★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義椀の男(46)

2010年06月20日 | 短編小説「義腕の男」
「どうした?Mr.R。ずいぶんと賑やかな顔だな」
「はい・・・、例のもの入手しました。腕時計に内蔵されており小包で郵送されてきました」
「・・・そうか、内容は確認したのか」
「今、研究所で分析していますが、十中八九間違いないでしょう」
「・・分かった」
 准将はそう言うと、またキーボードを操作し、モニターの画像が消えるのを確認してからケースの蓋を閉めた。
「・・フム・・」
 准将は右手をあごに付け、革張りの椅子の背もたれに巨体を任せ思案しているようだった。
 その時、今度は秘書官から通常の電話のサインが来た。
「ケンジ中尉より電話がかかってきております」
「つないでくれ」
 その返事と同時に壁一面のスクリーンに電源が入ったが、何も映らず声だけが聞こえてきた。
「准将、ケンジ中尉です。作戦は失敗しました。目標と接触しましたが品物の受け渡しに障害が発生し、これ以上の作戦続行は不可能です。今回の任務は残念ながらこれで終了し、撤収許可をお願いします。」
「今、どこにいるのか」
「・・ケベ空港です・・」
「了解した。無事帰還することを祈る。帰着後報告書を提出するように。失敗の責任については別途検討する」
「ありがとうございます。これにて撤収します」
「・・うむ、ご苦労・・」
結局モニターには何も映らないまま、音声は雑音に変った。


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