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木のつぶやき

主に手話やろう重複の仲間たちのこと、それと新聞記事や本から感じたことを書き込んでいきます。皆様よろしくお願いします。

第43回全国手話通訳問題研究集会in埼玉(その3;第3日目・午前)

2010年08月27日 00時09分02秒 | sign language
第43回全国手話通訳問題研究集会in埼玉、第3日目(最終日)第5講座「コミュニケーション」は、楽しみにしていた水野真木子さんの講演会でした。
水野真木子先生は、名古屋の金城学院大学文学部教授をされています。ブログ「水野真木子の「文化」と「ことば」を語るブログ」も書かれています。
私は先生の著書「通訳のジレンマ」でしか存じ上げなかったのですが、非常にわかりやすいお話で大変勉強になりました。
取りあえず今夜は時間も遅いので当日のパワポを以下に再現しておきたいと思います。(一部、勝手に項番を付けさせていただきました。)
コミュニティ通訳とは
 言語変換だけではない
 通訳者として支援すること

1.今日お話ししたいこと
(1)コミュニティ通訳とは
(2)コミュニティ通訳者の役割
(3)コミュニティ通訳者に必要な能力と資質
(4)コミュニティ通訳者の倫理

2.通訳の種類
(1)会議系通訳
  ①会議通訳(国際会議、政府間交渉、講演)
  ②ビジネス通訳(企業間交渉、契約)
  ③放送通訳
  ④芸能通訳、スポーツ通訳 など
(2)コミュニティー系通訳
  ①司法通訳
  ②医療通訳
  ③行政通訳
  ④学校通訳
  ⑤災害時ボランティア通訳 など

3.音声言語通訳の形態
(1)同時通訳(ブースに入って行う形)
(2)逐次通訳(ダイアログ通訳を含む)
(3)ウィスパリング通訳
(4)要約通訳
(5)電話通訳(役場の窓口のトライフォン、税関、時差のある国など)

4.増加する外国人

5.暮らしの中の外国人

6.通訳の需要におけるシフト
(1)従来・・・会議・ビジネスなど、特定の目的のために来日する外国人のための通訳
    ↓(変化)
(2)近年・・・暮らしの中の外国人のニーズに対応する通訳=コミュニティ通訳

7.コミュニティ通訳の特徴
           -会議通訳と比較して
(1)地域住民を対象にする
(2)力関係に差がある
(3)言葉のレベルが様々(言語の種類を含む)
(4)文化的要素が大きく関わる
(5)基本的人権の保護に直結している
   →「言語権」という概念

8.言語権とは
・1960年代から70年代の公民権運動を通して確立した概念
・ヨーロッパ地方言語・少数言語憲章
 (1992年、欧州評議会)

 当事者たちによって理解されて自由に選ばれる言語による立法・行政・司法の行為、教育、メディアに対する権利を含む(ウィキペディア)

9.言語権と通訳
・通訳・翻訳という形での「言語権」の保障
 →公的制度にかかわる現場での通訳・翻訳サービス
  ・公正な司法へのアクセス
  ・安全な医療へのアクセス
  ・学校教育へのアクセス

10.コミュニティ通訳の分類
・司法通訳(警察・検察・裁判所・拘置所など)
・医療通訳(病院・保健所・薬局など)
・教育通訳(教育支援の一環として)
  +
・行政通訳(役場の相談窓口など)
・災害時ボランティア通訳
・交流イベント通訳

11.コミュニティ通訳の課題と今後の展望
①コミュニティ通訳の質の確保
   ┌ある程度のスクリーニングのシステム
   ┤  手話通訳の認定制度を参考にできないか?
   └定期的かつ系統的なトレーニング
       (ユーザー・トレーニングも含む)
②倫理規程の確立
③公益事業の一環としての認識
④通訳者に対する報酬の確保

12.通訳者の役割モデル
①導管モデル(Conduit)
②文化仲介者(Cultural mediator)
③擁護者(Advocate)
・コミュニケーション促進役
(Communication facilitator)
・介助者(Helper)
 ┌通訳者に徹するのか?
 ┤
 └援助者としても行動するのか?
→矛盾し合う概念「機械的か」「人間的か」
        「介入的か」「介入的でないか」

