おはようございます。アドラー心理に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
昨年、2015年12月に広島県府中町立府中緑ヶ丘中学校3年の男子生徒(15)が誤った万引き記録を基に行った進路指導が原因で男子生徒が自殺した事件で、担任教師によって合計で5回行われたという進路指導が廊下で行われたこと(長くても5分程度)や校内のデータサーバーに保存された「万引き事件」に関するデータが修正されていなかった事などが問題視されています。
◆もっと知りたい方は 日刊時事ニュース や 読売新聞ニュース に目を通してください。
この事件に関して作家の曽野綾子氏が3月13日付け産経新聞第1面の「小さな親切、大きなお世話」欄に「貧しい表現力が招く不幸」として論評しています。
多くの報道とは違って、曽野氏は「言語による意思伝達力に関して、実に貧しい実情」だとして次のように書いています。
その部分を引用します。
してもいない万引を疑われたのなら、生徒はまず親に伝え、学校に問いただし、記録を正さなければならない。
今回学校からその件に関する質問をされた時、生徒は「そんなことはありません」と正面から否定しなかったようだ。
万引が事実であったかのように思われたのは、「万引のことは家の人に言わないで、家の雰囲気が悪くなる」などと答えたものだから、教師も事実だと思ってしまったのだろう。
万引は「失敗」ではない。「確信犯」である。
(一部割愛)
家庭にもそういう正義を重んじる空気があれば、子供は万引などしないし、潔白なのに疑われた時には、顔色を変えて大騒ぎをするだろう。
もちろん親にも訴え、学校にも言って、冤罪をその場で晴らす。
ここには、曽野氏らしい歯に衣着せぬ表現があるとして、私はアドラーの自殺の目的に関する言葉を思い出しました。
自殺の目的は復讐と告発
というものです(『個人心理学講義』)。
「愛と勇気づけの親子関係セミナー(SMILE)」では、主張性に関して次の4つを教えています。
(1)主張的
(2)非主張的
(3)攻撃的
(4)復讐的
この4つのパターンを当てはめると、中3男子生徒は、教師の対応と学校側の誤記録を主張的に正さなければなりませんでした。
それが叶わなければ、親を介して学校側に抗議するのが筋です。
それでもなお、学校/教師側が不当であれば、その他の手段を用いて、あくまで主張的に(場合によっては攻撃的に)自分の意思を貫いてほしかったです。
自殺という復讐的な手段で訴えたことが残念でなりません。
このような報道をテレビで観たり、新聞で読んだりして、「学校が悪い。教師の対応がなっていない。中3男子生徒は被害者だ」とだけ思い込んでいると、事件を一方の側からだけ見ているに他ならず、事の本質を見失うことになります。
学校側/教師側がこの事件から再発防止のための学びをしなければならないのはもちろんですが、それと同じくらい家庭と生徒も教訓としなければなりません。
◆5万部を突破している『アドラー流 たった1分で伝わる言い方』(戸田久実著、岩井俊憲監修、かんき出版、1,300円+税)は、さまざまな場面でどんな伝え方をすればいいかが学べる本です。
<お目休めコーナー>3月の花(14)
(クリックして勇気づけを)
中3の子が自らの無実を晴らさなかったのか
もやもやしておりました。
もちろん、学校のミスは正す必要がありますが
それだけではないと思っておりました。
その考えが正しい・間違いではないですが
物事を1つの見方しかしない弊害ではと
感じたニュースでした。
今度の事件は、物事を別の見方で見ることを促してくれるように気がします。
一方の側に立つと楽なのですが・・・。