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シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

島津保次郎監督「兄とその妹」(1939年、102分)

2024-03-29 20:42:21 | 日本・戦前


演じている三宅邦子は岩槻の料亭「ふな又」が生家です。いまも営業しているとのこと。蓮田から近いので、来週でも行ってきます。

世渡りとか出世のことなどにまるで頓着のない生真面目な会社員、間宮敬介(佐分利信)は、東京の山の手で、妻あき子(三宅邦子)、妹、文子(桑野通子)と三人暮し。

帰宅がいつも遅い敬介。それは退社後、部長宅で碁の相手をしているからです。文子は貿易商社の秘書で、主に英文タイプの仕事をしています。給料もそれなりにとっています。

文子に縁談がもちあがります。会社にしばしば仕事で来る道夫(上原謙)という青年が彼女を気に入ったようです。オックスフォード大学出で英語が堪能。ところがこの青年、敬輔介と囲碁の相手をしている部長の甥でした。部長は文子が敬介の妹とはしらなかったのですが、彼女の写真を敬介にみせてそのことを了解し、彼に打診をたのみます。

数日後の文子の誕生日、圭介はこの日も部長に碁をさそわれていました。家では文子の友達たちが集り誕生祝い。そこに道夫から贈り物の花が届きます。

日曜日、久しぶりに家族揃ってピクニックに出た敬介たち。昼食のおり、縁談を切り出す敬介に、兄の立場を考えた文子はその話しを断ってほしいと申し出ます。

翌朝、出勤した敬介は部長に呼ばれて係長昇格の辞令を受けます。しかし、課長から係長に異動させられた林はその人事を敬介の策動と誤解し、殴りかかります。敬介は憤然として辞表を書き、会社を飛び出しますが・・・。

五所平之助監督「マダムと女房」(1931年、58分)

2024-03-27 20:44:14 | 日本・戦前

日本の本格的トーキー映画の嚆矢といっても過言でない作品で、今からみれば映像の拙さ、脚本の弱さは隠しようがありませんが、それを指摘してもほとんど意味のないことで、当時の観客がたのしみにしていたであろう活動写真にたいする憧れを想起しながら、この作品を観ました。俳優は生き生きと演じています。

「上演料500円」の大仕事を受け、静かな環境で集中して台本を書くため、郊外の住宅地で借家を探し歩いていた劇作家の芝野新作(渡辺篤)。そこで出会ったのは写生をしていた画家。芸術論議(?)で言い争いになります。銭湯からでてきた「マダム」(伊達里子)が仲裁します。

妻・絹代(田中絹代)、二人の子供とともに新居に越してきた新作でしたが、執筆をはじめようとすると、野良猫の鳴き声や、薬売りなどに邪魔をされ、仕事がはかどりません。

ある日、隣家でパーティが開かれ、ジャズの演奏が始まります。新作はこの音響にたまらず、隣家に怒鳴り込もうとしますが、応対にでたのがくだんの「マダム」。自身がジャズバンドの歌手であるマダムは音楽家仲間を紹介し、新作は誘われるままに隣家に上がり酒をすすめられエンジョイ。

絹代は窓越しに、この様子を目撃します。

鼻歌をうたいながら上機嫌で帰宅した新作を絹代はなじり、嫉妬心からミシンを空踏し、マダムのような「洋服を買って」とねだります。新作はそんな絹代に取り合わず机にむかいますが・・・。

小津安二郎監督「淑女は何を忘れたか」(松竹、1937年、71分)☆☆☆★

2022-01-09 11:42:24 | 日本・戦前


小津監督による初期の作品。トーキー二作目です。家庭内の人間関係をテーマに取り上げ、アメリカ流のソフィスティケイテッド・コメディを意識した作品と評価されています。

主要舞台は東京・麹町の大学教授・ドクトルの邸宅。

奥さんの尻にしかれる大学教授の小宮(斉藤達夫)のところに、大阪から姪の節子(桑野通子[右下画像;31歳で夭折])がやってきました。節子は車の運転もする自由奔放な女性で、遠慮なくものを言う性格。小宮の助手・岡田(佐野周二)とも意気投合します。

土曜の昼下がり、小宮の妻・時子(栗島すみ子)は、亭主を無理やりゴルフに送り出し、自分は芝居見物としゃれ込みます。出かける振りをした小宮は銀座のバーへ。そこで出会った節子を芸者遊びに連れ出します。夜は岡田のところに宿泊。

