シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

前田陽一監督「坊ちゃん」(松竹、1977年、92分)☆☆☆

2022-05-31 23:19:37 | 日本・1970年~


夏目漱石による同名小説の映画化です。

明治39年。坊っちゃんこと近藤大助(中村雅俊)は、東京の物理学校を卒業、中学の数学教師として愛媛県立松山中学校に赴任。

幼時から、無鉄砲で負けず嫌いの大助でしたが、ばあやの清(荒木道子)だけには頭があがりません。大助はその清に別れをつげたのが気がかりでした。

大助はこの学校の教員にあだ名をつけます。校長(大滝秀治)は狸の様な顔をしているので狸、教頭は赤シャツ(米倉斉加年)、教頭のたいこ持ち吉川(湯原正幸)には野ダイコ、精気のない古賀(岡本眞人)にはうらなり、堀田(地井武男)には山嵐。

翌日から大助の授業が始まります。初めて教壇に立つ大助は、生徒たちに手こずります。

ある日、大助は美女(松坂慶子)と知り合います。彼女こそ、町中で才女の誉れ高いマドンナでした。

数日がすぎ、赤シャツが大助に話があるという。それは大助の親友の山嵐が町の芸者・〆香といい仲であること、彼が生徒たちのいたずらの糸を引いていることを吹き込みます。大助はすぐに山嵐に真相を問うと、それはデマでした。

さらにマドンナの許婚者であるうらなりを、他の学校へ彼を転校させようとたくらむのが、彼女に横恋慕した赤シャツと知り、大助は山嵐とともに赤シャツに怒りの鉄鎚を下そうとしますが・・・。
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市川崑監督「吾輩は猫である」(芸苑社、1975年、116分)

2022-05-30 23:21:38 | 日本・1970年~


夏目漱石による同名小説の映画化です。

舞台は文明中学の英語教師、苦沙弥(仲代達矢)の家。苦沙弥家は細君(波乃久里子)と三人の女の子、女中のおさん(上原ゆかり)の六人暮しです。
 
苦沙弥を除いて全員、猫嫌いですが、追い出されてもすぐ戻ってくる一匹の猫を飼っています。この家には、迷亭(伊丹十三)、苦沙弥の弟子・寒月(岡本眞人)が、主人の姪の雪江(島田陽子)を目当てに、口実をつくってはよくやってきます。

迷亭は美学者。人に虚言をはいては一人で喜ぶという悪趣味をもち、寒月は奇妙な研究ばかりしている理学士です。

その寒月が、実業家・金田の娘、富子(篠ひろ子)に恋をしたようです。にわか成金の金田は落雲館中学の後援者ですが、苦沙弥は出世と金儲けのために政治を利用している金田(三波伸介)を許すことができず、そのために家のすぐ近くにある落雲館をさけて、通勤に不便な文明中学に奉職していました。

富子の母親・鼻子(岡田茉莉子)は寒月の素行調査を車屋のお内儀、二絃琴の師匠に依頼し、寒月の人物鑑定に苦沙弥の家に乗り込みます。もともと寒月と富子の縁談に反対の苦沙弥と迷亭は、鼻子の自尊心を一蹴します。鼻子は烈火のごとく怒り・・・。

猫--吾輩も恋を。相手は・・・。
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佐々木康監督「そよかぜ リンゴの唄」(松竹、1945年、62分)☆☆☆

2022-05-29 23:24:03 | 日本・1940年~


戦後、リンゴの唄が大ヒットしました。並木路子のこの唄が閉塞した時代状況のなかで生きる人々の心にどんなにか明るい灯火になったことでしょう。その切掛けになったのが本作品です。並木路子が何度もリンゴの唄をうたいます。

並木路子扮するレビュー劇場の照明係で歌手志望の少女みち。上原謙や佐野周二扮する楽団員たちに励まされ、歌手としてデビューする「スター誕生」の物語。

舞台は東京、そして青森。

みち(並木路子)は18歳の少女。母(若水絹子)と一緒に劇場の裏方として働き、照明係を勤めながら、歌手を夢見ています。

楽団員たちはみちの才能を見抜き、歌を教えていました。リーダーの舟田(上原謙)や年長の平松(斉藤達夫)はみちに優しかったのですが、横山(佐野周二)とみちは、口を開けば憎まれ口の応酬になります。