13.通訳者に必要な能力と資質(1)
①高い語学力
②通訳のスキル
③分野別の知識

 言語能力(手話を含む)があっても、
 通訳スキルと分野別の知識がないと、
 正確な通訳は保障できない。
                通訳の「三位一体」

14.通訳者に必要な能力と資質(2)
④異文化に対する理解

 異文化とは国家間、地域間に限ったものではない。聴覚障害者と健聴者との間にも、一定の「文化差異」は存在する。通訳者にはその橋渡しが求められることがある。
  Bilingual+Bicultural=good interpreter

15.通訳者に必要な能力と資質(3)
⑤バランスの取れた強靱な精神
⑥豊かな人生経験

 司法や医療など、人の生死や不幸に接する機会が多い通訳者の二次受傷(トラウマになる)が問題視されている。通訳者には強い精神力が求められることがある。

   自分自身を助けられないなら、
   他人を助けることはできない

16.倫理原則の主な柱
 ①守秘義務を守る
 ②原発言に忠実になる
 ③公平・中立な立場を取る
 ④文化に対する認識を持つ
 ⑤プロ意識を持つ

 ⑥*アドボケイト(擁護者)としての役割
    医療通訳特有の概念

17.通訳者の守るべきことがら(1)
 ①守秘義務を守る
  △1業務上知りえた秘密を外部に開示してはならない

  △2業務上知りえた秘密を自己の利益のために利用してはいけない

18.通訳者の守るべきことがら(2)
 ②原発言に忠実になる
  △3通訳者は、付け加えたり、省略したり、歪曲したり、編集したりすることなく、元のメッセージを忠実に伝えなければならない

  △4通訳者は元の発言のスタイルにも忠実であることが望ましい

19.通訳者の守るべきことがら(3)
 ③公平・中立な立場を取る
  △5通訳者は、専門職としての役割の範囲を守り、個人的な関与を控えなければならない

  △6通訳者は、中立性を保つよう努め、相談に乗ったり助言したりしてはいけない

  △7通訳者は、個人的偏見や信条を表明することを控えなければならない

20.通訳者の守るべきことがら(4)
 ④文化に対する認識を持つ
  △8通訳者は、文化的状況を考慮しながら、話し手の元のメッセージの内容と精神を伝え、メッセージを正確に訳すよう努めなければならない

  △9通訳者は、言葉だけでなく文化的差異についても、橋渡しをすることが望まれる

21.通訳者の守るべきことがら(5)
 ⑤プロ意識を持つ
  △10通訳者は、自分の能力の限界を認識するとともに、引き受ける業務に対して責任ある態度をもって臨まなければならない

  △11通訳者は、社会の進展に伴う新たな状況に対処できるように、常に研鑽に励まなければならない

22.⑥*アドボカシー(擁護)という概念
・通訳依頼人の健康、福利、あるいは尊厳が危機に晒(さら)されている場合、通訳者は、アドボガシー(擁護的行為)と呼ばれる行動を取ることが正当化される場合もある。
 医療の現場では、健康上の良い結果支援するという意図を伴い、コミュニケーション促進の範囲を超えて、個人のために行われる行為であると理解される。
 擁護は、状況を慎重に思慮深く分析した後に、そして、他のより介入的でない手段によって問題が解決されなかった場合のみ、行われるべきである。
 →「中立性の原則に相反する」という反論
   → 通訳者の役割の定義に大きく関わる
 →司法通訳には100%当てはまらない

23.通訳者のユーザーへの注意点
 ①通訳者を専門職として扱う
 ②事前に、差し支えのない範囲で情報提供をする
 ③通訳を介したコミュニケーションのプロセスについて知っておく
 ④通訳者にとって良い環境を提供する
 ⑤業務終了後のフォローアップ


24.裁判員制度と司法通訳
 ①裁判員制度に伴う通訳の問題
  (1) 書面が事前に渡されないケースが多くなる
  (2) 職業裁判官とは異なり、一般人は通訳者の訳し方から生じる印象に左右されやすいので、ますますレジスター(場面に応じて現れる特徴的な言葉遣い)の正確さが要求される
  (3) 通訳を介した場合、固有名詞が追いつきにくいことや、見る側もたいへん疲れることに配慮する必要がある
  (4) 公判前整理手続きには、非常に高度な通訳技術が必要となる
 ②日本通訳翻訳学会「法廷言語分析チーム」実験
  (1) 模擬裁判員の受ける印象は通訳によって左右される
   例)口汚い罵りの言葉も普通の言葉に訳したら裁判員は「挑発の度合い」を軽く見た
   例)犯罪行為を連想させるような単語(取る→ひったくる)を多く使って訳すと逆に罪を重く見る
  (2) 同じ外国語の証言を異なった口調で通訳
 ①丁寧な口調
 ②ぶっきらぼうな口調   → 印象異なる
 ③言いよどむ

「聞き取り通訳すると難しい文」ってあるのか?

