シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

中西健二監督「花のあと」(2009年、107分)☆☆☆★

2020-11-30 14:53:08 | 日本・2010年~


藤沢周平による同名の短編小説の映画化です。海坂藩(架空の藩)が舞台です。主人公の女剣士・以登(いと)の物語です。

この作品は、以登(北川景子)が満開の桜の下で、羽賀道場の高弟・江口孫四郎(宮尾俊太郎)に声をかけられるシーンから始まります。

父・寺井甚左衛門(國村隼)に剣の手ほどきを受けた以登は、羽賀道場の二番手、三番手を破るほどの剣豪でした。父の許可を得て、孫四郎と剣を交えます。以登は孫四郎に竹刀を打ち込む中で、彼に胸をあつくしている自分に気づきます。初めての恋心でした。

しかし、すでに家が定めた許婚・片桐才助(甲本雅裕)がいて、以登は無念の想いで孫四郎への恋心を封印します。

そんなおり、奏者番の娘・加世に婿入りした孫四郎が、藤井勘解由(市川亀治郎)の卑劣な罠にかかり、責任をとって自害します。

事件の真相を知った以登は、勘解由を詰問するため彼を呼び出します。成り行きで、二人の間で果たし合いになります。この結末は・・・。
満開の桜が何度もでてきます。
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ウォン・カーウェイ監督「花様年華(かようねんか)」(香港、2000年)☆☆☆

2020-11-28 20:47:31 | 香港


「花様年華」は、満開の花のように成熟した女性が一番輝いている時、を意味します。

舞台は1962年の香港。

ジャーナリストのチャウ(トニー・レオン)は、妻とあるアパートに引っ越してきます。同じ日、隣の部屋に商社で秘書をしているチャン夫人が越して来ました。

チャン夫人(マギー・チャン)の夫は、日本に長期出張勤務しています。チャウの妻も仕事の関係であまり家にいません。二人は互いにそれぞれの部屋で一人でいることが多いのです。

そのうち、二人は、あろうことか、それぞれの伴侶が恋愛関係にあることに気づきます。傷を癒すために二人は互いに過ごすこと多くなるにつれ、親密になっていきます。

ひとつのプラトニックな男女の愛の形を追求した実験的作品です。映像にそれが写しだれます。
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今井正監督「にごりえ」(1953年、130分)☆☆☆★

2020-11-28 14:55:49 | 日本・1950年~


樋口一葉による「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」をオムニバス形式で作品化した映画です。明治時代、市井の片隅に生きた女性たちの苦悩、哀しみを描いています。

第一話は「十三夜」。高級官吏の家に嫁いだ「おせき」(丹阿弥谷津子)が夫婦の不和で実家に戻ってきます。母は同情しともに泣きくれますが、父は厳しく「おせき」に帰るように諭します。帰り道、人力車の車夫は幼馴染みの録之助(芥川比呂志)でした。

第二話は「大つごもり」。資産家の家に奉公にでた「みね」(久我美子)は、病弱の育ての親(中村伸郎)に二円の前借りを依頼されます。しかし、奥様(長岡輝子)に前借りを断られ、窮余の策で、二円を盗んでしまいますが・・・。

第三話は「にごりえ」。本郷の小料理屋で働いている「お力」(淡島千景)は、その苦界から逃れようとしています。もと妻子のある元蒲団屋の源七(宮口精二)は有り金をつぎ込んで「お力」に入れあげていましたが、「お力」は彼に会おうとしません。源七は彼の素行にやかましい妻(杉村春子)と離縁します。しかし、なんとも悲しい結末に・・・。

明治時代の若い女性の暮らし、哀感を描いた樋口一葉の作品は、今井監督の手によって生き返りました。
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ジュリアン・デュヴィビエ監督「商船テナシチー」(フランス、1934年)

2020-11-27 20:51:55 | フランス
 
フランスの劇作家ビルドラックによる三幕戯曲の映画化です。

舞台はフランスの港町ルアーブル。

主な登場人物は、波止場の安ホテル、マダム・コルジエの家の女中・テレーズ(マリー・グローリー)、失業者のバスチアン(アルベール・プレジュン)、セガール(ユベール・プレリエ)です。

テレーズが働いているホテルのカフェ・レストランに、パリの印刷工だった(現在は失業中)二人の若者・バスチアン、セガールが自由な新天地をカナダに求め、やってきます。

ところが、乗り込んだカナダ行きのテナシチー号が出航後まもなく故障で港に戻ります。二人はそこで足止めをくらいます。この間にテレーズをめぐっての三角関係が・・・。

内気で夢見がちな彼女に惚れていたセガールは、いっしょにカナダに行こうとしていましたが、積極的でリアリストのバスチアンが割り込んできて彼女を誘惑します。

三人で再び乗船するはずだったのが、バスチアンはカナダへ行くことをやめ彼女と駆け落ち。セガールは、ひとり寂しくカナダにたちます。
人生の哀歓が伝わってきます。
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ジャン・ルノワール監督「河(The River)」(アメリカ、1951年、1951年)☆☆☆★