スター歌手の恵美が結婚で引退することになり、舟田はその後任にみちを推薦します。しかし支配人は難色を示します。当分はコーラスガールとして実績を積むことになります。バックコーラスとはいえ憧れのステージ、みちはより一層、レッスンに励みます。

しかし、横山の何気ないからかいに傷つき、みちはリンゴ畑を持つ実家に帰ってしまいました。楽団員たちが頭を抱えていたところに吉報が・・・。
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川島雄三監督「わが町」(日活、1956年、98分)☆☆☆

2022-05-28 20:40:20 | 日本・1950年~


原作は織田作之助による同名小説です。フィリピンでの道路建設にたずさわった頑固な男が、日本に戻って車夫になり娘と孫娘を育てながら、明治、大正、昭和をかけぬけます。

舞台は大坂天王寺。

明治の末、フィリピンのベンゲット道路工事に従事していた若者・佐渡島他吉(辰巳柳太郎)は、完成した道路の利用の仕方に不満をもち大暴れしたかどで、本国に送還されました。

生まれ故郷の大坂天王寺の長屋に戻った他吉。桂〆団治(殿山泰司)、おたか(北林谷栄)たち長屋仲間と再会します。5年前にフィリピンにむけ出発する前につきあっていたお鶴(南田洋子)は、初枝という名の女の子を女手一つで育てていました。

他吉は自身の過去と性格を反省し、車夫として働き始めます。しかし、お鶴は長年の苦労がたたり病で亡くなります。

歳月は流れ、初枝(高友子)は幼馴染みの新太郎と恋仲になっていました。他吉はその仲を頑なに認めなかったものの、結局ふたりの結婚を許します。ところが不幸なことに。結婚早々、初枝と新太郎の新居から出火。意気消沈する新太郎。

他吉はふぬけ状態の新太郎にカツを入れし、彼をフィリピンへ出稼ぎになかば強制的に行かせます。しかし、他吉の処に新太郎客死の報が入ります。初枝はそのショックで父を恨みつつ亡くなり、他吉は孫(南田洋子)を育てることになりますが・・・。
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濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」(2021年、179分)☆☆☆☆

2022-05-26 20:43:36 | 日本・2000年~
第74回カンヌ映画祭(2021年)で脚本賞受賞、パルムドール賞ノミネート、米アカデミー賞(2022年)で国際長編映画賞を受賞し、話題に。韓国の俳優が多数出演。
 
原作は村上春樹による同名小説です。主要舞台は広島、そして東京、北海道。

主人公は妻を若くして亡くした家福(かふく)悠介(西島秀俊)は、成功した俳優・舞台演出家。妻の音(霧島れいか)は脚本家で、多くのドラマを手がけていました。娘がいましたが、4歳で肺炎のため亡くなり、その辛さをひきずっていました。

夫婦の間には二人だけの習慣がありました。一つは悠介が台詞を覚えるとき、音が吹き込んだ相手役の録音を聴きながら対話する方法です。もう一つは、夫婦のセックスの最中に音がつむいだ物語を、悠介がメモし、音の脚本作りに活かすというものでした。

その妻が突然、悠介の留守中にくも膜下出血で急死。その朝、彼の出がけに「帰ったら夜、話したいことがあるの」が最後の言葉でした。

二年後、悠介は次の企画で広島に行きます。チェホフ「ワーニャ伯父さん」の公演のためです。悠介は市の中心からかなり離れた宿舎で停留し、愛車の運転に若い女性ドライバー(三浦透子)がつきます。スタッフと会い、オーディション、本読み、と進みますが、ワーニャ役の高槻(岡田将生)が事件を起こし・・・。
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成瀬巳喜男監督「女の座」(東宝、1962年、111分)☆☆☆★

2022-05-24 20:45:38 | 日本・1960年~


家族のなかの女性の位置、行動、愛の葛藤を描くと右に出るものがいない監督の佳品。家族のなかの妻(長男の嫁で未亡人)の位置が要です。

舞台は1950年代後半の東京の荒物店。

秋晴れのある日、この店の主人・金次郎(笠智衆)が庭仕事で重い石をうごかしたことが原因で寝込んでしまいます。この家には後妻・あき(杉村春子)と夫を亡くした嫁・芳子(高峰秀子)が暮らしています。

父が床に伏したので「招集?」がかかります。駆けつけたのは松代(三益愛子)、次郎(小林桂樹)と妻(丹阿弥谷津子)、次女・梅子(草笛光子)、三女・路子(淡路恵子)、四女・夏子(司葉子)、五女・雪子(星由里子)です。