2010年08月25日 21時58分02秒 | sign language
昨日は、久しぶりに元地元手話サークルTへ。8月第4週はテープを聞いての「聞き取り通訳練習」でした。
これがまぁ~エラい難しかった。最初は「音声を吹き込んだカセットテープが聞きづらい」とかいろいろ言い訳してたのですが、何度やっても難しい。どういう訳なんだろう。
最後にろう者のTさんから講評。「みんな日本文に拘りすぎてて、何を言ってるかさっぱりわからない」とのご指摘。まったくそうでしょう。自分で「何が言いたいのかどうもうまくつかめないまま手を動かしている状態」だったから。
活字で読めば何でもない文章なんですが、どうもうまいこと通訳できませんでした。原因は何だったんだろうと考えてみると・・。

(1)教育関係の単語に慣れていなくて聞き取れない。
 例①「文章題の無解答が目立つ」→「文章題」って?→数式でなくて問題が文章で書いてある問題って意味ですよね?一瞬「どういうのだったっけ?」と考えてしまった。
 例②「大学を卒業した新社会人」→「新」って?→新しく会社に入ったばかりの人のことですよね?わかってるんですが「社会」って手が動いてしまって・・・。詰まってしまった。
 例③「ゆとり教育」からの転換→最初にやった人は「豊臣」「豊島区」の「豊」って手話やってくれましたが・・全然意味分からなかった。でもじゃあ自分はどう表現するの?って問われたら・・詰まります。下手すると「暇な教育」に受け止められちゃいますよねぇ~。

(2)言い回しに惑わされて、頭がフリーズ。
 例③「好き、嫌い」しか自分の意見を言えないような人→質問がなくていきなり「好き、嫌い」という文章が耳から入ってくると、ロールシフトが出てこない。
 例④「しかも今年は国会決議に基づく『国民読書年』。→体言止めというか、固有名詞で終わってしまう文章って、”だから何だっていうんだよぉ~?と泣きたくなる。そもそも『国民読書年』って知らなかったし、何の『国会決議』があったかも知らなかったし・・泣く。
 例⑤「2月12日付け本紙『現論』で、興味深い話を紹介している。」→そもそも『現論』って沖縄タイムスの社説なのかな? そのうえ「興味深い話を紹介」って・・・日本語にとらわれてしまって全然ダメでした。

(3)Tさんからも指摘されたんですが、登場人物の関係を瞬時に把握するのが難しい
 例⑥「子どもの遊びの時代的変遷」のパラグラフ→「卒論を読んでて、田中さんは」・・あとから「田中さんは」って出てくるから、卒論を読んでたのが誰か一瞬混乱する。
 例⑦「遊びの中に読書が全く出てこないのに気づいた」→「気づいた」のは田中さんだよなというのは分かるのですが。「出てこない」って誰の話?と思ってしまった。卒論で調べた対象者の遊び経験の中にっていう意味なんですが・・・。
 例⑧「私にとって読書は遊びの筆頭だった」という田中さんと違って、一般に→ここも「田中さん」があとから出てくるから「私にとって」って?と一瞬詰まって、さらに「と違って」でガクッとなって、さらに「一般に」で「一般」ってだれ?と思ってしまった。

(4)長い単語についていけない(正確に記憶できない・再現できない)
 例⑨「沖縄印刷団地協同組合」「文字、活字文化大賞」「沖縄県青少年意見文 小論文コンクール」→最後にこういうの出てくるとホント辛いです。

その例文は以下のとおり
沖縄タイムス(2010年8月20日 09時55分)
[国民読書年]「読む至福(しふく)」を味わおう
http://www.okinawatimes.co.jp/article/20100820_9427/

