いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

モリカケで、野党の支持率は上がりません・・・安倍首相の失敗を責めたてるだけでは、国民の支持は得られません。いい加減に気づいたらどうでしょう。

2018年05月21日 13時20分30秒 | 日記

 きょうは5月21日の月曜日です。先週から、新聞、テレビが定例の世論
調査をし、それぞれ、結果が発表されています。
 それによると、安倍内閣の支持率は、どこも40%に足りない数字で、低
迷していますが、前回より、わずかながら上昇しているようです。
 支持率の低迷は、もちろん、森友学園、加計学園をめぐるあれこれが原
因です。最近は、森友学園より、むしろ、加計学園が問題となっています。
加計学園の問題では、柳瀬元秘書官が国会に参考人として呼ばれ、証
言しました。

 野党と、あえて付け加えるなら朝日新聞は、まだまだ森友学園と加計学
園で、安倍首相を追求するようです。
 とくに、立憲民主党は、辻元国対委員長が、モリカケを追求するんだと、
盛んに気勢をあげています。

 しかし、野党は、勘違いをしてはいけません。
 森友学園、加計学園で、このまま安倍首相を追求しても、国民の支持
は、野党には向きません。
 モリカケで、野党の支持率は上がらないのです。
 野党は、どうして、そんなことがわからないのでしょう。

 なるほど、安倍首相の支持率は、落ちるかもしれません。
 しかし、立憲民主党、国民民主党はじめ、野党の支持率は、モリカケで
は、上がりません。
 
 なぜか。
 第一に、国民は、もう、モリカケには、うんざりしているということです。
 かつてロッキード事件では、田中首相が逮捕されました。それは、次期
航空機の採用をめぐり、田中首相が巨額の賄賂を受け取ったからです。
 現金の授受があったのです。
 野党や、反安倍首相の新聞、テレビは、モリカケ問題がいかに大きな問
題であるかを強調しますが、モリカケで問題になったのは、担当した官僚
が安倍首相の意向を「忖度」したかどうかです。あるいは、首相の意向が
あったのかどうかです。
 逆にいえば、現金の授受などは、一切、出ていないのです。
 現金の授受がないということは、汚職ではないということです。
 言ってみれば、安倍首相の「政治姿勢」は問題になるかもしれないけれ
ども、「汚職」はまったく問題になっていないということです。
 これが汚職になるのであれば、国民も、うんざりしたりせず、真剣に注目
するでしょう。
 しかし、これは、どう見ても、汚職ではありません。
 モリカケを、ロッキード事件や、アメリカのニクソン大統領が絡んだウオ
ーターゲート事件になぞらえるのは、そもそも、無理があるのです。

 第二に、野党にとって、さらに致命的なのは、モリカケが、ただただ、安
倍首相の失策、失点、ミスだけを追求しているに過ぎないということです。
 簡単にいえば、野党は、人の失敗ばかり、責めているのです。
 モリカケで安倍首相のミスを攻撃して、もし、安倍首相が退陣したとしま
しょう。
 野党は、意気が上がるかもしれません。
 しかし、国民としてみれば、ただ単に相手、つまり安倍首相の失敗だけ
を追求した政党に政権を任せられるかというと、とても、任せる気分には
ならないと思います。
 相手の失敗をあげつらった人が、じゃあ、実際に何かを担当する立場
になったとき、何も出来なかった、というのは、だれもが身の回りで、経験
することでもあります。
 相手のミスを責めたてた人が、周囲から好感を得て、支持されるというこ
とは、まず、ないのです。
 それどころか、むしろ、イやなやつだと思われるのがオチではないでしょ
うか。
 同じように、モリカケで、どんなに安倍首相を責めたてても、野党の支持
が高まるわけではありません。
 
 実は、それを、私たちは、2009年に成立した民主党政権で、経験して
しまったのです。
あれだけ自民党を追求し、責め立てた民主党が、いざ、政権を取って
みると、何もできなかった。
国民は、それを見てしまったのです。