2020-11-26 20:57:06 | アメリカ・1950年~


大戦中、ナチから逃れてハリウッドで活動したルノワール監督(印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの次男)のアメリカでの最後の作品です。

舞台はインドのベンガル地方。

作品全体がi一編の「詩」のようです。そこにあるのは「色彩」「音楽」「思想」です。

人々の生活が織りなす時間の流れは、大河です。生と死、歌と踊り、自然と人間、それらがあざやかな色合いで紡がれ、この地方独特の音楽がこの流れを支えます。生きることそのものが自然と一体という思想がその全体を包み込んでいます。

聖なる大河ガンジスのほとりでハリエット、バレリーは、アメリカから来たジョン大尉に淡い恋をよせます。ジョンは戦争で片方の脚を失って、自分の生き方を見失っていました。ストーリーラインは、女性たちと彼らを取り巻く家族、人々、そしてジョン大尉をめぐって悠々と展開されていきます。
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ジョージ・ロイ・ヒル監督「スティング(The Sting)」(アメリカ、1973年、1973年)☆☆☆★★

2020-11-26 20:32:28 | アメリカ・1970年~


ロバート・レッドフォードとポール・ニューマンが主演の映画です。「明日に向かって撃て」(1969年)以来の共演です。

この作品、終わりまでしっかり観ないとダメです。その理由は言えません。ストーリーも言えません。わかって観たとしたら興ざめです。
一言だけ。

舞台は1936年のシカゴ。

詐欺で日銭を稼ぐ若者が伝説的な賭博師と協力し、ギャング組織を追い詰めていく「コメディ映画」です。

Stingはもともと「刺す」という意味ですが、ここでは「騙す」「法外な代金を請求する」というスラングです。
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デビッド・リーン監督「インドへの道(A Passage to India)」(イギリス、1984年、163分)☆☆☆☆

2020-11-24 20:36:46 | イギリス
原作はE・M・フォースターの同名の長編小説(1924年)です。

舞台は1920年代のインド。独立運動の気運が出始めています。

インドを訪れたイギリスの魅力的な女性・アデラ・ケステッド(ジュディ・デイヴィス)の体験を通して描かれた、異民族文化同士の出会いと摩擦、葛藤がテーマです。

第一次世界大戦終了後しばらくたちイギリスの若い女性アデラ・ケステッドはムーア夫人(ペギー・アシュクロフト)とともに、植民地インドのチャンドラボアへ、やってきます。ムーア夫人は、アデラの婚約者で治安判事のロニー(ナイジェル・ヘイヴァース)の母親でした。

アデラはそこでインド人医師・アジズ(ヴィクター・バナルジー)、インド人哲学者ゴッドボール(アレック・ギネス)、英国人教授フィールディング(ジェームズ・フォックス)と知り合いになります。

アデラ、ムーア夫人は、アジズの誘いで、マラバー洞窟に出かけます。ムーア夫人は途中でバテ、アデラとアジズは二人きりになります。その後、洞窟へひとりで入ったアデラは恐怖で逃げ出しますが、アジズから暴行を受けたと告訴し、彼は裁判にかけられます。

この裁判を契機に、インド人の反英感情が高まります。事態は思わぬ方向に・・・。

スケールの大きな歴史ドラマです。
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成瀬巳喜男監督「めし」(1951年、97分)☆☆☆

2020-11-23 21:35:38 | 日本・1950年~


林芙美子の同名の小説の映画化です。朝日新聞に連載された小説ですが、林芙美子が連載中に急逝、全体の3分の2ほどが発表され、未完に終わりました。そのため、この作品の結末は成瀬監督と脚本家・田中澄江、井手俊郎によるものです。

舞台は大阪。

証券会社に勤める岡本初之輔(上原謙)とその妻・三千代(原節子)は結婚生活5年目に入りますが、倦怠期に突入していました。

些細なことで、いざこざ、反目が毎日のように起こります。そこに、初之輔の姪である里子(島崎雪子)が家出をして東京から大阪へやってきます。

日々、家計をやりくりし家事に追われ、不満を募らせていた三千代は、うかれている里子の姿、行動に苛立ちます。

三千代は里子に帰京を促し、里子を送る名目で東京の実家に里帰りします。彼女は東京での職探しをいとこ(二本柳寛)に頼み自立を考え始めます。

三千代のもとに、夫の初之輔が訪ねてきます。この夫婦は一体?
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オットー・プレミンジャー監督「悲しみよこんにちは(Bonjour Tristesse)」(アメリカ、1958年、94分)☆☆☆★

