いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

日本は2期連続マイナス成長?・・・GDP統計は実態にそぐわないのではないでしょうか。

2015年11月16日 14時28分53秒 | 日記


 ロシアで国ぐるみのドーピングが発覚したと思ったら、今度は、
パリで無差別テロが起きました。
 最近は、とんでもない大ニュースが、次々に出てきます。
 しかも、それが、殺伐とした内容のものばかりです。

 日本国内でも、殺人事件、それも、猟奇的な殺人事件が、これ
もまた次々に伝えられるようになりました。

 長い間、報道に携わっていても、大きなニュース、それも、芳
しくないニュースが、こんなに続々と報じられるのは、ちょっと
驚きます。
 当ブログでも、日韓関係の話を書こうとしているのですが、い
ろいろ考えているうちに、次の大ニュースが起きてしまうので、
どうにも、タイミングがつかめません。
 
 なんだか、世界が、あるいは、社会が、荒れてきた感じがしま
す。

 それでも、日々の動きを記録するのが、ジャーナリズムの仕事
です。
 このブログは、大きな会社や組織ではなく、ひとりの個人、ひ
とりのジャーナリストによる記録ですが、日々の出来事を記録す
るというジャーナリズムの本旨に立ち、少しずつでも、日々の出
来事、日々のニュースを書き続けていきたいと思います。
 少々、タイミングがずれることもあるかもしれませんが、ご容
赦ください。

 きょうは、日本の経済成長率の話を取り上げます。
 
 政府(内閣府)は16日、今年2015年7-9月期の国内総
生産(GDP)の速報値を発表しました。
 それによると、物価変動を除いた実質GDPは、前期(4-6
月期)比0・2%減でした。年率換算すれば0・8%減となりま
す。
 マイナス成長です。

 4-6月期のGDPは、やはり、前期比0・2%減でしたから、
これで、日本のGDPは、二期連続のマイナスとなりました。
 
 アメリカでは、GDPが二期連続マイナスになると、その時点
で、「景気後退」と判定されます。
 日本は、それだけでは景気後退とはしません。日本の場合、内
閣府が定期的に景気判定会議というものを開き、GDPや雇用状
況、物価などを勘案して、景気後退かどうか判断することになっ
ています。
 ですから、今回も、これだけでは景気後退とは見ないのですが、
しかし、アメリカでは景気後退と判定されても仕方のない数字に
なったことになります。

 最近の実質GDPの成長率の推移は次のようなものです。
 2015年    数字は前期比
 7-9月  マイナス0・2%
 4-6月  マイナス0・2%
 1―3月  プラス 1・1%
 2014年
 10-12月  プラス 0・3%
 7-9月  マイナス 0・3%

 しかし、GDPがマイナス、しかも、二期連続マイナスという
のは、ちょっと首をかしげます。
 というのも、今年の5月、6月に発表された日本企業の2014
年度決算は、どこも好調でした。好調というより、絶好調といっ
ていいような状況でした。

 いま、ちょうど2015年度上半期の企業決算の発表が終わっ
たところですが、それもまた、どの企業もおおむね好調な決算と
なっていました。

 好調な決算を反映して、東証の株価も、このところ、盛り返し
ています。一時は、ギリシャ危機や、中国経済の失速の影響を受
け、かなり下げていましたが、しかし、なんといっても、肝心要
の日本企業の業績が好調なので、このところ、株価はまた2万円
をうかがう情勢となっています。

 雇用情勢も、いっときの最悪期を脱し、失業率、有効求人倍率
ともに、かなり改善しています。
 就職状況も、どちらかというと、売り手市場とはいわないまで
も、企業をえり好みさえしなければ、だいたい就職できるという
状況になっています。

