この違和感は、何なのでしょう。
民主党政権に対する違和感です。
2009年の夏、歴史的な政権交代で民主党が登場した日、
多くの国民は、民主党に大きな期待を寄せました。
それは、長い間の自民党政権ではできないような新
鮮なことをしてくれるのではないかという期待です。
それはまた、民主党政権は、弱い人たち、虐げられた人たち、
苦しい立場の人たちのために登場したんだという期待でした。
米軍の普天間基地の「県外移転」は、その最たるものだ
ったでしょう。
いま、野田首相は、何と言っていますか。
野田首相は、
「消費税増税に政治生命を賭ける」
と言うのです。
しかし、2009年の夏、政権交代を実現させて、民主
党政権を誕生させた有権者、国民は、そのとき、
「政治生命を賭けて消費税増税をやってくれ」
と期待して、民主党に投票したのでしょうか。
そんなことは、絶対に、ありません。
日本の財政が厳しい状態なのは、だれでも知っている。
財政再建のためには、増税が必要かもしれないという気
持ちは、たぶん、国民は持っている。
しかし、そんなことのために、国民は民主党を国会に送
り出したのではありません。
増税の前に、もっとやることがある。
弱い立場の人のために、なにかやることがある。
杓子定規な官僚、役人を排し、なにか、暖かい政治をし
てくれるのではないか。
そんなことは、自民党には出来ないだろうけれど、民主
党ならやってくれる。
そう思ったからこそ、国民は、あの夏の日、民主党に投
票したのです。
民主党は、その期待に応えなければならない。
民主党の国会議員、政治家は、その思いに応えなければ
なりません。
それなのに、野田首相は、
「消費税増税に政治生命をかける」
と言う。
違和感の正体は、これです。
民主党は、政権交代を実現させた有権者の期待を、どこ
か根底から裏切ってしまいました。
「消費税増税に政治生命を賭ける」のなら、別に、自民
党の首相でもいいのです。
それなら、安部首相や麻生首相が、やってくれればよか
ったのです。
野田首相は、
「消費税増税に政治生命を賭ける」
と言った瞬間に、
「政権交代を実現した政治家としての政治生命」
を、自ら、断ち切ってしまったのです。
それはもう、皮肉というほか、ありません。
もっといえば、民主党は、
「政権交代を実現した政党としての政治生命」
を終えてしまったのです。
民主党は、一度下野し、顔を洗い、すべてを鍛え直して
出直すしかありません。
しかし、実のところ、現在の日本と日本経済は、そんな
悠長なことを言っている余裕はありません。
私たちは、いったい、何をしているのでしょう。