アパート経営の松代は先妻の娘で、目下、夫(加藤大介)が女のもとに走り怒り心頭。次郎は妻の蘭子とラーメン屋で生計をたてています。梅子は独身、生け花の指導で暮らしています。夏子は美人、そろそろ結婚か?ということで、周りがうるさくなってきています。路子は福岡で夫・橋本正明(三橋達也)と二人暮らし。飛行機でやってきたのですが、どうも様子がおかしく、長居しています。

この家で唯一の他人である芳子は、一人息子・健が石川屋の後継ぎになることを頼りにしています。

そこへ、あきが初婚のおり、婚家に残した子・六角谷甲(宝田明)という妙な名前の男があらわれますが・・・。
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千葉泰樹監督「悪の愉しさ」(東宝、1954年、112分)☆☆

2022-05-23 20:47:25 | 日本・1950年~


原作は石川達三による同名の新聞小説です。

舞台は東京。

冷静な計算で狙った相手を操る事に密かな愉しみを持つサラリーマン中根の人生とその末路を描いた作品です。

主人公の中根玄二郎に俳優座の伊藤友哉、その妻に杉葉子、その他、森雅之、久我美子、加藤嘉が出演しています。
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内田吐夢監督「どたんば」(東映、1957年、108分)☆☆☆

2022-05-20 21:41:30 | 日本・1950年~


昭和31年度芸術祭・文部大臣賞に輝いたNHKテレビ・ドラマ(菊島隆三・作)の映画化です。

舞台は岐阜県・御蒿町の東和炭鉱。

梅雨の時期。小やみなく降り続く雨で、縦坑入り口付近の木枠の桶が裂け、水がすさまじい勢で流れ本坑道へと流れこみます。切羽(きりは)にいた5人が逃げ場を失い、やっとのことで暗黒の第6切羽に逃げ場を確保します

5人の中の最年長者は伴野(志村喬)、今まで二度も落盤にあった経験があります。あとの4人は麻疹の子どもがいる野田(石丸勝也)、農業の片手間に働いていた石垣(岩上瑛), 坐掘りの係だった油井(立花良文)。そうして百姓の次男でミチと幼友達の山口(江原真二郎)。
必死の救助作業が続けられました。炭鉱主・須永(加藤嘉)、韓国人・島野(岡田英次)らの努力にもかかわらず、電圧低下でモーターは故障し、また泥水が作業の進行をはばみます。

救助予定の日が一日延び、人々の憤満、焦りは高まり、それが島野らに向って爆発します。朝鮮人とあざけられた彼らは作業から手を引きまし。集った家族の人々は須永を責めたてます。

切羽では、わずかに輝いていたアセチレンランプが消え、5人は暗黒の中に取り残されたまま、80時間以上がたちます。
かつて須永のもとで働いていた横田(波島進)がかけつけますが・・・。(結末、全員救助されます。)
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瀬川昌治監督「ぽんこつ」(東映、1960年、81分)☆☆★

2022-05-20 21:38:58 | 日本・1960年~


原作は阿川弘之による同名小説です。

舞台は東京の下町、本所竪川町。

タイトルの「ぽんこつ」は、事故を起こし廃棄処分になった自動車を解体、処理する店のこと。

そのうちの一軒・犬塚商店には機械修理がメシより好きな男がいました。熊田勝利(江原真二郎)です。廃車のなかに現金3万円が堕ちているのをみつけ、警察に届けます。真面目な好青年です。

ある日、女子大生の和子(佐久間良子)が店に現われました。彼女は父が酔払運転でつぶしたルノーを、勝利に4万円で引きとらせます。その日から、勝利にとって和子は忘れられない存在となります。

和子はその金で8ミリカメラとテープレコーダーを買い、親友の美沙子(小林裕子)と協同で、卒論を8ミリとテープレコーダーでまとめます。ついでに、卒論の作製資金を稼ぐため、動くお見合い写真なるものを思いつき、実行にうつします。

勝利は卒論の手伝いをさせられます。卒論は無事にパス。和子とのランデブーに失敗した勝利は、美沙子をレストランに誘って相談します。実沙子は勝利からプロポーズされたと早合点。そのレストランで見合いをしていた和子は憤慨します。