2020-11-23 20:45:01 | アメリカ・1950年~


フランスの女流作家・フランソワーズ・サガンによる18歳の時のデビュー作(小説)の映画化です。

18歳のヒロインのセシル(ジーン・セバーグ)と父のレイモン(デビット・ニーブン)は、コート・ダジュールの別荘で夏期の休暇を過ごしていました。

天真爛漫なセシルは、近くの別荘に滞在していた大学生のフィリップ(ジェフリー・ホーン)と恋仲になります。

彼らの別荘に亡き母の友人のアンヌ(デボラ・カー)がやってきます。聡明で美しいアンヌをセシルは慕いますが、アンヌと父が再婚する雰囲気を見せ始めると、アンヌはセシルの勉学を管理しはじめ、フィリップとの交際の禁止を示唆します。

セシルはしだいに、アンヌに反感を抱くようになります。やがて、葛藤の末にセシルは父とアンヌの再婚を破綻させることを計画し、実行に移します。

そして、アンヌは・・・・。18歳の少女の揺れる心と行動が生き生きと描かれています。
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中島貞夫監督「序の舞」(1984年、145分)☆☆☆

2020-11-22 21:43:57 | 日本・1980年~


宮尾登美子による同名の小説の映画化です。女流日本画家・上村松園の波乱の生涯を描いています。

舞台は明治時代の京都。

上村松園の本名は島村津也。

京都で葉茶屋を営む母親・勢以(岡田茉莉子)に女手一人で育てられた津也(名取裕子)は恩師・西内太鳳(風間杜夫)の勧めで画家・高木松溪(佐藤慶)の絵画塾に通います。

明治23年(1890年)、16歳となった津也は絵の腕をめきめきあげ絵画展で入賞します。喜びも束の間、太鳳がヨーロッパに留学。

津也は寂しさを紛らわせるかのように絵画の世界に没頭します。

その後、あろうことか、師匠である松溪と関係、不実の子を身ごもり、人里離れた他所の家で出産。生まれた女の子を里子にだし、津也はそのまま失踪します。

太鳳の留学からの帰国。太鳳の計らいによって津也は画界で再起します。展覧会での入選を常に果たすも、彼女の波乱の人生は続きます。
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荒井良平監督「赤穂義士」(1957年、98分)☆☆☆

2020-11-21 20:48:14 | 日本・1950年~


深谷シネマ(深谷市)で開催された「映画ミーツ浪曲」を観に行きました。(ついでに深谷市内を少し散歩しました。渋沢栄一・一色です)
この映画作品は、浪曲映画です。

寿々木米若(刃傷松之廊下/田村邸の別れ)、梅中軒鴦童(不破数右衛門と妻・お藤)、冨士月子(岡野金右衛門・絵図面取り)、玉川勝太郎(赤垣源蔵・徳利の別れ)がオムニバス形式で展開されます。

ストーリーは江戸城・松之廊下で浅野内匠頭が吉良上野介に切りつけた事件を発端に、赤穂浪士が吉良邸に討ち入るまでのよく知られた仇討ち事件の経緯ですが、浪曲の唸りがまずあって、そこから俳優陣による演技がくひろげられます。

・浅野内匠頭(黒川弥太郎)
・赤垣源蔵(板東好太郎)
・お藤(三条美紀)
・おつや(伏見和子)
・大石内蔵助(進藤栄太郎)
・不破数右衛門(杉山昌三九)
・岡野金右衛門(南条新太郎)

映画上映のあと、浪曲師・玉川奈々福さんと曲師・沢村豊子さんによる「赤垣源蔵・徳利の別れ」の生公演がありました。迫力満点で浪曲独自の世界に引き込まれました。
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小林恒夫監督「点と線」(1958年、85分)☆☆☆

2020-11-20 15:57:59 | 日本・1950年~


松本清張による同名の小説の映画化です。舞台は九州・福岡、香椎、大分県・別府温泉から北海道・札幌まで広範囲です。

時代は長距離の旅行、移動がほとんど汽車で行われ、飛行機が利用されることは希だったころ。汽車の「時刻表」を駆使した推理小説です。

料亭「小雪」の女中2人は、機械工具商会を経営する安田辰郎(山形勲)を見送るため、東京駅(13番線プラットフォーム)に着きました。そのおり、3人は向かいの15番線に、同じ「小雪」で働くお時(小宮光江)がある男性と夜行特急列車「あさかぜ」に乗り込むところを目にします。そして、お時とその男・佐山(成瀬昌彦)が香椎の海岸で情死体のような状態で発見されました。