 本が売れない、新聞が読まれない、といわれて久しい。紙の媒体である本や新聞がケータイなどの電子媒体に押されて苦戦しているのは確かだが、その一方で、文字・活字文化を支える本や新聞の役割を見直そうという動きも広がっている。
 元NHKニュース解説者の池上彰さんは昨年7月、『小学生から「新聞」を読む子は大きく伸びる!』を刊行した。明治大学教授の斉藤孝さんも8月に『新聞で学力を伸ばす』を出版し、新聞の効用を説いている。
 手前みそのようで気が引けるが、二つの著書に共通するのは、「読力」を身につけることの大切さである。
 よく読んで、深く考え、その意味を理解し、論理的にまとめる―それが読解力である。文部科学省の全国学力テストで文章題の無解答が目立つのは、読解力が弱く、問題文の意味が分からないからだ。
 大学を卒業した新社会人の中にも、「好き・嫌い」しか自分の意見を言えないような人がいる。
 新学習指導要領は「ゆとり教育」からの転換と同時に、「言語活動の充実」を前面に打ち出した。小学校は2011年度から、中学校は12年度から全面実施される。
 新しい学習指導要領に新聞の活用明記されたことで、学校現場でのNIE(教育に新聞を)の取り組みにも勢いがでてきた
 しかも今年は国会決議に基づく「国民読書」。この夏休みは子どもたちの読む力、書く力を高めていく絶好の機会である。
 本を読むという体験は、どういう性質の体験なのだろうか。法政大学教授の田中優子さんが、2月12日付本紙現論」で、興味深い話紹介している
 「子供の遊びの時代的変遷というテーマの卒論を読んでいて、田中さんは、遊びの中に読書が全く出てこないのに気づいた
 この学生は大人に対しても、「子どものころ何をして遊んでいたか」というインタビューを試みているが、「本を読んだ」という回答はなかったという。
 「私にとって読書は遊びの筆頭だった」という田中さんと違って、一般に読書は、遊びだとは見られていないようである。
 読書を上から押しつけても、拒否反応を招き、読書嫌いを生むだけだ。
 読書であれ勉強であれ、子どもにとって大切なのは「わくわくする体験」である。
 沖縄印刷団地協同組合などは、今年も「文字・活字文化大賞 沖縄県青少年意見文小論文コンクール」を実施する。文字・活字文化振興法が制定されたことを受けてスタートしたこのコンクールは、今年で5回目を数える。
 印刷業に吹き荒れる不況の風を受けながら、使命感でここまで運営してきたが、「応募作品が少なければ、賞を維持するのは難しい」と同組合は言う。
 文字活字文化の灯をともし続けるための試みが、さまざまな形で、静かに着実に、広がっていくことを期待したい。


第43回全国手話通訳問題研究集会in埼玉(その2;第2日目・午後)

2010年08月23日 21時32分27秒 | sign language
午後は、
■「事例から手話通訳を学ぶ」ということで「手話通訳活動あり方検討委員会」が進行をして「事例討議」を行いました。
いわゆる参加型ということで経験年数別に10数人ずつのグループに分かれて研究誌111号に掲載された事例検討マンガvol.12『家族と通訳者と』を元にグループ討議→まとめ模造紙作成→発表というシビアな分科会でした。

私は夏の集会は”ただ聴いてればいい”と思っていたので、このスケジュールを聞いた時「午後は帰ろうか」と思ったくらいです。
事例「家族と通訳者と」(研究誌111号参照)は、介護認定調査の手話通訳場面の4コママンガです。

議論する視点は、
①「あれ?なぜ?」という疑問点、
②「ハラハラ、ドキドキ」した点、
③「困ったな、どうしたらいい?」という三つ。
④そして①~③に対する解決方法や
⑤理想的な状況を考え、最後に
⑥それぞれの立場の人(ろう者、娘さん、調査員、手話通訳者)の気持ちを考えました。

