シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー監督「貴族の巣」(ソ連、1969年)☆☆☆★

2021-07-28 20:20:48 | ロシア・ソ連


ツルゲーネフの同名の小説の映画化です。

舞台は19世紀中葉のロシア貴族社会。

理想に燃えながら夢破れるインテリ貴族の悲劇を描いた作品です。19世紀ロシアの貴族社会の生活を再現し、ツルゲーネフが意図したロシア社会の憂鬱・憂愁・詩情の気分を伝えています。

パリの社交界で艶間がある妻ワルワラ(ベアタ・トゥイシケヴィッチ)に辟易したラヴレツキー(レオニード・クラーギン)は、長いヨーロッパの生活にピリオドを打ち、単身ロシアに帰国し、遠縁のカリーニン家を訪ねます。

そこでは、清純な姉娘のリーザ(イリーナ・クプチェンコ)が成長して、いまでは内務省の官吏パンシンの求愛を受けていました、パンシンの軽薄さに嫌悪を覚えるラヴレツキーは、リーザを愛するようになったことを自覚します。

そんな折、彼のもとにワルワラの訃報を知らされますが、それは誤報で・・・。

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成瀬巳喜男監督/川島雄三監督「夜の流れ」(東宝、1960年、111分)☆☆☆★

2021-07-27 17:22:08 | 日本・1960年~
舞台は東京下町。

花柳界に生きる女将とその娘との、ひとりの男(板前)をめぐる確執を描いた作品です。戦争の傷跡を何らかのかたちでひきずっている旧世代と戦争を体験していない若い世代との対比があざやかです。

旧世代の人物が登場するシーンは成瀬監督が、若い世代の交流シーンは川島監督が撮っています。

料亭「藤むら」の雇われ女将・綾(山田五十鈴)は女手ひとつで、一人娘・美也子(司葉子)を大学にまで進ませました。

「藤むら」のオーナー・園田浩一郎(志村喬)は綾に言い寄りますが、綾はことわりきれないながらも、あしらいます。

美也子と園田の娘・忍(白川由美)は、大学の友人同士です。美也子と忍は「藤むら」に出入りする芸妓・一花(草笛光子)、金太郎(水谷良重)、万里(横山道代)と仲良しです。

美也子は板前の五十嵐(三橋達也)に思いを寄せていました。ところが、五十嵐は綾と長い付き合いで、関係があり、彼はそのことを悩んでいました。

五十嵐が脚の病気で入院中、美也子は見舞いにでかけた母・綾と彼が抱擁しているのを病室で認めます。彼女はショックで、五十嵐への想いを断とうとします。退院した五十嵐は、綾に店をやめると告げます。逆上した綾は、・・・・。
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山田洋次監督「学校 Ⅱ」(松竹、1996年、122分)☆☆☆★

2021-07-26 23:34:32 | 日本・1990年~


舞台は北海道にある高等養護学校。

障害を持つ生徒の交流・葛藤、就職問題等を、入学から卒業にいたる3年間の出来事で綴った作品です。

青山竜平(西田敏行)が教師として仕事をしている竜別高等養護学校で、大きな事件が起きます。卒業を間近に控えた緒形高志(吉岡秀隆)と久保佑矢(神戸浩)が買い物に出かけ、それっきり寮に戻ってきません。

竜平先生は近所の人たちからふたりが旭川へコンサートを聴きに行ったらしい、と聞いて、若い小林先生(永瀬正敏)と、車で旭川へ向かいます。車中で竜平は高志たちと過ごした3年間を思いだしていました。

竜別(りゅうべつ)高等養護学校では、さまざまな障がいを持つ生徒たちが寮生活を送りながら授業を受けていました。

2年前に入学してきたのは、いじめにあって以来、一言も話さなくなった高志や言語障害と歩行障害がある佑矢たちでした。

彼らの受け持ちは、クラス担任の青山竜平とそれをサポートする北川玲子(いしだあゆみ)、それに新任教師・小林大輔です。竜平先生たちは、時間をかけて生徒との関係を築いていきます。

そして3年生になったある日の高志と佑矢の失踪。その顛末は・・・。

安室奈美恵が本人役でライブシーンに登場しています。作品のなかで彼女の楽曲が数曲使われています。
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ゾーヤ・トゥルビエワ監督「白鳥の湖(Лебединое озеро)」(ソ連、1957年、80分)☆☆☆☆

2021-07-20 20:17:34 | ロシア・ソ連


チャイコフスキーによる「白鳥の湖」の映画化です。

オデット役のマイヤ・プリセツカヤが全盛期の頃(32歳)の作品で、バレエファンでなくとも満足度がたかくなること請け合いです。ましてや、バレエが好きな人には珠玉の逸品です。

失敗に終わった初演(演出家が作品の内容を十分に理解していなかった)から、レフ・イワノフ、マリウス・プチバが振付けを刷新してペテルブルクで再演し、成功をおさめ、以後、バレエ音楽の代名詞になった経緯の解説、オデット役を演じた歴代のプリマの紹介(オディール・カルパコワ、アンナ・パブロワ、マリーナ・セミョーノワ、ガリーナ・ウラノワ)があります。