立憲民主党も、国民民主党も、希望の党も、野党は、そのとき、学んだ
はずです。
野党は、もう、いい加減、しっかりせよ。



板門店の南北首脳会談が残したもの・・・・金正恩氏はしたたかです。メディア、とくにテレビは、ものの見事にだまされました。

2018年05月08日 17時09分21秒 | 日記

朝鮮の金正恩氏は、まことにしたたかな人物です。
 したたかとしか、いいようがありません。

 まず、核実験を繰り返しました。
 初めは原爆の実験でした。
 最後は、水爆の実験に成功したと主張しました。
 同時に、核弾頭を積めるミサイルを開発し、その打ち上げ実験を繰り返
しました。
 その実験は、ことごとく、公開しました。
 最終的に、アメリカに届くICBM(大陸間弾道弾)の開発に成功したとア
ピールしました。
 
 そのうえで、テレビで、いつものアナウンサーが、毎度おなじみの居丈
高な調子で、侵略者には核ミサイルを撃ち込むと言い、ついには、アメリ
カを地球から消すとまで、脅しました。

 その間に、国のナンバー2である叔父を、みんなの見ている前で逮捕し、
処刑しました。
 去年17年のバレンタインデー、2月14日には、異母兄弟を、海外の空
港で、毒薬を使って殺すということまでやりました。
 ナンバー1の座を取って変わる可能性のある者は、容赦なく消すという
ことでしょう。

 これ以上ないほど、危険な国というイメージを作りました。
 実際、アメリカは、いつ北朝鮮を攻撃してもおかしくないという雰囲気に
までなりました。

 北朝鮮は危険な国だ。
 金正恩氏は大変危険な人物だ。

 そういう空気ができ、今年2018年の初めごろには、北朝鮮に対する警
戒感が、かつてないほど、高まりました。
 一触即発というのは、このことだろうという感じでした。

 ところが、2月に平昌五輪が開かれるのを前に、金正恩氏は、突然、自
らの姿勢を180度、変えてみせました。
 韓国との統一チームを作ろうという呼びかけに応じ、いきなり、韓国と仲
良くしたいという姿勢を見せたのです。
 女子アイスホッケーでは南北統一チームを作り、美女応援団を送り込み
ました。
 金正恩氏の妹も、韓国にやってきました。

 そして、板門店です。
 板門店で、金正恩氏は、韓国の文在寅大統領と会い、文大統領が差し
出した手を握りながら、軍事境界線をひょうきんな動作で、ぴょんと飛んで
越えました。
 我々が初めて見るような笑顔でした。
 そして、今度は、文大統領の手を引いて、軍事境界線を、南から北へ、
ふたりで、またぴょんと飛び越えたのです。
 金正恩氏も、文大統領の、ともに、あふれんばかりの笑顔でした。

 これで、金正恩氏のイメージは、もののみごとに変わってしまいました。
 韓国のメディアはもちろん、日本のメディア、とくに日本のテレビは、この
日から、金正恩氏を、突然、好感をもって報じ始めたのです。
 TBSの日曜日の報道特集は、
 「歴史は、こうやって、軽やかな足取りで、大きく動く。私たちはそれを目
の当たりにしています」
 「こうやって歴史が動き始めたのに、日本は、カヤの外に置かれている
のではないでしょうか」
 「日本政府も早く対話に乗り出すべきではないでしょうか」
 と訴えました。

 いやもう、ものの見事なだまされ方です。
 メディアが、こんなに簡単にだまされていいものかと思います。

 板門店で、金氏と文大統領は、板門店宣言というものを出しました。
 そこには、「非核化」ということが打ち出されました。
 金氏は、核実験場を廃棄することも提案し、外国からの侵略がなければ
核を使うことはない。もう核実験はしないとも、言いました。
 その際、「もう、夜中に(核実験の報で)起こされることはないから、安心
してください」と語り、文大統領が笑顔をみせました。

 TBSは、「金と文氏の歴史的な会談で、非核化が宣言された」というよう
な言い方をしていました。
 「それなのに日本は・・・」というわけです。

 しかし、金氏が、核開発をし、核実験を繰り返さなければ、そもそも、北
朝鮮には、核はなかったのです。
 核を開発したのは、ほかならぬ北朝鮮自身です。

 北朝鮮が核を開発しなければ、もともと、核はなかったわけです。
 もともと、「非核」だったわけです。
 それなのに、金氏と文大統領が、非核化を宣言したのは歴史的だなど
と評価するのは、根本的なところで、勘違いしています。

