いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

プロゴルファーはプレー中の音をなぜそれほどまで気にするのか。その常識を疑問に思う。

2011年01月15日 00時22分21秒 | 日記

 ゴルフのメジャー第一戦であるマスターズの招待状が、
石川遼や、藤田寛之に届いたというニュースが話題にな
っている。マスターズは4月だから実際のプレーはまだ
先の話だが、シーズンが始まる前に、気になることを書
いておきたい。
それは、ゴルフは、なぜ、あんなに周囲の音を気にす
るのだろうーーということだ。
 
 もう1年以上前になるが、シーズン終盤のトーナメン
トで、石川遼がバンカーショットを打とうとしたとき、
それを、観客の一人が携帯のカメラで撮影した。携帯の
カメラは、盗撮を防ぐため(ということになっている)、
シャッターを押す瞬間、カシャリという音が出るように
なっている。けっこう大きな音だ。
 石川選手は、その音を聞いて、バンカーショットを途
中で中断し、音のした方に向かい、むっとした声で「携
帯の写真、撮らないでくださいね!」と言った。
 いつも穏やかな石川選手がこんな声を出すのかと、び
っくりするぐらい怒った声で、テレビで見ていても、そ
の場が凍りついたのが分かった。
 石川は、この一件で調子を崩し、優勝を逃した。

 これを機に、プロゴルファーたちが「プレー中はお静
かにお願いします」「マナーを守ろう」と訴えるテレビCM
が作られた。このCMは最近までテレビでよく見た。こ
のブログの第一回目「感動は与えるものか?」で取り上
げたゴルフのCMがそれだ。「私たちは感動を与えるプレ
ーをしますので、観客のみなさんはマナーをお守りくだ
さい」というCMだ。

 しかし、なんで、そこまで音を気にするのだろう。
 率直にいって、過剰反応ではないかという気がする。

 プロゴルファーは、一度、東京ドームや甲子園に、プ
ロ野球を見に行ったらどうだろう。
 外野席では、大応援団が陣取り、トランペットを吹き、
太鼓をたたき、打席に入る選手ごとに違う歌を歌う。
 内野席からは、「オガサワラー、打てー」「ラミレスー!」
と大きな声援が飛ぶ。
 プロだけではない。甲子園の高校野球は、アルプスス
タンドを大応援団が埋め尽くして母校を応援し、ブラス
バンドがコンバットマーチやヒット曲をずっと演奏して
いる。ブラバンと応援団にとっては、甲子園は、パフォ
ーマンスの発表の場でもある。
 
 プロ野球でも、高校野球でも、打席に入ったバッター
が、打席をはずし、「ちょっと静かにしてください!」と
怒ったというのは、見たことがない。
 
 ゴルフは球が小さいから、精神集中が必要? いや、
野球なんか、時速150キロで飛んでくる球を、あの細
いバットで打ち返すわけだから、打者はもっとすごい精
神集中が必要なのではないだろうか。

 バレーボールはどうかというと、観客席からは、しょ
っちゅう、「ニッポン!」という掛け声のあと、バレー特
有の「チャチャチャ」という手拍子が出る。
 サーブを打つときなど、会場から大きな声で「そーれ」
という声が起き、選手はその声にあわせてサーブを打っ
ている。サーブを打つ手を止めて「ちょっと静かにして
ください」と大声を出したことは、たぶん、ないだろう。

 サッカーも大声援が沸き起こる。ワールドカップの南
アフリカ大会では、ブブセラという南アの応援道具がう
るさすぎるというので、初めは禁止したらどうかという
声も出たが、そのうち、みんな慣れてしまった。

 陸上競技の走り高跳びは、選手が、わざわざ会場に手
拍子を求めている。大きな手拍子を要求しておいて、跳
躍に失敗したら、選手はちょっとバツの悪そうな顔をし
ている。それがまたいい。

 ゴルフは静かに応援するものということになっている
が、そうやって他のスポーツを見てみると、実はゴルフ
のほうが少数派である。むしろ、ゴルフのほうがおかし
いのではないかという気さえする。
 
 あれだけ大勢の観客を入れておいて、音を立てるなと
いうのは、視線が観客の方を向いていないのではないだ
ろうか。そう。プレーヤーのほうしか向いていない。観
客よりも、プロゴルファーのほうを大切にしているよう
に思える。

 もちろん、プレーを大事にしたいというのは分かる。
しかし、おカネを払って見に来ている観客よりプロゴル
ファーほうを大切にしているように見えるのは、どうし
たって、おかしい。
 選手のほうが観客よりえらそうに見える。
 そんなプロスポーツって、あるだろうか。
 そういうのをプロというのだろうか。