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MFCオーナーのブログ

夜汽車よ!ジョージアへ

2009年10月15日 23時11分15秒 | 音楽ネタ

「夜汽車よ!ジョージアへ」、原題は「Midnight Train To Georgia」、グラディス・ナイト&ザ・ピップスの1973年の全米No.1ヒットである。

この曲を知ったのは中学2年の頃。当時購読していたFMfanに、どこかのFM局が行なった“好きな洋楽曲”のランキングが載っており、カーペンターズ、ビートルズ、オリビア・ニュートン・ジョンらの曲に混じって、「夜汽車よ!ジョージアへ」が15位か16位辺りにランクされていた(ランキングは20位まで載ってた)。まだ洋楽を聴き始めて日の浅いガキではあったが、そんなガキにも、この曲は他の曲と比べて、異質な感じがした。なにしろ、タイトルに“夜汽車”なんて言葉が入っている。演歌或いはフォークのイメージだ。夜汽車というのは、花嫁が嫁いでいく時に乗っていくものであった。どうも、洋楽のイメージとは結びつかない。当時の僕にとって、洋楽とは日本の歌謡曲等よりオシャレでカッコいいものであり(だからと言って、歌謡曲が嫌いだった訳ではない)、サウンドはもちろん、歌詞だって歌謡曲とは違って洗練されているものだったのである。なので、邦題とはいえ、“夜汽車”なんて言葉が使われている事自体、違和感の固まりだった訳だ。ここいらは、なんとなく理解して下さる方もいらっしゃるかと(笑)

とはいえ、当時大人気のカーペンターズやオリビア、或いはBCR、それに加えて既にスタンダード化していたビートルズやS&Gといった、コテコテの洋楽曲に混じってランクされているのである。違和感こそあれど、「夜汽車よ!ジョージアへ」はきっと名曲に違いない、と僕は思った。となると、聴いてみたくなり、FMの番組表をチェックして、「夜汽車よ!ジョージアへ」をエアチェックしたのである。

衝撃だった。いや、良い意味ではなく(笑)

初めて「夜汽車よ!ジョージアへ」を聴いて、僕は唖然とした。想像していたのと、全く違う曲だったからだ。当時の僕の感覚では、ちっともオシャレでもカッコよくもなかった。まず、曲が始まった時、そのもったりとしたテンポに拍子抜けした。イントロのブラス・セクションも、鈍重な感じがした。歌が始まってみると、さらに気が抜けた。女声による主旋律を男声コーラスが追いかける、という構成なのだが、その主旋律もメロディがあるのかないのか、みたいな感じだったし、どれがAメロでどこがサビなのか、もはっきりしなかった。間奏もギターソロもなく、平坦な感じだし。そのくせ、いつの間にかリード・ボーカルは盛り上がってる。なんじゃこれ、なんて思ってるうちに曲は終わってしまい、僕は訳分からなくなってしまった。なんで、こんな曲がカーペンターズやビートルズと肩を並べているのだろう?

ま、簡単に言うなら、「夜汽車よ!ジョージアへ」は、ダサい曲だ、と僕は感じたのである。テンポは遅いし、オシャレでもないし、ドラマチックでもないし、メロディアスでもない。洋楽聴き始めたばかりの中学2年には、ちと分かりにくい曲だった訳だ。で、期待が大きくはずれてがっかりはしたものの、僕はエアチェックした「夜汽車よ!ジョージアへ」を消去せず、その後にキッスやディープ・パープル等の曲を続けて録音し、そのテープを何度となく聴いてた。僕は、テープを再生する時、早送りや巻き戻し、同じ曲の連続再生、といった行為は、ほとんどしなかった。テープの寿命を縮めると聞いていたからだ。なので、テープを再生して聴く時は、少なくとも片面が終わるまでは、ずっと流しっ放しにしていた。つまり、キッスやディープ・パープルその他の曲を聴きながら、必ず「夜汽車よ!ジョージアへ」も聴いていた訳だ。そしたら、ある時変化が訪れた。

早い話、何回か聴いてるうちに、「夜汽車よ!ジョージアへ」が気に入ってきたのである。じっくりと聴いてみると、この曲とても良い曲だ、と思うようになった。平坦な曲と思ったけど、ギターソロがない分、リード・ボーカルとコーラスの掛け合いが楽しい。どちらも、同じ事を延々と繰り返しているのではなく、適当にパターンを変えながら、じわじわと盛り上がっていく。テンポが遅いと感じたけど、慣れると実は心地良い。最後に熱く歌い上げるボーカルも、また素晴らしい。「夜汽車よ!ジョージアへ」は、実はカーペンターズやビートルズと並べても遜色のない名曲だったのだ。この事に気づくのに、何ヶ月かかったか(爆)

思えば、70年代半ば、好きな洋楽曲として、「夜汽車よ!ジョージアへ」に一票を投ずる人が大勢いたのである。15位か16位にランクされるくらいに。なんていい時代だったんだろう(笑)

この曲、タイトルからも察せられるように、都会で夢破れた青年が、故郷のジョージアへ帰ってやり直そう、と決め、ガールフレンドを伴い、ジョージアへ向かう夜汽車に乗る。そのガールフレンドの視点で歌われる歌だ。ジョージアなんて知らないけど、彼の行くところに私も行こう、と決意する彼女が、実に健気だ。見習いなさい(誰に言ってんだ。爆)。

都会で夢破れて故郷に帰る、という内容の歌は、演歌にもよくあるが、大抵の曲は暗く絶望的な雰囲気がある。つーか、日本では、夢に破れたり、或いは恋に破れたりして故郷に帰るのは負け犬であり、一生下を向いて生きていかねばならないものらしい。だから、故郷へ帰る歌は(特に演歌)は、悲壮な雰囲気なのだろう。だけど、この「夜汽車よ!ジョージアへ」は違う。なんだか、故郷へ帰ってからの生活にも、希望を持たせるような、そんな雰囲気だ。底抜けに明るい曲ではないが、じわじわと暖かくなってくるような曲。今なら言える。これは名曲だ。

グラディス・ナイトという人は、10歳くらいの頃からプロ歌手として活動していたらしい。なんと、ピップスとも、その頃からずっと一緒にやってたとか。そして「さよならは悲しい言葉」に続く大ヒットが、この「夜汽車よ!ジョージアへ」だった訳だ。グラディス・ナイト自身は、この曲の青年とガールフレンドと、どちらに自分を重ねながら歌っていたのだろう。

そんな訳で、最初は良いと思わなかったけど、そのうち良さが分かってくる曲もあるという、よくあるお話でした(笑)。オチなくてすまそ(爆)

夜汽車よ!ジョージアへ/グラディス・ナイト&ザ・ピップス

コメント (5)
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