について、法律上の規定を応能負担とする方向で検討し、平成23 年内にその結論を得る。
○ たん吸引や経管栄養等の日常における医療的ケアについて、介助者等による実施ができるようにする方向で検討し、平成22年度内にその結論を得る。
   (5)障害児支援
○ 障害児やその保護者に対する相談や療育等の支援が地域の身近なところで、利用しやすい形で提供されるようにするため、現状の相談支援体制の改善に向けた具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。
○ 障害児に対する支援が、一般施策を踏まえつつ、適切に講じられるようにするための具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。
   (6)虐待防止
○ 障害者に対する虐待防止制度の構築に向け、推進会議の意見を踏まえ、速やかに必要な検討を行う。
   (7)建物利用・交通アクセス
○ 「交通基本法」(仮称)の制定と関連施策の充実について、推進会議の意見を踏まえ、平成23年常会への法案提出に向け検討する。
○ 地方における公共施設や交通機関等のバリアフリー整備の促進等のため、整備対象施設の範囲の拡大や数値目標の設定等も含め、必要な具体的方策を検討し、平成22年度内を目途にその結論を得る。
○ 公共施設や交通機関等における乗車拒否や施設及び設備の利用拒否に関する実態を把握した上で、その結果を踏まえ、障害を理由とする差別の禁止に関する法律の検討と併せて、合理的配慮が確保されるための具体的方策について検討する。
   (8)情報アクセス・コミュニケーション保障
○ 障害の特性に配慮した方法による情報提供が行われるよう、関係府省が連携し、技術的・経済的な実現可能性を踏まえた上で、必要な環境整備の在り方について、障害当事者の参画も得つつ検討し、平成24 年内にその結論を得る。
○ 放送事業者における現状の対応状況、取組の拡充に係る課題等を踏まえ、平成22 年度内に、災害に関する緊急情報等の提供について、放送事業者に対する働きかけ等の措置を検討する。
○ 国・地方公共団体による災害時の緊急連絡について、あらゆる障害の特性に対応した伝達手段が確保されるための具体的な方策の在り方について検討し、平成24年内にその結論を得る。
   (9)政治参加
○ 障害者が選挙情報等に容易にアクセスできるよう、点字及び音声による「選挙のお知らせ版」について、今年執行予定の参議院選挙において全都道府県での配布を目指す。政見放送への字幕・手話の付与等については、関係機関と早急に検討を進め、平成22年度内にその結論を得る。
○ 投票所への困難なアクセスや投票所の物理的バリア等を除去するための具体的方策として、投票所への移動が困難な選挙人の投票機会の確保に十分配慮するとともに、今年執行予定の参議院選挙において、投票所入り口の段差解消割合が100%(人的介助を含む。)となるよう、市町村選挙管理委員会の取組を
促す。
   (10)司法手続
○ 刑事訴訟手続において、あらゆる障害の特性に応じた配慮がされるための具体的方策について検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。
○ 司法関係者(警察官及び刑務官を含む。)に対する障害に関する理解を深める研修について、障害者関係団体の協力を得つつ、その一層の充実を図る。
   (11)国際協力
○ 障害者の地位の向上に資する政府開発援助の在り方について、政府開発援助大綱への障害者の明示的な位置付けの要否を含め、必要な検討を行い、次期政府開発援助大綱の改定の際にその結論を得る。
○ 現行の「アジア太平洋障害者の十年」以降のアジア太平洋経済社会委員会を中心としたアジア太平洋における障害分野の国際協力について、引き続き積極的に貢献する。

以上です。
中島さんの説明によれば今後の改革のスケジュールは、
(1)障害者基本法の抜本的見直し→2011年年明けの通常国会
(2)障害者差別禁止法→2年くらいかけて検討し2011~2012年の通常国会
(3)自立支援法→新たな障がい者総合福祉法→可能なら2011年通常国会へ→2013年施行を目指す
(4)関係国内法見直し→障害者権利条約批准へ
(5)個別法についての対応
とのことでした。
(さきほどの障がい者制度改革推進本部(第2回)の1番目の資料に「工程表」が載っています。)
(つづく)

全国ろうあ者大会in島根報告07_研究分科会「労働」報告05国内での議論(取り組み)

2010年07月07日 22時54分51秒 | sign language
5.国内での議論(取り組み)

(1)労働政策審議会(講師は「労政審(ろーせーしん)」と略称で呼んでました。)障害者雇用部会

  ●2008年4月から「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応のあり方に関する研究会」スタート
  ●2009年7月「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について」(中間整理)公表