 この状態を、「景気後退」と呼ぶわけにはいかないと思います。 
 それなのに、GDPが、二期連続でマイナスです。

 ということは、日本のGDP、内閣府が集計・発表するGDP
統計は、実態に合わなくなってきているのではないか。
 そういう疑問が拭えません。

 かつて、1988年、89年のバブルの絶頂期、物価統計、物
価指数がそんなに高くないから、という理由で、政府も日銀も、
バブルの過熱を放置してしまった失敗があります。
 バブルにもかかわらず物価指数が高くなっていない原因は、こ
のころ、物価統計に、不動産価格が入っていなかったことでした。
バブルは不動産価格、土地の値段が高騰したのが、そのシンボル
だったのに、物価統計に、不動産価格が含まれていなかったので
す。そのため、土地の値段が上がっても、統計上、物価は上がっ
ていなかったのです。
物価は上がっていない。
――そのため、政府・日銀の経済政策に、ミスが出ました。景
気を引き締めるのが遅くなったのです。そのため、バブルが余
計に大きくなりました。

いま、GDP統計では、日本経済は二期連続、マイナス成長と
なっています。
本当にそうでしょうか。
GDP統計は、どこか、経済の実態にそぐわなくなっているよ
うに思います。

実際、甘利経済再生相は16日の記者会見で「企業収益は最高
水準にあり、雇用・所得環境の改善も続いている」と話し、景
気後退を否定しました。
 これは、GDP統計がおかしいと、担当大臣が思っているとい
うことでもあります。

 GDPは、一国の経済の最も重要な指標です。
 それは、経済政策にも、大きな影響を与えます。
 この際、GDP統計を総点検する必要があるのではないかと思
います。






行政指導と霞が関・・・BPOはよく批判しました。高市総務相はせっかくワシントンにいたのに。

2015年11月10日 13時29分26秒 | 日記

  NHKのクローズアップ現代「出家詐欺」の、いわゆる過剰
演出について、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検
証委員会が、「重大な放送倫理違反があった」とする厳しい意見書
を出しました。
 今回は、そのことより、むしろ、もうひとつ別の問題のことを
取り上げたいと思います。
 
 出家詐欺の放送が問題になった後、高市早苗総務相がNHKを
厳重注意しました。また、自民党がNHKの幹部を呼んで説明を
求めました。
 BPOは、意見書で、高市総務相と自民党についても、厳しく
批判したのです。

 放送法は、「報道は事実をまげない」と規定しています。
BPOは、高市総務相がNHKを厳重注意したのは、この放送
法を根拠にしていると指摘したうえで、「(報道は事実を曲げな
いという放送法の規定は)放送事業者が自らを律するための倫
理規定であって、政府が、放送法の規定に依拠して、個別番組
の内容に介入することは許されない」としたのです。

簡単にいえば、高市総務相が、個別の番組に口を出したのは、
許されないことだと、断じたわけです。

さらにBPOは、NHKが自主的に再発防止策を検討していた
のに、それにもかかわらず、高市総務相がNHKを厳重注意し
たことを、「放送法が保障する“自律”を侵害する行為だ」とま
で指摘しました。

BPOという放送界の組織が、政府、そして、監督官庁である
総務省に対し、ここまで明快に、厳しく批判するのは、極めて
珍しいことです。
テレビの電波の許認可権は、総務省が握っています。許認可権
を握っている官庁は、極めて強力な監督官庁です。
そういう強力な監督官庁に対し、BPOが厳しく抗議したのは、
ほとんど、快挙といっていいような出来事です。

ちょっと情けなかったのは、これに対する高市総務相の発言で
す。
BPOの意見書が出た11月6日の夜、高市総務相は、報道陣
の質問に答え、
「行政指導は法的拘束力があるわけでもなく、あくまで要請と
いうことであって、それを受けた側の自主性にゆだねるものだ。
行政指導は、行き過ぎだとも、拙速だとも思っていない」
 と述べました。
 
