いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

安倍首相が経済界に賃上げを要請・・・まったく正しいのですが、それにしても空前絶後のことです。

2013年09月27日 01時24分24秒 | 日記

 安倍首相が、経済界に対して、盛んに、賃上げを求めて
います。
 26日の木曜日には、自民党の高村副総裁が、経団連の
米倉会長に会い、はっきり、賃上げをしてほしいと要請し
ました。
 
 こういうのは、珍しい。
 珍しいというより、ほとんど初めて、空前絶後のことで
はないでしょうか。

 日本の伝統的な経済学、とくにマルクス経済学の考え方
では、
 資本 対 労働
 という図式が打ち出され、政府は、資本の同じ側に立ち
ます。
 政府・資本 対 労働
 という図式になります。

 政府・資本に対し、賃上げを求めるのは労働側でした。
 労働側という場合、具体的には、労働組合とその連合体、
そう、かつては、総評や同盟、いまは連合です。
労働側が資本に対して賃上げを求める運動が、
  春闘
 だったのです。
  
 ところが、いまや、政府が、資本に対して、賃上げを求
めている。
 これは、珍事といえば語弊があるかもしれませんが、ま
ことに空前絶後のことです。

 経済学、とくに近代経済学的には、安倍政権の賃上げ要
請は、まったく正しい。
 日本の国内総生産(GDP)は500兆円です。
 そのうち個人消費が300兆円を占めます。
 政府が公共投資を増やすより、個人消費が増えるほうが、
経済成長には、よほど効果があります。
 もし、国民ひとり一人が、明日から買い物を10%だけ
増やそうと決めたとします。
 きょうまで毎日の買い物を1000円で我慢していたも
のを、明日から1100円に増やすわけです。
 そうすると、個人消費300兆円は、330兆円に増え
ます。
 その結果、GDPは、500兆円から530兆円に増え
ます。
 500兆円が530兆円に増えたわけですから、30兆
円の増加、ということは、500兆円分の30兆円で、6
%の増加になります。
 GDPが6%増えたわけで、それはつまり、日本経済が
6%成長というものすごい高成長になるということを意味
するのです。

 私たちひとり一人が明日から10%多くものを買おうと
決めただけで、日本経済はたちまち6%成長という高成長
を実現させてしまうわけです。

 個人消費というのは、そのぐらい、大きな影響力を持っ
ている。

 日本経済がデフレから脱却し、成長軌道に乗るには、個
人消費の拡大が、なによりも必要になります。

 ところが、この20年間、個人消費は、全然増えてこな
かった。
 それはなぜかといえば、ひとつには、長い不況で、給料
が上がらなかったからです。上がらないどころか、給料が
下げられた。
 
 個人消費は、賃上げがなければ、増えません。
 逆にいえば、賃上げがあれば、給料が増えて、個人消費
が増え、日本経済は成長に向かうのです。

 アベノミクスがこれから先もうまく行くかどうか、それ
は、とにもかくにも、個人消費の拡大にかかっています。

 だから、安倍首相と政府が、経済界に対し、賃上げを求
めるのは、まったく、正しいのです。

 大胆な金融緩和とそれに伴う円安で企業業績は回復して
います。
 しかし、企業の利益が増えても、企業がその利益を内部
留保に回してしまえば、賃金が上がりません。
 そんなことになったら、ここまで順調に来た経済政策の
好循環が、そこで切れてしまいます。

 企業は、大胆な賃上げを実行するべきでしょう。
 それこそが、日本経済が復活するための切り札です。

 しかし、それにしても、と思うのです。
 労働組合は、そして、労働組合の連合体である連合は、
いったい、何をしているのかと。

 いま、企業が賃上げをしそうなこの時期に、行動しない
連合とは、いったい何なのでしょうか。

 マルクス経済学における 資本 対 労働 という図式
は、どこかに消えてしまったように見えます。
 この図式は、戦後、長い間、日本の基本モデルみたいな
ところがあったのです。
 とくに、社会主義系の人たちは、みな、この図式を信じ
てきました。

 戦後の日本の基本モデルであったこの考え方は、いま、
深刻な見直しを迫られているように見えます。



東京五輪の招致と英語・・・プレゼンの成功は英語が話せたからではありません。内容があったからです。

2013年09月18日 01時43分55秒 | 日記

 東京五輪の招致メンバーは、素晴らしいプレゼン
テーションをしました。
昨夜、というのは9月17日の夜ですが、NHKのBS放送で
あの日のプレゼンをノーカットで再放送していたので、改め
て見ましたが、何度見ても感動します。