和子に嫌われたとなげいていた勝利の懐に、6ヵ月前拾った3万円がとびこんできました。落し主が現われなかったためです。その3万円を馬券につぎこみ、運良くこれが大当りしますが・・・。
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木下恵介監督「少年期」(松竹、1951年、134分)☆☆☆

2022-05-17 21:44:06 | 日本・1950年~


原作は心理学者・波多野勤子と息子の戦時中の往復書簡をまとめた同名ベストセラー。

舞台は敗戦間近(1944年春)の東京そして長野。鬼畜米英で大学の英文科の職をおわれた自由主義的父親をもった少年が軍国主義教育や周囲の愛国主義的行動との間で悩む姿が描かれます。

主演の石浜朗は立教大学出身です。

絶望的なアジア・太平洋戦争の末期、小林一家は東京から長野県諏訪へ疎開することになります。中学生の一郎(石浜朗)だけは東京に残るといいはり、結局、父母(笠智衆、田村秋子)と弟二人が疎開します。しかし、東京は連日の空襲、尊敬していた出征中の先生(三国連太郎)が戦死したとの悲報が入り、一郎は落ち込み、やむなく父母のもとに行くことになります。

疎開での生活の様子が克明に描かれています。働いているのはほとんど母。家事はもちろん、薪割りのような力仕事も母親がしています。彼女はそれが勤めと思っていて愚痴を言いません。父はといえば、英文学の書物を読みふけり、疲れると近所の川で太公望(釣り)です。一郎はそんな父親を嫌悪し、反発します。

一郎は地元の子どもたちの苛めにあい、慣れないスケートの練習で四苦八苦です。そうこうするうち、戦禍はますます深刻になり・・・。
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山本薩夫監督「浮草日記」(1955年、106分)☆☆☆

2022-05-14 20:02:59 | 日本・1950年~


労働運動とはまるで無縁の世界で生活していたどさ回りの一座、市川馬次郎一座が、炭鉱町でストライキに巻き込まれ、当初、労働組合と対立していたが次第に心をひらいていく過程をユーモラスに描いた作品。

座長の役を担った東野栄次郎がいぶし銀の味をだして健在。津島恵子と菅原謙二のみずみずしい演技も記憶に残ります。

一座は旅をしながら芝居をつづけていましたが、あるとき玉木屋という悪徳興行師にだまされ、座の解散の一歩手前まで追い込まれます。

そんなおり、ある炭鉱町で興業を行うにあたって、座員の必死の呼び込みが功を奏して盛況となります。ところが、芝居の公演期間中に炭鉱ストライキとなり、その騒動のなかで売上金が玉木屋に持ち逃げされます。一座とストに入った組合とが対立しますが・・・
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ウディ・アレン監督「それでも恋するバルセロナ(Vicky Cristina Barcelona)」(アメリカ、2007年、96分)☆☆☆★

2022-05-12 10:27:05 | アメリカ・2000年~


舞台はスペイン、バルセロナとオビエド。

原題に主人公の二人の女性の名前が入っています。ヴィッキー(レベッカ・ホール)とクリスティーナ(マーガレット・ヨハンソン)です。
親友同士の二人には共通項が多く仲良しなのに、恋愛に関する考え方だけはまったく違いました。それが行動にあらわれたのがこの作品です。

ヴィッキーはカタルーニャでスペイン文化に関する修士論文を書くために、クリスティーナは短編映画を撮り終え気分転換のために、バルセロナに到着。

ヴィッキーの親戚の家に滞在した二人でしたが、ある画廊で開かれたパーティで画家のフアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)と出会います。彼は初対面の挨拶もそこそこに、二人を週末、オビエドに連れて行きたいと誘います。

ぶしつけな申し出にヴィッキーは反感をもちますが、クリスティーナは彼に惹かれ、結局二人は彼とともにオビエドに飛びます。

しかしオビエドでクリスティーナは体調を崩し、フアン・アントニオとヴィッキーは二人きりで過ごすことになります。最初は反発していたヴィッキーでしたが、次第にフアン・アントニオの魅力にはまり、婚約者がいるにもかかわらず一夜をともにします。

そこへフアン・アントニオの元妻マリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)が現れ・・・。

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成瀬巳喜男監督「乱れ雲」(東宝、1967年、108分)☆☆☆★★

