いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

イギリスとポピュリズム・・・国民投票がポピュリズムに陥るという危うさが示されました。

2016年06月30日 16時54分18秒 | 日記

 イギリスのEU離脱は、国民投票が究極のポピュリズム
になる可能性があることを、鮮明に示してくれました。

 「ポピュリズム」とカタカナで書くと、なにか軽い感じが
しますが、日本語に訳すと、「大衆迎合主義」となります。
 大げさな言葉に見えますが、大衆迎合主義としたほうが、
その危険さをよく表現します。
 もっといえば、「衆愚政治」です。
 
 大衆迎合主義というのは、結局のところ、政治家が、自分
の考えを持たず、大衆受けする政策だけを打ち出すことです。

 こういう政策を打ち出せば受けるだろう。
 こういう政策を実施すれば人気が高まるだろう。
 ーーそういう考えで政策を立て、実行する。
 それをポピュリズム、大衆迎合主義というわけです。

 もちろん、今回のイギリスの国民投票で、キャメロン首相は、
ポピュリズム、大衆迎合の手法を取ったわけではありません。
 キャメロン首相は、EU残留というより、EUの一員として
やっていこうと考えていた政治家です。
 しかし、イギリス国内に、EUは嫌いだ、イギリスは独自にやっ
ていくべきだという声が強くなり、キャメロン首相も対応を迫られ
ました。
 そこで、キャメロン首相は、国民投票をして、EU残留が
多数を占めれば、EU離脱の声も鎮まるだろうと考え、国民投票
を実施したわけです。
 その際、国民投票でEU残留派が勝つのが当然という前提
がありました。
 
 ところが、いざ、国民投票をしてみると、離脱派が多数を
占めてしまったのです。
 
 これは、キャメロン首相は、大誤算だったでしょう。
 国民投票でEU残留を決め、EU離脱の動きを封じ込める
というのが、首相の狙いだったのですから。
 自ら国民投票を実施したキャメロン首相にとっては、まった
く予想外の結果になってしまいました。

 キャメロン首相は、決してポピュリズム、大衆迎合の手法を
取ったわけではないのですが、結果的には、ポピュリズム、
大衆迎合のわなにはまってしまいました。

 太平洋戦争が始まったのは1941年12月ですが、その直
前、たとえば、1939年とか1940年に、日本で国民投票
をし、戦争するべきかとうかを問うたとすれば、たぶん、開戦
すべきだという票が、圧倒的多数を占めたのではないかと思い
ます。

 政治の役割というのは、そういうときに、戦争は双方に大規模な
被害が出るから、するべきではないーーと、本来、国民をリード
することです。
 政治家が、全体の気分やムードに流されてはいけないのです。

 イギリスの場合、EU離脱派の政治家が国民投票を仕掛け
たというのなら、キャメロン首相をはじめEU残留派は、
「ポピュリズムに流されてはいけない」と訴えることができました。
 しかし、今回は、そのキャメロン首相が自分で国民投票をやっ
てしまったのです。そしてその結果、意図せざるポピュリズム
に、自ら陥ってしまいました。

 ポピュリズムといえば、韓国の朴槿恵大統領が、そうです。
 大統領になったあと、何をすれば国民に受けるか、何をすれ
ば人気が出るか、そればかりを考えているように見えます。大統領
自身の考え、大統領自身の政策というものが、見えてきません。
 最たるものは慰安婦問題です。
 慰安婦問題を取り上げれば、国民に受けるだろう。
 反日さえやっていれば、間違いない。
 そう考えて、来る日も来る日も、そして、海外に行ってまで、
慰安婦問を訴えました。
 その結果、韓国の反日は、もう、少々のことでは、歯止めが
かからなくなってしまいました。
 業を煮やしたアメリカのプレッシャーもあって、昨年末、
その大統領も、安倍首相と、慰安婦問題で「最終的」な合意
に達しました。
 ところが、韓国政府が、その合意を、国内で説明しようとする
と、国内の各種団体からものすごい批判の声が出て、収拾がつ
かなくなってしまいました。
 韓国の反日は、韓国政府のポピュリズムであおられてしまい、
もう、だれにも止められなくなっていると思います。
 国の政治的リーダーがポピュリズム、大衆迎合の政策を取る
と、そのリーダーでさえ、手に負えないような異様な動きになっ
てしまうのです。

 イギリスが離脱を決めた国民投票のあと、投票した人々から、
しまったこんなはずじゃなかった、これなら残留に投票するん
だったという声があがっています。
 それは、投票した人も、意図せざるポピュリズム、大衆迎合
のワナにはまってしまったことを示しています。
 離脱に投票した人の何割かは、もしかすると、ただ政府に抗議
してみたかったというだけのことだったのかもしれません。
 それが、こんなことになってしまいました。

 ポピュリズム、大衆迎合というのが、いかに危ういことか。
 それを、今回、イギリスの国民投票は、はっきり見せてく
れました。
 それだけが、ただひとつの成果だったかもしれません。



イギリスのEU離脱・・・世界は混沌としてきました。過去に生きている暇はありません。

2016年06月27日 00時37分10秒 | 日記

 イギリスがEUから離脱することを決め、世界はいよいよ混沌と
してきました。
 国民投票の結果が分かったあと、そのまま週末に入ったため、世
界中で冷却期間が置けてよかったと思います。
 
 6月27日の月曜日から、世界の為替市場、株式市場、金融市場
で、いったい、どんな反応が出るのか、まことに気になります。
 予想を先にいえば、為替も株も、乱高下ということに尽きるので
はないでしょうか。
 イギリスの国民投票を受け、24日の金曜日は、東京も
、ロンドンも、フランクフルトも、ニューヨークも、世界の株式市
場が急落しました。
 27日の月曜日は、下がった株を買い時と見て、買う動きも出る
と思います。
 もしかすると、27日の月曜日の株式市場は、値を上げることが
あるかもしれません。
 しかし、値を上げたら、値が高いうちに売ってしまおうという投
資家が売りを入れて、下げ圧力となります。
 結果は、乱高下です。

 為替市場も、同じことでしょう。

 欧州諸国は、イギリスの離脱にどう対処するかで、これから、忙
殺されます。
 いったい、いつ離脱するのか。
 離脱の手続きをどうするのか。
 離脱した後、イギリスとどう付き合うのか。
 イギリスの次の首相は、だれになるのか。
 欧州の通貨ユーロの動揺をどうふせぐのか。
 株式の急落にどう対応するのか。
 イギリスに続き、EUを離脱する国は出てくるのか。

