昔、池田勇人という広島県選出の総理大臣(任期1960年7月~1964年11月)がいたが、この人が吉田政権の大蔵大臣だった時に、今度のように米価が高騰した。
その際に国会で野党の追及を受けて発した答えが、かの有名な「貧乏人は麦を食え」というフレーズだったという。
だがこのフレーズは当時の新聞上で記者が上滑りして書いたものらしい。
実際にはもう少し冷静な答弁だった。米価とムギの価格を比較して「米を100とすると麦の価格はその3分の2程度だから、所得に低い家庭では麦の方を選べばよい」という論法だったようだ。
まだ「麦めし」と言って米に何割か混ぜてご飯にするという食べ方が実際にあった時代である(※白米だけより栄養的に良かったという)。
この発言は1950年代の前半のことで、当時の米価の高騰の原因はおそらく朝鮮戦争(1950~1951年)が関わっている。というのもこの時にいわゆる特需景気が日本にもたらされたからだ。
今度の令和米騒動の真因は明確になっていないが、やはり何らかの景気の良さが一因だろう。インバウンド特需説もあるがそれだけではなく、平成6年の夏、特に7月の異常な暑さによって稲の穂が変質を受け、「一等米」が激減したのも背景にあると思う。
「一等米」の供給に不足感が出て、引き合いが強まって値が上がり、一等米以外にも同じような不足感によって買いだめ(買い占め)が起こったのではないか。
江藤農林水産大臣は舌禍によって更迭されたが、後任に就いた小泉進次郎氏の動きは素早い。
江藤前大臣は政府備蓄米を放出するのに高値を付けた業者に売り渡すという「競争入札」を以て行い、かつ、買い入れた分を来年度は納入するやり方だった。これだとJA以外に参加できる業者はいない。
3月に放出した30万トンはほぼ全量をJA(全農)が買い入れたのだが、玄米60キロが2万円を超えていた。ところが政府は同じその60キロを昨年は1万3千円で仕入れていた。差額の約9000円は政府の儲けになる。
9000円が丸々政府の利益になるわけではないが、それにしても政府が国民の窮状を楯に儲けてどうするのだ(※しかも買い入れたJAから卸売業者へなかなか届いていない。精米と運送に手間取っているらしい)。
というわけで、しびれを切らした小泉新農林水産大臣は「随意契約」路線を採用した。これだと政府が契約価格を決められるから、おそらく政府が買い入れた玄米の価格に保管料を上乗せした程度になるから、かなり安くなる。
さらに手間取っているらしい「精米と5キロ入り袋詰め」ができる卸売・小売り業者にも販路を求めたところ、50社ほどの業者が名乗りを上げた。インターネット販売大手の楽天でも扱うというから見ものだ。
何にしても小泉氏は「5キロ(白米)2000円台」を目標にするそうだから、庶民にとっては喜ばしい。
今は令和6年産から5年産(古米)、4年産米(古古米)の契約まで行ったようで、さらに最後の3年産米(古古古米)が10万トンくらいあるらしく、本来なら飼料用向けだったはずだが、主食用に「転用」するようだ。
この「古古古米」はさすがに5キロで1800円とかの値段になる予想だ。
餌料用というのはずばり家畜、とくに養豚向けだろうが、これを含めて、専門家は米に3段階の価格帯が生まれるとしている(税込み)。
①新潟産コシヒカリなどのブランド米で4500円以上
②古米・古古米で3000円台
③古古古米で2000円台
さて、どの米を食べようか。
①から順に不味くなるだろうとは思われるが、米は炊き方、食し方で満足感が違うから、一概に古いコメがまずいとは言えない。
③の米でも、炊き方を工夫し、食べ方でもチャーハンや味付け飯にするならさほど影響はあるまい。
多分この点については、NHKのあさイチでも、料理番組でもわんさか話題になるだろう(※インターネット上ではもっと)。
何にしても「令和の米騒動」の真因が明確になり、騒動が終息するよう願う。