 とのことで、資料2として
 「職場における合理的配慮についての中間整理の抜粋」がついてました。

 ちょっと長いですが、以下に転記します。
労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(中間整理)
平成21年7月8日
労働・雇用分野における障害者権利 条約への対応の在り方に関する研究会

第3 職場における合理的配慮
1 合理的配慮の内容
【基本的な考え方】
○ 合理的配慮については、条約の規定上はそれを欠くことは障害を理由とする差別に当たることとされている(差別禁止の構成要件としての位置付け)が、これを実際に確保していくためには、関係者がコンセンサスを得ながら障害者の社会参加を促すことができるようにするために必要な配慮(社会参加を促進するための方法・アプローチとしての位置付け)として捉える必要があるとの意見が大勢であった。【再掲】
○ 「合理的配慮」は、個別の労働者との関係で問題となるので、個別の労働者がどのような配慮が必要か主体的に要求する必要があり、行政が企業への指導や助成によって障害者の雇用を拡大してきた手法とは大きく異なることになるとの意見があった。
○ また、具体的にどのような配慮が必要か、自ら説明・要求できない障害者もいるので、本人の代わりに第3者が説明してくれるような仕組みが必要ではないか、との意見があった。
○ 「合理的配慮」は、個別の労働者の障害や職場の状況に応じて、使用者側と障害者側の話し合いにより適切な対応が図られるものであるので、本来的には、企業の十分な理解の上で自主的に解決されるべきものであるとの意見が大勢であった。
障害者を採用する際に企業と本人との間で必要な合理的配慮の内容について一定の合意をするようにしたり、又は、企業内に使用者・労働者・障害者からなる配慮推進会議のようなものを設けて定期的に情報共有・意見交換する場を設けてはどうか、との意見があった。
○ 合理的配慮について、労働者本人の要望を受けて、直ちに提供できるようにすべきではないか、との意見があった。
何が差別であり、どのような合理的配慮が必要であるかを明らかにする必要があるとの意見が大勢であった。また、合理的配慮の内容は、個別の労働者の障害や職場の状況によって多様であり、また、それに要する費用・負担も異なるので、合理的配慮の概念は法律で定め、その具体的内容は指針で定めるのがよいのではないか、との意見が大勢であった。
○ このような指針は、個別の企業において障害者が企業に合理的配慮を求めていく際にも有効であるとの意見があった。
○ 「合理的配慮」義務を労働基準法等で位置付けるのは、刑罰法規であってその範囲を厳格・明確に定める必要があり、却って範囲が縮減されるのではないか、また、制裁を背景にして合理的配慮を進めるのが適切かという問題があるのではないか、との意見があった。

【基本的な内容】
○ 合理的配慮の内容としては、障害の種類ごとに重点は異なるが、おおまかに言えば、①通訳や介助者等の人的支援、②定期的通院や休暇、休憩等の医療面での配慮、③施設や設備面での配慮が必要であるとの意見が大勢であった。
○ 障害の種類ごとに特に必要な配慮としては、以下のようなものが重要ではないか、との意見があった。
・ 視覚障害者、聴覚障害者及び盲ろう者 … 点字、拡大文字、補聴システム等の機器や通訳者、援助者等による情報保障・コミュニケーション支援
・ 内部障害者や難病のある人 … 定期的な通院への配慮や休憩・休暇・疾患管理への配慮、フレックスタイム等の柔軟な勤務体制
・ 知的障害者 … 身近に気軽に相談でき、又は苦情を訴えられるような窓口の配置
・ 精神障害者 … 対人関係・コミュニケーションが苦手である、疲れやすい等の特性を踏まえた、グループ就労や短時間労働等による仕事の確保や職場環境の整備、日常的な相談ができるような窓口
・ 発達障害者 …本人に代わって必要な配慮を代弁できるような、身近な支援者(サポーター)の配置・支援
・ 中途障害者…勤め続けられるための配置(ポスト・職務)の見直し
○ 障害者が合理的配慮の提供を求めたことを理由として、解雇、降格等の不利益取扱いをすることを禁止すべきとの意見があった。

【採用試験】
○ 採用試験の際に、コミュニケーション支援が必要との意見があった。 また、採用基準を緩める必要はないが、長時間の試験は避ける、休憩を間に入れる等、能力を正しく判定できるような環境を整えることこそが合理的配慮ではないか、との意見があった。

