いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

東京五輪の誘致でコンサルタントに2億円・・・五輪は利益を得るためのビジネスになってしまいました。

2016年05月15日 23時51分22秒 | 日記

 2020年の東京五輪を招致するため、日本の組織委員会が、2
億円というお金を、IOC(国際五輪委員会)の関係者に支払って
いたというので、フランスの検察が捜査に入るということが、外電
で伝えられました。
 
 これについて、JOC(日本オリンピック委員会)の竹田恒和会
長は、「代理店との正式な業務契約に基づく対価として支払ったも
のです」と説明しました。
 五輪を東京に招致するため、コンサルタント会社に、支払ったも
のだというのです。

 フランスからの報道では、2013年7月と10月に、ラミン・
ディアク国際陸連前会長の息子、パパマサッタ氏と関係のあるシン
ガポールの会社に約280万シンガポールドル(約2億2000万
円)が、東京五輪招致の名目で入金されたということです。
 東京の開催が決まったのが13年9月ですから、入金は、その前
後ということになります。

 竹田会長は、このコンサルタント会社について、「アジアと中東
のエキスパートで、非常に実績がある」とし、支払いは情報分析サ
ービスに対する「コンサルタント料」だと説明しました。
 2億円という金額に関しても、「これが特に大きいということは
ないと思います」と話しました。

 このニュースを聞き、第一感は、
 「がっかりした」
 ということに尽きます。

 スポーツの最高峰の大会が、ここまで、お金にまみれているのか、
ということです。
 2億円というコンサルタント料を、JOCの会長が「特に大きい
ということもないと思います」と発言すること自体に、埋めがたい
溝を感じます。
そしてなによりも、五輪を招致するのに、こんな金額を使い、こ
んなことまでするのかという思いです。

 竹田会長は、シンガポールのコンサルティング会社を「アジアと
中東のエキスパートで、実績がある」と説明しています。
 ということは、欧州やアフリカ、北米、南米には、また、別のコ
ンサルティング会社と契約しているという推測が、十分に成り立ち
ます。

 いったい、東京五輪を招致するのに、ひっくるめて、どれだけの
費用がかかったのでしょう。
 もちろん、竹田会長が各国に行く交通費や、招致団の交通費、宿
泊費、招致のためのロゴ作りなど、招致そのものに関する費用は、
当然、実費として、それなりの金額が必要でしょう。
 それは当たり前のことです。

 しかし、コンサルタント会社に、2億円というのは、いったい、
どういうことなのでしょう。

 前回、1964年の東京五輪を実現させる際、そうした多額のお
金がかかったという話は、一切、聞こえてきません。
 
 当時の五輪は、ブランデージ会長というアマチュアリズムの権化
のような人がIOCを率いていて、プロ的なものは、一切、排除し
ていました。
 
 五輪の商業化が進んだのは、1984年のロサンゼルス五輪が契
機となっています。
五輪は、会場の建設など、開催国にかなりの負担があります。そ
のため、五輪を引き受ける国がだんだん減ってきて、このままでは
先行きが危ないという危機感がありました。それを切り抜けるため
に、利益の出る五輪を目指すことになり、それが、ロサンゼルス五
輪でした。

 商業化、プロ化された五輪は、非常にうっとおしい状況になって
います。
 たとえば、「オリンピック」とか「五輪」という言葉を、勝手に
は使えなくなっています。
 1964年の東京五輪や、1972年の札幌冬季五輪では、五輪
の前後に、「五輪道路」とか「五輪みやげ」「五輪なんとか」とい
うものが、たくさん出来ました。
 いまや、そうやって「五輪」という言葉を、勝っ手に使うことは
できません。使うときは、使用料を払わなければなりません。
 ですから、どこかの駅前の商店街が、「東京五輪記念大セール」
と銘打ったセールをやろうとしても、待ったがかかります。
 メディアも、そうした制限に苦労しています。テレビ局で、五輪
の特集番組を作る。たとえば、卓球の選手を追いかけてドキュメント
を作る。その場合、五輪の開会式の3か月より前に放送するよう、
求められます。3か月以内だと、その番組のCMに、事細かな制限
があります。五輪そのもののスポンサー企業に遠慮させられるわけ
です。
そんなことは、64年の東京五輪、72年の札幌五輪のころには、
ちょっと考えられないことでした。

 いまの五輪は、「五輪」によって、とにかく、あらゆる機会を捉
えて、金を稼ごう、利益を出そうという流れになっています。
 ひとことでいえば、五輪が、「ビジネス」の種になってしまった
のです。

 コンサルタント会社に2億円払うというのも、五輪の招致活動が、
ビジネスになっているからです。

 竹田会長は、一生懸命、五輪の招致をやってきた人です。お会い
したことはありませんが、招致活動の様子をテレビで見ていても、
実直な感じで、好感の持てる方のように思えます。
 しかし、その竹田会長でも、長く五輪の現場にいると、五輪のコ
ンサルタント会社に2億円払うというのに、疑問を持たなくなって
しまうのでしょう。
 五輪はビジネスというのが、竹田会長にも、当たり前のことにな
っているのでしょう。
 
 それはもう、スポーツが好きな普通の国民の感覚とは、思い切り
ずれてしまっています。
 感覚がずれていることにも、気がつかなくなったということなの
でしょう。
 
 悲しいかな、それが、五輪の現状ということです。