 あのプレゼンは、なぜ成功したのでしょう。

 東京五輪が決まった日から、しばらく、テレビは、この
ニュースで持ちきりでした。
 その中で、ひとつ、興味深い映像がありました。

 当日、日本のテレビ局のスタッフが、大勢、現地ブ
エノスアイレスに入って取材していました。
IOCのロゲ会長が
 「トウキョウ」
 と発表した瞬間の招致団の喜びようは、今後も、長く伝
えられるでしょう。
 
 さて、興味深いのは、そこからです。
 ある日本のテレビ局のスタッフがその場にいたところ、
現地アルゼンチンを初め、取材していた各国のテレビ局か
ら、取材を受けてしまったのです。
 映像を見ていると、たまたま、そのスタッフのそばにい
たどこかの国のテレビ局が、
 「おめでとう。よかったね。感想はどう?」
 とマイクを向けたのです。
 すると、その近くにいたテレビ局も2,3局、やってき
て、そのスタッフに、同じようにマイクを向けたのです。
 海外のテレビ局が日本人の反応を知りたいのは当然
です。そこへ、都合よく日本人がいたのですから、
こりゃ、いいやーーと、マイクを向けたわけです。
 まるで、即席の記者会見のようになりました。
 ミニ・プレゼンですね。

 すると、そのスタッフは、一生懸命、英語で答え始めま
した。
 「ジャパン イズ ア モースト エキサイティング 
カントリー」
 「アンド ジャパン イズ セーフ・・・」
 とかなんとか、このへんまで、なんとか答えました。
 しかし、その後が、続きません。
 彼を取り囲んだテレビ局は、次の言葉を待ってマイクを
向け続けるのですが、そこから先は、
 「アイ アム えーっと、あの、ハッピー・・・」
 という感じで、詰まってしまいます。
 各国のテレビ局は、辛抱強く待っていましたが、どうに
も言葉が続かなくなったので、彼の所を去っていきました。

 このスタッフは、
 「俺も、もっと英語が出来たらなあ」と思ったかもしれ
ません。
 あるいは、見ていた視聴者も、そう思ったでしょう。

 でも、違うのです。

 もし、その場でパッとマイクを向けられ、
 「通訳がいますので、日本語でどうぞ」
 と言われたら、どうだったでしょう。
「東京五輪、決まってよかったですね。感想はどうです
か? 日本語でけっこうです」
 と言われたら、どう答えるでしょう。

 「えーっ、急にいわれても、えーっと、はい、うれしい
ですね」
 という感じになるのではないでしょうか。

 東京五輪が決まった感想を、日本語でいいので教えてく
ださいーーと言われても、実は、案外、答えようがないの
ではないでしょうか。

 そうなんです。
 英語が出来るかどうかという問題ではないのです。
 このテレビ局のスタッフが、英語が出来たかどうかとい
う問題ではありません。

 では、問題はなにか。
 それは、感想を聞かれたとき、答えるべき内容を、ちゃ
んと持っているかどうかーーということなのです。

 つい、英語がもっと出来たらなあと思ってしまいますが、
そうではありません。
 日本語でうまく答えられないのであれば、いくら英語が
上手でもうまく答えられるはずがありません。

 プレゼンが成功するかどうかは、英語が出来るかどうか
という問題ではないのです。
 それは、プレゼンで話す内容があるかどうか。プレゼン
で話す内容が豊かかどうか。それが大事なのです。

 日本の招致団のプレゼンテーションが成功したのは、プ
レゼンテーションで話す内容が豊かだったからです。
 決して、英語がしゃべれたからではありません。
 もちろん、英語がしゃべれるほうがいいに決まっていま
す。しかし、本質は、英語がしゃべれるかどうかではあり
ません。
 本質は、話す内容がおもしろくて豊かかどうかにありま
す。

 日本語で話す内容が何もない人が、英語で話したからと
いって豊かな内容になるわけではないのです。
 逆に、日本語で豊かな話の出来る人であれば、海外の人
は、通訳をつけてでも、ちゃんと聞こうとします。

 英語ができるにこしたことはありません。
 でも、問題は、英語ができるかどうかではありません。
 問題は、伝えるべき内容があるかどうかです。




五輪とアマ、そして、プロ・・・最後まで五輪に参加しないプロスポーツは?

