イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

マッコリ・イン・トランスレーション ~オモビニを探してソウルフルな旅~ 1

2008年06月17日 09時03分40秒 | 旅行記
時計の針は、もうすぐ午後七時を示そうとしていた。それでもまだ、外は昼間を思わせるように明るかった。二時からこの街を歩き始めて、もう五時間近く。歩いても歩いても、興奮は止むことがない。見知らぬ風景に刺激され、新たな風景を求めて足は前に進んでいく。もう何キロ歩いたのだろう。普通なら、ここらで僕にとってのソウルフードでも食べたくなるところだ。ラーメン、牛丼、カレー。でも、それらの店にはまったくお目にかかれない。そのかわりに、ここは別の「ソウルフード」に満ち溢れている。トッポギ、プルコギ、焼肉屋、居並ぶ屋台とキオスク――そう、ここは日本ではなく、韓国、東京ではなく、ソウルなのだ。

六月一四日、土曜日。羽田を朝9時台に出発した飛行機は、二時間後にはソウルの金浦空港に着陸していた。近いとは知っていたけど、実際に飛行機に乗ってみると、やっぱり近い。寄り道したり、中央線がちょっと遅れでもしたら、会社から家までドアツードアで二時間かかるなんてことはザラだ。つまり、二時間の移動なんて日常生活の範囲内だ。こんな近いところに、韓国はあった。会社出て、新宿まで歩いて、ブックオフに寄って、中央線が遅れて、家についたらそこはソウルだった。そんな気分だ。入国手続きを済ませて、ソウル市の中心にある明洞へと地下鉄で向かう。

つくづく自分でもアホやなと思うのだけど、外国に行くといつも一番驚くことは、そこに現地の人たちが住んでおり、現地の言葉が使われていることだ。今回の場合でいえば、韓国の人たちがたくさんいて、みんな韓国語を喋っている。今回も、それが旅の最初から最後を通じて感じる最大の驚きであり、異文化であり、面白さになるのだろう。地下鉄の車両のなかは広々としている。周りは韓国人ばっかりだ(当たり前だ)。もちろん、韓国人にはこれまでたくさんあったことがある。職場で一緒に働いたこともある。だから、ある程度韓国には免疫があるつもりだった。だけど、さすがにこれだけたくさんの韓国人のなかに紛れていると、緊張感を感じる。

ハングルが読めない――読めるとは思っていなかったが、あらためてハングルが読めないことの衝撃を感じる。つまり、標識とか看板とか、英語表記されていないものは、まったく意味がわからない。これまで海外に行っても、英語圏とか、中国語圏が多かったので、多少なりともその意味を理解することはできた。それが、今回は通用しない。ロスト・イン・トランスレーション。韓国は常に僕の身近にある。文化的にもとても似ている、ここは隣の国だ。だけど、実は一番の異国なのかもしれない。そんな予感を感じながら、僕とヨメはホテルへと向かったのだった。