【通勤時の移動支援、身体介助】
○ 通勤時の移動支援や身体介助は、企業の合理的配慮というよりむしろ福祉的サービスとして行うべきではないか、との意見があった。 また、労働災害では通勤も対象となっており、通勤も職務と連動するものであるので、今後は労働政策として企業に義務付けたり、助成措置を設けたりすべきではないか、との意見があった。

【相談窓口】
○ 障害者が気軽に相談でき、苦情を訴えられる窓口が必要ではないか、現行の障害者職業生活相談員の機能を見直したり、相談員が選任されない中小企業でも相談・苦情処理の窓口を整備することが必要ではないか、との意見があった。その際、職場内だけでなく生活面での支援も重要であることから、障害者就業・生活支援センター等による支援を充実させ、連携をしていくことが重要ではないか、との意見があった。
また、専門家というよりも、「適切な変更・調整」を行える、身近にいる支援者(いわゆるナチュラルサポーター)を支援していくことが必要ではないか、との意見があった。

2 過度の負担
過度の負担の基準としては、企業規模、業種、従業員数、環境の特性、地域の文化・慣習等を参考にして判断すべきではないか、との意見があった。 また、長期療養者に対する解雇に関する裁判例でも、事業規模を考慮しており、過度の負担の判断に当たっても、事業規模はある程度考慮せざるを得ないのではないか、との意見があった。 さらに、過度の負担の基準として、現行の障害者雇用納付金制度の特別費用の額を参考とする(合理的配慮を行うための費用が特別費用の額と比べてどの程度かを斟酌する)ことも考えられるのではないか、との意見があった。
○ どのような場合に「過度の負担」に当たるのか、具体的な指針を定めるべきとの意見があった。


この中間整理は、2009年7月8日の会議資料ですから、8月30日の第45回衆議院議員総選挙の結果、政権交代が起きた直前のものです。
そのあたりを間引いて考える必要がありますが、清水建夫弁護士のブログでは次のように批判されています。
 中間整理は障害者権利条約が合理的配慮の否定は差別に該当するとした意味を全く理解していません。法による強制力をもってこそ実効性がありますが、コンセンサス、話し合いを前提とすることは強制力の放棄であり、合理的配慮を基本から否定するものです。中間整理は現状を肯定し差別を容認するに等しいと言えます。
(つづく)

「高度専門領域に対応した手話通訳者養成Ⅱ」 に関するアメリカ視察報告会に参加して来ました。

2010年07月06日 22時48分41秒 | sign language
参加を遠慮すると書いたアメリカ視察報告会でしたが、やっぱり職場からも近いし、行ってきちゃいました。
2008年の前回報告会を踏まえての内容だったので、理解しやすかったです。
まず、今回の報告会の概要はこちらのサイトからファイルをダウンロードできます。
■報告会では最初に筑波技術大学の白澤さんからこの概要ペーパーに沿った説明がありました。概要をさらに一言でいうと・・
1.ノースイースタン大学(ボストン)は、日本の早稲田・慶応みたいなもんで学費も高いが学生や教授陣のレベルも高くて、常に最高峰・最先端の通訳教育・研究を行っている。1991年に言語学部の中に手話通訳学科せ設置され、2005年には指導者養成の大学院が設置された。(詳細は木村晴美さんの報告参照)
2.ロチェスター大学は、8学部の1つに「ろう工科大学」があり600名のろう者が学んでいるだけでなく、他の7学部にも600名の聴覚障害者が聴者とともに学んでおり、その情報保障を125名の専任通訳者を中心に担っている。大杉さんもここに10年いらしたそうです。スタンダードな手話通訳教育を行っている大学とのこと。
3.その他コロラド大学(4年通信制の手話通訳者養成)、フロントレンジ・コミュニティカレッジ(2年制)(いずれもデンバー)などを視察してきた。
4.アメリカには106校の高等教育機関による手話通訳者養成が行われているが、大学(学士)レベルは35、大学院(修士)レベルは2校に過ぎず、まだ少ない。
■次に国リハの木村晴美さん、宮澤典子さんによる「ノースイースタン大学」の報告。
定員18名に、教員はろう3名+聴2名。+パートタイムでろう2名+聴3名のスタッフ。
1~2年次はASLの習得が基本。3年次から手話「通訳」に関する勉強が始まるが、2年と3年の間に一年間「中間年」としてデフコミュニティでの実地体験をするカリキュラムを入れることができる。
またディスコースの発達に合わせたカリキュラム構成になっていて①質問的談話の通訳→②物語的談話の通訳→③説明的談話の通訳→④説得的談話の通訳と進められているとのこと。
■三番目は、関東聴覚障害学生サポートセンターの吉川あゆみさんの「NTID(国立聾工科大学)」における手話通訳養成。