2013年09月10日 17時58分40秒 | 日記

 東京五輪で、きょうは、ちょっと私の趣味の話を書きます。
 まあ、余談として、お読みいただければと思います。

 アマチュアリズムの権化であるブランデージ会長が亡くなった
あと、五輪は、どんどん、商業化が進みました。
 とくに1984年のロサンゼルス大会を機に、商業化は一気に
進み、プロ選手が参加するのも認められるようになりました。
アメリカがプロのバスケットボール選手を参加させ、いわゆる
ドリーム・チームを作って出場したときは、さすがに、大きな
ニュースになり、みな、驚きました。最近はドリーム・チーム
もそう簡単には勝てないようですが、初めて出場したときは、
対戦相手の選手も憧れの選手とプレーできるというのでボーッ
としてしまい、試合にならないという感じさえありました。

 テニスもプロ選手が出場し、日本でも、杉山愛選手は錦織選手
らが出ています。

 最後に残ったゴルフも、プロ選手が参加するようになり、東京
五輪が決まった日には、松山選手が「東京五輪で優勝したい」と
コメントしていました。

 サッカーも、出場メンバーはほぼプロで固められ、試合を見て
いるうちに、五輪なのか、ワールドカップなのか、分からなくな
ってしまいます。

 陸上100メートルのボルト選手も、アマチュアのように見え
ますが、スポンサー企業から多額の報酬を得ているはずです。
 棒高跳びのブブカ選手も、現役時代、世界記録を更新するたび
にスポンサー企業から賞金が入るというので、話題になっていま
した。

 日本が強い野球も、初めのころは、社会人と大学生を中心にチ
ームを作っていましたが、相手がプロを出してきます。結局、日
本もアマでは勝てないというので、アテネ五輪のころから、プロ
野球の選手を中心にチームを作るようになりました。最近は、そ
れでも、なかなか勝てなかったりします。それどころか、IOC
(国際オリンピック委員会)は、米大リーグに、もっと大リーグ
の選手を出してくれと要請していました。大リーグ側が、五輪は
大リーグのシーズン中であることを理由に、この要請を断り続け
ています。野球が五輪の種目からはずれたのは、大リーグ側のそ
ういう態度が理由とされているほどです。

 それほどプロ選手の参加が当たり前になった五輪ですが、それ
でも、プロが参加していない競技があります。
 プロレスです。
 プロレスの選手も、軽量級で、日本の予選に出た選手がいます
が、それは、あくまで個人の資格であり、例外的な挑戦でした。
 
 プロレスのレスラーは、五輪には参加していません。
 もちろん、アマチュアのレスラーが、五輪で活躍してプロレス
ラーになったという例は、少なくありません。
 亡くなったジャンボ鶴田さんがそうでした。
 アメリカのプロレスで活躍しているカート・アングル選手は、
金メダルを取った選手です。
 柔道からプロレスに転向した選手も、少なくありません。坂口
選手、小川選手、最近では、金メダルの石井選手もプロレスに転
向しています。

 しかし、プロレスの選手が五輪に出たという話は、聞きません。
 アントニオ猪木さんや、もう亡くなりましたが、ジャイアント
馬場さんが、五輪に出ていたとしたらと思うと、想像するだけで、
わくわくします。

 プロレスの選手は体が大きいので、出るとすれば、みな、重量
級になります。
 もちろん、アマレスのマットは、プロと違って、ロープがあり
ません。ですから、ロープに飛んで、その反動で技をかけるとい
うようなことはできません。
 かなり制約はあるでしょう。
 しかし、プロレスの選手は、たとえば、ドロップキックという
ような技をかけるとき、いま立っている場所から、そのまま飛び
上がって、技をかけています。
 身体能力は素晴らしいものがあります。

 カール・ゴッチの18番だったジャーマン・スープレックスや、
ルー・テーズの切り札だったバック・ドロップなどは、実に鮮やかな
レスリングの技です。

 とくに、バック・ドロップは、柔道でも、裏
投げという技で存在します。

 裏投げは危険なので、学生柔道ではあまり使わないようですが、
五輪の柔道を見ていると、中央アジアの国の選手は、よく使って
います。
 シドニー五輪の柔道の決勝で、篠原選手がドイエ選手に世紀の
誤審で負けたのは、内またと裏投げの打ち合いを、どっちがどっ
ちが、主審が判断しきれなかったのが原因です。