 さあ、この発言が、なんとも情けない。
 行政指導に法的拘束力がないのは、その通りです。しかし、
監督官庁から行政指導を受けると、民間企業は、ほとんど、そ
れを命令のように受けとります。そんなことは、日本では常識
です。
少なくとも、霞が関と民間企業の間では、常識です。
 日本では、戦後長い間、霞が関が「行政指導」という名前で民
間に指示を出し、民間がそれに従う、という格好で、政策運営が
行われてきました。
 行政指導の最大の問題点は、霞が関が、つまり、財務省や経済
産業省、農水省、国土交通省といった役所が、法律とは関係なく、
役所の考えや思惑で、政策運営をしてしまうというところにあり
ます。
 そうなると、政策運営が、法律に基づかず、役所のさじ加減に
よって展開されてしまいます。
 結局のところ、不透明な政策運営がまかりとおり、行政そのも
のが不透明なものになってしまいます。
 日本では、戦後長い間、それが続いてきました。
 霞が関が強い力を持っていたのは、そのためです。
 法律に書いていなくても、役所が思惑と都合で政策を運営する。それが、行政指導でした。
行政指導によって、霞が関が強力な力を持つ。そして、民間は、霞が関に頭が上がらない。
 それが、長い間の日本だったのです。

 それが大きく変わってきたのは、1980年代から始まった「規
制緩和」だったのです。

 もちろん、日本国内で、民間が力をつけ、そういうあいまいな
行政、恣意的な行政に対し、批判が強まったのが大きいのです。
 ただ、それと同時に、日米経済摩擦の中、アメリカから、日本
政府は行政指導によって市場を閉鎖しているとの批判が高まった
ことも、また、大きかったのです。

 高市総務相は、198年代後半、アメリカにいて、ワシントン
でアメリカの議員事務所で働いていました。
 日本のメディアのワシントン支局にも顔を出していたようです。
 ですから、当然、日本のあいまいな政策運営、不透明な行政、
恣意的な行政指導というものを、よく知っているはずです。
 そうでなければ、ワシントンの議員事務所で働いていた意味が
ないでしょう。

 総務省は、テレビ局に対し、電波を出せるかどうかを許認可す
る権限を持っています。テレビ局はみな、総務省から、電波を出
すための「免許」ともらっています。
 免許は、数年ごとに、定期的に更新されます。
 更新時期に、もし万一、総務省から免許がもらえなければ、テ
レビ局は、終わりです。
 官庁として、これほど強力な権限はありません。
 
 その総務省の、しかも、大臣から「行政指導」を受けたら、テ
レビ局は、それを、ほとんど命令と受けとります。
 とてもとても、行政「指導」などとは思いません。
 
 そんなことは、ワシントンにいた高市総務相なら、当然、知っ
ているはずのものです。
 それなのに、本人が「行政指導は法的拘束力あるわけではない」
と言ってはいけません。
 行政指導を受けた側は、ほとんど、法的拘束力があるものと受
け止めるのです。
 それを知らないはずがないでしょう。

 行政指導には法的拘束力がないとか、行政指導はいきすぎでも
拙速でもないとか、そういう言い方は、日本の行政を不透明にし
てしまいます。
 総務省は、郵政省と自治省が合併したものですから、自治省が
管轄していた地方自治体に対しても大きな影響力を持っています。
 地方自治に与える影響は非常に大きいのです。
 そのトップである総務相が、「行政指導は法的拘束力がない」な
どとうそぶいていては、地方自治体もまた、それに見習って、行
政指導を乱発しかねません。
 それがこわいのです。

 高市総務相は、猛反省しないといけません。
 ワシントンで働いていたのなら、なおさらです。







 










 