・・・眠くて今夜はここまで

忘れちゃうといけないので、私が質問したかったことを以下にメモしておきます。
【Q1】ろう指導者はどこで養成されるのか?
 手話通訳養成課程が大学カリキュラムにキチンと位置づけられていることは分かったけど、ろう指導者(手話通訳者養成を担うろう講師)はどういう形で「養成」されているのだろうか?

【Q2】高校生のコミュニケーション方法は手話?
 大学の話とは外れるんですが、通訳者養成大学へ進もうという高校生は、高校までは特に地域で手話を学んだりしないのでしょうか?
 大学に入る要件としてASLがあるとしたらそれはどういうシステムで学習されるのか?日本のような地方自治体が開催する手話講座があるのでしょうか?

【Q3】ろう大学生はASLを話すのか?
 日本では高等教育機関に進めるような聴覚障害者は口話主体なコミュニケーション方法を取っている方が多いのではないか。もちろん日本手話をメインとするろう者もおられるが、アメリカの大学で学ぶ聴覚障害者の手話はどんなスタイルなのだろうか? それによって求められる「手話」が異なってくるだろうけど、日本のような「中間型手話」ってありえないんでしょうね。
 実は会場にいらしていた全通研の小出新一さん(全通研副運営委員長?)が「ノースイースタン大学の手話通訳者養成コースがディスコース分析に基づく4つの段階を踏んでいるとのことだが、それらはどのような言語レベルを設定しているのか?」との質問をされていた。
 この質問を聞いた時、私は小出さんが「エリート大学の先進的カリキュラムは、ろうエリートのことしか考えてないんじゃないか? そんなエリートカリキュラムで育った手話通訳者じゃ実際の現場で出会うろう者には通じんのじゃないか?」という皮肉を込めた質問意図を感じた。
 白澤さんはすかさず「では実際にそのカリキュラムで教わったローレンさんに伺ってみましょう」と振り、ローレンさんは「まずクライアント(対象者)にはろう者だけでなく聴者もいることを学びます。そしてろう者の場合にはどのような手話を用いる話者なのか(年配のろう者、未就学のろう者、インテグレートしたろう者など)を見極めること、対象把握する力(ゲージ)を高めることが重視されています。トレーニングの場面では具体的に”16歳の高校生に対して通訳する”とか”高齢者の集まりで通訳する”というような場面の仮定をおいて通訳することが求められます。」とビシッとお答えになった。(私が理解できたのはもちろん英語通訳さんを通じてですけど)
 私の質問も別に皮肉を込めているわけではないですが、実際に高等教育機関で学ぶろう学生の求める「手話」とはASLなのかどうかを質問してみたかったのです。

全国ろうあ者大会in島根報告06_研究分科会「労働」報告04世界各国の考え方

2010年07月05日 23時09分23秒 | sign language
4.各国における「合理的配慮」の考え方
 今回の中島圭子さんの基調講演を私がとても良かったと評価する大きな理由に準備された資料の丁寧さがあります。
 聴覚障害者を対象とした講演は初めてだとおっしゃってましたが、ちゃんとした手話通訳さえ付けられれば(これが案外くせ者な条件ですが)、全国各県のろうあ協会は是非中島圭子さんを「障害者権利条約」勉強会講師にお呼びになることを強くお勧めします。
 障がい者制度改革推進会議の参加メンバー(構成員)なので、情報は最新、お持ちになる資料も厚生労働省の官僚や連合の有能な事務局などが作成したであろう詳細なデータが満載なのです。
 そんなわけで、資料1は「海外における合理的配慮の例」というものでした。
1.米国
 ■障害のあるアメリカ人法(ADA)
  ●合理的配慮に含まれるものとして、以下を例示(第12111条)
   ・従業員が使用する既存の施設を障害者が容易に利用でき、かつ使用できるようにすること
   ・職務の再編成、パートタイム化または勤務スケジュールの変更、空席の職位への配置転換、機器や装置の入手・変更、試験・訓練素材・方針の適切な調整・変更、資格を持つ朗読者または通訳者の提供及びその他の類似の配慮
2.ドイツ
 ■社会法典第9編
  ●重度障害者は、障害及び仕事に対する影響を考慮した上で、雇用主に対して、次のことを請求する権利を有する。(第81条第4項)
   ①自らの能力と知識を最大限に活用し、一層発達させることのできる仕事
   ②職業的進歩を促すための職業教育が企業内措置として実施されるよう特別に配慮する
   ③職業教育の企業外措置に参加できるように妥当な範囲で便宜を図る
   ④企業施設、機械、装置並びに職場、労働環境、労働組織及び労働時間の構成を含む事故の危険に配慮した作業所の設置と整備
   ⑤必要な技術的作業補助を職場に配備