私は「12年以上」のグループの一つでしたが、皆さんベテランで経験に裏付けられた意見ばかりで大変勉強になりました。
特に私が印象に残っているのは4コマ漫画の実は1コマ目に一番重要な問題があったという指摘でした。
通訳現場における一番最初の読み取り表現が安易な(配慮の足らない・言葉足らずな・ろう者の思いを十分にくみ取れていない・介護認定という場の空気の読めていない)日本語であったために、関係者(聴者)の不信を招いてしまったというところに一番の原因があったとの指摘は、とても肝に銘じるべき心構えを教えていただいたと感じました。
16時からはグループ別の発表がありました。
[1] 0~3年、4~7年
[2] 4~7年
[3] 8~11年;栃木・神石(かみいし)さん
[4] 12年~×7G
[5] ろう者グループ
どのグループの発表も充実した内容で、驚きました。参加した皆さんの熱意が伝わって来ました。久しぶりの夏集会でしたが、「夏もなかなかやるなぁ~」と思いました。
■まとめ
最後に「あり方検討委員会」の岡野さんから以下のまとめがありました。
;各グループ楽しそうにやっていただけた。
 気づかない視点もあって、事例の勉強はすごいなぁ~と思いました。
;研究誌では紙面の都合もありポイントを絞って掲載している。今日はこんなにたくさんの「気づき」があった。
 通訳者の接点は「点」だけど、ろう者を取り巻く日常の人間関係「線・面」を尊重することが大切。
;「直感」を大事にして討議してもらった。そして「直感」で捉えたモノを理詰め・まとめ・理論付けする練習も加味した。
 自分が気づかない発見がある。また、人の意見を聞いて考えをまとめる練習。経験を伝える訓練も大切だ。
;通訳者それぞれのいろいろな「気持ちの持ち方」を共感し合う。
 「直感」を理論付けし、報告していく。

最後に彼女はこう問いかけました。
■「答え」を求める通訳者が増えている。
 確かに、現場の限られた時間の中で一定の判断(「答え」)を出し、通訳という仕事に立ち向かっていかなければならないけれど、「迷い」や「疑問」を一つ一つ振り返り、新たな発見、問題意識の共有につなげていって欲しい。
う~ん、さすが「あり検」ですねぇ~深まっていますね。たいへん勉強になりました。ありがとうございました。

「障がい者制度改革推進会議」意見書に中教審は・・・

2010年08月17日 22時39分43秒 | sign language
「中教審(ちゅうきょうしん)」というと私にはネガティブな印象しかないのですが、読売新聞にその中教審が内閣府の「障がい者制度改革推進本部」の意見書に「大きな反発」とのこと。またか・・という感じ。「日本的なインクルーシブ教育」って、常套句だよなぁ~。「日本的」っていうのは「自分たちに都合の良い日本的」ということに過ぎないように思う。
 それにしても茨城大学ってどんな大学なんだろう。つい先日も茨城大の西澤弘行先生の「ことばの仕組み」についての講演会を聴く機会があった。「茨城大学の荒川智教授(障害児教育)」の発言が記載されているけれど、この方のお話も是非うかがってみたい。
新たな障害児教育制度
「差別なき教育」全体像を示せ