早すぎるクリスマス・・・実際にその様子を見てきました。店には店の苦しい事情もあるようですが。

2015年11月07日 18時08分18秒 | 日記

 11月の日本のクリスマスが、実際にどうなっているのか、週末に
銀座と有楽町で、いくつかの店を見てきました。

 そっと、写真を撮ってきましたので、ご覧ください。


 もう一枚、別の店です。


 初めの店は、店に入ると、
 Born is the King of Israel
と、荘厳なクリスマスソングが流れていました。

 日本で、しかも、まだ11月初めですからね。
 違和感というより、気恥ずかしい感じがしました。
 クリスマスカードもたくさん売ってありましたが、しかし、いまこの
時期に、クリスマスカードを買って行く人がいるのでしょうか。
 クリスマスツリーだって、そうです。

 別のお店で、親しくなったスタッフに、いろいろ、事情を聞いて
みました。
 まとめてみると、状況は、次のようなものです。
 
 銀座は、引き続き、中国からの観光客であふれています。
 中国人の観光客は、ハロウインには興味を示して、いろいろ買って
くれたそうです。
 子供たちに配るチョコレートや、カボチャの装飾、それに、
仮装用の衣装もあるので、買って帰っても、楽しめる。

 ところが、クリスマスとなると、さすがに、中国人の観光客は、
反応がないのだそうです。
 それはそうでしょうね。
 長い間の共産主義国家で、キリスト教を受け入れる素地がない。
 しかも、中国はもともと儒教の長い歴史があり、いまでも
儒教の影響下にあります。

 そういうお国柄で、クリスマスを祝ったり、クリスマスを楽しもう
という空気が生まれるはずもありません。

 ですから、このお店のスタッフは、
 「ハロウインが終わった後、11月は、何もないので、
とりあえず、クリスマスの飾りをやっていますが、中国の方が
お買いにならないので、店としては苦しいのです」
 
 日本人客も、いまこの時期に、クリスマスの買い物をする人は
少ないでしょう。
 「はい、だから、店としては11月は本当に苦しいのです」

 前回のブログで書いたサンクス・ギビング・デーのことも聞いて
みました。
 「サンクス・ギビング・デーは、日本では、どうにもなりま
せんね。映画会社とか、いろいろ、トライしたこともあったの
ですが、これだけは、日本では、無理です」

 だから、クリスマスへの期待が、余計、大きくなるわけですね。

 11月のクリスマスは、実は、やっている方も、苦しいんだという
ことがよく分かりました。

 前回の記事の追伸ですが、アメリカでは、11月末に、家族が
サンクス・ギビングデーに集まり、みんなで食事をします。
 まさしく、日本のお盆みたいな感じになります。
 ですから、おばあさん、お母さんは、家族に、
 「サンクス・ギビングデーには帰ってくるのよ」
 と電話をかけ、11月は、その準備をします。

 そして、サンクス・ギビングデーが終わると、
 そこから、12月のクリスマスの準備に入るのです。

 アメリカのクリスマスといえば、ニューヨーク・ロックフェラー
センターの巨大なクリスマスツリーが有名です。
 この巨大ツリーの点灯式は、ニューヨークの冬を彩る催しと
なっていて、その日は、大勢の人が、点灯の瞬間を見に集まります。

 この巨大ツリーの点灯式が、12月初めなんですよ。

 本場のクリスマスツリーの点灯式が、やっと、12月初めです。
 日本は、いくらなんでも早すぎるのですが、しかし、店側には店側
の苦しい事情もあるようです。
 でも、やっぱり、早すぎますね。



ハロウイーンとクリスマス・・・いまやすっかり日本の行事ですが、えっ?ということも。

2015年11月04日 15時04分22秒 | 日記


 日韓関係について、書くべきことがいろいろあります。
 しかし、日韓関係のことを書くと、どうしても、重い話になる
ので、いろいろ考えていました。
 このブログの更新が遅くなっているのも、そのためです。
しかし、あんまり更新が遅くなるのも困ったものなので、日韓
関係の前に、少し、軽い話を書いておきます。
 
