今日はいかにも春らしい、気持ちのいい天気となりました。なので、溜まっていた洗濯物を一気に片付けてから、自宅で工作の仕込み作業をしながら音楽を聴いていました。
いろいろと聴いていたのですが、今日は主にバッハを中心に聴いていました。その中で特に印象に残っているのは

レオニード・コーガン(1924〜1982)とカール・リヒター(1926〜1981)が共演したバッハの《ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ集》です。
バッハの《ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ》は全6曲あり、それぞれ作曲された年代が違うといわれています。特徴的なのは、一般的なバロックのソロ・ソナタというとソロ楽器がメインで活躍してチェンバロは通奏低音並びに伴奏として支える役目に徹するのに対し、このバッハのソナタはヴァイオリンとチェンバロの右手・左手の三声が対等に活躍し、まるでトリオ・ソナタのようになっていることです。
当時としてはかなり斬新な作品であるか故に、一時期は偽作であるとか、バッハの息子たちの作品ではないかと言われたりしていました。しかし現在では、たった2台の楽器でこれだけ緻密なアンサンブルを構築できたのは他ならぬヨハン・ゼバスティアン・バッハ自身であるという説が定着しています。
コーガンとリヒターの共演は20世紀の名手たちによる貴重な録音として、現在でもCDが発売されています。ピリオド楽器での録音が台頭している現在では、ともするとコーガンのモダンヴァイオリンとリヒターのノイペルトチェンバロでの演奏は
「重過ぎる」
「けたたましい」
と批判する向きもありますが、究極まで美しく磨き上げられたコーガンのヴァイオリンと、バッハ研究に生涯を捧げてきたリヒターの演奏は、これはこれで既にひとつのスタイルを築き上げている演奏です。
そんなわけで、今日はバッハの《ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ》の中から第4番ハ短調BWV1017を、レオニード・コーガンとカール・リヒターとの共演でお楽しみいただきたいと思います。ともに20世紀最高の奏者たちによる、正に一期一会のアンサンブルをお楽しみください。