私にとってのサラリーマン生活は、頭に描いた出世で終わらず、左遷で幕を閉じました。しかし、サッカー界での激動の20年間を終えた今、「すべては、あの左遷から始まったのだ、むしろあの失望こそチャンスだったのだ」と思うことがあります。
私が、いわゆるビジネスにおける成功例をお話しできるとは思いません。しかし、サラリーマンとして集大成の時期を迎えつつあった51歳で、左遷をきっかけにサッカー界で第2の人生を送ったことは、人生はどこでどういうふうに、何をきっかけに大きく転じるのか本当に分からないという、1つの例かもしれません。
この文章は、Jリーグ初代チェアマン、日本サッカー協会会長を経て、現在同会名誉会長の川淵三郎氏の著書『「51歳の左遷」からすべては始まった 』(PHP新書)のプロローグ「『51歳の左遷』からすべては始まった―ロスタイムこそ逆転のチャンス」からの引用です。
川淵氏の左遷の話は、6月30日のMSN産経ニュースの「『左遷』が変えた人生」にもインタビュー記事として掲載されています。
川淵氏は、出向人事に関して上司の「伝え方」に納得できなかった、としてインタビューで次のように語っています。
僕の人事を実際に決めた上司は、最後まで「サシ」で話そうとはしませんでした。転任のあいさつをしたときも逃げて姿を見せなかった。「この人事があった“おかげ”でサッカー界に戻れた。今のあなたがあるんじゃないか」という人もいますが、僕はそこまで悟っていない(苦笑)。リーダーたるもの、重要な話は直接相手に会って、きちっと話をすべきです。僕はいまだに納得がいかないし、その人のことが許せない。
私は、21年前の左遷と上司への怨念が川淵氏のエネルギー源だったのか、という思いで本とインタビュー記事を読みました。
<お目休めコーナー> グランドプリンスホテル新高輪にて④