 まずは、ハロウイーンの話です。

 ハロウイーンは10月31日です。
 この夜、仮装した人が渋谷に集まるのは、いつの間にかおな
じみになりました。といっても、ハロウイーンの夜、渋谷がこ
んなににぎわうようになったのは、この2、3年のことだと思
います。少なくとも、5年ぐらい前には、渋谷もこんなことに
はなっていませんでした。
 渋谷だけではなく、最近は、地方の駅前でも、ハロウイーン
の仮装をするようです。小学校や幼稚園でも、ハロウイーンを
やったりするようです。
しかし、これも、同じように、この2、3年のことです。
5年前には、こんなことやってなかったと思います。
日本では、これで、たぶん、ハロウイーンも定着したのでしょ
う。
ハロウイーンの是非はひとまずおくとして、ひとつだけ、よか
ったと思うことがあります。
それは、日本でも、ハロウイーンの日、10月31日までは、
デパートも商店街も遊園地も駅前広場も、クリスマスの飾りを
しないことです。
このブログでも、2011年に書いたことがありますが、20
11年の10月初め、東京・日本橋の丸善で、クリスマスの飾
りつけをしたのを見ました。10月というと、まだ秋ですし、
日によっては暑い日もあります。暑い日にクリスマスというの
も、どうかと思います。
私が、日本で、一番早いクリスマスを見たのは、もう10年以
上前ですが、伊勢志摩にある遊園地でした。9月の半ばだった
と思いますが、この遊園地でいきなりクリスマスの飾りつけが
始まったのを、テレビで見ました。「世界で一番早いクリスマス」
というキャッチフレーズがついていました。9月というと、ま
だまだ残暑です。半そででしょう。そんな中で、クリスマスと
いうのも、どうかしています。

クリスマスも、早ければいいというものではないでしょう。
正直、9月や10月にクリスマスの飾りというのも、なにやら、
見ているこちらが恥ずかしくなるような感じでした。

ところが、ハロウイーンが出てきて、これが一変しました。
10月は、デパートも商店街も、ハロウイーンにシフトしたの
です。ハロウイーンにシフトしたため、10月にクリスマスの
飾りつけをすることがなくなったのです。
私も、これで、ほっとしました。
9月、10月にクリスマスの飾りを見せられるのは、いくらな
んでも、気はずかしですからね。

しかし、10月31日にハロウイーンが終わると、日本のデパ
ートや商店街、駅前は、一斉に、クリスマスになります。
きょうも、東京・銀座を歩いていると、8丁目にある有名なト
イパーク・博品館は、正面を入った瞬間に、一面、クリスマス
の飾りと、クリスマスの商品になっていました。しかも、クリ
スマスソングも流れていました。きょうは11月4日です。ク
リスマスは12月25日ですから、あとまだほとんど2か月も
あります。その間、ずっとクリスマスかと思うと、少々、戸惑
ってしまいます。しかし、10月からクリスマスをやるよりは、
ずっとましでしょう。

こういうお祭りの本場・アメリカではどうなっているかという
と、もちろん10月31日にはハロウイーンがあります。12
月25日はクリスマスです。
実は、11月下旬、ハロウイーンとクリスマスのちょうど中間
に、アメリカには「サンクス・ギビング・デー」という大きな
祝日があるのです。
もともと、サンクス・ギビング・デーというのは、1620年、
イギリスからメイフラワー号に乗ってボストンに渡ってきた
人々が、冬を迎えて難儀していた。アメリカの北東部の冬は厳
しく、気温は零下10度ぐらいまで下がります。その人たちが
食料もなく、凍えていたところ、地元の先住民の人たち(イン
ディアンです)が、それを気の毒に思い、食料などを分けてく
れたのです。それによって、イギリスからアメリカに渡ってき
た移民は、冬を越すことができました。
 それに対する感謝の日というのが、サンクス・ギビング・デ
ーです。
先住民に対する感謝なので感謝祭と呼びます。
また、アメリカに渡ってきて苦労した自分たちの父祖を思う日
でもあるので、この日、アメリカ人は、生まれ故郷に戻って、
父母を中心に、一家そろって食事をします。
ですから、このサンクス・ギビング・デーは、日本でいえば、
ちょうと8月のお盆のようなイメージがぴったりします。
お盆には、東京の人も故郷を目指します。
同じように、サンクス・ギビング・デーには、アメリカ人は、
故郷に帰ります。
この場面は、ハリウッドの映画でも、よく描かれてきました。
「めぐり逢えたら」で、メグ・ライアンが婚約を発表するのも、
サンクス・ギビング・デーに一族が集まった夜です。一族が集
まっているので、発表にはもってこいなのです。「クロコダイ
ル・ダンディー」でも、新聞記者のヒロインが、上司との婚約
を発表し、クロコダイル・ダンディーが寂しそうな顔をするの
も、サンクス・ギビング・デーの食事会でした。

