福島原発の放射能を理由に、東北産の水産物を韓国が輸入禁止と
していることに、日本はWTO(世界貿易機構)に提訴し、一審で
は、韓国の輸入禁止はWTO違反としました。ところが、二審で、
逆転し、WTOは、韓国の言い分を認めました。日本は事実上の敗
訴です。
このことに関し、韓国がWTOの委員(3人)に対し、昨年末か
ら集中的に説得をしていたと、韓国のメディアが伝えました。内情
の暴露みたいな話です。
それによると、韓国政府は、ほうっておくと、韓国が負けると判
断していました。そこで、弁護士を中心に対策チームを作りました。
チームは、WTOの本拠地の近くにホテルに陣取り、WTOの委員
を、入れ替わり立ち替わり、説得したのだそうです。
対策チームの弁護士は、当初、韓国が勝てたらミラクルだと思っ
ていたそうです。国際法的には、日本の言い分が正しいということ
を分かったいたわけです。そこで、猛烈な説得工作、早い話が、い
わゆるロビー活動ですね、それを集中的に実施し、3人の委員から、、
韓国よりの判断が出るよう、仕向けたというわけです。
韓国の聯合通信の記事です。日本語に翻訳されていますので、次
に、転載しておきます。
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(世宗=聯合ニュース) 「世界貿易機構(WTO)控訴審で1審敗訴
をひっくり返すために昨年末、ジュネーブホテルにウォールーム
(War Room)をかまえて3週間、20人余りがほとんど一日中、ね
ずみ車が回転するようシミュレーションしながら対応したかいがあ
った。」
今回のWTO最終審で勝訴を引き出した最大功臣のチョン・ハヌ
ル(39)産業部通商紛争対応課長は12日、聯合ニュースとインタビ
ューで「同僚弁護士が今回の訴訟をひっくり返して勝てば『ミラク
ル』と言ったが本当にそうなったようだ」としてこのように話した。
米国通商専門弁護士出身で昨年4月、特別採用されたチョン課
長は「世界で最も権威ある控訴機構の一つであるWTO控訴委員3
人を説得するために、それだけ私たちが激しく対応して良い結果が
出てうれしい」として「奇跡のような逆転勝ち」評価に対する感想
を明らかにした。
彼は「これまで衛生および植物衛生(SPS)主要訴訟で私たちの様
に訴えられる国が勝ったことは一度もなく、1次事実審であまりに
も不利に負けたので最終審でひっくり返る期待は実際薄かった」と
伝えた。
彼は裁判対応過程2週後に目の中に突然腫瘍ができて帰国し腫
瘍除去手術を受けなければならないほど精神的ストレスが激しかっ
たという。特に食品安全に対する私たち国民の多大な関心も負担だ
ったと打ち明けた。
チョン課長は今回の控訴審進行過程に先立つ1審で日本食品自
体の有害性だけを根拠に判決を下した点が不当だ、という点を強調
するのに力を集中したと伝えた。それと共に福島原発事故後の環境
が日本食品に及ぼす潜在的危険性を検疫過程で除去することが韓国
政府の正当な権利であることを強調したのが功を奏したと分析し
た。
日本は食品400~500個の標本検査だけ行って危険性がないな
ら、韓国産とヨーロッパ産に比べても危険でないと主張した一方、
韓国は輸入食品の潜在的危険要素を最大限低くしなければならない
のは国家の当然の責務で日本に対する恣意的差別ではないという主
張を展開した。彼は「2審は事実関係より法的論理を扱うとために、
本質的に私たちの措置が正当だという確信を持って控訴委員らを最
大限直観的に説得するのに注力した」と付け加えた。
日本が控訴審判定後にさらに提訴する可能性については「部分的
手続きの透明性は私たちがもう少し高めるだろうが、これ自体は最
終判決が出た以上、これ以上日本はどうすることもできない」とし
た。
チョン・ヘグァン協力官は「上訴機構が出した報告書の内容を詳
しく見れば我が方の主張とほぼ大同小異である。上訴機構が私たち
の主張と異議申し立ての部分を適切だ、と受け入れたと見られる」
と話した。
現在、世宗(セジョン)市オフィステルで生活するチョン課長は
「他の部署と協力しながらわかったことは、民間が考えるより中央
行政機関の能力が優れているということ。これは私が公務員になっ
たからというリップサービスではない。みな遅くまで仕事をして激
しく悩む過程で次第に弁護士の実力も向上したようだ」と付け加え
た。
キム・ソンジン記者 [聯合ニュース]
***
ご覧のように、韓国は、2審を担当するWTOの委員会の委員3
人に、猛烈な説得工作をしたことが分かります。
日本が事実上敗訴する決定が出たとき、日本の新聞各紙は、解説
で、
・ 決定の文章があいまいだ。
・ 玉虫色の決定で、内容がはっきりしない。
ということを指摘しました。
はっきり日本が負けたという決定になっているわけではなく、だ
から、日本の新聞は、日本が敗訴といっても、「事実上」敗訴と解
説したわけです。
菅官房長官が「日本が負けたわけではない」と話したのも、同じ
理由でしょう。
それこそが、韓国の説得が効果があったということです。
東北産の水産物からは、基準を超す放射線は出ておらず、それ
を輸入禁止にするのは、どう見ても、WTO違反です。
しかし、韓国があまりに猛烈な説得をするものだから、WTOの
委員も、情にほだされてなのか、面倒くさくなってなのか、適当に
付き合っておこうと思ったからなのか、ともかく、韓国の言い分を
入れた決定をだしてしまったのです。
一方の日本政府は、勝つと決め込んで、韓国のような説得工作を
ほとんどしていなかったようです。
WTOの委員というのは、いってみれば、判決を出す裁判官みた
いなものです。その裁判官に、訴訟の当事者が自分に有利なように
説得工作をするというのは、ありえない話です。
しかし、韓国は、それをやった。
それなのに、日本は、何もしなかった。
これは、外交敗戦というほかないでしょう。
こんなことを続けていれば、日本は、国際的な情報戦、PR戦、
広報宣伝戦で、負け続けます。
これを、はっきり、外交敗戦と認識し、今後の対策を立てなけれ
ばならないと思います。
このまま負け続けるわけにはいかないのです。