捜査はいったん打ち切られます。しかし、博多のベテラン刑事・鳥飼重太郎(加藤嘉)は、疑問をもちます。

佐山は産業建設省の汚職事件の関係者でした。この事件を追っていた本庁の刑事・三原紀一(南広)は九州に向かい、鳥飼刑事と会います。

捜査の結果二人は、13番線プラットフォームから15番線プラットフォームが見えるのは、1日の中で17時57分から18時01分の4分間しかないことを突き止め、そこから事件を仕組んだのは安田とにらみます。しかし、安田を疑うには、完璧なアリバイがたちはだかります。
思わぬ結末が・・・。緊張感が漂います。
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黒沢明監督「まあだだよ」(1973年、97分)☆☆☆☆

2020-11-19 16:01:02 | 日本・1970年~


随筆家内田百閒をモデルにした作品。

開巻、昭和18年の春、百閒先生(松村達雄)は生徒たちへ、作家活動に専念するため、教員をやめることを告げます。生徒たちは「仰げば尊し」を歌って、先生を送ります。

この作品は、門下生の高山(井川比佐志)、甘木(所ジョージ)、桐山(由井昌由樹)、沢村(寺尾聰)と百閒先生との交流がメインです。

戦時下の還暦の祝宴。被ばくと引っ越し。三畳一間の堀建小屋での妻(香川京子)との暮らし。門下生の企画による第一回「摩阿陀会」の開催。お気に入りの猫、ノラの失踪。

タイトルの「まあだだよ」は、門下生の「もういいかい」(人生の終焉)の問いに対する先生の返答です。「まあだだよ、どっこい生きている」の意味です。
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浦山桐郎監督「キューポラのある街」(1960年、99分)☆☆☆☆

2020-11-18 10:21:49 | 日本・1960年~


「キューポラ」は銑鉄溶解炉です。川口市は江戸時代から鋳物の町として栄えました。昭和に入って旧来の鋳物工場は衰え、代わって新型の設備を備えた工場がこの地域にも浸透してきます。

石黒辰五郎(東野英治郎)は、鋳物職人です。職人気質一途に働いていた炭たき人です。この辰五郎の貧しい家族の生活が、この映画のテーマです。辰五郎の家は妻トミ(杉山徳子)、中学三年生の長女ジュン(吉永小百合)、小学6年生の長男タカユキ(市川好郎)、次男テツハルの五人家族。辰五郎がある日、突然、工場を解雇されました。

タカユキの家出、タカユキと父親が朝鮮人であったサンキチとの交流、タカユキがチンピラにインネンをつけられたことを知って談判にむかうジュン、貧しさゆえにパチンコ屋でアルバイトをするジュン。修学旅行をあきらめたジュン。

学校に行かなくなったジュンを、野田先生(加藤武)はとくとくと説いて教室につれもどします。

やがて石黒家にも春がめぐって来ました。辰五郎の再就職が決まり、ジュンは昼間働きながら夜間高校に行くことを決意します。石黒家には久し振りの笑顔が戻りました。

吉永小百合さんが生き生きと演じています。骨太の映画です。
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中村登監督「塩狩峠」(1975年、103分)☆☆☆★★

2020-11-17 21:24:47 | 日本・1970年~


三浦綾子原作の同名の小説を映画化したものです。この作品は、北海道の塩狩峠で明治42年2月28日に実際にあった列車事故をもとに創作されたもの。この事故は名寄から札幌に向かっていた汽車が塩狩峠をのぼりはじめ、頂上あたりにさしかかったころ、突然、最後尾の車両がはずれ、逆走したことで起こります。この車両にのっていた長野信夫(当時、旭川運輸事務所庶務主任)は、乗客を自らの死を賭し救いました。30歳の若さでした。

信夫(中村誠也)は東京の本郷でキリスト教嫌いだった祖母のもとで育ちますが、後にキリスト教徒だった実母(岩崎加根子)と再会し、影響を受けます。

信夫はその後、札幌の運輸会社の貨物係をしていた友人・吉川(長谷川哲夫)を訪ねます。そこで、肺結核とカリエスで床に付していた幼馴染の吉川の妹ふじ子(佐藤オリエ)と再会。ふじ子は、病と闘う日々でした。信夫はふじ子をたびたび訪れ、励まします。二人に愛が芽生え、信夫はふじ子に想いを打ち明けます。

ふじ子はしだいに回復し、一人で歩けるまでになります。信夫とふじ子は将来を誓い合います。事故のあった日はふたりの結納の予定日で、信夫はその朝、名寄を出発したのでした。
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