2022-05-11 10:18:56 | 日本・1960年~
舞台は東京、そして青森(十和田湖)。

将来があった夫を交通事故でなくした若い女性と、その加害者である青年との純愛を描いた作品です。監督の遺作です。

外務省に務める夫(土屋嘉男)が大使館(アメリカ)に赴任することになり、江田由美子(司葉子)は有頂天です。

由美子は妊娠中で、アメリカで出産することになりそうです。そんな希望に満ちた生活が打ち砕かれました。部長のお供で出かけた箱根で江田が車にはねられ、死亡したのです。

加害者は三島史郎(加山雄三)。物産会社に勤める真面目なサラリーマンでした。事故は車の欠陥によるもので、三島は法的には無罪となります。しかし、道徳的な判断で、毎月少なからぬ賠償金を10年間にわたって由美子に送付することにしました。

三島はその後、責任をとって青森に転勤させられます。婚約が決まりかけていた常務の娘(浜美枝)とも別れざるを得ませんでした。

由美子は夫の実家から籍を抜かれ、彼女自身もひとりの力で生きていきたいと願い、兄嫁・四戸勝子(森光子)が経営している旅館を手伝うことを決心します。ところが、偶然にもその旅館は青森にあったため、三島は月々のお金を直接、由美子に渡すことになるのですが、彼女はそれを契機に受け取りを拒否しますが・・・・。
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成瀬巳喜男監督「乱れる」(東宝、1964年、98分)☆☆☆☆★

2022-05-11 10:15:52 | 日本・1960年~


舞台は1960年代前半の静岡県清水市、そして山形県の銀山温泉。

時代はスーパーマーケット型小売業が入ってきて地元小売店との確執が出てきた頃です。スーパーの宣伝カーが「高校三年生」のメロディーを流しながら走っています。

夫を戦死で失った礼子(高峰秀子)は、敗戦で一時、跡形もなくなった酒屋「森田屋」を立ち直らせ、日々、ひとりで身を粉にして働いていました。

他人ばかりの家でも昔気質の礼子はその家を自分の家と信じて義理の母の世話もしています。もうひとり大学は出たものの、酒屋を手伝うでもなく、ブラブラしている亡き夫の弟、幸司(加山雄三)が住み込んでいます。

大手のスーパーマーケットがおしよせ、「森田屋」もその存続が危うくなってきました。そんなおり、幸司の姉(草笛光子)が「森田屋」をスーパーマーケットにしてはと提案します。

資金やアイディアは幸司の姉の夫(北村和夫)が提供するという好条件です。「森田屋」のロケーションは小売業にうってつけで、スーパーマーケットにしたら成功間違いなしというよい話でした。

せっかくのよい話にも、幸司は乗り気にはなれません。大きなスーパーマーケットともなると会社組織になり、礼子の立場がどうなるのかが心配です。

幸司はしらずしらずのうちに自分の兄の嫁であった年上の礼子に心を寄せていましたが、礼子がこれを受け入れるわけがなく・・・。

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成瀬巳喜男監督「秋たちぬ」(東宝、1960年、80分)☆☆☆☆

2022-05-09 10:23:43 | 日本・1960年~


舞台は1950年代後半の東京・銀座界隈。

大人の事情にふりまわされる子どもの戸惑い、哀しみを描いた作品です。「だっこちゃん人形」、「三角ベースの野球」など、戦後の生活を思い出させるシーンがいっぱい。懐かしい。

父を亡くし母・茂子(乙羽信子)とともに東京に出てきた小学六年生の秀男(大沢健三郎)。八百屋を経営しているおじ常吉(藤原釜足)のもとに身を寄せますが、母は近くの旅館「三島」に住み込みで働きます。

遊び場もない都会の生活になじめぬ秀男の相手になったのはいとこの昭太郎(夏木陽介)と、小学校四年生の順子(一木双葉)でした。順子は「三島」の女将(藤間紫)の娘です。女将、すなわち母・直代は月に二、三回やって来る浅尾の二号でした。

秀男と順子は仲良しになります。秀男は順子の宿題を代わってやったり、カブト虫をとってあげると約束したり、順子が海を見たことがない秀男にデパートの上から眺望させたり、晴海の海に同行したり、といった具合です。

順子は秀男を兄として家族に入れてほしい、と母に頼みますが、そんなことが許されるはずがありません。そしてあろうことか、母・茂子が「三島」の馴染客で真珠商人の富岡(加藤大介)と一緒にいなくなってしまい・・・。
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