イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

マッコリ・イン・トランスレーション ~オモビニを探してソウルフルな旅~ 6

2008年06月26日 23時41分20秒 | 旅行記
ずいぶんと遠くまできてしまった。繁華街からもかなり離れている。街並みも落ち着いた感じになってきた。小さな店が居並ぶ通りと一本外して脇道に入ると、それだけでガラッと趣が変わる。ひっそりとした時間の流れ。さらにそこから静かな、地味な方をめがけて歩く。民家の間を縫うようにして続く路地。勾配の多い、石畳の路。

玄関口や店先には、年配の方々が座っている。女性たちは、しゃがむような姿勢で座り、壁や背もたれによりかかっている。日本だったら「女の子なのに行儀悪い」と怒られてしまいそうな座り方だけど、ここではそうではないのだろう。それに、なんといっても楽そうだ。かなり年のいったハルモニが、家の前面にある縁側のようなところにいて、少しうつろな目をしながらも、堂々と座っている。隣では、大人たちが大声で忙しく会話し、子供たちがキャーキャー言いながら楽しそうに走り回っている。

路地には、本当のソウルがある――そんな気がして、本物に触れているような思いがして、ゾクゾクする。街並みは、本当にエキゾチックで美しかった。綺麗な韓国式の民家はもちろん、廃屋のようになっている建物にすら味があって、強烈にひきつけられる。どこでもない場所、なんでもない家、ガイドブックではマークされていない路地。そんなもののなかにこそ、本当の異国があるのだろう。細い路地を行く。道が枝分かれしている。どちらに進もうか。人が一人通れるような狭さの、坂を上るように続く路地を見上げると、十メートルほど先にハルモニが座っているのが見えた。彼女は、見るともなしにこっちを眺めている。目が合う。なんとなくそっちに行くのがためらわれて、別な方角に進んだ。

今日の午前中は日本にいたのに、午後にはこうしてひっそりとしたソウルの路地を彷徨っている。不思議だ。道行く人たちは、僕のことを外国人だと思うのだろうか? 日本人だと思うのだろうか? 見つめられるとちょっと恥ずかしく、目もくれずにすれ違う人がいれば、少しほっとする。