キツネマーガレット ワイルドBL出版このアイテムの詳細を見る |
友情も、信じていたい。でも、そこに疑心やねたみや嫉妬心が入り込む時、獏たちは、僕たちはいつまでお互いを信じることができるのだろうか。
オーストラリアの自然は厳しい。自然発火による山火事が起こるのも珍しくない。私達の住んでいる大陸とは、大分変った形の植物もたくさん生えている。過酷な場所に生えている植物たちも、心得たもので、山火事がきっかけで種子が発芽するものが存在する。逆にいえば、火事が起こって種子が焦げない限り、発芽しないのだ。これは、絵本には関係のないこと。だけれど、山火事のことを知ってほしかった。
焼けたばかりの森から、カササギをくわえた犬が逃げのびて走ってきた。カササギは羽を火傷していた。やけっぱちになるカササギは、犬に助けられたことがよけいなおせっかいのような態度。もう飛べないからね。すると、犬も行った。僕だって片方の目が見えないんだ。
その日から、カササギは犬の背中に乗って移動した。カササギは、駆ける犬の背中にいると、まるで跳んでいる気分だった。また、自分も、犬の見えない片目の代わりの目になった気分だった。
二人のそうした姿を良く見かけることになった。
そんな二人を、最初から見ていた存在がいた。孤独なキツネであった。二人の間に入り込み、カササギの心に猜疑心を植え付けた。キツネはカササギを背中に乗せて走った。カササギは思った。犬の時より、はるかに速く駆けるキツネの背中の方が、飛んでいるというのにはるかに相応しいことを。彼は、犬を裏切った。キツネは、止まらずに遠くへ、遠くへと駆けていく。そして、カササギをそこに置き去りにした。もう、犬との友情は終わりだと言いたげに。
過酷な環境であった。このままでは、死んでしまうかもしれない。飛べないしね。
カササギは、それでも、犬のいるはるか遠い場所に向かって、力を振り絞って歩きだした。
イグアノドンとちいさなともだち小野 かおる小学館このアイテムの詳細を見る |
最初は、ただの恐竜の絵本だと思っていた。
でも、それは、この世界で初めての歌の物語。
友情の物語。
僕たちの歌う歌の始まりはこんな風だったかもね。
地下深く眠る、巨大恐竜のイグアノドンと、その身体に比べればはるかに小さい翼竜のプテロダクチルス。寄り添うように、化石となって永遠の眠りについている。そんな彼らのことに気付きもしないけれど、地上の人間達は歌を歌い続けている。母親は赤ん坊のために。僕たちも、色々な場面で歌を歌っていたっけ。嬉しい時も、悲しい時も、自分のために、仲間のために。
はるか昔、イグアノドンは、小さな翼竜プテロダクチルス徒であった。彼から見れば、小鳥のように小さい友達だった。でも、プテロダクチルスは、小鳥のようにはきれいで、可愛い声では鳴かなかった。でも、二人には関係のないこと。それは、この世界での歌の始まりなのだから。「ぶきみに きちきちと
歯ぎしりをするだけ、しゃがれ声を出し うなり声を あげるだけ、ほかの うたいかたは 知らなかった。」
でも、仲良しな歌い手と聴き手であった。