 プロレスのレスラーが五輪に出てはいけないという話は、聞い
たことがありません。
 たぶん、日本国内の大会に出て、いい成績を収めれば、五輪に
出ることも、理論的には可能なのだろうと思います。

 それでも、プロレスから五輪へという声が出てこないのは、プ
ロレスは、ショーとしての要素が強いということが、暗黙の了解
となっているからでしょう。
 プロレスが真剣勝負かどうかという議論は、もう、昔からあり
ました。プロレス創世記に、木村政彦 対 力道山という有名な
試合があり、力道山が勝ちます。このとき、実は、事前の打ち合
わせで、試合は引き分けにするという了解があったんだというこ
とを、2年ほど前に出版された「木村政彦はなぜ力道山を」とい
う本が明らかにしています。

 アメリカのプロレスの団体WWEは、ワールド・レスリング・
エンターテインメイトといいます。最後のEは、エンターテイン
メント(娯楽)のEなのです。ものすごい試合をしますが、あら
かじめ、筋書きがあることは、見るほうも分かっています。

 それでも、試合は、本当にものすごい。
 選手は、筋肉のカタマリのようなもので、全身を筋肉の鎧で覆
っています。首の骨が折れたりすると大変なので、そんなことが
ないよう、首の周辺は、筋肉でがっちり守っています。

 そうやって鍛えに鍛えた大男たちが、毎日、真剣勝負をやって
しまうと、たぶん、大けがが相次ぐのではないでしょうか。
 鍛えに鍛えた大男が試合をする、しかも、プロですから毎日試
合をする。
 それを実現して、しかも、大けがをしないためには、あらかじ
めシナリオを作って、そのシナリオに沿って、試合をするという
ことが必要になってきます。
 プロレスが真剣勝負かどうかというのは、そこに、おのずと、
回答があるのです。

 プロレスラーの鍛え方は、半端ではありません。
 みな、190センチ前後、100キロ超の大男です。
 強い。
 
 しかし、アマチュアのレスリングとは、ルールが違いすぎます。
というより、別のルールです。
 だから、五輪のプロ化が行き着く所まで進むとしても、きっと、
プロレスだけは、五輪には参加しないだろうと思います。
 もしかすると、五輪に参加しない最後のプロスポーツになるかも
しれません。

 それでも、やっぱり、残念です。
 アントニオ猪木が、五輪のマットに立つところを見てみたかっ
たですね。
         ***
 きょうは、プロレスファンの趣味の話でした。
 





五輪は東京に・・・「トウキョウ」は日本にとって魔法の言葉となりました。

2013年09月08日 18時51分30秒 | 日記

 2020年の五輪が東京に決まったニュースは、久しぶ
りに、日本と日本人が、一緒になって喜んだのではないで
しょうか。

 ロゲ会長が、封筒を開け、
 「トウキョウ」
 と言った瞬間は、うれしかったですね。


 もちろん、五輪に反対する人もいます。
 反対論を封じるようなことがあってはいけません。

 しかし、今回は、本当に多くの日本人が、快哉を叫んだ
のではないでしょうか。
 長いデフレに苦しみ、失われた10年、失われた20年
の間、あまりいいことがありませんでした。
 そういう空気を、なにか、いっぺんに払拭してくれるよ
うな、そんな五輪決定でした。

 そういう側面から見れば、今回、東京に五輪が決まった
のは、いわゆるアベノミクスの4本目の矢になりそうです。
 
 アベノミクスの3本の矢を、整理しておきましょう。
 第1の矢が、大胆な金融緩和です。
 これは、日銀の黒田総裁が実行し、効果が出ています。
 
 第2の矢が、財政政策です。
 これは難しいところで、金融政策とともに日本経済を浮
揚させるという意味合いと、財政赤字に対応するという意
味合いと、正反対の役割を持たなければなりません。
 ただ、いまのところは、景気刺激の方向に向いています。
問題は、消費税率の引き上げを実施するかどうかです。
 
第3の矢が、成長戦略と呼ぶ一連の政策です。
 ひらたくいえば、第1の矢と第2の矢によって日本経済
が息を吹き返し、元気が戻っている間に、第3の矢で日本
経済の復活を完全なものにしようというわけです。
 第3の矢は、すでに発表されていて、女性の活用という
のが、ひとつの柱になっています。
 ただし、この第3の矢が、正直、迫力に欠けるのです。