 ちょっと考えただけでも、たちまち、これだけの問題が出てきま
す。そのいずれもが、重い問題で、対応は容易ではありません。
 気が遠くなるような状況です。

 アメリカも、日本も、それぞれに、対応を考えなければなりませ
ん。
 緊急のG7の会議も、開かれるでしょう。

 欧州は、一時、中国と接近していました。いや、中国が欧州に接
近していたというべきでしょう。
 しかし、いまや欧州は、中国とどう付き合うかという問題どころ
ではありません。欧州自身をどうすればいいのかという状況になっ
てしまいました。

 アメリカも、関心が欧州に移ります。
日本も、G7の一角として、積極的に関わって行く必要がありま
す。

 世界の関心が欧州に移ったとき、その間隙をぬって、中国が、活
動を活発にする可能性もあります。
 南シナ海や東シナ海で、このときとばかり、動きを強化するかも
しれません。

 IS(いわゆるイスラム国)も、欧州が動きを取りにくくなった
のを見計らい、なにか新しい動きをするかもしれません。

 世界は、まことに、不安定な状況になってきました。
 不安定な世界です。
 日本も世界も、これに、対応していかなければなりません。

 世界はそういう状況です。

 余談ではありますが、いまや、世界がそういう状況になってい
るのに、韓国は、なお、慰安婦問題で日本を攻撃しています。
 韓国人留学生が、いまも、アメリカの各地で、慰安婦問題をアピ
ールしています。日本が公式謝罪をするまで、活動をやめないのだ
そうです。
 慰安婦のあれこれを、なんと、ソウル市が、世界遺産の登録に登
録申請すると、名乗りを上げました。
 慰安婦像も、世界中に設置するそうです。

 イギリスのEU離脱で世界が混沌とするというときに、韓国は、
ひとり、過去の世界に生きているというほか、ありません。

 こういう混沌とした世界に対応するため、昨年末、日本と韓国は
政府同士で、慰安婦問題は完全に解決したと、合意しました。安倍
首相が遺憾の意を表明し、基金を作って資金を拠出する。そしてな
によりも、アメリカが第三者として、合意を歓迎し、これで決着と
したのです。

 ところが、その当時よりも、世界がさらに混沌としてきたという
のに、韓国は、なお、慰安婦問題にこだわるのです。
 これからの世界をどうするか検討しなければならないというその
ときに、ひとり、過去に生きていて、いったいどうするのかと思い
ます。

 日本は、いつかどこかで、見切りをつける必要がありそうです。


イギリスのEU離脱・・・もともとイギリスは、EUにいやいや加盟していたようなところがあります。

2016年06月25日 01時55分19秒 | 日記

 イギリスは、国民投票で、EUから離脱することを決めました。
 EUにとどまることを主張していたキャメロン首相は、この国民
投票の結果を見て、首相を辞任することを表明しました。
 キャメロン首相は、EUから脱退する道筋にメドをつけてから辞
めるとしています。3か月後ぐらいになりそうです。
 ただし、EUから脱退するには、いろいろと手続きが必要で、実
際には、いまから2年ぐらいかかるのではないかということです。
 なにしろ、脱退はこれが初めてのことなので、なにもかも手探り
ということになります。

 日本時間の24日昼過ぎには、BBCが国民投票は離脱が過半数
を占めると報じ、外為市場も株式市場も、大荒れになりました。
 外為市場は円高が進み、株式市場は急落しました。
週明けの各国の市場は、引き続き、動揺した展開になるでしょう。
 この動揺は、いつ収まるのか、予想もつきません。

 イギリスは、もともと、EU加盟に、決して積極的ではなかった
のです。
 どちらかというと、いやいや入っていたという感じがありました。

 その証拠というと変ですが、イギリスは、EUの共通通貨でああ
るユーロを使わず、昔からのイギリスの通貨であるポンドを、その
まま使っていたのです。
 EUは域内をひとつの国のようにしたいというのが、その理念で
す。ひとつの国のようにするには、通貨が同じであることが、重要
な条件になります。
 日本が、日本というひとつの国であるには、日本中で円を使って
いるというのが大きいのです。これがもし、たとえば九州は円では
なく、別の通貨を使っているということになれば、九州に行くとき
には通貨を両替しなければなりません。そんなことになっていれば、
とても、ひとつの国とはいえません。
 ところが、イギリスは、EUに加盟しながら、独自の通貨として、
ポンドを使ってきたのです。
 EUの統一にとって最も重要なことのひとつが通貨なのに、その
通貨を、共通のユーロではなく、独自のポンドを使っていたという
その一点で、イギリスが異質だったことがよく分かります。
 イギリスは、EUに、いやいや入っていたようなところがあった
のです。

 今回、イギリスの国民投票でEU離脱派が勝ったのは、移民によ
ってイギリス人の仕事が奪われるという反発が、大きな原因のひと
つになっています。
 EUは、域内の人の動きを極力自由にしましょうという方針を作
っています。
 EU諸国の空港に行くと、通関が、EUと、EU以外とに分かれ
ています。EU諸国から同じEU諸国に移動するときは、通関が簡
単で、すぐに入国できます。
 EU以外の国からEUに入るときは、EU以外という通関を通ら
なければならず、入国の手続きをしっかりやる必要があります。
 人の動きが自由になったため、イギリスにもEU諸国、とくに所
得の低い東欧諸国からの入国が増え、その人たちに、イギリス人の
仕事が奪われたと、そういうのです。同じEUの国からの移民です。
 EUから離脱すれば、そういう移民が入国しにくくなり、イギリ
ス人の雇用が守れるというわけです。

                   (続く)






荒れる世界・・・21世紀は荒れる一方です。「平和」は遠くなってしまいました。荒れる世界を整理します(その1)

