G20で大阪来ていたアメリカのトランプ大統領が、急遽、韓国
に飛び、板門店で北朝鮮の金正恩委員長と会いました。
会うだけかと思っていたら、お互いに境界線を歩いて越えただけ
ではなく、50分ほど会談しました。
内容はまだ明かにされていません。
論評は、これからたくさん出るでしょうが、ここでは、北朝鮮と
イランの違い、核兵器を持っているかどうか、について、書いてお
きたいと思います。
北朝鮮は、アメリカから見れば小さな国です。
「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領にしてみれば、
本来なら、それほど重視するような国ではないと思います。
しかし、きょうの中継を見ると、金正恩氏に対し、終始、にこや
かな表情をし、「我々の友情」という言葉まで遣いました。
一方、イランは、中東の大国です。国の面積も大きいし、豊富な
原油資源を持っています。もし、戦うとなると、泥沼の長期戦にな
りそうです。
ところが、トランプ大統領は、イランの指導者ハメネイ師や、ロ
ウハニ大統領のことを、あしざまに罵倒します。
つい先日は、アメリカの無人偵察機がイランによって打ち落とさ
れてとして、イラン爆撃の寸前まで行きました。
北朝鮮とイラン、なぜ、こんなにアメリカの対応が違うのでしょ
うか。
答えはひとつ。
それは、核兵器です。
北朝鮮は、核兵器を作ってしまいました。
イランは、過去、核兵器を作る寸前まで行きましたが、欧米諸国
が協力して、開発をストップさせました。
もし、北朝鮮が核兵器を持っていなければ、アメリカは、トラン
プ大統領は、金正恩氏と、わざわざ個別に会談しようなどとは思わ
ないでしょう。
そう。核兵器を持っていなければ、北朝鮮は、韓国の隣りにある
途上国だったわけです。
そう考えれば、金正恩氏が、なにをどうしても、核兵器を廃棄す
るはずがありません。
核兵器があるからこそ、アメリカの大統領がわざわざ会いに来て
くれるのです。
核兵器を持っているからこそ、超大国・アメリカが相手にしてく
れるのです。
核兵器を廃棄したら、その瞬間に、アメリカは、北朝鮮に対する
関心を失うでしょう。
ですから、金正恩氏は、いったん手にした核兵器を、まず、どん
なことがあっても、手放すことはないと思います。
その様子を見ているイランは、しまったとほぞをかむ思いでしょ
う。イランは、早い時期に核兵器を持つ機会がありました。それを
欧米諸国の圧力で中止したわけですが、トランプ大統領と金正恩氏
がにこやかに会話する様子をテレビで見ていると、ああ、しまった、
あのとき、無理してでも、核兵器を作ってしまえばよかったと思っ
ているのではないでしょうか。
怖いのは、それです。
どんな小さな国であれ、核兵器を持ってしまえば、超大国・アメ
リカが対等の存在のようにして扱ってくれる。
その実例を、いま、目の前で見ているわけです。
それなら、我が国も核兵器を持とう。
そう考える指導者がいてもおかしくありません。
そう考える指導者が多いのではないでしょうか。
北朝鮮は1990年代、飢饉に襲われ、多くの国民が苦しみまし
た。飢饉だけではなく、エネルギー事情も悪かった。
そこで、欧米や韓国が全面協力し、北朝鮮に原子力発電所を作り
ました。
その後、韓国の金大中大統領の「太陽政策」で、北朝鮮に大規模
な資金援助もしました。
そうした事情を背景に、北朝鮮は、核兵器を開発したのです。
金大中氏は、北朝鮮との平和に道を開いたというので、ノーベル
平和賞を受けています。これを、韓国の国内では、金大中氏の資金
援助で北朝鮮が核兵器を作ったと批判して、「ノーベル賞はノーベ
ル賞でも、金大中氏のノーベル賞は、核開発の物理学賞だ」と揶揄
する言い方があります。
北朝鮮への支援は、完全に裏切られたわけです。
イランは、すでに、ウラニウムの濃縮を進めるということを明か
にしていました。核兵器を作るぞ、というわけです。
今回の米朝会談を見て、イランは、本当に核を作るのではないで
しょうか。
核さえ持てば、アメリカも、怖くて、攻撃してこない。
そう思っても不思議ではありません。
きょうのテレビ各局のニュースや解説を見ていて、イランのこと
に触れた局を見つけることができませんでした。
それがまた不思議です。
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