 それも無理からぬところで、第3の矢、つまり、日本経
済の成長戦略が簡単に見つかるのであれば、日本はとっく
にデフレから脱却していたでしょう。

 第1の矢と第2の矢、とくに、第1の矢である大胆な金
融緩和によって、日本経済が元気を回復している間に、第
3の矢で経済をしっかり立て直すことができるかどうか。
 第1の矢の効果が切れてしまう前に、なんとかしなけれ
ばなりません。

 それが、少しこころもとない状況になっていました。

 そこに出てきたのが、東京五輪です。
東京への五輪招致は、前回、みごとに失敗しています。
 今回も、正直、当初は、あまり期待が高くありませんで
した。
 というより、前回の招致が失敗したあと、二度目の招致
に打って出るのかどうか。むしろ、二度目は、もうやらな
いのではないかという空気さえあったのです。
 猪瀬知事になって二度目のトライをすることになって
も、盛り上がりは鈍かった。
 転機となったのは、昨年のロンドン五輪で、日本の選手
団が大活躍したことでしょう。日本選手の活躍で、にほん
では、東京五輪を支持しようという空気が、にわかに高く
なってきました。

 もうひとつの転機は、昨年12月の総選挙でした。
 民主党は、五輪を政府が支援することに、どうにも及び
腰でした。
 しかし、総選挙で自民党が再び政権の座に就くと、安倍
首相は、五輪招致に積極的な姿勢を見せたのです。

 実際、年が明けて、2013年になると、東京への招致
活動は、どんどん盛り上がってきました。

 アベノミクスは、3本の矢といいますが、しかし、実際
のところは、日本経済が復活するのではないかという期待
に大きな意味があるのです。
 アベノミクスの核心は、個別の政策というより、日本経
済は復活しそうだ、元気になりそうだという期待を、国民
が持ったことにあります。
 経済学では、景気の気は、元気の気とということがあり
ます。
 国民が元気になれば、景気もよくなるという意味です。

 そういう視点で見ると、東京五輪は、まさしく、アベノ
ミクスの4本目の矢になります。
 
 ジャック・ロゲ会長が封筒を開き、
 「トウキョウ」
 と言った瞬間の日本の喜びようは、すばらしいものでし
た。
 現地にいた五輪招致団の喜びようはもちろんですが、テ
レビで放送された日本各地の人たちの喜びようも、大変な
ものです。

 私たち日本人が、これだけみんなで喜んだことは、近ご
ろ、ちょっとないでしょう。

 東京五輪は、これから先、日本人の元気の源になります。

 しかも、東京五輪は、7年後です。
 7年後というのは、絶妙の期間です。
 来年開かれるのなら、効果は1年で消えてしまいます。
 10年だと長すぎるかもしれません。

 7年後に東京に五輪が来る。
 それが確定した。
 これは、7年間の魔法です。

 シンデレラの魔法は、夜12時で終わってしまいました。
 しかし、東京五輪の魔法は、7年間続きます。

 日本経済の再建、大震災からの復興、福島原発の事故か
らの復興を含め、そういったことすべてを、魔法の7年間
の間に、実行しなければなりません。
 
 ロゲ会長の
 「トウキョウ」
 という言葉は、私たち日本人にとって、
 魔法の言葉となりました。

 私たち日本人が、こんなに喜びを爆発させたのは、
本当に久しぶりです。
これこそが、日本経済が復活するための魔法とな
ります。


東京の五輪招致と汚染水漏れ・・・こういうときにも、日本の情報発信力の弱さが出てしまいます。

2013年09月07日 14時47分15秒 | 日記

 2020年の五輪は、東京かマドリードか。 
 明日9月8日の朝には、答えが出ています。
 東京が落選するとすれば、大きな原因は、間違いなく、
福島原発の汚染水の処理の問題でしょう。

 いや、タンクの汚染水が漏れたことは、もちろん大きな
問題ですが、むしろ、汚染水漏れが分かったあとの対応が
より大きな問題です。

 東電と政府の対応はもちろんですが、いまは、五輪のこ
とですので、現地・ブエノスアイレスでの会見での対応を
取り上げます。

 日本の招致委員会の会見の模様が、繰り返し、テレビで
放送されています。
 それを見ていて、日本の情報発信力の弱さを、痛切に感
じるのです。

 5日の金曜日の会見では、サッカーの川渕三郎氏に対す
る質疑がありました。
 サッカーの川渕氏まで、五輪招致でブエノスアイレスに
行っているとは、知りませんでした。ちょっと驚きました。
 さて、各国の記者が、福島の汚染水は、影響ないのか、
安全なのかと質問しました。
 なぜか、これに、川渕氏が答えていました。
 もしかすると、各国の記者が川渕氏に答えるよう求めた
のかもしれません。