2016年06月20日 23時05分54秒 | 日記

 21世紀の世界は、各地で、荒れた感じになってきました。
 欧州、アメリカ、アジア、中東のいずれの地域でも、「平和」と
は遠い状況になってしまいました。

 欧州は、せっかく作ったEUの枠組みが、激しく動揺しています。
 現在は、イギリスがEUに残留するのか、EUから脱退するのか、
瀬戸際にあります。
 残留を訴えていた議員が射殺されるというとんでもない事件まで
起きました。
 国民投票の行方は、全く予断を許しません。
 万一、イギリスがEUから脱退するということになると、国際的
に大きな影響は避けられません。
 EUは、なんといっても、イギリス、ドイツ、フランス、イタリ
アが、枠組みの中心です。なかでも、イギリス、ドイツ、フランス
は、EUの屋台骨です。その一角が抜けてしまったら、EUの仕組
みそのものが動揺します。
 EUは、イギリスやドイツ、フランスのような強い国だけではな
く、ギリシャのような弱い国が何か国も入っており、もともと、格
差がありました。その弱い輪のひとつであるギリシャが、ほとんど
経済破たんのような状態になり、他のEU諸国の支援で、ようやく
踏みとどまりました。
 ギリシャだけならまだなんとかなりましたが、万一、イギリスが
脱退するということになると、EUそのものを再編成するというこ
とになりかねません。

 イギリスでEU脱退論が強まったのは、移民問題です。
 EUは域内の人の行き来を、出来るだけ、制限しないことにして
います。
 ですから、同じ欧州の中のどちらかというと貧しい国から、豊か
な国に、人々が移ってきます。
 いまのイギリスには、そうやって、英語の通じない地域が出来て
しまいました。

 同じEUでも、大陸のドイツやフランスは、シリアからの移民が
急増しました。
 いうまでもなく、IS(いわゆるイスラム国)が独自の勢力圏を
作り、シリアやイラクは、内戦のような状態になりました。
 そのため、安住の地を求めて、シリア中心に、多くの人々が欧州
にやってきました。
 難民です。
 これをドイツのメルケル首相が積極的に受け入れることを表明し
たため、さらに多くの難民が、トルコやギリシャを通過して、欧州
にやってきました。
 これを見て、ドイツをはじめとする各国では、難民を受け入れる
なという勢力が力を持ち始めました。この動きは、下手をすると、
EUからの脱退論につながりかねません。

 ISのようなイスラム過激派は、欧州各地でテロを起こします。
なかでもフランスは、パリで、新聞社が襲撃され、さらに今年にな
って、劇場で無差別の銃撃事件が発生しました。

 これは、反イスラムの空気を作ります。

 アメリカでは、大統領選挙で、トランプ氏が、共和党の候補者に
なってしまいました。
 トランプ氏は、イスラム教徒はアメリカに入国させないとか、メ
キシコとの国境に壁を建設するとか、極端な排他主義を打ち出して
います。
 この排他主義は、アメリカはアメリカだけのことをやるんだとい
う考え方です。世界のことは知らないというわけです。
 アメリカは第二次大戦後、超大国として、よくもあしくも、国際
秩序を作ってきました。
 世界各地に基地を置き、強力な空母部隊を配属する。
 その軍事力を背景に、世界各地で、何か紛争が起きると、調停役
として、出て行く。
 その調停がうまくいったかどうかは別として、中東でもアフリカ
でも、欧州でも、アジアでも、紛争や政治的な対立があると、アメ
リカが顔を出して、まとめてきました。
 しかし、失敗もまた多かった。
 イラクやアフガニスタンに軍事介入したのは失敗のひとつでしょ
う。
 軍事介入して、既成の秩序を破壊してしまったため、アメリカは、
そこで新しい秩序を作る役割も請け負う羽目になりました。
 もう、引くに引けません。
 アメリカにとっては、財政負担も大変なものです。
 イラクやアフガニスタンにつぎ込んだ財政資金を、アメリカ国内
のために使っていればーーという思いは、だれしも持つでしょう。
 それをはっきりと言ったのが、トランプ氏です。
 トランプ氏は、アメリカはもう世界の警察はやらないと言い、ア
メリカが基地を置いている国はその費用を払えと言うのです。日本
に対しても、在日米軍の駐留費をすべて払えというわけです。
 これは、アメリカの人々の心をつかみました。
アメリカ人にとって、イラクやアフガニスタンに軍を出す意味は、
よく分からなくなっているのです。

 しかし、ISのようなイスラム過激派が勢力を伸ばしたのは、ひ
とつには、アメリカがイラクやアフガニスタンに介入し、既成の秩
序を破壊したからでもあります。既成の秩序を破壊したので、IS
のような過激派が動きやすくなったのです。

 その結果、イラクやシリアで内戦状態になり、難民が欧州に逃れ
たわけですから、もとはといえば、アメリカの介入がひとつの原因
となっています。

 それを、トランプ氏のように「アメリカはアメリカだけのことを
やる」と言い始めると、なにをいまさら、という感じもあります。

 アジアでは、なんといっても、中国の海洋進出です。
 中国の海洋進出で、アジアの秩序は、根底から変わってしまいま
した。
                  (続く)






在日米軍はアメリカの利益のために存在します・・・トランプ氏はそこが分かっていません。

2016年06月10日 00時57分22秒 | 日記

 アメリカの大統領候補は、共和党はトランプ氏、民主党はクリン
トン氏で決まりました。
 この二人を見ていると、正直、アメリカも人材が払底してきたと
いう印象がぬぐえません。

 きょうは、トランプ氏の話です。
 トランプ氏は、海外に駐留している米軍の費用は、その国が払え
と主張しています。
 日本に駐留する米軍の費用も、日本が全額払うべきだというので
す。日本は、駐留米軍の費用を相当な程度負担しており、アメリカ
の基地にいるより、日本の基地にいるほうが、米軍の負担が少ない
というのは、米軍関係者が、よく指摘します。
 どうも、トランプ氏は、初め、そのことを知らなかったようです。
彼は、在日米軍の費用は、すべてアメリカが負担していると思って
いたようです。
 その一点だけでも、トランプ氏の外交音痴がよく分かるのですが、
そんなことではなく、もっと決定的な外交音痴があります。

 なにか。
 トランプ氏は、在日米軍は、日本のためにいると思っているよう
なのです。
 とんでもない誤解です。
 米軍が日本にいるのは、それが、アメリカの利益になるからです。
 アメリカの利益になると考えているからこそ、アメリカは、日本
に米軍を駐留させているのです。
 それが分からない人がアメリカの大統領になるようでは、かな
り困ったことになります。

 もとより、米軍が日本に駐留したのは、太平洋戦争で日米が戦い、
日本が負けたからです。
 戦勝国が占領政策をするため、敗戦国に軍隊を駐留させるのは、
まことに当たり前のことです。
 ですから、そもそもが、日本のためではなく、アメリカが戦勝国
として、米軍を駐留させたのです。

