スピードを落としながら近付いてきた軽トラックの窓が少し開き、暫くして運転手のお兄さんが「乗りますか?」と声をかけてくれました。
豪雨の中でカメラを構えたまま凍り付いていた姿は、声をかけるのも躊躇してしまうほど異様だったのでしょう。
ハッと我に返ったkamokamoは、一目散に軽トラックの助手席側に走りました。
「助かりました、……命が、助かりました」
「どこまで行くの?」
「三輪駅です」(何故か大神神社という言葉が出ませんでした)
「三輪駅まで送りましょか?」
「えっ、本当ですか? ありがとうございます!」
フロントグラスに叩き付ける雨でまともに前方も見えない中、転がっているポリバケツやら倒れたビニールハウスの一部やらを巧みに避けながら、あぜ道を走ります。
「この様子では三輪駅はまた水に浸かるかもしれないなあ」
「えっ、このあたりは丘陵地ではないのですか?」
「いやいや、一番低いよ。三輪駅はこの前も水に浸かったしね」
「電車があるうちに乗った方がいいですね…」
三輪駅で「是非お名前を」と懇願しましたが、お兄さんは「いやいや…」と言いながら去ってしまいました。
kamokamoは深々と礼をして見送りました。
間もなくやって来た電車で雷鳴轟く三輪を後にしました。
乗り継ぎもスムースで、お昼過ぎには何と梅田の街に立っていました。
濡れた服のままではあまりにも寒いので、梅田のデパートで羽織るものを求めました。
何気なく三輪での出来事を話すと、デパートの若い店員さんはそれまでとは別人のような表情と声色で言いました。
「早く家にお帰りなさいということですよ」
えっ……?
(つづく)
内容は全てkamokamoが体験したことで、フィクションではありません。
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