【要約】
・中教審は先月、今後の障害児教育制度の検討を始めた
・就学先の選択権を巡り、「現状維持」の声も根強い
・障害児が適応できる教育システムの議論が必要だ

 内閣府の「障がい者制度改革推進会議」がとりまとめた意見書を受け、文部科学省の中央教育審議会(中教審)は7月、今後の障害児教育に関する検討を開始した。新たな障害者施策を具体化する最初の取り組みだが、差別のない障害児教育のあるべき姿を巡り、推進会議と文科省が対立する異例の事態となっている。
 現在、義務教育を受ける、障害を持つ子ども約23万人のうち、約17万人は小中学校に、約6万人が障害児教育専門の特別支援学校に通う。就学先を決定するのは市区町村の教育委員会で、障害児は特別支援学校が原則だが、小中学校を希望すれば、認められるケースが多い。
 推進会議は今年6月、政府が批准を目指す、国連・障害者権利条約の理念に沿い、「すべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍する」とする、”インクルーシブ教育”の推進を打ち出した。さらに、本人や保護者に就学先の選択権を与え、希望する場合には、特別支援学校などへの就学も可能とする改革案も示した。
 しかし、この方針転換に障害児教育を進めてきた現場の教育関係者から、大きな反発が起きた。7月に開かれた推進会議のヒアリングでは、原則通常学級とする案に対し、全国特別支援学校長会の代表らが、「特別支援教育は、インクルーシブ教育システムと相反しない」と論陣を張り、教育委員会が就学先を決める仕組みの継続を訴えた。文科省も中教審初等中等教育分科会の特別委員会に、特別支援学校、学級を中心とした特別支援教育を日本的なインクルーシブ教育システムにどう位置づけるのかを論点として提出、現行制度を否定する推進会議の方針とは距離を置く。
 対立の根底には、現状認識の違いがある。我が国で、特別支援教育が始まったのは2007年度。徐々に増えつつあった、小中学校の通常学級で学ぶ障害児への教育指導を強化するのが狙いだった。しかし、通常学級への移行は進まず、その後も特別支援学校、学級の在学者数は増えている。障害児教育の知識を持つ教員が十分に配置されていない通常学級も目立ち、不安を持つ保護者が多いためだ。「いまの通常学級では、子どもたちが、持っている力を発揮できない。理念ばかり先走っても」といった現場の懸念も強い。
 一方、強い入学希望があるのに、障害児を受け入れない小中学校があるのも事実だ・茨城大学の荒川智教授(障害児教育)は「本人や保護者が就学先を決めるという推進会議の考え方は妥当」と評価する。     
 いじめ、不登校などの問題を抱える通常学級も多く、障害児が適応できる環境を築くのは容易ではない。中教審は年内に結論をまとめるが、就学先という入り口論にとどまらず、教育システム全体を見渡した議論が必要だ。(社会保障部・梅崎正直)
(2010.8.14.土 読売新聞・朝刊より)

iPhone 4 - FaceTime のコマーシャルに手話!

2010年08月15日 23時07分43秒 | sign language
一緒に手話の勉強会やってるSさんが緊急メール(?)で教えてくれました。
iPhone4のコマーシャル見ましたか?って。
ウェディングドレスの試着編とバースディのお祝い編は見たことがあったのですが、この「恋人編」は知りませんでした。
素敵なCMですよねぇ~、感動です。


顔をすっかり忘れてしまったんですが、以前地元に「デフスタディーズ」をテーマに講演に来てもらったイギリスに手話留学したT.S.さん(聴者)を思い出してしまった。(女性の方です、東洋人的な美人ですよねぇ!)
僕は初代iphone持ちで、ホワイトの4が出たら買い換えたいと思ってじっと我慢して待ってるのですが、このCM見たらなんだかブラックでもいいから早く欲しいなぁ~と思ってしまいました。
※なお、このgooブログ内で見るより、画面右下のYouTubeのマークをクリックしてYouTubeのウェブサイトに飛んでから見た方が回線が安定しててストレスなく見られるようです。

【日本版「恋人」追記】
なんと、私が貼り付けたのはアメリカ版だったようです。
日本ではこちらのCMが流れているようです。


政府イベント映像にワイプ手話通訳?

2010年08月15日 21時01分01秒 | sign language
テレビのニュースを見ていたらお隣り韓国の政府イベント(「光復節」(独立記念日)の政府記念式典)の舞台脇にある巨大なモニター映像画面にワイプと思われる丸い囲みが右下に。
政府イベントにワイプで手話通訳がついているのでしょうか?驚きです。日本で言ったら政府主催の戦没者追悼式に会場モニターがついてそこにワイプで手話通訳がついてるというような状況でしょうか?
韓国では政府イベントに手話通訳がついているのが普通なんでしょうか?そういえばアメリカのオバマ大統領の就任式典にも手話通訳がついていて感動したことを思い出しました。
日本でも例えば民主党の代表選挙に手話通訳を付けるっていうことにはならないんでしょうかねぇ~。そういうのが政権交代というものだと思います。