 すると、戦後まもなく、旧ソ連が東欧諸国とともに社会主義国の
陣営を作り、アメリカや欧州諸国と対立しました。
 東西冷戦です。
 そうなると、日本は、ソ連を食い止めるために、絶好の位置にあ
ります。
 日本がなければ、ソ連は、太平洋に簡単に出てくることが出来ま
す。
 戦後の日本は西側諸国の一員となりましたので、アメリカにとっ
て、日本列島に米軍を置いて、ソ連を牽制することが出来るように
なりました。
 もし、戦後の日本がソ連の占領下にあったなら、太平洋の情勢は
まるで変わっていたでしょう。
ですから、アメリカは、アメリカの利益のために、米軍を日本に
置いたのです。
 なにも、日本を守るためではありませんーーといってしまうと、
みもふたもありませんが、基本的には、外交は、そういう冷たい論理
で動くものです。

 ソ連は1990年代に崩壊し、東欧もソ連のくびきから解放され
ました。ドイツも、東西ドイツが統一され、大きなドイツになりま
した。
 これで、東西冷戦は消えてなくなります。

 このとき、「平和の配当」ということが言われ、アメリカは軍事
費が大きく削減できるので、それを民間分野に注ぐことが出来ると
されました。それを平和の配当といいました。

 ところが、ソ連がロシアになり、民主化するのとタイミングを合
わせるように、中国が台頭してきたのです。
中国は、同じ社会主義国なのにソ連と仲が悪く、中ソ国境は、常
に緊張をはらんでいました。
 しかし、ソ連がロシアになり、国境の緊張が解けると、中国は、
一転、太平洋に出てきたのです。
 それが、中国の海洋進出です。
 
 中国の海洋進出は、周辺諸国に大きな脅威を与えるようになりま
した。
 南シナ海が典型的です。
 
 アメリカにとっては、ソ連の脅威がなくなったと思ったら、今度
は、中国です。
 アメリカにとっては、太平洋は、ハワイ、グアム、日本と、重要
な拠点を置く広い海です。
 太平洋戦争で、日本と戦い、勝ち取った大海です。
 海洋進出を続ける中国は、2年前、アメリカに対し、「太平洋を
中国とアメリカで半分ずつ支配しよう」と持ちかけたことがありま
す。この話は、正確に確認されたわけではないのですが、当時、中
国なら言いそうなこととして、大きな反響を呼びました。
アメリカとしては、そんなこと、認められるはずもありません。

 かつて、フィリピンに、アメリカはスービック基地という有力な
基地を持ち、米軍を駐留させていました。
 しかし、フィリピンで米軍に対する反対運動があり、また、ソ連
が崩壊して平和の配当が指摘されもしたので、米軍は、基地を閉鎖
して、フィリピンを引き払いました。
 それで何が起きたかというと、中国が、スプラトリー諸島(南沙
諸島)に基地を建設し始めたのです。スプラトリー諸島は、フィリ
ピンの目の前にあります。
 もし、米軍がフィリピンに基地を置いていたら、中国も、スプラ
トリー諸島に基地を建設することなど、とても、出来なかったでし
ょう。

 こうなることが分かっていたら、アメリカは、フィリピンから米
軍を撤退させなかったでしょう。
 いまごろ、米軍は、ほぞをかんでいると思います。
フィリピンの米軍は、そう、アメリカの利益のために必要だった
のです。

 日本に駐留している米軍も、同じように、第一義的には、アメリ
カの利益のために置いているのです。
 もちろん、すべてがそうだというわけではありません。
 日本は、アメリカにとって重要な同盟国ですから、日本になにか
あると、在日米軍は、ちゃんと活動をしてくれます。
 平和なときでも、たとえば、東日本大震災の際、米軍は、「とも
だち作戦」として、東北地方で強力な支援をしてくれました。

 ですが、冷徹な考え方として、在日米軍は、一義的には、なによ
りも、アメリカの利益のために置いてあるのです。

 そこのところを、トランプ氏は、まったく分かっていません。
 アメリカはアメリカの利益のために米軍を置いているということ
を、まったく分かっていない人が、アメリカの大統領になってはい
けません。

 尖閣諸島に、中国の軍艦が近寄ったというので、大騒ぎになって
います。これまでは、中国の船舶が近寄っても、軍隊ではなく、海
上警察の船舶でした。日本も中国も、お互い、そこはわかり合って
いるはずでした。
 それが、軍隊が軍艦を出したとなると、話が違ってきます。

 さて、アメリカはどうするか。
 アメリカは、米軍を出すのがアメリカの利益になると判断すれば、
米軍を活動させるでしょう。
 そうでなければ、沖縄の基地から出てこないと思います。
在日米軍は、アメリカの利益のために、置いてあるのです。
 尖閣がアメリカの利益にとって大事だと判断すれば、アメリカは
米軍を活動させるでしょう。
 日本にとっては、アメリカに対し、尖閣はアメリカにとっても大
きな利益だということを説得する必要があります。

 ですから、なにも、日本に駐留している米軍は、ただ日本を守る
ために置いてあるわけではないのです。
 アメリカのために置いてあるから、アメリカは費用を出すのです。
 トランプ氏は、そこのところを、どうやら何も分かっていないよ
うです。
 こういう人が、大統領になるべきではないでしょう。




キリンカップの試合後のインタビュー・・・見ているほうが恥ずかしくなりました。もっと勉強を。

2016年06月09日 00時36分55秒 | 日記

 サッカーのキリンカップの決勝が、7日、大阪で戦われ、日本は、
ボスニア・ヘルツェコビナに1-2で負けました。
 きょう、書きたいのは、その試合のことではありません。
 試合後のインタビューのことです。

 試合の後、放送したテレビ朝日の若手アナウンサーが日本の選手
にインタビューをしましたが、インタビューが、あまりに下手なの
です。
 この話は、前にも書いたことがあります。
 同じことを書くのは気が進まなかったのですが、しかし、あまり
の下手さに、もう一度書かずばなるまいと思いました。

 では、どう下手だったか。

 アナウンサー君は、まず、日本チームのリーダーである長谷部選
手にインタビューしました。
 アナウンサー「お疲れさまでした。残念な結果になりましたが、
いま、どんな気持ちですか」
 長谷部選手「うーん。残念ですね」
 アナウンサー「前半、先に点を取ってすぐ、点を取られました。
前半、振り返っていただけますか」
 長谷部選手「うーん。点を取った直後に・・・(略)・・・」
 アナウンサー「9月からワールドカップの最終予選が始まります。
意気込みを聞かせてください」
 長谷部選手「はい。絶対勝たないといけないですからね。また応
援よろしくお願いします」
 アナウンサー「お疲れさまでした」