一連の行動がバレ、時子は激怒し小宮は一旦、逃げ出します。節子に妻への弱腰な態度を非難された小宮は妻との口喧嘩にひきさがらず手をあげます。呆然とする時子。しかし、意外にも時子は自分の至らなさを詫びます。

翌日、大阪に帰る節子は岡田と喫茶店でお茶を飲み、大坂へ戻りますが・・・。

溝口健二督「浪華悲歌」(松竹、1936年、71分)☆☆☆

2021-11-23 20:59:30 | 日本・戦前


19歳の山田五十鈴が主人公役です。華があります。

本作品は従来のメロドラマ的女性映画の枠をとっぱらい、したたかな女性を描いたこと、それまでの映画作品で取り上げられることが少なかった大阪を舞台にしたこと、で特筆すべき位置にあります。

薬種問屋に電話交換手の村井アヤ子(山田五十鈴)は、会社の金を横領した父(竹川誠一)のため、問屋主人・惣之助(志賀廼家弁慶)の囲い者になって借金を肩代わりしてもらいます。しかし、それが主人の妻(梅村蓉子)に知られ、問屋から追い出されます。

アヤ子は妹の幸子から、兄・弘の大学の授業料が未納となっていること、それが払えないと内定している就職口がダメになる、と聞かされます。思いついたのが、惣之助の友人・藤野(進藤栄太郎)の存在でした。自分に好意があることを知っていたアヤ子は、彼を料理屋に呼び出し、金銭を巻き上げそのまま店から遁走します。藤野は激怒。アヤ子は気にしません。

後顧の憂がなくなったアヤ子はかつての同僚の西村進(原健作)に接近、結婚を迫ります。しかし、かつて惣之助の囲い者だったとアヤ子から告げられた彼は驚愕。彼女から去ろうとしますが、そこへ刑事がやってきて二人を逮捕。藤野が警察に訴えたからですが・・・。

島津保次郎監督「隣の八重ちゃん」(松竹、1934年、77分)☆☆☆

2021-11-22 23:16:06 | 日本・戦前


世界で最初のトーキーは1929年の「ジャズシンガー」、日本でもすぐに作品のトーキー化が試行され、松竹が熱心だったようです。この作品はその中のひとつです。

映画の歴史を大雑把にたどると、最初は身の回りのものの撮影、次にそれを背景にあるいは題材にした生活の撮影、さらにそれらを物語に仕立てたもの、そこに歌や音楽を入れた作品の製作です。そのうち、見たことのない奇抜なもの撮影が好まれ、次第に文学の名作を作品化する方向に進み(短編から長編へ)、観客を惹きつけていきます。ストーリーが映画にとって大事になってくると、文学(小説)への依存度が高くなってきます。

本作品の舞台は1930年(昭和5年)頃の東京。当時の風景、家屋、調度、生活ぶりがよくわかります。兄弟のキャッチボール、銭湯、裁縫、etc.

ストーリーは単純。隣同士の家族ぐるみのつきあいをする服部家、新海家の二家族、一方は娘二人、他方は男の二人兄弟。次女の八重子(八重ちゃん、逢初夢子)と長男の帝大生・恵太郎(大日向伝)が主人公で、八重ちゃんは恵太郎に惹かれています。そこへ八重子の姉の京子(岡田嘉子)が金沢の婚家から出戻り、恵太郎とつきあうようになります。八重ちゃんは気がきでなく・・・。

アーノルド・ファンク監督「新しい土」(日・独、1937年、115分)☆☆★★★

2020-11-16 20:18:04 | 日本・戦前


「新しい土」というのは、当時の満州です。

希望の開拓の地、満州、という国策(許しがたい侵略行為)の奨励が背景にあります。

ストーリーは?

ドイツ留学からドイツ女性・ゲルダとともに帰国した輝男(小杉勇)。養父の巌(早川雪洲)、光子(原節子)は大喜びです。光子は、輝男の許嫁でした。

しかし、ヨーロッパ文明のなかで留学生活をして帰国した彼は、家父長的な家族制度に反発し、光子との結婚に躊躇します。絶望した光子は・・。

ファンク監督は山岳映画を得意としていただけに、日本のあちこちの山を雄大に撮影しています。また日本の珍しい生活、文化を紹介する意図がありありで、京都の祭り、桜並木、芸能、相撲(横綱・玉錦の土俵入り)、鎌倉大仏、箱膳、箸、田植え、などが次々に登場します。

フィルムの編集に矛盾、無理があるものの、16歳の原節子は初々しいです。