俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

3月17日(水)

2010-03-17 11:46:50 | Weblog
曇時々晴
○オンライン版「花冠」5月号を<pdfファイル>に。花冠同人は、原稿ファイルをそのまま見て、各自、自分の原稿の校正を済ます。5日間ほどで校正が終わる。
http://blog.goo.ne.jp/kakan12/

○花冠同人の句にコメントを書く。

まんまるい蕾もろとも花菜漬け/藤田裕子
まんまるい、黄色も少し見える蕾もろとも漬物に付け込むには、心意気がいる。日常生活が身の丈で表現された句。

不揃いの芽を一列にチュウリップ/黒谷光子
チュウリップが一列に芽生え、その芽生えも不揃い。球根の大小もあるだろう、自然に任せれば、芽の出かたもそれぞれ。「一列に」は、花を心待ちに植えた人の気持ちも読める。

水色の空の三月摩天楼/桑本栄太郎
煙るような摩天楼が聳える空は、もはや三月の水色。新鮮で明るい都会の風景ではあるが、「空の三月」は、大きな自然に委ねられるもの。

ブラウス白し三月の風に干され/藤田洋子
三月になると光も風も明るさを増してくる。着るものの色も軽やかな色へ。ブラウスの白が風に初々しい。

セロファンにあふるるミモザの黄をもらう/柳原美知子
ミモザの花は、やさしい黄色。それを、透明なセロファンにあふれるように包んでもらった時の幸福感。

籠の目にきらっと見えて菜花の黄/佃 康水
春の明るい光と風まで感じさせてくれる。

雛わきに蕾を高く桃の枝/小西 宏
雛のわきに飾ってある桃の花は、真っ直ぐな枝に丸く可愛い蕾が付いている。高々と活けられた桃の枝は、健やかである。

姨捨の山は雪解や蕗の薹/小口泰與
姥捨とは、その名も悲しく恐ろしいが、それは昔のこととして、姥捨山も雪が解け、蕗の薹があちこちに出始めた。通り一遍ではない、春の来た喜びがある。

反芻の目つむる牛に風光る/古田敬二
冬が過ぎ、だんだん春になると、光りが強くなる。風がきらりと光るように感じられる。そんな中、牛は日を浴びながら、目をつむり、ゆっくりと反芻している。泰然とした牛と風の鋭い光が好対照。

空席の椅子にたたまれ春ショール/成川寿美代
淡い色目のきれいな、ふんわりとした春のショール。開演前であろうか。ちょっと立った間の椅子にそっと乗せられている。開演を待つ、そわそわと華やいだ雰囲気が伝わる。

芽吹き待つ雑木林の明るさよ/渋谷洋介
雑木林の芽吹きは、想像してもうれしい。芽吹きを待つ林が明るい雰囲気に満たされている。すぐにも、様々な木々が薄緑色に芽吹いてくるだろう。

なつかしく来し方思う涅槃西風/井上治代
陰暦に2月15日ごろ一週間ほど吹く風で、この風が吹くと寒さが戻る。西方浄土からの風とも思われ、この季節の、なにか懐かしさをもっている。来し方を思ってみたりする。

白木蓮咲き初めたれば空広し/小西 宏
白木蓮が咲くと、花を見上げずにはおれない。空は一度に明るさを増す。空の広さを感じると、なお白木蓮が際立つ。

三月と聞けば親しき山の雲/桑本栄太郎
「三月」は、桃や辛夷など木々の花や、草花も咲き始め、雛まつりがある月。山の雲もぽっかりと浮かんで、親しみを覚える。三月は、自然への親しみを覚える初めの月。

青麦の色濃き中の道一本/黒谷光子
青麦が色濃くなり、匂いまでしてきそうな道である。真っ直ぐに青麦の中を通る道であろう。添削は、青麦を貫く「道一本」のイメージをはっきりさせた。

六甲の山路を埋めて芽吹きかな/河野啓一
六甲山系は、神戸・芦屋にかけての東西30キロほどの山の連なりで、阪神に生活する人たちには親しい山。アウトレジャーのメッカでもあるが、植物も多く楽しめる。山路を辿れば、山路を「埋める」ほどの芽吹き。さまざまの色の芽吹きに感動する。

強風のなか子供等の卒業式/村井紀久子
卒業式のころは、寒さが戻って強風に見舞われることがある。穏やかな日ばかりではないが、子どもたちは、元気に学校を巣立ってゆく。前途に幸多かれと願う。
コメント
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