 これだけの短いインタビューに、下手さ加減が凝縮されています。
 まず第一に、「いまの気持ちを教えてください」です。
 こんな古典的な手あかのついた言い回しをつかって、アナウンサ
ーとして、はずかしくないのだろうかと思います。

 第二に、「前半、振り返っていただけますか?」とは、いったい、
どういう手抜きのインタビューでしょう。
 選手は、いま試合が終わったばかりで、疲労しています。しかも
負け試合ですから、疲労はなお大きいでしょう。選手もがっかりし
ています。実際、長谷部選手も、冴えない表情をしていました。
 その選手に、「前半、振り返ってください」はないでしょう。
 この質問、試合をずっと見ていた監督に聞くのならともかく、試
合を終えたばかりの選手に聞いても、選手は、答えようがありませ
ん。

 第三に、いま試合を終え、しかも、負けた試合です。その直後で
すから、選手はだれしも、しまったとか、残念とか、なんで負けた
んだろうかとか、くやしいなあとか、そう思っているところです。
そう思って、いま負けた試合のことを考えています。
 その選手に、「ワールドカップ最終予選に向けて意気込みを語っ
てください」と聞いても、選手は、いま、意気込みなど語れるはず
がありません。意気込みを語るような気分じゃないでしょう。
 長谷部選手は紳士ですから、律儀に「負けられません」などと答
えていましたが、ちょっと、想像してみてください。私たちが試合
に出ていたとして、さあ、残念ながら負けてしまいました。くやし
いなあ、何が悪かったんだろう。そう思ってがっかりしているとこ
ろへ、「意気込みを聞かせてください」と言われたら、怒りますよ。

 第四に、これがまた、一番いけないですが、このアナウンサーの
質問は、試合を見ていなくても聞けた質問なのです。
 そうでしょう。
 「いまの気持ちは?」
 「試合、振り返ってください」 
 「次の試合の意気込みを」
 この質問は、試合を見ていなくても、できます。
 せっかく、試合の現場で、選手に質問するのです。そもそも、ア
ナウンサーは、試合を見ているわけでしょう。それなら、試合を見
ていた人ならではの質問を、なぜ、しないのでしょうか。
 
 この原稿、書いているうちに、だんだん、ハラが立ってきました。

 このアナウンサーは、次に、清武選手と宇佐美選手にインタビュ
ーをしました。
 これも、ひどかったですよ。

 まず、清武選手です。
清武選手は、いつもは笑顔を見せますが、このときは、負けた直
後で、憮然とした表情をしていました。
 その憮然とした選手に、アナウンサーは、やはり、「いまの気持
ちを教えてください」とやりました。清武選手は、何を聞くんだ?
という感じで、投げやりな感じになり、ただひとこと、「残念です」
とだけ、答えました。
 いまの気持ちは?と聞かれたら、残念ですとしか答えようがあり
ません。
 清武選手は、ひとこと、残念ですとだけ答えて、ぶすっとしてし
まいました。そんな質問するなよ、という感じがありありと出てい
ました。
 この対応に、アナウンサーは、話の接ぎ穂がなくなってしまい、
焦るように、また「得点シーン、振り返ってください」みたいな質
問をしました。清武選手は、なにかまた、ひとこと、短く答えただ
けです。
 よせばいいのに、アナウンサーは最後にまた、「ワールドカップ
最終予選の意気込みを」とやりました。清武君は、いよいよ、むっ
とした感じになり、なにか短く答えてだけです。
 
 最後に、宇佐美選手です。
 宇佐美選手は、負け試合に、さらにまた、ぶすっとした表情で登
場しました。くやしかったのでしょう。
 そういう選手に、アナウンサーは、また「いまの気持ち、教えて
ください」という感じの質問を出しました。 
 宇佐美選手は、憮然としています。
 憮然とした様子がアナウンサーにも伝わるから、アナウンサーは、
これはいけないと思うのでしょう、やたらに声だけ張り上げて、元
気そうに質問するのです。ところが、宇佐美選手は、元気そうな質
問に、元気に答えようという雰囲気ではありません。
 テレビでインタビューを見ていて、こちらがハラハラするような
きまずい空気が流れました。
最後の質問が、また、最悪でした。
 試合の会場は大阪でした。
 宇佐美選手は、大阪出身です。
 そこで、アナウンサーは、こう聞いたのです。
 「ここは宇佐美さんの出身地ですから、きょうは勝ちたかったで
すね」
 この質問には、テレビを見ていて、思わず、「あほか」と、突っ
込みを入れたくなりました。
 宇佐美選手も、この質問には、えらく不機嫌になりました。
 そして彼は「試合は、どんな試合でも勝たないといけませんから」
と、突き放すようにして、答えました。
 それはそうでしょう。
 この試合は、キリンカップという大きな大会です。ハリルホジッ
チ監督は、国際Aマッチ級の試合と位置づけて、海外組を大勢呼び、
本気で勝つつもりでした。
 そんな試合に、大阪出身だから大阪で勝ちたかったでしょうね、
とは、なんとまあ、寝ぼけた質問ではありませんか。この質問をし
た瞬間に、せっかくの試合が、なんだか、どさ回りの試合みたいに
なってしまいます。この質問、選手にも、観客にも、失礼でしょう。
 
 まことに不思議なのですが、毎回毎回、試合のたびに、同じよう
に、紋切り型のつまらないインタビューを見せられます。
 アナウンサーもテレビ局も、もう少し、勉強したらどうかと思い
ます。
 テレビ局で、組織的に、勉強する機会を作る必要があります。
 いや、そういう機会があろうがなかろうが、インタビューをする
人間は、アナウンサーであっても、記者であっても、個人で、ひと
りで、自分で、インタビューの方法、インタビューの作法、良いイ
ンタビューの技術を、みずから、工夫して、身につけるのが本当で
す。
 
 テレビで見ている私たちのほうがはずかしくなるようなインタビ
ューを、いったい、いつまで続けるのでしょうか。
 テレビ局もインタビュアーも猛省をーーというより、
繰り返し、同じインタビューばかりしているのを見ていると、
どこか、根っこのところで、抜本的な改革が必要だと思わざ
るをえません。