 そもそも、「非核化」というのは、いくつかの解釈があります。
 それは、
1)  北朝鮮の非核化 
2)  朝鮮半島の非核化
3)  世界の非核化
――です。

 あれだけ核実験をした後、その国の指導者が「非核化」といったのです
から、前提知識なしに、ふつうに読めば、あの板門店宣言の「非核化」は、
北朝鮮の非核化と読めるでしょう。

 しかし、その後の北朝鮮の対応を見ていると、北朝鮮は、「朝鮮半島の
非核化」を言っているように見えます。それは、もちろん、韓国に駐留して
いる米軍の基地に、アメリカの核があるはずだとして、米軍基地の核も撤
去せよと主張しているわけです。
 実際に韓国の米軍基地に核があるとは、アメリカも明らかにしたことはな
いと思いますが、北朝鮮は、そう決めつけているわけです。

 さらにまた、文氏との会談のあと、北朝鮮のテレビ放送は、「世界から核
をなくすことに取り組む」というような政府声明を流していました。

 金氏の「非核化」という言葉を冷静に読めば、それは、北朝鮮は核を持
っているんだ。そのことを、アメリカは、世界は認めよーーとアピールして
いるように見えます。
 いや、アピールそのものです。
 そうです。
 これは、北朝鮮による「核保有宣言」なのです。

 核保有国になったからこそ、「非核化」という言葉を口にできる。
 孤立する北朝鮮の立場で、核を持たずに、「非核化」といったところで、
だれも耳を傾けてはくれないでしょう。

 板門店宣言の「非核化」は、実は、北朝鮮の核保有宣言であり、北朝鮮
が自らを核保有国になったと宣言したものだったんだろうと思います。

 それを、「歴史は軽やかに動いた」などと放送するようでは、まあ、ものの
見事にだまされたというほか、ないでしょう。

 あの首脳会談のあと、新聞はまだ冷静でしたが、テレビでは、金氏に賛
意を送るコメンテーターが目立ちました。
 あるコメンテーターは「私が生きている間に、金正恩氏に対し、安倍首
相より好感を持つ日が来るとは思いませんでした」というコメントを残して
いましたが、これには、当ブログも、そこまでだまされるか?と、突っ込み
たくなりました。
 そもそも、金正恩氏は、父親が亡くなったあと、世襲で指導者になった
人物です。選挙で選ばれたわけでもなんでもありません。独裁者です。
 それを忘れ、「安倍首相以上に好感を持った」とは、根っこのところで、
だまされています。
 国のナンバー2の叔父を会議場で大勢の面前で逮捕して処刑し、異母
兄弟を毒殺する。
 そういう人物に「好感」を持つわけですか。

 実は、板門店の会談の直前に、NHKが、「キムジョンウンの野望」という
特集番組を組みました。
 その中で、北朝鮮から逃げ出した脱北者、北朝鮮政府の元高官が、次
のように語る場面がありました。

  金正恩氏は馬鹿ではない。非常に頭の切れる人物だ。彼は、作戦と
して、核を開発し、ミサイル実験を行い、もう、ぎりぎりまで、緊張を高める。
アメリカも挑発し、本当に一触即発というところまで危機をあおる。そして、
その危機が頂点に達したところで、今度は一転、いきなり、緊張を緩和し
て笑顔を見せる。それが、彼の作戦だ。危機がぎりぎりまで高まったあと、
そうやって突然、笑顔を見せられると、だれもが、なーんだ、いい人間じゃ
ないかと思ってしまう。とくに、メディアは、それでころりとだまされるの
ではないだろうか。
 それが、金正恩氏の作戦だ。
 ――と、脱北者は、そう分析していました。

板門店会談が終わってみると、ものの見事に、この脱北者の言葉通りに
なりました。
これだけ冷静な分析が、NHKで放送されていたわけです。
別に、脱北者でなくとも、日本でもアメリカでも、冷静に見ていれば、こうし
た冷静な分析ができるはずです。
どうして、ころりとだまされるのでしょう。

こんなことで、ころりとだまされていては、先は暗いとしかいいようがありま
せん。メディアは、もう少ししっかりせよ、と言いたいですね。