(つづく・・・と思う)
 3.フランス
 4.英国
Ⅱ.国内での議論(日本国内での取り組み)
 1.労働政策審議会 障害者雇用分科会
  〔資料2〕「職場における合理的配慮についての中間整理の抜粋」
         -第3 職場における合理的配慮
 2.内閣府「障がい者制度改革推進本部」
  〔資料3〕「障がい者制度改革の検討にあたっての論点(案)」
 3.「合理的配慮」についての論点と課題
さらに休憩を挟んでパネルディスカッションになって
「使用者の立場から」(出雲田村製作所 早見人事課長さん)
「働くろう者の立場から」(出雲田村製作所 片寄さん)
「企業内手話通訳者の立場から」(有限会社リベルタス興産 専任手話通訳者 梅田晶子さん)
の3本のパネラー発表があったのだ。
そして当然そのあと「パネルディスカッション」があったわけで、ろう者からの意見続出状態だったのだ! あの田門さんも質問してた!
内容濃すぎてとても土曜日までにまとめられそうにないなぁ~。
当初の計画では
「第一部 分科会」報告
「第二部 式典・アトラクション」報告
「第三部 一畑電車ほか島根県松江近辺の魅力」報告
の三部作とするつもりだったけど、全然無理そうだ!

全国ろうあ者大会in島根報告05_研究分科会「労働」報告03基調講演

2010年07月05日 22時07分26秒 | sign language
3.講師は、なんと労組代表!

 基調講演のテーマは、「合理的配慮と聴覚障害者を取り巻く就労環境」でした。
 従来、こうした政策(法律)に直結するようなテーマの基調講演って、だいたい所管省庁の役人を呼んでたと思うのです。そんでもってその役人の講演が杓子定規でつまらなくて分からなくて眠くて(失礼!これは講師に関係なく私が勝手に寝ていたのですが)、だったんですが、さすが政権交代!今回はなんと連合の総合政策局長さんがお話ししてくれました。
 連合って正式名称言えますか?「日本労働組合総連合会」。お茶の水の総評会館にいます。「総評」って昔の社会党系(?)労働組合の本部(ナショナルセンター)だった組織名です(でも「連合会館」とは言わないんですよねぇ~いまだに「総評」会館です。)。今は「社会党系」って言葉も化石になっちゃってますし、そもそも連合は「社会党系」とは言わないですね(でも「民社党系」とも言わないしな)、失礼しました。福島瑞穂さんや土井たか子さんの社民党が「旧社会党」ですもんね。
 私も昔職場の労組書記長だった頃、職場の雇用確保(首切り阻止)の件で何度かお邪魔したことがあります。千代田線の新お茶ノ水駅から0分です。
 て、すぐに話が脱線してしまうのですが、その連合の総合政策局長の中島圭子さんが講演者でした。
 中島さんは、2つのことを話されました。
(1)国際的な情勢
(2)国内の対応
 1番目の世界の動きについては「障害者権利条約」の労働関連部分をおさらいしてくれました。
 2006年12月13日に国連で採択された「障害のある人の権利に関する条約」(障害者権利条約)には、
 〔第2条〕で合理的配慮について規定されています。
 〔第27条〕では「労働及び雇用」について規定されています。
とのことでした。(JDF日本障害者フォーラムのホームページ参照)
障害のある人の権利に関する条約
「川島聡=長瀬修 仮訳(2008年5月30日付)」より抜粋
第2条 定義
 この条約の適用上、
「コミュニケーション〔意思伝達・通信〕」とは、筆記〔文字言語〕、音声装置、平易な言葉、口頭朗読その他の拡大代替〔補助代替〕コミュニケーションの形態、手段及び様式(アクセシブルな情報通信技術〔情報通信機器〕を含む。)とともに、言語、文字表示〔文字表記〕、点字、触覚による意思伝達、拡大文字及びアクセシブルなマルチメディア等をいう。
「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語等をいう。
「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、合理的配慮を行わないことを含むあらゆる形態の差別を含む。
「合理的配慮」とは、障害のある人が他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有し又は行使することを確保するための必要かつ適切な変更及び調整であって、特定の場合に必要とされるものであり、かつ、不釣合いな又は過重な負担を課さないものをいう。
「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなしに、可能な最大限の範囲内で、すべての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。「ユニバーサルデザイン」は、特定の範囲の障害のある人向けの機能を備えた補装具〔補助器具〕が必要とされる場合には、これを排除するものではない。

