前回の続きです。
10月12日の日経新聞に、「地球回覧」という記事が掲載され
ました。記事というか、定例のコラムで、ソウルの内山清行特派
員が書いています。
見出しは「朴大統領 試練の原則外交」です。
内容は、おおむね、次のようなものです。
***
朴大統領は、北朝鮮に対し、原則を重視し譲歩を嫌う外交方針
を貫いてきた。「原則外交」だ。
それは、過去の政権の間違ったアプローチを正すという思いに
基づくものだ。
柳吉在・統一相によると、過去の政権の対北政策は、次の3つ
の偏見に基づいている。
第一に、「韓国兄貴論」だ。韓国の経済規模のほうがはるかに大
きいのだから、韓国が譲るべきだという考え方だ。
第二は、「北朝鮮特殊論」だ。北朝鮮は、閉鎖的で独特の制度を
続けており、そういう内部事情を理解するべきだというものだ。
第三は、「戦略的思考論」だ。南北和解や平和維持という大きな
目標があるのだから、足元の小さな問題にいらだってはいけな
いという発想だ。
しかし、この3つの偏見で北朝鮮を甘やかした結果、北朝鮮が
韓国を挑発するたびに、韓国から北朝鮮に対価(譲歩)を与え、
結局のところ、北朝鮮が挑発すると韓国が譲歩するという悪循
環をもたらしたと、いまの韓国の保守層は不満を持っている。
もちろん、朴大統領もそう思っている。
だから、朴大統領は、絶対に北朝鮮に譲歩せず、あくまでも原
則を貫く外交をしている。
ところが、だ。
この外交は、結果的に何の成果ももたらさず、南北関係はこう
着するばかりだ。そのため、韓国内には、「いまの対北政策は、あ
まりにかたくなすぎる」として、緩和を求める声が、与党セヌリ
党や保守系メディアからも出始めた。
こう着する南北関係に、北朝鮮ばかりか、韓国側も、しびれを
切らし始めたのだ。
***
この記事がおもしろいのは、以上の解説に続くまとめの文章で
す。
すなわち、
「ところで、3つの偏見は、日本が韓国と向かい合ってきた視
点とそっくりなことに、朴氏は気づいているだろうか。
経済大国という兄貴分として、
植民地支配をした特別な事情を考慮し、
未来志向という目標を掲げてきた」
なるほど。
この3つの視点は、まさに、韓国が北朝鮮に対して持つ「3つ
の偏見」そのものです。
整理すると、
第一に、日本は経済大国という兄貴分だという「兄貴論」
第二に、日本は韓国を植民地(実際は併合)にしてきたのだか
らその事情を考慮しないとという「韓国特殊論」
第三に、日本と韓国は未来志向で行こうという「戦略的思考論」
――ということになります。
韓国が北朝鮮に対して持ってきた「3つの偏見」を、日本と韓
国の関係に置き換えると、まさしく、日本が韓国に持ってきた「3
つの偏見」、偏見というと誤解を招くかもしれないので、「3つの
見方」といってもいいかもしれませんが、ぴったりと当てはまり
ます。
この記事は、こう締めくくられています。
「(日本はそういう韓国との関係を)そろそろ終わりにするのか、
もう少しがんばってみるのか。日本の対韓外交も、分岐点に立っ
ている」
この記事の通りだと思います。
長い間、日本は、韓国から文句を言われるたび、あるいは、韓
国から挑発されるたびに、
「日本は経済大国なのだから、大人の態度を」
といってきました。
韓国が理不尽なことを言ってきても、
「かつて日本が韓国を併合したという特殊な事情を考慮して、
韓国のいうことを受け入れよう」
と対応してきました。
そして、歴代内閣は、
「過去は過去として、日韓は、未来志向で行きましょう」
と言い続けてきました。
その結果、韓国の要求は続き、そのたびに日本は譲歩するとい
う悪循環に陥りました。
日韓関係は、冷え込むばかりです。
そういう対応を、もう少し続けてみるのか。
そういう対応は、もう、終わりにするのか。
まさしく、日本の対韓外交も、分岐点に立っています。