日本は、本当に、みごとなぐらい、海外のイベントを取り込ん
で独自に消化しますが、しかし、このサンクス・ギビング・デ
ーだけは、取り込みようがありません。
アメリカ人が先住民に感謝する日を、日本で、再現しようがあ
りませんし、そもそも、一家、一族が故郷に集まるのは、8月
のお盆という一大行事がありますからね。

整理すると、アメリカでは、
10月31日 ハロウイーン
11月下旬  サンクス・ギビング・デー
12月25日 クリスマス
という順番になっていて、ちょうどうまい具合に、一か月にひ
とつ、大きなイベントがあるようになっているのです。

ところが、日本の場合、長い間、
8月15日のお盆のあと、
12月25日のクリスマスまで、何もなかったのです。
そこへハロウイーンが出てきたので、
10月31日 ハロウイーン
12月25日 クリスマス
というパターンが出来るようになりました。

いまも書いたように、さすがに、サンクス・ギビング・デーだ
けはどうしようもありませんので、アメリカなら、ハロウイー
ンの後、本来なら、サンクス・ギビング・デーが入るところを、
日本では、いきなりクリスマスに飛んでしまうわけです。

テレビを見ていますと、10月31日にハロウイーンが終わっ
た翌日、11月1日には、長野県松本市の駅前で、クリスマス
ツリーが点灯されていました。
ほかにも、全国のあちこちで、クリスマスツリーの点灯式があ
ったようです。

サンクス・ギビング・デーがないので、日本は、これから先、
ほとんど2か月の間、クリスマスです。
たくましいと思うのは、25日にクリスマスが済むと、街は、
一斉に、お正月の雰囲気になることです。
本当に、たくましいですね。

最後に、笑い話をひとつ。
もう何年も前の話ですが、クリスマスイブの日、郊外のショッ
ピングセンターで、ハンドベルの演奏会をしていました。
20人ぐらいの演奏者が、それぞれに、大きなベルを持ち、ク
リスマスソングを、次々に演奏していました。
雪もちらついていて、いい雰囲気になり、多くの人が集まって
聴き入ってました。
曲と曲の間に司会の女性が、曲の紹介をするのですが、その司
会の女性、曲の紹介の前、ふと思いついたように、マイクで、
こう話しました。
「みなさん。明日は、クリスマスですよね。クリスマスって、
何の日か、知ってますか?」
私も、その場にいて、何気なく聞いていたのですが、次のせり
ふには、びっくりしました。
「私も最近知ったことで、これは、あまり知られていないので
すが、クリスマスって、キリストの生まれた日なんですよ」
えっ?
じゃあ、それまでは、そんなことも知らずに、クリスマスの司
会をしていたわけですか?
演奏を聴いていた人は、やはり、えっ?というような顔をして
いましたが、でも、クリスマスです。クリスマスの日に、人を
責めても仕方ありません。えっ?という顔をした人も、そのま
ま、聞き流していました。クリスマスですものね。