シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

クリスティアン・ペツォール ト監督「水を抱く女(原題:Undine)」(ドイツ、2020年、90分)☆☆☆☆

2023-09-28 19:52:16 | ドイツ
原題は主人公の女性の名前、ウンディーネ。

「愛する男に裏切られたとき、その男を殺して水に戻る」という宿命を背負った水の精ウンディーネの神話がモチーフ。ウンディーネの神話をもとにした過去の作品のほとんどは、男性目線で描かれているのに対し、本作品は女性のそれで描かれます。

要所で繰り返し挿入されるバッハ「協奏曲ニ短調(マルチェッロのオーボエ協奏曲による) 第二楽章アダージョ」が効果的。

博物館で働く歴史家・ウンディーネ(パウラ・ベーア)は、恋人のヨハネス(ヤコブ・マッチェンツ)が別の女性に心変わりし悲しみにうちひしがれていました。ある日、彼女はカフェの大きな水槽が大破する事故が切掛で、潜水作業員のクリストフ(フランツ・ロゴフスキ)と親しくなります。幸せな日々を過ごすようになったふたり。

そんなある日、ウンディーネがクリストフと交際していることを知ったヨハネスから復縁を迫られます。彼女は彼の申し出を拒否します。その夜、ヨハネスとの関係を疑う電話がクリストフから彼女の携帯電話にかかってきます。電話は一方的に切られ、彼女が折り返しの電話をしても通じません。

翌日、ウンディーネは思いあまってクリストフが働く作業現場を訪れると、彼が水難事故にあい、脳死状態にあることを知らされます。そして前夜の電話の時点で、すでに脳死判定されていて、電話をかけられる状態ではなかったことがわかります。

打ちのめされたウンディーネは・・・・。
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ウディ・アレン 監督「スターダスト・メモリー(原題:Stardust Memories)」(アメリカ、1980年、88分)☆☆☆★★★

2023-09-27 19:54:34 | アメリカ・1980年~
映画祭会場での悲喜こもごものエピソードをタイトルにあるように星屑のようにちりばめて見せた監督の個人的体験の作品化です。

主人公は売れっ子映画監督サンディ・ベイツ(ウディ・アレン)で、監督本人の成り代わりです。

新作のラストはこういうもの。ある古びた列車の中。退屈そうな中年男が、車内を見回してギョッとします。というのも、なんと乗っているのは屍同然の老人たちばかり。それに対して対向車線には、華やいだ女性たちでいっぱいの列車が停まっています。慌てた男は乗り替えようと窓をあけようとしますが、どの窓も開きません。列車は無情にも出発し、霧の中を進み、到着先は塵の山。
そして、THE END。以上は映画のワンシーンでした。

その週末、ある州で開かれた映画祭のサンディ・ペーツ週間。会場のホテルに向かったサンディは、新作のことを考えながら様々なイメージを頭の中に描きます。ファンたちがつめかけた会場、作品上映終了時のファンからの質問に答えながら、彼のイメージは過去と現在を往還します。

彼の記憶に浮んでは消えるのは、かつての彼の作品に主演した女優ドリー(シャーロット・ランプリング)、フランス人の人妻イゾベル(マリー・クリスチーヌ・バロー)、会場にいた女性バイオリニストのデイジー(ジェシカ・ハーパー)。現実と幻想が交錯し、物語が展開していきます。
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スザンナ・ニッキャレッリ 監督「ミス・マルクス(原題:Miss Marx)」(イタリア=ベルギー、2020年、107分)☆☆☆☆

2023-09-26 19:56:26 | イタリア
19世紀後半に「資本論」を著わしたカール・マルクスには、妻のイェニーとの間に6人の子がいましたが、その末娘で、社会主義とフェミニズムを結び付けた女性活動家エリノア(1855-98)の半生を描いた作品です。カールの子の3人[長男、次男、三女])は早くに亡くなり、長女ジェニー、次女クラウラ、四女のエリノアが育ちました。

制作された国がイタリア=ベルギーというのは意外でしたが、その経緯はわかりません。

主要舞台はロンドン。

冒頭、カールの葬儀の場面。28才のエリノア(ロモーラ・ガライ)は、父の偉業をスピーチします。聡明な彼女は幼少のころから父に同行し、16歳からは父の仕事を手伝っていました。

父の死後、独身だったエリノアは、自分の人生を生きたいと思います。

その後、エリノアはエ劇作家のエドワード・エイヴリング(パトリック・ケネディ)と会い、親しくなります。彼には妻がありましたが没交渉。エリノアはその後、彼と同棲しますが、正式の結婚でなかったので、「ミス・マルクス」でした・

