民主党が、維新の党と合流し、「民進党」に党名を変えました。
当ブログは、この「民進党」という名前に、どうにも違和感を
覚えます。
好き嫌いの問題ではないかと言われることを覚悟して言います
が、「民進党」という名前は、日本語として、どこかおかしいと思
います。
明治維新の後、日本には、欧米の文化、文明が、音を立てて入
ってきました。日本は、政治、経済、法律、芸術といった分野で
も、欧米の考え方や制度を、どんどん取り入れました。自分の国
にはない考え方や制度を取り入れるとき、問題になるのは、言葉
づかいです。デモクラシーや、エコノミーといった言葉は、そも
そも、その考え方自体が日本にはなかったわけですから、日本に
導入するときに、いったい、どうすればいいのか。考え方を導入
するだけではなく、日本語でどうするか、それが大きな問題にな
ります。
明治の先人は、まことにたいしたもので、デモクラシーを民主
主義、エコノミーを経済、などと、「訳す」というより、むしろ、
「造語」したのです。言葉を作ったといっていいでしょう。
それが、あらゆる分野で起きました。ベースボールを野球とし
たのは、正岡子規だったというのは、有名な話です。
共産主義というのも、明治の日本人が考え出したというより、
作った言葉です。いまの中国の共産党という言葉も、実は日本語
だったはずだというのは、中国人が好んでする話です。
もし、明治の時代に、そうした先人の努力がなければ、日本は、
英語やドイツ語、フランス語の単語をそのまま導入するほかには
なく、現代の日本は、そうした欧米の単語で埋め尽くされていた
はずです。
なにしろ、考え方そのものがなかったわけですから、その訳語
作りの努力は、素晴らしいものがあったと思います。デモクラシ
ーひとつとっても、江戸時代までの日本は、士農工商、武士の社
会ですから、「民主」という考え方そのものがありません。そこに
入ってきたデモクラシーという英語を「民主主義」と訳すという
のは、見事というほか、ありません。
まあ、当時の日本は、司馬遼太郎さんが書いているように、江
戸だけではなく、地方、地方で教育システムが整えられ、地方で
も大勢の人材が育っていました。江戸という街は、当時としては、
世界でも最高水準の街だったという評価が、現代では、定着し始
めています。
そういう中で、数多くの英語、ドイツ語、フランス語が、日本
語に置き換えられて、日本に定着していきました。
しかし、そうした言葉の海の中で、「民進」という言葉は、見当
たらないのです。
試しに、いま、パソコンの日本語ワープロで「みんしん」と打
って漢字変換すると、「民心」になります。民の心です。これなら、
江戸の昔からあります。
では、「みんしんとう」と打つと、「民進党」となります。
なぜか?
これは、台湾に民進党という有力な政党があり、ワープロは、
「みんしんとう」を、台湾にある政党の名前、つまり、固有名詞
としてとらえているからです。
いや、明治の先人が、英語の言葉から、日本語の訳語を苦心し
て作ったように、平成のいま、新しい言葉を作ったと思えばいい
のではないか?
そういう考え方もあるでしょう。
百歩譲ってそう考えるとしても、それには、言葉を作り出す能
力が必要です。言葉のセンスが要求されます。
そうやってみると、「民進」というのは、いかにも、言葉のセン
スが悪いのではないでしょうか。
民進とは、どういう意味でしょう。
民が進むのでしょうか。
「民が進む」という言い方、考え方は、どうにも、日本と日本
語には、そぐわないように思います。
民主党は、なかなか複雑な経緯を通って、民主党になりました。
もともと、自民党に対抗して、新進党というものが出来ていま
す。それが解党して、一時は、「民主党」と「自由党」というの
がありました。自由党の党首が小沢一郎氏で、自由党が民主党
に合流する形で、民主党となりました。
この民主党と自由党という名称が、もともと、違和感があった
のです。
それもそうです。民主党と自由党というのは、自民党、すなわ
ち、自由民主党という党名を、ばらして取っただけのようなも
のだったからです。
ですから、当時の自民党総裁だった橋元竜太郎氏は、よく、「民
主党には自由がなく、自由党には民主がない」といって、冗談
半分で批判していました。
民主党は、2009年に自民党に選挙で勝ち、政権に就きまし
た。
堂々たる政党です。
しかし、その党名である民主党は、自由民主党の一部の言葉に
しか過ぎなかったのです。
今回、民主党が名前を変えると聞いたとき、自由民主党の一部
の名前から抜け出すいい機会だと思いました。
しかし、「民進党」ですか。
繰り返しますが、「民進」という言葉は、日本語にはありません。
民進という言葉は、日本語として、どこか、語感が悪いのです。
また繰り返しますが、「みんしん」とワープロで打って変換する
と「民心」となります。「みんしんとう」と打って、初めて、「民
進党」になります。それは、台湾の政党の固有名詞です。
民進党という党名には、政党としての志みたいなものを、まる
で感じないのです。
次の選挙も、これは、どうも、勝ちそうにないですね。