舛添都知事の弁護士の会見・・・「違法性はありません」で知事にお墨付きを与えてしまいました。巧妙です。

2016年06月06日 21時25分01秒 | 日記

 舛添知事の疑惑について、6日、舛添知事が言うところの「第三
者委員会」の弁護士2人が、知事とともに会見し、調査結果を発表
しました。
 結果はというと、前回、当ブログで指摘した通りの展開となりま
した。

 舛添知事は、お金を、様々な場面で、おかしな使い方をしていま
す。政党助成金で木更津のホテルに泊まったり、回転ずしを食べた
りしていました。それを、政治活動だというのです。
 そういう様々なおかしな使い方について、弁護士は、基本的に、
 「違法性はありません」
 と言いました。
 ただ、そのあとで、
 「ただし、不適切な使い方が多い」
 と付け加えました。

 簡単にいえば、弁護士の調査の結論は、
 「舛添知事のあれこれは、違法性はないけれど、不適切なものが
多い」
 というのです。

 この結論になるだろうと、前回のブログで書いておきました。
 なにも、予想が当たったと自慢するのではありません。
 弁護士が調査すれば、こういう結論しかないだろうと思うのです。

 そして、「違法性がない」以上は、法的には、何も問題はない。
 であれば、知事を辞職する必要もないということになってしまい
ます。

 実際、舛添知事は、
 「不適切なことが多いと厳しく指摘されたことについては、深く
反省しております」
 としました。
 しかし、だからといって、知事を辞めるとは言いませんでした。
 会見でも、記者から、
 「違法性がないという結論が出たということは、知事を辞めるつ
もりはないということですか」
 という質問が出ました。

 これに対し、舛添知事は、直接答えることを避け、
 「不適切な使い方が多いと厳しく指摘されたので、深く反省して
おります」
 と質問をそらしました。
この答えは、結局のところ、推測するに、
 ”違法性がないので、法的には、問題ありません”
 という言葉が、口まで出かかっていたのではないかと思います。

 第三者委員会と称する弁護士2人が、
 「不適切ではあるが、違法性はありません」
 と結論を出したことで、
 舛添知事は、辞めなくてもいいというお墨付きをもらったのです。

 これは、大変、巧妙です。

 しかし、今回の舛添知事の問題の核心は、「違法かどうか」では
ありません。
 そうではなく、前回の当ブログで書いたように、
 「違法ではないから問題はない」という考え方はおかしいという
ことです。

 大きな権力を持った政治家、都知事が、自分のしたことを、
 「違法ではないから、問題ありません」
 と言ってはいけないのです。
 それは、権力者が、法と法の精神を守るのではなく、法の抜け穴
を探すということになってしまうのです。

 舛添知事のしていることは、権力者が法の抜け穴を探し、私は法
に触れていないから問題ありませんと強弁しているということで
す。

 ひとことでいえば、見苦しいということになります。

 舛添知事は、初めの会見で
 「都知事が二流のビジネスホテルに泊まると、都民のみなさんが
はずかしいでしょう」
 と話しました。
 その言い方を使いましょう。
 法や規則の抜け穴を探す都知事は、都民のみなさんにとってはず
かしい知事です。

 本当にはずかしいことです。



舛添知事が問われるもの・・・「規則通りなので問題ありません」は正しいのでしょうか。違います。

2016年06月04日 23時57分22秒 | 日記

 東京都の舛添知事のことは、あちこちで言い尽くされている感じ
がしますし、この知事のことを批判するのは簡単です。批判は簡単な
ので、下手すると、えらそうに原稿を書いているようなことになり
かねません。
 ですから、あまり書く気はありませんでした。
 しかし、ご本人の開き直しがあまりにひどく、しかも、開き直っ
たまま逃げ切るつもりでいるように見えますので、書かずばなるま
いと思います。

 舛添知事の問題は、論点がたくさんあります。
 ここでは、二つに絞ってみたいと思います。
 ひとつは、「ルール」に違反していなければ何をしてもいいのか
ということです。
 もうひとつは、この問題で感じる不快な感情です。爽快な感情と
は、まったく正反対な不快感です。
 
 まず、「ルール」の話です。
 今回の舛添知事の問題は、もともと、海外出張の際、飛行機はフ
ァーストクラスを使うとか、ホテルは最高級のスイートルームに泊
まるとか、そのぜいたくな姿勢から始まっています。
 ファーストクラス、スイートルームの問題を批判されたとき、舛添
知事は、繰り返し、 
 「ルール通りです」
 「ルールには違反していないので、問題ありません」
 と答えました。
 
 都知事の出張規程に、ファーストクラスを使ってはいけないとか、
スイートルームに泊まってはいけないとか、書いてないから、問題
はない、ということなのでしょう。

舛添知事は、初めから、この「ルール通りなので問題ありません」
という言い方をしてきました。

 次に、週刊文春が、公用車で、毎週末、湯河原の別荘に通ってい
ると書きました。
 そのときも、舛添知事は、
 「ルール通りです」
 「規則通りなので、問題ありません」
 という言い方をしました。

 なにかというと、知事が公用車を使うときの規定は、出発点が都
庁であることだ、というのです。出発点が都庁であれば、行き先は
どこであろうと、公用車の使用規定には違反しないというわけです。
 湯河原の別荘に公用車で行くにしても、出発点が都庁だったら、
規則違反ではないと、枡添知事は、いうのです。

 さて、問題は、この「ルール通り」です。
 確かに、都庁が定めたルール通り、規則通りであれば、法的な問
題はありません。

公用車の問題の後、舛添知事の公私混同が、次々に表面化しました。
 そのすべてに、舛添知事は、
 「第三者に調査を依頼します」
 と答え、実際に、弁護士2人に調査を依頼したと話しています。
 
 弁護士が調べて、たとえば、
 「金額は多いけれど、ルール通りでした」とか、
 「都庁の規則には従っていました」
 という結論が出たとします。
 弁護士は、法律というルール、規則に照らして、ものごとを判断
するのが仕事です。
 舛添氏の依頼した弁護士が、舛添氏のお金の使い方を調べ、
 「舛添氏は、ルールには違反していませんでした」
 という調査結果を出したとすれば、弁護士という立場では、
 「ルールに違反していない以上は、問題ありません」
 という結論になってしまいます。