 この「合理的配慮がないことは差別である」と定義したことが、この条約の2つの大きな意義の1つだとおっしゃってました。(「障害に基づく差別には、合理的配慮を行わないことを含むあらゆる形態の差別を含む。」って部分ですね。もう一つは「障害者自身の参画」)
 「合理的配慮」を欠くことによる差別って、けっこう難しい概念だと僕は思うのですが、中島さんは
 積極的な措置を講じないことによって、間接的に差別が生じること。あるいは逆にいえば、(ハンディキャップを)埋める行為全体を合理的配慮という。
 というように説明されていたと記憶しています。(中島さんは「ハンディキャップを」という言葉は使われませんでした。)
 中島さんは「合理的配慮ってどういうことかについては、労政審の資料を見てください。具体的に載ってます。」とおっしゃってました。
 労政審(労働政策審議会)の「障害者雇用分科会」の資料ページを見てみましたが、今ひとつよく分かりませんでした。
 そして第27条ではこう書かれています。同じく「川島聡=長瀬修 仮訳(2008年5月30日付)」よりちょっと長いですが全文転載します。
第27条 労働及び雇用
1 締約国は、障害のある人に対し、他の者との平等を基礎として、労働についての権利を認める。
 この権利には、障害のある人にとって開かれ、インクルーシブで、かつ、アクセシブルな労働市場及び労働環境において、障害のある人が自由に選択し又は引き受けた労働を通じて生計を立てる機会についての権利を含む。
 締約国は、特に次のことのための適切な措置(立法措置を含む。)をとることにより、障害のある人(雇用の過程で障害を持つこととなった者を含む。)のために労働についての権利の実現を保障し及び促進する。

(a) あらゆる形態の雇用に係るすべての事項(募集、採用及び雇用の条件、雇用の継続、昇進並びに安全かつ健康的な作業条件を含む。)に関し、障害に基づく差別を禁止すること。
(b) 他の者との平等を基礎として、公正かつ良好な労働条件(平等な機会及び同一価値の労働についての同一報酬を含む。)、安全かつ健康的な作業条件(いやがらせ〔ハラスメント〕からの保護を含む。)及び苦情救済についての障害のある人の権利を保護すること。
(c) 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、職業上の権利及び労働組合の権利を行使することができることを確保すること。
(d) 障害のある人が、一般公衆向けの技術指導及び職業指導に関する計画、職業紹介サービス並びに継続的な職業訓練サービスに効果的にアクセスすることを可能とすること。
(e) 労働市場における障害のある人の雇用機会及び昇進を促進すること。また、障害のある人が職業を求め、それに就き、それを継続し及びそれに復帰する際の支援を促進すること。
(f) 自己雇用〔自営〕の機会、企業家精神〔アントレプレナーシップ〕、協同組合の組織及び自己の事業の開始〔起業〕を促進すること。
(g) 公的部門において障害のある人を雇用すること。
(h) 適切な政策及び措置を通じて、民間部門における障害のある人の雇用を促進すること。これらの政策及び措置には、積極的差別是正措置、奨励措置その他の措置を含めることができる。
(i) 職場において障害のある人に対して合理的配慮が行われることを確保すること。
(j) 障害のある人が開かれた労働市場において職業経験を得ることを促進すること。
(k) 障害のある人の職業リハビリテーション及び専門リハビリテーション、職業維持並びに職場復帰の計画を促進すること。

2 締約国は、障害のある人が奴隷状態又は隷属状態に置かれないこと及び強制的又は義務的労働から他の者との平等を基礎として保護されることを確保する。

 う~ん、これだけ読むだけでも私はもう頭がパンクする!(だけど、つづく)