プリセツカヤの舞台裏の表情、あらゆる角度からのステージの撮影は、見逃せません。

彼女の演技は、言葉で説明するのは不可能なほど華麗で、バレエの神髄をあますところなく見せてくれます。王子・ジークフリート役のニコライ・ファデーチェフとの呼吸はぴったりです。

「白鳥の湖」、全4幕は、ナレーションつきです。今回、観ると第一幕では道化師が、また第3幕、第4幕では黒鳥(悪魔の化身)が重要な役どころです。舞踏会の場面では、チェルダッシュ、マズルカ、スペインの踊り、など見どころ満載です。
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ヴィンセント・ミネリ監督「花嫁の父(Father of the Bride)」(アメリカMGM、1950年、93分)☆☆☆★

2021-07-12 10:23:52 | アメリカ・1950年~


ひとり娘を嫁にだす父親の複雑な心境を描いた作品。秀逸です。スペンサー・トレイシーの名演技、当時18歳のエリザベス・テイラーが光っています。

娘のケイ(エリザベス・テイラー)を新婚旅行に送り出し、弁護士のスタンリー・バンクス(スペンサー・トレイシー)は披露宴の疲れがどっと出ます。

スタンリーは、ケイが青年・バクリー・ダンスタン(ドン・テイラー)と結婚する、と両親を驚かした日のことを思い出します。

妻(ジョーン・ベネット)は落ち着いてコトを進めますが、スタンリーはバクリーがいい青年であることを知るまでは、落ち着かない日々でした。

ようやく教会での式が決まり、披露宴招待の人数もおちつき、知人から続々と贈物が届くようになった頃、ケイは突然、破談にしてくれと言い出します。新婚旅行の行き先について、バクリーと喧嘩になったのです。

しかし、親父が仲裁に乗り出すまでもなく、ふたりは仲直り。式の予行練習もすみ、スタンリーは眠られぬ結婚式前夜を過ごします。

晴れの式でケイは素晴らしい花嫁ぶりで、緊張している親父を圧倒します。知人たちがシャンパンを飲みに集まる披露宴の混雑のなかで、スタンリーは去り行く娘に言葉をかけてやる暇さえみつけられません。

もの想いに沈むスタンリーに、ケイから電話がかかってきます。ケイが伝えたかったことは・・・。
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アンジェイ・ワイダ監督「地下水道」(ポーランド、1957年、96分)☆☆☆☆

2021-07-10 23:37:39 | ポーランド


舞台は第二次世界大戦末期(1944年)、爆撃と戦火で廃墟と化したワルシャワ。

ポーランドの武装蜂起は、ナチ・ドイツ軍による容赦ない攻撃によって絶望的局面を迎えていました。

ワルシャワの抵抗組織はソ連軍の進行をたのみに一斉蜂起し、占領ドイツ軍に反撃を開始する予定でした。しかし、ソ連軍が到着しなかったため撃破されます。

ザドラ中尉(エミール・カレヴィッチ)の率いる中隊は事態打開を狙い、地下水道に逃げ込み、市の中心部に出て活動を続ける作戦をとります。しかし、慣れない空間で隊員たちは離ればなれになってしまいます。

ある者は発狂し、またある者は暗闇と悪臭と恐怖心に耐え切れず、マンホールから外に脱出します。脱出した者もドイツ軍に発見され射殺されます。

地下水道へ入る日、負傷したコラブ(タデウシュ・ヤンチャル)と、彼を助けて道案内してきたデイジー(テレサ・イゼウスカ)の二人は漸く出口を見つけますが、そこは河へ注ぐ通路で逃げおうすことはできません。落胆でその場に坐りこむふたり。

先を行くザドラと二人の隊員は、目的の出口を見つけます。しかし、出口には頑丈な鉄柵が張られ、爆薬が仕かけられていました。
リアルで苛酷な描写が続きます。全編、異様な迫力です。
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アルフレッド・ヒッチコック監督「パラダイン夫人の恋(The Paradine Case)」(アメリカ、1947年、115分)☆☆☆★

2021-07-08 23:36:40 | アメリカ・1940年~
巻き込み事件型のヒッチコックタッチとはひと味異なり、心理的葛藤に重きをおいたサスペンスドラマです。

グレゴリー・ペック、アリダ・ヴァリ・チャールズ・ロートンなど、ヒッチコック作品に珍しい俳優が好演しています。

イギリスの名門パラダイン家の未亡人(アン・トッド)は、夫を殺した容疑で、突然、逮捕されます。彼女は類まれな美貌の持ち主で、戦傷で目が不自由になった夫・パラダイン大佐に献身した良妻で、犯罪にかかわったとは信じられないことでした。

夫人は知己のシモン・フレイカー卿(チャールズ・コバーン)に弁護を依頼しますが、卿は若く敏腕な弁護士・アンソニー・キーン(グレゴリー・ペック)を推薦します。キーンの妻・ゲイ(アリダ・ヴァリ)も、夫にこの事件を担当するように勧めます。

キーンはパラダイン夫人に会い、話を聞くにおよんで、彼女の無罪を確信したものの、秘密と距離を感じ不安をもちます。

キーンは調査を進めるうちにパラダイン家の使用人、アンドレイ・ラトゥール(ルイ・ジュールダン)がこの事件に関係があるのでないか、と疑います。

公判が始まります。キーンはラトゥールにパラダイン大佐の死因が自殺だ、と証言させようとしますが・・・。
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