 舛添知事にしてみれば、
 「そうでしょう。私が正しかったでしょう」
 ということになり、かえって、弁護士からお墨付きをもらったこ
とになります。

 そして、たぶん、弁護士の調査報告は、
 「グレーゾーンもありますが、ルールを大幅に破ったというほど
ではありません」
 という結論になりそうです。

 そうなれば、舛添知事は、
 「私は、ルールを破ったわけではないので、問題はありません。
このまま、知事として職務を遂行します」
 という対応をするのではないでしょうか。

 ルール、ルール、ということを全面に出すと、そういう結論にな
ってしまうのです。

 どこかがおかしいでしょう。
 どこがおかしいか。
 それは、今回の舛添知事の問題は、
 「ルールに合っているかどうか」
 ではないからです。
 今回の問題は、
 「道義的な責任はどこにあるのか」
 「政治的な責任は取らなくていいのか」
 という点にあるのです。
 
 もちろん、日本は、法治社会です。
 何かあったとき、判断する基準は、法律です。
 これは、譲ってはならない。
 もし、だれかが、「正義」を振りかざし、法律とは別に、「正義」
で人を断罪するようなことがあれば、とんでもないことになります。
 それは、テレビの「必殺仕事人」の世界です。

 しかし、舛添知事の場合は、都知事という政治家、強力な力を持
った政治家、権力者です。
 政治家は、法律や規則を守るのは当然のこととして、さらに、そ
れとは別の道義的な基準が求められます。
 強力な権力を持っている以上、ただ単に規則を守るだけではなく、
自ら、自分を律することが求められます。
 権力者が、「ルール通りにすれば何をしてもいいんです」と言い
始めたら、社会は立ち行かなくなります。

 法や規則、ルールを決める時には、なぜその規則やルールを決め
るかという理由があります。
 規則やルールを文章にするとき、どうしても、細かい点で、書き
落としたとか、そこまで細かいことは書かなかったということが、
必ず、あります。
その場合は、なぜ、その規則やルールを作ったかという理由や背
景、考え方に立ち戻らなければなりません。
 法を作った考え方を「立法の精神」といいます。
 その法や規則を、なぜ、定めたか。
 大事なのは、その法や規則をなぜ定めたかという考え方、法の精
神です。

 舛添知事の場合でいえば、公用車を使うとき、出発点が都庁であ
ればいい、というのが、都庁の規則です。
 では、なぜ、そういう規則を定めたかというと、別にその規則を
定めた場面に立ち会ったわけではありませんが、理由は容易に推測
できます。それは、
 「公用車は、いやしくも、税金で運用している以上、私的な目的
で使ってはいけない」
 ということだと思います。
 もっといえば、
 「公用車を無駄遣いするなよ」
 ということでしょう。

 私的な目的で使ったはいけない、ということを、文章にしたとき
に、「出発点は都庁でなければならない」というふうに書いたので
はないかと推測されます。
「私的に使ってはいけない」と書いてもよかったのでしょうが、
しかし、「私的に」というと、どこからが私的なのか、分からない
ケースも出てきます。それなら、「出発点は都庁」としておけば、
簡単だろうと、そう書いたのではないでしょうか。

 舛添知事は、湯河原の別荘に行くとき、「出発点は都庁だから、
私は、ルールに従っている」と弁明するわけです。
 それは、まったく、その通りでしょう。
 
 しかし、公用車の使い方を決めた規則を作った「法の精神」「「立
法の精神」というものがあります。
 それは、「公用車を私的に使ってはいけない」「公用車を無駄使
いするな」ということです。
 出発点が都庁であろうが何であろうが、公用車のルールは、結局
のところ、「自分のことのために、勝手に使ってはだめだよ」とい
うことです。
 知事という都庁のトップにいる人であれば、この「法の精神」を
守らなければなりません。

 舛添知事に、決定的に欠けているのは、この「法の精神」です。
 舛添知事がやっているのは、「法の抜け穴」を探すことです。
 都庁から湯河原まで、毎週末、公用車で通う。ご自分でも、ちょ
っと無駄遣いかなという意識はあるのでしょう。だから、規則を調
べて、出発点が都庁なら問題ないということを確認した。だから、
「公用車の使い方がおかしいのではないか」と批判されて、「いや、
規則通りですから問題ありません」と答える。
 これは、典型的な、法の抜け穴を探すという行為です。

 都知事ともあろう人が、都庁の規則の抜け穴を探して、「私は規
則に違反していません」というから、おかしいのです。

 守るべきは、規則やルールだけではありません。
 規則やルールを守るのは、当たり前です。
 守るべきは、その規則やルールを作った考え方、「法の精神」で
す。

 そして、その法の精神を、政治的道義というのです。
 規則には、確かに、抜け穴がある。
 しかし、その抜け穴を利用したりせず、正々堂々、法の精神を守
って、行動する。
 それが、政治的道義です。

 舛添知事には、それが、もう、決定的に欠けています。

 第二は、この問題全体から来る「不快な感情」です。
 舛添知事は、ファーストクラスや、ホテルのスイートルーム、公
用車の問題、いずれも、「規則通りですから、問題ありません」と
大きな声で言いました。
 その問題点は、いま説明したばかりですが、それとは別に、「問
題ありません」と話すときの表情が、いわゆる「どや顔」なのです。
 どや顔というのは、「どうや、俺の言う通りだろう」というとき
の顔です。

 「公用車は都庁から出ているので、規則通りです」と答えたとき
の枡添知事の表情には、「どうですか、私の言ったこと、間違って
ますか?」「私の言ったこと、正しいでしょう?」「反論できない
でしょう?」という気持ちが、ありありと、うかがえました。

 この人の釈明は、この「どや顔」のオンパレードです。
 「私の言っていることは正しいんですよ」
 「どこか問題ありますか?」
 という、すべてが、そういうことです。

 公用車で、毎週末、湯河原の別荘に行く。
 もう、その一手で、普通の市民の感情から食い違っています。
 これが、民間企業であれば、アウトでしょう。
 NHKの会長が、休みの日にゴルフに行くとき、NHKの車を使
ったというので、猛烈に批判されたことがあります。会長は謝罪し、
車の料金を返却しました。しかし、これなど、せいぜい2回ぐらい
のことで、それも、会長の説明によると、ミスで配車してしまった
ということでした。
 そこへ行くと、舛添知事は、毎週末、公用車を使っていたわけです。
それを、「規則に違反していないので問題ありません」はないでしょう。

