★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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街のカラス(11)

2009年09月13日 | 短編小説「街のカラス」
 道師さまの前には、横長の机が置いてあり、会員たちは持っている壷とお布施の入った祝儀袋をその机に並べて置いた。
 「では、ただいまより道師さまが念を送り壷を精錬いたします。」
 とラメの紫服男が言うと、真っ赤な袴姿の道師さまは、先端にガラスのついた棒を両手で握り締め、目を瞑りぶつぶつ呪文のような独り言をはじめた。
 そして突然、
 「ぅ、きゃあああぁぁ・・ぽぽぽ・・」
 と奇声を上げると、両手でもった棒の先端を壷の口を覆っている紙のふたに突き刺した。
 「かぁーーー」
 道師さまは念を送っているらしい。その時、棒の先端のガラスがピカッと光った。
 「フンッ」
 そう言うと、道師さまは棒を生き抜いて、次の壷に突き刺した。
 「かぁーーー」・・「ピカッ」と同じ行程を繰り返し、最後の一個が終わり棒を引き抜くと、その棒をうやうやしく上に掲げ、さらに大きな声で
 「かあああああーーーーー」と叫んで頭の上で振り回した。
 それに伴い、会員たちは手を合わせ頭をたれて、自らの邪気を払ってもらうかのように神妙にしていた。
 「はい、道師さまありがとうございました。これで皆様がお持ちになった気は浄化されました。お帰りの際、スタッフが新しい壷をお渡しいたしますのでお持ちください。この頃は気候がよく、悪い気は薄れておりますので、次回は10日後位で大丈夫かと思います。もちろん個人差がございますので一杯になったな~と思われた方は、お早めにおいでくださいませ。大変お疲れ様でした。」
 ラメの紫服男は、そう言うと後ろに控えているスタッフに目配せし、部屋のドアを開け会員の退出を促した。
合図を受けた女性スタッフは、巫女の格好をしており、退出する会員ひとりひとりに新しい壷の入った風呂敷包みをうやうやしく手渡し、最後の一人が退室するとスタッフ自身も外に出て部屋のドアを閉めた。


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