新型コロナウイルスに感染した20代男子学生の電子カルテ画像が入院先のつがる総合病院(青森県五所川原市)から外部に流出した問題で、学生の父親=40代=が28日、東奥日報の取材に応じた。父親は、看護師が流出に関わっていた点やその後の対応の遅さから情報管理に対する病院側の意識の甘さを指摘。「病院は信頼される存在でなくてはならない」と再発防止を強く訴えた。
1日の本紙報道でカルテ流出を知ったという父親は、その日の午前中に病院から「カルテが流出したかもしれない」との連絡を受けた。既に入院した学生に無料通信アプリLINEで伝えたところ、本人は冷静に受け止めていたという。父親は「息子は初めての入院。しかも新型コロナへの感染という不安を抱えた直後、まさかの事態が起きた」と振り返る。その後も病院から、内部流出が濃厚なこと、関与した人物をほぼ特定したとの報告を受け、父親は「その時点では病院を信頼していた」と話す。
その信頼に疑問符がついたのは21日。病院を運営する「つがる西北五広域連合」が会見を開き、病院長は連合の調査委員長などの立場で調査結果を報告したが、事前に病院から父親への連絡はなかった。LINEで画像を流出させた看護師が親族にも画像を送っていた事実は報道で知った。
「順番が逆だ」。不信感を募らせた父親は病院に説明を求め、退院した学生と共に24日、病院幹部から報告を受けた。そこで父親が感じたのは「情報漏えいに対する温度差」だった。
今回の流出で、学生や家族が直接非難、中傷を受けることはなかった。だが、会員制交流サイト(SNS)で情報が流出する怖さはマスコミ報道などを通じ知っている。不安は常につきまとった。
父親は「LINEの運営会社に照会するなどして完全にデータを消すべきなのに、その時点で病院は何もしていない。調査も不十分。被害拡大をどう防ぐかの対策もできていない」と指摘する。
病院の姿勢に納得できない父親は同日、連合トップの佐々木孝昌・五所川原市長と面会。謝罪と丁寧な説明を受けた。父親は「市長はしっかり対応してくれた」と話す。
学生と父親は28日、画像を流出させた女性看護師1人から病院内で直接謝罪を受けた。問題発覚から約1カ月。「なぜ対応が遅れたのか」と尋ねた学生に、病院側は「処分が決まってから謝罪しようと思っていた」と答えたという。
事件化することは考えていない父親だが、病院側の姿勢に十分納得したわけではない。「病院関係者は医療のプロであると同時に、情報管理はしっかりしてほしい」
▼調査結果報告し謝罪
新型コロナウイルスに感染した男子学生の電子カルテ画像が流出した問題を受け、28日に会見したつがる西北五広域連合の佐々木孝昌連合長(五所川原市長)は、学生の父親と24日に面会し、内部調査結果を報告、謝罪したことを明らかにした。
最終的に本紙へのデータ流出経緯は「不明」とする調査結果、流出に関与した看護師4人らの処分内容を父親に伝えたところ、「(病院側の)規定通りの処分でいい」「解雇などは望まない」と了承を得た-と説明。「(処分については)しっかりとお話ししたつもり」と述べた。
2020年4月29日12:06配信 東奥日報