 スイートルームもそうです。
 舛添知事は、「都知事が、2流のホテルに泊まって、都民のみな
さんは恥ずかしくないですか」と話していました。これは、開き直り
そのものだと思いますが、この人のおかしなところは、自分では
開き直りだと思っていないようだということです。
 別に、だれも、都知事に「2流のホテルに泊まれ」とは言ってま
せん。そうではなく、「普通のホテルの普通の部屋に泊まればいい
のではないですか」ということです。まあ、知事ですから、「いい
ホテルのいい部屋」に泊まっても、だれも文句はいわないでしょう。
しかし、一泊100万円の最高級のスイートルームに泊まると、さ
すがに、文句を言いたくなります。
 きのうも、東京の地下鉄に乗っていたら、横にいた女性グルーう
プが、「あのホテル代、私たちが払った税金よね」「そうそう」「私
たちのお金で、最高級のスイートルームに泊まってほしくないわね」
と話していました。
 それが、普通の感覚です。
 スイートに泊まるのが、都庁の規則に違反しているかどうかは、
問題ではないのです。
 舛添知事は、そのことに、どうやら、まったく気づいていないよ
うです。
 あるいは、気づいているが、知らんふりをしているか。

 この原稿、書いていて、いやになってきました。
 ひとことでいえば、
 「なんとまあ、セコい人だなあ」
 ということです。
貧乏くさいのです。

 最高級ホテルの最高級スイートルームに泊まって、「貧乏くさい」
と思われるようでは、これはもう、最低ですね。
 






消費税率引き上げの延期・・・アベノミクスの現状は?

2016年06月03日 13時48分28秒 | 日記

 安倍首相が、消費税率の引き上げを2年半延期すると決めました。
 民進党をはじめ、野党は一斉に反発しています。

 ただ、税金の引き上げに反対するというのは、なかなか、難しい。これま
で、税金の引き上げ、増税を前面に打ち出して選挙に勝った政権は、ひ
とつもありません。

 そもそも、消費税率の引き上げを決めたのは、民主党が政権をとってい
た時代の野田首相でした。
 当時、民主党と野党だった自民党が、財政再建が必要だということで合
意し、野田首相が消費税率の引き上げを決断したのです。

 ですから、いまの民進党にしてみれば、そのときの合意を実行しなけれ
ばならない、ということになります。
 しかし、民進党は、この国会で、日本経済が低迷しているとの立場から、
消費税率の引き上げを延期するよう求めました。

 これはまことに複雑な状況です。

 その民進党は、安倍首相が消費税率の引き上げを2年半延期したこと
を批判しているわけです。

 正直、これは、民進党が苦しい。
 次の参議院選挙で、民進党は、消費税率の引き上げを延期したことを
批判して選挙戦を戦うことになります。
 しかし、増税しないことを批判するというのは、まことに苦しく、票にはな
りません。
 それだけだと、民進党は、また、選挙に負けるでしょう。

 消費税率の引き上げの延期は、アベノミクスの失敗を意味するという点
を、民進党は、批判しています。
 それは、その通りだと思います。
 日本経済が、いまも好調であれば、消費税率の引き上げを延期する理
由はありません。
 日本経済の調子がおかしくなったから、消費税率を引き上げられない
のです。 
 その日本経済を、ともかくも、いっときの低迷から、ここまで引き上げた
のは、アベノミクスの功績でしょう。
 しかし、安倍政権が誕生したのが2012年12月で、アベノミクスもそれと
ともに始まりましたから、もう、3年半です。
 3年半のうちに、アベノミクスは、息切れしてきました。
 
 では、アベノミクスとは何だったのかというと、次の3点です。
 第一は、大胆な金融緩和です。
 第二は、財政政策です。
 第三が、規制緩和、構造改革です。

 このうち、第一の大胆な金融緩和は、日銀の黒田総裁が実行に移し、
みごとに成功しました。

 黒田総裁は、2013年の春、日銀総裁に就任するとすぐ、資金を市場
に大量に出し、お金が市場に豊富にあるという状態にしました。
 公定歩合がすでにゼロ%まで下がっていたので、だれもが、もうこれ以
上の金融緩和は出来ないと考えていたところへ、資金を大量に出すとい
う形で新たな金融緩和をしました。
 それが、市場にとっては、「サプライズ」だったのです。
 そのため、株式市場が、急上昇しました。
 さらにまた、金融緩和によって円相場が円安に進み、民主党政権の75
円というとんてもない円高から、120円という円安へ、一気に変わりまし
た。
 それによって、企業の利益が上がりました。

 そこまでは、アベノミクスは、明らかに成功していました。
 いや、そもそも、初めは、「アベノミクス」という言い方さえなかったので
す。
 しかし、黒田総裁の金融緩和が成功し、日本経済が息を吹き返すと、
そこで初めて、「アベノミクス」という言い方が出てきました。
 ですから、「アベノミクス」という言い方があること自体、アベノミクスが成
功したということを意味しています。

 ところが、第二の財政政策、第三の構造改革が、どうにもこうにも、機能
しません。
 第二の財政政策は、もともと、財政が大赤字なのですから、政策発動の
余地は少ないのです。
 本命は、むしろ、第三の構造改革です。

 ところが、この構造改革が、いまひとつ、中身がない。
 安倍政権は、まず、「女性の活躍できる社会」、そして次に、「1億総活
躍」ということをテーマに掲げ、それを第三の矢としています。

  しかし、いずれも、少々、あいまい過ぎます。
 女性の活躍できる社会とか、1億総活躍とか、それはまったくその通りな
のですが、しかし、それは、政策というより、スローガンというか、テーマみ
たいなものです。
  アベノミクスで一番欠けているのは、この第三の矢の具体策です。
 
 この3年半は、日銀が、大胆な金融政策によって、時間を稼いでくれた
ようなものです。
 
 安倍首相が、今回、増税を2年半、先延ばしにしたのは、いってみれば、
日銀が稼いでくれた時間を、もう少し伸ばしたい、ということです。

 民進党が、安倍首相を批判するなら、そこまで踏み込んで批判しないと、
批判がブーメランのように民進党に帰ってきて、自分で自分の首を絞め
ることになってしまいかねません。

 しかし、これは、実は、安倍首相とか、民進党とか、言っている場合では
なく、日本をどうするか、という、実はものすごく大きな問題です。
 せっかくの参議院選挙ですから、本当は、そこまで議論を深めてほしい
と思います。まあ、なかなか、無理でしょうが。