手話で語る戦時体験2010

2010年08月05日 22時28分41秒 | sign language
久しぶりに「たましろの郷後援会」のイベントに参加してきました。(東京聴覚障害者自立支援センターとの共催)
もう何回目になるのでしょうか「戦時体験を語る会」。
今回は最初に伊藤政雄さんの「戦時中の聾唖者の日常」があり、2番目には年配ろう者3名へのインタビュー企画。「怖かったことは?」「食べ物の心配は?」などの質問にそれぞれが答えてくれました。
そして今回の目玉企画は「手話劇 手の器よ、花ひらく~アリランの蛍~」でした。
しょっぱな、いきなり仮面を付けた庄崎隆志さんのアリラン独唱。ぶっ飛びました。鍛えられた肉体のしなやかな躍動感に「音楽(歌)」を感じました。
ストーリーはちょっと難しかったです。ろう学校の演劇練習で日本語の台本と演技の一部であるセリフとしての手話の間でとまどう場面から始まり、やがて戦争に巻き込まれ、主人公の男子二人が特攻隊として招集される。でも一人(慮)は在日朝鮮人であり、自分が特攻隊として死ぬ時は在日としての苦しみから解き放たれる時だと語る。エンジンの不調で日本人の増田は生き残るが、慮は散る。最後に『いのちの輝き』を歌う。(これじゃちっともストーリーがわかりませんね。スミマセン。チラシ裏面の「あらすじ」をご覧ください。)
最後、ゼロ戦でアメリカ艦船に突っ込んでいく庄崎さんの迫真の演技に感動しました!
日本人役の野崎誠さん(「NPO法人しゅわえもん」で活躍中!)も、二人の教え子役の南雲麻衣さんも素敵な演技でした。

帰り際に友人から半ば強制的に買わされたのがこれ・・・
「手話で語る戦時体験2(2006年収録)」DVD、本日発売!
売り上げは、たましろの郷後援会と自立支援センターへ寄付されます。
皆さんも是非買ってくださいねぇ~。お申し込みは「東京聴覚障害者自立支援センター」まで。

映像作家 今村彩子さん講演会がありました。

2010年08月03日 22時43分51秒 | sign language
映像作家 今村彩子さんの講演会がありました。
テーマは「映画で共に生きる社会を」。
初めてお会いする今村さんは、見た目とってもチャーミングだし、手話もはっきり勢いがあって、ぼーっと見ていると「かわいいのに、すごいなぁ~」で終わっちゃいそうな方でした。
でも、その映像作品を振り返って見ると、彼女の中に「映像で伝えたい!」っていう熱い思いが流れていて、それが講演タイトルにもなってる「映画で共に生きる社会を」なんだなって感じました。
最初の作品が彼女自身がアメリカの大学(カリフォルニア州立大学ノースリッジ校)への留学後に帰国して感じた、アメリカに比べてどうしようもなく遅れている日本の大学のろう学生に対する情報保障(学ぶ権利)を何とかしたいって思いで作った「ユニバーシティライフ」
二番目の作品が、大学ではぼちぼち手話通訳の派遣体制も整い始めて来たけど、「就職」したらどうなの? 会社に入って改めてコミュニケーションの壁にぶつかって、体調を崩す仲間の様子を見聞きして「会社の上司や同僚に見てもらい、皆が働きやすい職場について話し合うきっかけとなれば」と制作した「サラリーマンライフ」
そして今制作中の第三作目が「珈琲とエンピツ」。写真はその制作資金作りのために企画されたTシャツです。
この映画の主人公「太田さん」に出会って彼女は「自分の考えが変わった」というのです。「それは、まるで英語のうまくない日本人と日本語が分からないアメリカ人がお互いに伝えようと頑張ってコミュニケーションをとっているようだった。対等に話している」様子を撮影しながら、彼女も「日本語だとか手話だとかコミュニケーションの方法なんて関係ないんだ、対等に伝え合おうという生き方が素晴らしい」と感じるようになったとのこと。彼女自身それまで、手話の分からない人とのコミュニケーションにはちょっと腰が引けてたのが、「太田さん」と出会って少しずつ積極的に話せるようになってきたとのこと。
「言葉や文化の異なる人同士がつながる素晴らしさを伝えたい」という今回の映画のメッセージは、私がいうのも偉そうですが、彼女自身の成長の記録みたいな印象を受けました。
「だから私はドキュメンタリー映画が好きなんだ」そんな彼女の「好きなんだパワー」をもらえたような素敵な講演会でした。
映像作家 今村彩子さんを応援しようという方は是非こちらのサイトからTシャツやDVD買ったり、500円カンパしたりして上げてください。私も友達にお金借りてまでしてDVD「サラリーマンライフ」を買って、500円カンパもしてきましたよ~!