全国ろうあ者大会in島根報告04_研究分科会「労働」報告02

2010年07月05日 21時11分17秒 | sign language
2.なぜ今「労働」分科会なのか?
 一言でいうと「職場での『合理的配慮』について議論を深める必要がある」ということでした。
 ちょっと話が脱線しますが、全国ろうあ者大会では、毎回大会記念誌とは別に「研究分科会」資料集の冊子が配られます。この小冊子が実は資料的な価値がとても高いのです。
 私はこの小冊子をもらえるだけでも全国ろうあ者大会に参加する価値があると思います。っつうか、あとは式典とアトラクションだもんねぇ~。
 もちろん「ろうあ運動に関する年次報告」という意味じゃ「評議員会資料」が一級資料であることはいうまでもありませんが、あれは一般人は全日ろう連の事務所まで行かないと買えないからねぇ~。(送料負担すれば送ってもらえます。)
 さて、「労働」分科会が久しぶりに設置された背景には、皆さんご存じの「障がい者制度改革推進本部」(内閣府ホームページ参照)の下に設置された「障がい者制度改革推進会議」での議論があります。
 (財)全日本ろうあ連盟からは、久松三二(みつじ)事務局長が参加されています。
 研究分科会資料から転載すれば以下のとおりです。
 近年の不況で聴覚障害者の就労状況は厳しさを増しています。
 一方で、政府は2009年12月8日に障害者権利条約の批准に向けての国内法整備のため、「障がい者制度改革推進本部」を立ち上げました。
 推進本部の下に設置された「障がい者制度改革推進会議」では、障がい当事者が半数以上構成員として参画し、障害者自立支援法・差別禁止法・教育・雇用などの項目を協議しています。
 障害者権利条約では障害者の社会参加のためにその障壁を社会の側から取り除く必要があるとする「合理的配慮」という考え方を明記しています。
 推進会議において、障害者への職場での合理的配慮について議論を深めることを期待しています。

 この障害者権利条約との関連については基調講演で詳しい説明がなされました。とっても良い講演だった(はず)なんですが、残念ながら土曜日早朝から地元を発ち、午前中に一畑電車乗ったり散々観光しまくってから分科会に臨んだ私は、講演のあった午後2時台を「しばしの体力回復(=居眠り)」に費やしてしまいました。トホホ・・私の場合こういう一番大切なところを聞き逃すことってしばしばあって、友達からよくバカにされます。
 そうした大会当日の厳しい現実はあったわけですが、あえてその(眠ってた)私からまとめさせていただければ「障害者権利条約批准のための国内法整備っていうけど、そもそも労働場面における『合理的配慮』ってなんだ?それを国内法に反映させるには具体的にどういう法改正すればいいの?ってことを当事者である聴覚障害者が整理し、国に訴えて行く必要がある。だって聴覚障害者に対する『合理的配慮』って、みんなもまだ頭の中でよく整理できてないよね!」ってことだったと思います。
 資料には以下のように書かれています。
 本研究分科会では、推進会議関係者、当事者、使用者及びコミュニケーション支援者のそれぞれの立場のパネラーが一堂に会し、聴覚障害者が皆とともに能力を発揮して働くにはどのような「合理的配慮」が必要なのか、職場環境の改善のために当事者、使用者、支援者ができることは何か、等を議論します。
 今回は(って前回知らないけど)パネラーもとっても良かったですよ。(つづく)

