かんじゃまのつぶやき(海の見えるチベットより)

日本一細長い四国佐田岬半島での慣れない田舎暮らしの日常や風景、
  そして感じたこと、思い出などをひとコマひとコマ

僕のTシャツ(6:キリマンジャロ後編)

2007-11-08 13:08:39 | 旅行

ひたすらじっと眠ったおかげで、夜のうちにかなり汗をかき、登山開始2日目の朝目覚めると、呼吸も楽になっており、なんとか回復の兆しが見えてきた。それでも、お腹はまだグリグリいっており調子が悪く軟便だった。朝食は出されたものは全部食べることができ、昨夜のしんどさに比べると格段の差だと感じた。そして2日目も天気は良く、“ポレポレ”と出発する。歩き始めてしばらくすると、やがて樹林帯を抜け急に視界がひろがり、目指すキリマンジャロの頂上付近も見えてきた。

私は、登山経験豊富なツアー・リーダーのアドバイスを忠実に守り、できるだけ体力を消耗しないように努め、ゆっくりゆっくりマイペースで足を進めた。写真を撮るのも体力を消耗するから、できるだけ写真は下山の時に撮りなさい、という忠告も守った。そして、2日目の宿泊地ホロンボハット(3,720m)に到着した。昨日に比べると、疲労感はなく、風邪もほとんど良くなった。また、頭痛も吐き気もなく、高山病の兆候はない。ただし、お腹は相変わらず冷たく、まだグリグリいっている。そのため、ちょくちょくトイレに駆け込む。山小屋だというのに、トイレは水洗だった。ところがこのトイレ、間欠的に水が“ゴボゴボ”っと、下から湧いてくるという仕掛けのもので、下手をするとパンツ・ズボンが濡れてしまう。「来るぞ、来るぞ」という感じで水の音が大きくなり始めるので、そのタイミングを見計らって、少し腰を上げると何とか水難を防ぐことができる。 

ホロンボハットでは高度順応のため、2日間滞在し、近くのマウェンジ峰方面、標高4,300m付近までトレッキングをしたりして身体を慣らす。聞けば、このプラス1日の滞在が、高山病対策にかなり有効だとのことである。トレッキングの後は、ロッジ周辺でのんびり過ごす。欧米人らしきお兄さんたちは、ビールを平気でラッパ飲みしている。私もビールは好きなのだが、この登山開始から、アルコールは摂らないようにした。身体に負担がかかるといけないと思ったからだ。ツアー・リーダーは、走ってはいけない、走ると息切れして、それが後でダメージになるから、というのでこれも忠実に守った。

そして、4日目登山再開だ。砂礫帯をゆっくりゆっくり登っていく。乾燥しているため、土ぼこりがすごく、靴は白っぽくなってきた。時々強い風が吹く。こうして、最後の山小屋キボハット(4,703m)に到着する。これまでの自己最高点到達だが、幸い頭痛も吐き気もなく、安心した。 

小屋のベッドは2段で、少し体調を落としているメンバーを下段にするということで、私は上段が割り当てられた。一人分のスペースがきちんと確保できるので、日本の山小屋のギュウギュウ雑魚寝状態より、格段にましである。しかし、この高度だとベッド上段への上り下りがかなり億劫に感じる。ゆっくりゆっくり身体を動かす。さらに、トイレは小屋の外にあるので、これまた、ゆっくりゆっくり歩かないとすぐに息切れしそうになる。お腹の調子がまだ本調子ではないので、回数も他の方より多くなる。さすがにもう、高所障害が出ているのだと感じた。そして、グループのうち二人の体調が悪化してきたようで、リーダーが彼らをガモウバッグに入れたりして、対処していた。ガモウバッグというのは、寝袋より大きめの円筒状の袋で、人力でポンプを踏み、袋の中の酸素分圧をあげて、平地に近い状態にする装置で、高所障害の一時的な改善を図るものである。しかし、改善が見られないようで、この後二人は今朝出発した山小屋まで下りることになった。夕方から、霰のような雪がちらちら舞い始めた。赤道直下とはいえ、やはり高度が上がると気温もぐんと下がってきた。いよいよ明日は頂上だ。 

 

4時間程度仮眠したあと、お茶とビスケットで軽く腹ごしらえをして、登山5日目夜中1時に山小屋を出発して、暗い中ヘッドランプの明かりを頼りに頂上を目指した。山は昼間だと天候が安定しないし、暑くなるので、夜中に登頂を目指すのだという。歩き始めてしばらくすると、しだいに急な坂になり、火山礫や砂のガレ地のジグザグ道になってきた。寒くて、鼻水が出る。そのため、鼻だけでは呼吸ができなくなり、喉がカラカラになる。水分が欲しい!しんどい。標高5,000m付近を過ぎた頃から、さらにしんどくなり、呼吸が速くなり、時々「キーン」というような感じで頭が鳴る。10mほど進んでは立ち止まり、肩で息をするという感じになって、ますます呼吸が苦しい。それでも吐き気はなかった。しだいに頂上が近づいてくると、先に上った人たちの中には、身体を抱きかかえられながら、フラフラ状態で下りてくる人もいる。そんな光景をみて緊張しながら、自分はなんとか持ちそうだとゆっくりゆっくり頂上を目指す。

しだいに岩場の陰に雪が多くなってきていよいよ頂上が近いことを実感し、ついに明け方、火口ふちの頂上ギルマンズポイント(5,682m)まで登りきることができた。 歩く速度の速い人たちは、もう既に最高点ウフルピーク(5,896m)を目指していた。富士山でいえば、神社のある所と真の最高点剣が峰といったところだろうか。私は、ちょっぴり残念ではあったが、頂上付近の氷河も見ることができたし(この氷河、一説には2020年までには完全に消失するという話もある)、時間的にも体力的にもほとんど余力はなく、ギルマンズポイントまで登れたことで大満足だった。グループの方たちに迷惑をかけないように、登れるところまで行ければいいや、とずっと思っていたから。

ところで、私は以前からエベレストなどに登頂した登山家は、なぜすぐに下山するのだろう。もっと頂上にいて、風景を楽しんだり、達成感に浸ったりすればいいのに、もったいないなあ、と思っていた。ところが、自分で高所に来てわかった。寒いのだ。短時間で下りないと、どんどん体力が消耗しそうだった。 

同じ標高でも、上りと下りではしんどさが全然違った。頂上から下りて、再び今朝の出発地点まで戻った時そう感じた。こうして、下山時はホロンボハットに1泊して、翌日アルーシャの町まで下りた。そしてさらに翌日、晴れやかな気持ちでンゴロンゴロ国立公園でのサファリを楽しんだ。

今回のTシャツは、登頂を記念して買ったもので、裏には「Gilmans Point(5685 meters)」とプリントされている(なぜかガイドブックなどと3mの差がある)。材質もデザインも安っぽいけれど、私にとって思い出深いTシャツです。

 

 ≪蛇足≫本日のブログが100回記念となりました。 ご訪問ありがとうございます。



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