 問題は、川渕氏の答えです。
 まず、
「福島原発の汚染水は、政府が直接対応することになり
ました」
 と答えました。
 ここまでは、いいでしょう。
 
 その次が大問題でした。
 「原発の話は、日本の招致委員会の広報担当が窓口にな
っております。よろしくお願いします」
 とやってしまったのです。

 日本のサッカー界を代表し、五輪招致にブエノスアイレ
スまで来た人物が、原発の話は広報担当が窓口だから広報
担当に聞いてくださいーーと言うとは、なんということで
しょう。大失敗というほかないでしょう。

 各国の記者は、川渕氏を、日本のサッカーを引っ張って
きた立役者のひとりとして、認識している。
 そういう立場の人だからこそ、福島の問題について、な
にか考えがあるだろう。そういう人だからこそ、話を聞い
てみたい。
 各国の記者は、そう思って、質問をしているのです。

 それなのに、
 「広報担当が窓口なので、よろしくお願いします」
 と答える。
 では、ミスター・カワブチは、自分の考えを持っていな
いのかと思われてしまう。
なんだ、日本のサッカーの立役者だからというので質問
したのに、自分では何も考えていないのかと、思われてし
まう。

 「それは広報担当が窓口です」
 と答えるのであれば、むしろ、会見に出席しないほうが
よかったぐらいです。
 会見に出るということは、日本を代表して答えるという
ことでしょう。
 それが出来ないなら、会見に出るべきではありません。

日本の情報発信力の弱さは、こういうときに、如実に現
れます。

        ******
 
 招致団の竹田恒和氏(JOC理事長)は、今回の会見で、
ひとり、健闘しています。
 福島の汚染水もれに対する記者の質問に、論点をそらす
ことなく、誠実に答えています。
 大変立派な会見です。

 しかし、その竹田氏も、
 「東京は安全です」
 と、強調すればするほど、記者団は納得しないという悪
循環に陥っていました。

 安全かどうかというのは、科学的な問題、客観的な事実
の問題ですから、「安全だ」ということを記者団に分かっ
てもらうには、「安全」を科学的に裏付ける客観的な事実
を情報発信する必要があります。

 「安全」を裏付ける事実を説明せずに、「安全だ」と強
調しても、相手は、信じてくれません。

 その意味では、竹田氏は、気の毒でした。

         ********

 根本的には、福島の汚染水漏れを、できるだけ表面化さ
せず、そっと済ませてしまいたいと思った東電や政府の対
応に問題があります。
 もし、当初から、東電、政府が明快な対応をしていれば、
五輪招致団が各国記者から質問攻めにあうこともなかった
でしょう。もし質問攻めになったとしても、竹田氏は、き
しんと答えるだけのデータと資料を持っていたでしょう。

 東京が落選するとすれば、その原因は、根っこの原因は、
福島原発に対する東電、政府の対応の仕方にあったという
ことになりそうです。

 ともかくも、そういうことも含め、日本の情報発信力の
弱さは、日本という国の命取りになりかねないという懸念
が、ずっとしています。























日本の「反省」・・・安倍首相が今年「反省」を表明しなかったことで、思わぬ副産物がありました。

2013年09月04日 01時44分05秒 | 日記


 今年2013年8月15日の終戦記念日の式典で、安倍
首相は、太平洋戦争におけるアジア諸国への加害に言及せ
ず、「反省」という言葉も遣いませんでした。
 
 アジア諸国への加害責任と、反省は、このところ、歴代
首相が、自民党、民主党を問わず、8月15日には、必ず、
口にしていました。
日本の首相は、毎年はっきりと、「反省」を表明してい
たのです。

 安倍首相が、今回、あえてそれを口にしなかったことの
是非には、いまここでは、触れません。

 ただし、安倍首相が、今回、「反省」を口にしなかった
ことによって、まことに興味深い現象が起きています。
 いまは、それを指摘しておきたいと思います。

 中国と韓国は、近年、日本に対し、戦争に対する「反省」
を表明せよと、ずっと要求しています。
そこへ、今回は、安倍首相が「反省」を口にしませんで
した。

 すると、どうなるか。
 中国も韓国も、安倍首相が8月15日の式典でアジア
諸国への加害責任に触れなかったことを、批判しました。 
 ところが、ここで、まことに、おかしなことになりま
した。

