俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

1月17日(木)

2013-01-17 08:56:01 | Weblog
★寒厨卵も餅も白ほのと  正子
寒卵にお正月のお餅、寒中の台所には、優しい白い食べ物がありました。底冷えのする寒厨に、小さなぬくもりを見つけられた明るさ。思い描くと、ほっといたします。 (川名ますみ)

○今日の俳句
富士山と冬夕焼の中に居る/川名ますみ
富士山はいつもしっかりと座っている。さびしさもあるけれど、あたたかさのある冬夕焼けに包まれて過ごすとき、大きく、偉大なものといる安心感がある。(高橋正子)

○葱
★折鶴のごとくに葱の凍てたるよ/加倉井秋を
★葱太る日が高々と駅裏に/高橋信之
★葱剥けばすぐ清冽な一本に/高橋正子

広島の備後地方に育った私は、葱は子どものころ嫌いな野菜であった。父母の世代までは、葱というより根深と呼んでいたような記憶がある。根元に深く土を寄せていた。土から掘り上げて、枯れた葉や薄皮を剥くと、葱の匂いがぷんとして、手に泥がかたまったように黒くつく。一皮むけば、葉葱ながらまっ白い茎が現れた。すき焼きにもこの葉葱が使われる。みそ汁や、ただ葱を油揚げや豆腐と炊いたような惣菜にも。霜の朝、家の前の畑に行くと、加倉井秋をの句のように、葱の葉は、くの字に折れている。折鶴を連想させるのも無理もない。根の白い部分を食べるものを、「東京葱」と呼んでいたが、田舎では見たことはなかった。今は横浜に住んでいるので、もっぱらこの白い根を食べるものを使っている。葉葱の代表の九条葱も売られているが、これは、めったに買わない。小葱と呼ばれる薬味に入れる葱は冷蔵庫に切らすことはなく、この小葱は普段大活躍。厚焼き卵に入れるし、小葱の小口切りにしたものだけをいっぱい入れたみそ汁もたまに作る。これがまた美味なのだ。葱は、地方によってさまざまの品種があるようだ。焼き鳥の肉の間に挟んだ焼いた葱もおいしい。焼いたり、煮たり、刻んだままで、嫌いだった葱も好きとは言わないがよく食べている。


○寒林

[寒林/横浜・四季の森公園]          [寒禽/横浜・四季の森公園]

★冬木立いかめしや山のたたずまひ 才磨 
★斧入れて香におどろくや冬木立 蕪村 
★郊外に酒屋の蔵や冬木だち 召波 
★冬木だち月骨髄に入る夜かな 几董 
★冬木立烏くひきるかづらかな 闌更 
★寒林の日すぢ争ふ羽虫かな/杉田久女 
★学園の寒林の中牧師棲む/松本たかし 
★牛乳の噴きこぼれをり冬木立/長谷川櫂 
★野の入日燃えて寒林の道をはる/水原秋桜子

★寒禽となり了んぬる鵙一羽/竹下しづの女
★寒禽の叫び古墳の揺るるほど/大串章
★寒禽の声の飛び交ふ雨の中/片山由美子
★寒禽の声はお隣かも知れぬ/稲畑汀子
★影と来て影一点となる寒禽/豊田都峰  
★寒禽の嘴をひらきて声のなき/長谷川櫂

★寒林を行けばしんしん胸が充つ/高橋正子
★寒禽の止まりし枝の丸見えに/高橋正子


 寒林とは、冬枯れの、寒々とした林。(デジタル大辞泉の解説)

 「寒いですね」というと「寒中だから」という。そう云われれば、冬であり、寒中だから寒さも厳しくて当り前なのでしょう。これで気温が35℃もあったりしたら「どうなってっの」と気候変動を心配しなければなりません、寒くていいのでしょうね。寒林、冬木立が寒に入った状態だそうですが、あえて説明するならば「葉を落とし尽くしてしまった落葉樹の冬の林の蕭条(しょうじょう)したさま」ということになるようです。木だって寒いでしょうから(?)、寒くないように家の中に入れてあげました。すこしでも温かくなるようにというささやかな気持ちなのですが「小さな親切大きなお世話」なのかもしれませんね。やはり、冬木立、冬木群(ふゆこむれ)は自然のままがいいようです。(ブログ「as time goes by」より)

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・芽柳」(横浜・四季の森公園)

コメント (1)
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