担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

<読書感想文1002>逆説論理学

2010-06-16 15:14:33 | 
野崎昭弘,逆説論理学,中公新書593,1980.


実は同じ著者の「数学的センス」の方を先に読んだのだが,感想文はこちらを先に書いておく。

逆説とはいわゆるパラドックスのことである。
パラドックスの命とは,「えっ,そんなはずはないのに」とつい反応してしまうような意外性であろう。
そして,何がおかしいのか容易に反駁できない(すぐに見抜けない)ものが上質なパラドックスであろう。
ただし,常識に反するように思える結論であっても,誤った推論によるものではなく,正しい推論に基づいているならば受け入れざるを得ないわけで,この本で取り上げられているものも,「正しいようで実は間違っている議論」と「結論を受け入れがたいが正しい推論に基づいた議論」の二種類が紹介されている。

僕も知っているような有名なパラドックスをはじめ,聞いたことがないものまで多種多様なパラドックスが収録されているので,一家に一冊あると重宝するかもしれない(?)。
ただしこの本の大きな特徴は,パラドックスの蒐集のみに終始するのではなく,それらに対して実に的確かつ明快な解説がつけられているところである。本に収録された題材の取捨選択のみならず,解説の語り口から著者の人柄が偲ばれる。文章はユーモアに溢れた筆致で書かれており,実に楽しく,そして平易に読み進めることができる。そういう意味で僕はこれらは名文だと思う。
ところどころにいろいろな人の警句を引用してあるのも,強く印象に残る言葉が多く,読んでいて面白い。

中にはなかなか難しいパラドックスも紹介されている。
僕にはルイス・キャロルの逆説とミニアックの解説を読んでもいまいち理解できた気がしなかった。それは自分でそれらの逆説を分析していないせいである。

また,V章に追補された「新編・天国への道」という数ページの記事には,超・難問題が載っており,これにまだ挑戦していないので,ここの解説はまだ読んではいない。
しばらく経ってギブアップしたら読もうと思う。

付録に「マイナスかけるマイナスはなぜプラスになるか」という一文はあるが,これは負の数を習いたての中学生や,彼らに教える立場の教師にはぜひとも読んでもらいたいものである。
これは昔から有名なパラドックスなのだ,ということを知るだけでもなんとなく気が楽になるではないか。
そしてこのことを説明するのにいろいろな立場があることもこの一文で知ることができる。
幾通りかの説明の仕方をまとめてあるのは大変ありがたいことである。
そして,これは副産物であるが,この一文を読むと,僕の教師としての最近の教え方のスタイルについていろいろ反省しなければいけないことに気づかされた。

多くの人に薦めたい良書のひとつである。
コメント
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