全国ろうあ者大会in島根報告03_研究分科会「労働」報告01

2010年07月05日 20時31分46秒 | sign language
「全国ろうあ者大会in島根報告03_」なんてタイトル付けてますが、01「やってきました! 第58回全国ろうあ者大会in島根(メイン会場)」を6月5日(土)の夜に書いて(これも実は大会が始まる前にちょっとだけメイン会場に寄った時の写真)、大会から帰ってきた3日後の6月9日(水)に「02_佐賀大会事前PRの携帯ストラップ」しか書いてませんでした。
実は7月10日(土)に地元の手話通訳者の集まりで「ろうあ者大会参加報告」をする約束になっていて、”まずはその原稿を書かねば・・”と焦っていて(といいながら何もやってなかった=ラーメンばっか食ってたんですが)、いよいよあと5日に追い込まれたので必死で資料を読み直しています。
報告書を作るメモ代わりにちょっと書いていきたいと思います。
1.「労働分科会」は数年ぶり
最初に総合司会の全日ろう連太田理事から「労働分科会が設定されるのは4~5年ぶり」との説明があって”え~そうなんだ!”とびっくり。
私は地元大会開催の「下見」を意識して3年前の2007年第55回香川大会から全国ろうあ者大会に参加するようになったのですが、確かに・・
2007年第55回香川大会
 ③【ろうあ運動】
 ①【手話】
 ②【教育】
 ④【障害者自立支援法】
 ⑤【障害者権利条約】
2008年第56回福井大会
 ①【ろうあ運動】
 ③【手話】
 ②【教育】
 ④【通信・放送】
 ⑤【医療】
2009年第57回茨城大会
 ①【ろうあ運動】
 ④【手話】
 ③【教育】
 ②【障害者権利条約】
 ⑤【医療・健康】
2010年第58回島根大会
 ①【ろうあ運動】
 ②【手話】
 ④【教育】
 ③【国際と女性】
 ⑤【労働】
というように【ろうあ運動】【手話】【教育】の3つは継続的に設置されていますが、残り2つは
 ④【障害者自立支援法】→【医療】→【医療・健康】→【国際と女性】
 ⑤【障害者権利条約】→【通信・放送】→【障害者権利条約】→【労働】
と変化して来ています。
ろうあ問題も多様化してて確かに【医療】や【通信・放送】【国際】なんて毎年やるのはシンドイかも。
でも、今回の【労働】分科会はとっても勉強になります。良かったです。

「高度専門領域に対応した手話通訳者養成Ⅱ」 に関するアメリカ視察報告会

2010年07月02日 21時53分21秒 | sign language
今日(7月2日)までの締め切りなんですが、筑波技術大学障害者高等教育研究支援センターT-TAC構築事業における、「高度専門領域に対応した手話通訳者養成Ⅱ」に関するアメリカ視察報告会がありますね。

日時:2010年7月6日(火)19:00~21:00
場所:東京コンファレンススクエアM+(エムプラス)
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル1F


職場にも近いし、行きたいなぁ~と思ったんですが、以前に日本財団のアメリカ視察報告会を拝見した時も、すごいなぁ~すごいなぁ~アメリカの手話通訳養成プログラムはすごいなぁ~と感心するばかりで、ただの手話学習者の自分がこんなスゴイ報告きいても身近な数人に自慢するくらいしか能がないなぁ~と自己嫌悪に陥ったので、今回はパスすることにしました。


塩野谷さんのdeaf-unionより転載させていただきました(って無断ですけど・・)
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【追加情報】
2009年度アメリカ視察報告会および情報交換会プログラム発表

7/1に配信されました、筑波技術大学障害者高等教育研究支援センターT-TAC構築事業における、「高度専門領域に対応した手話通訳者養成Ⅱ」に関するアメリカ視察を報告会のプログラムが決定いたしましたので、追加にてお知らせいたします。

<報告会プログラム>
【視察報告】
・「ノースイースタン大学における手話通訳者の養成」
報告者:木村晴美氏・宮澤典子氏(国立障害者リハビリテーションセンター学院)

・「ロチェスターおよびデンバー地区における手話通訳の養成」
報告者:吉川あゆみ氏(関東聴覚障害学生サポートセンター)
    中永亜貴子氏(群馬大学学生支援課障害学生支援室)

【意見交換会】
ファシリテーター:白澤麻弓(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター)
「日本における高度専門領域に対応した手話通訳者養成について」

つきましては、会場の席(定員30名)に限りがございますので、参加をご希望の方は事前にお申し込みいただきますよう、よろしくお願いいたします。

日時:2010年7月6日(火)19:00~21:00
場所:東京コンファレンススクエアM+(エムプラス)
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル1F

※視察の概要につきましては、アメリカ視察「高度専門領域に対応した手話通訳者養成Ⅱ」概要をご覧下さい。こちらは、お手数ですが下記URLから
ダウンロードしてください。
http://firestorage.jp/download/1b9b082cfefd6ae37fcc7645c61f85e55ffaf0da
※報告会当日に、2009年度アメリカ視察報告書を配付させていただきます。

お申し込み締め切り:2010年7月2日(金)

【事前のお申込先とお問い合わせ先】
ご参加を希望される方のお名前、ご所属をお知らせ下さい。
なお、ご不明な点がございましたら、下記宛ご連絡下さい。

筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 担当:蓮池通子・石野麻衣子
E-mail request[a]pepnet-j.org ([a]を@に変えて送信して下さい)
TEL&FAX:029-858-9438
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発行元:桜井 強・塩野谷富彦
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