ロバート先生のアメリカ手話(DVD)

2010年07月30日 21時52分53秒 | sign language
ロバート先生のアメリカ手話 [DVD]

株式会社 浪

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日本手話さえ満足に話せんのにASLなんて・・とずっと敬遠してきたのですが、来週、今村彩子さんの講演会を聞くんであれこれ見てたら今村さんが企画・監督やってるASLのDVDを知ってしまいました。こりゃいよいよASLやるっきゃないなと早速Amazonで注文しました。
なかなか面白いです。これからぼちぼち勉強したいと思います。

捜査段階における障害者の権利保障は進んでいるか?

2010年07月30日 00時01分40秒 | sign language
私の故郷、愛知県三河地方でこんな事件が発生しました。
ちょうど今、鎌田慧さんの「狭山事件の真実」を読んでいるところで、捜査機関の「弱者の権利」についての意識って変わってないのでは・・と思ってしまいました。

asahi.comより
手話通訳者同行せず聴覚障害者宅を捜索 愛知県警
2010年7月27日20時31分

 愛知県警が今年5月、覚せい剤の密売事件の捜査で、聴覚障害者の夫婦宅に手話通訳者を同行させず、筆談だけで3時間半、家宅捜索をした。尿検査の結果は陰性で、覚せい剤使用の疑いはなかった。刑事訴訟法上、今回の家宅捜索に違法性はないが、健聴者と同等になるよう捜査機関側に「合理的な配慮」を求める国際条約の精神から大きくずれていると、愛知県聴覚障害者協会は27日、県警に改善を申し入れた。

 愛知県三河地方に住む聴覚障害者の夫婦の家に5月、県警の捜査員4人が突然訪れた。夫に対する覚せい剤取締法違反(使用)容疑の捜索令状を提示された。夫は不在で、妻が筆談で捜査員に尋ねた。

 「本当のけいさつ?」
 「われわれはクスリの取り締まり専門の刑事です。旦那(だんな)さんの車がみつばい場所に」
 「手話通訳者来ていただけますか?証拠はあるの」

 妻は筆談で再三、手話通訳者の派遣を求めたが認められなかった。「誤解して伝わったら逮捕されるという不安がずっとありました」
 間もなく帰宅した夫も手話通訳を求めたが、だめだった。注射跡がないか確認され、尿検査も受けた。3時間半、筆談のやりとりが続いた。
 後日、捜査員は「尿検査の結果は陰性で容疑は晴れました」と連絡に来たという。
 自宅のノートには家宅捜索の際、捜査員が書いた文章が残る。ひらがなを多めに使うなど工夫してくれた。だが、妻は「『鑑定』『令状』などの法律用語は文字で書かれても分かりにくい。大事な時には手話通訳を呼んでほしい」
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 刑事訴訟法では、家宅捜索に手話通訳者を同行させる規定はなく、今回の事案は違法とはいえない。司法手続きのうち、公判は裁判員制度の導入で、障害者への「配慮」が進んだといわれる一方、捜査のあり方は変わっていない、と指摘する声もある。
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 「障害者の権利条約」は2006年に国連総会で採択され、現在、80カ国以上が締結(批准)している。日本も、趣旨に賛同して07年に署名したが、国内の立法や対策が不十分なため締結できていない。13条では、健常者と平等に司法手続きを効果的に利用するための配慮や、警察官らを対象にした研修の実施などを求めている。
 米国や英国では、警察官向けの研修が定期的に実施され、捜査機関側が手話通訳や要約筆記など障害の特性に応じた方法で情報提供することが義務づけられている。
 障害者や家族らが委員の過半数を占める政府の「障がい者制度改革推進会議」は先月、改革の方向性をまとめた第1次意見で「国内では、刑訴法が障害者の存在を想定していない」と指摘した。
 それを踏まえ、政府は捜査・裁判で障害の特性に応じた配慮を検討し、2年後をめどに結論を出すことを閣議決定した。
 委員の大谷恭子弁護士は今回の捜索について「半強制的に捜査協力させているのが驚きだ。手話通訳者を呼ぶべきだった。障害者の司法手続きの利用を法律に明記する必要がある。公判では障害者の権利保障が進んでいるが捜査段階は不十分」と指摘する。
 愛知県聴覚障害者協会は、捜索の経緯を機関紙で取り上げ、全日本ろうあ連盟(本部・東京)に報告し、見直し議論につなげたいとしている。(志村英司)
【写真-略】
捜査員が、夫に容疑がかかった経緯について筆談したノート
asahi.com 2010年7月27日20時31分