 というのも、中国と韓国は、「今年」、安倍首相が、
「反省」を口にしなかったことを批判するわけです。

 「今年」言わなかったと批判するというのは、とりも
なおさず、中国と韓国は、去年まで、日本首相が、ずっと
「反省」を口にしていたことを知っていたーーという
ことになってしまうのです。

 去年まで、中国も韓国も、日本の歴代首相が8月15日
の式典で「反省」を表明してきたことを、ずっと、無視し
てきました。

 今年、日本の安倍首相は「反省」を表明しなかった、
 それをおかしいーーと批判できるのは、去年まで、日本
の首相がずっと「反省」を表明してきたことを知ってい
たからこそです。

 「今年」、安倍首相が「反省」を表明しなかったのはおか
しいーーと批判すればするほど、中国と韓国は、去年まで、
日本の首相がずっと「反省」を表明してきたのを知って
いたーーということを、みずから、証明してしまうわけ
です。

 中国政府も韓国政府も、間違いなく、そのことに気づい
ているはずです。
 安倍首相が「反省」を表明しなかったことに対し、たし
かに批判はしていますが、猛烈な批判ではありません。
 もっと批判してもいいのにと思うほど、拍子抜けするよ
うな状況です。

 それは、中国政府と韓国政府が、
 「日本の首相は、今年に限って、反省を表明しなかった。
これはけしからんことだ」
 と言い募れば言い募るほど、
 「え? 今年は反省を表明しなかったって? 今年は
って、どういう意味ですか」
 「去年までは、ひょっとして、日本の首相は反省を口に
していたということでしょうか」
 ということになってしまうからです。

 だから、中国政府も韓国政府も、今回は、どうも、およ
び腰になっているように見えます。
 どうも、たいした批判は聞こえてこないというのが、実
感です。

 9月3日は中国にとっての記念日で、中国外務省の
秦剛・報道局長が、
 「日本が侵略の歴史を反省する態度を真剣に実行に移し、
実際の行動でアジア近隣国と国際社会の信用を得るよう促
す」
 という談話を発表しました。

 批判というには、マイルドです。
 「反省する態度を真剣に実行し」と言ってはいますが、
「反省してほしい」とは、言ってないのです。
 決して、猛烈な批判という感じではありません。

 去年まで、日本の首相は、ずっと「反省」を表明してき
ました。
 首相というのは、その国の最高責任者です。
 最高責任者が、「反省」を口にするというのは、それ以
上の反省は、ありません。

 それなのに、中国と韓国から批判され続けるものだか
ら、日本人は、
 「首相が、毎年、これだけちゃんと反省を表明してきた
のに、どうして、まだ、反省しろ反省しろと言われなけれ
ばならないのだろう」
 という思いを持ちます。

 安倍首相の狙いがどこにあるのかは分かりません。
 しかし、今回、「反省」を表明するのをやめてみたら、
中国と韓国が困ってしまったーーというのは、思わぬ副産
物でした。

        ***

 ただし、それは、決して、喜ぶべきことではありません。
 それは、日本政府の情報発信力が、ふだん、いかに低い
かを、鮮明に示しているからです。

 毎年、首相が「反省」を表明していることを、中国や韓
国の国民は、たぶん、知らないと思います。

 それは、中国や韓国の政府やメディアが、自国民に向け
てちゃんと知らせないからです。

 そうであれば、日本政府、具体的には、外務省は、首相
の談話を、中国語、韓国語に翻訳し、中国の国民、
韓国の国民に対し、みずから、説明しなければなりません。

 さらには、英語やフランス語にも翻訳し、世界各国に、
日本のことを知らせる必要があります。


 日本政府が、日本の外務省が、もっといえば実務を担当
する霞が関の官僚は、中国や韓国の国民に向けて、さらに
は、アメリカや欧州、そして世界各国に向けて、ちゃんと
情報発信してきたかというと、まことに心許ないのです。
 
 私たち日本の国民が、どうにもフラストレーションがた
まるのは、日本のことが、海外に正確に伝わっているとは
思えないからです。

 日本政府は、政治家も官僚も、世界に対し、もっと情報
発信しなければなりません。
 それは、国民に対する責任でもあります。