エリノアはアメリカの労働運動の調査に赴きます。労働者の過酷な労働状況を視察し、児童労働の実態を調べ、支配者による搾取の経済的仕組みの実証論文にとりくみます。一方、エドワードは豪勢な食事をし、浪費します。その結果、彼女は彼の金銭トラブルに巻き込まれ・・・。
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ヘンリー・ハサウェイ 監督「サーカスの世界(原題:Circus World)」(米、1964年、137分)☆☆☆☆

2023-09-25 19:58:20 | アメリカ・1960年~
ジョン・ウェイン、クラウディア・カルディナーレ、リタ・ヘイワースが出演。サーカスのショーのシーンでは、華麗な空中ブランコ、猛獣使いの演技など、華やかで見どころが一杯です。

時代は19世紀のサーカス黄金期。アメリカ最大のサーカス団を率いる、マット(ジョン・ウェイン)。この一団は、転機をもとめてヨーロッパにとび、団員のあらたなスカウトを行いながらパリ、ベルリンなど各地で公演。いくつかのトラブルを乗り越えて巡業が進んでいましたが、一大ショウ開催までこぎつけた矢先、衣装部屋での失火から大火災があり設営されたテントが全焼し、公演は絶望視されましたが・・・。

本作品にはもうひとつのドラマが。それはマットと彼が娘同然に育てたトニ(クラウディア・カルディナーレ)とのドラマ。

トニはリリー(リタ・ヘイワース)という空中ブランコの芸人の娘でした。14年前、リリーの夫、すなわちトニの父親であった団の仲間のアルフレッドは、演技中に墜死したことになっていましたが、それは空中曲芸をやるリリーが「ある男性」との仲を嫉妬してのこと、という話しになっていました。実は、

彼の死は自殺で、この「ある男性」とはマットだったのです。

以来、リリーは行方をくらまし、マットは起こった事件の中身をひた隠しにしてトニを育てたのです。マットが率いるヨーロッパ公演は、彼のリリー捜しという別の目的があったのです。

そのリリーが一座にあらわれ・・・。
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バド・フリージュン 他、監督「ザッツ・エンタテイメント Part3(原題:That’s Entertainment Part3)」(米、1994年、113分)☆☆☆☆

2023-09-24 20:00:59 | アメリカ・1990年~
 


MGM創立70周年を記念して製作された作品。旧来の同名の作品を継承した第3弾。

今回はジーン・ケリー、エスター・ウィリアムズ、シド・チャリシー、レナ・ホーンたちが中年、初老にさしかかっていて、若かった頃の思い出話をリレー方式で紹介する趣向です。

1920年代の末期から30年代にかけトーキーが主流になりつつあった時代、

MGMはそれをどのように映画に生かしていくかに苦慮しました。それでも、この頃の圧巻はエリノア・パウエルのタップダンス、ミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランドのペアダンスで人気を博しました。本作品にはその名場面が紹介されています。

その後も舞台、歌劇、ブロードウェイのショーなどをとりいれて映画作品に仕立てました。初期のミュージカルの弱点はストーリーが弱かったことです(そのため次第に飽きられてきました)。この弱点を克服し、歌とダンスだけでなく、ストーリーでもひとつの完成形を示したのが、ジーン・ケリー、ロナルド・オコンナー主演の「踊る大紐育」(1949)です。この作品に限らず、ジーン・ケリーは歌、ダンス、振付け、監督でその才能をいかんなく発揮しました。

本作品のなかほどでは、40年代以降、銀幕をかざった女優が多数、登場して楽しませてくれます。グレタ・ガルボ、キャロル・ロンバート、ノーマ・シアラー、マレーネ・ディートリッヒ、グレース・ケリー、エリザベス・テーラー、などなど。
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ジーン・ケリー 監督「ザッツ・エンタテイメント Part2(原題:That's Entertainment Part2)」(米、1976年、130分)☆☆☆☆

2023-09-23 20:03:04 | アメリカ・1970年~
前作の「ザッツ・エンタテイメント」を継承した第2弾。

挿入された収録映画は75本(未見のものがほとんど)。登場するスターは125人。司会をするのはビング・クロスビー、ジーン・ケリー、フレッド・アステアなど。豪華絢爛、百花繚乱。

興味をひいたのは、あのロバート・テイラー、ジェームス・スチュアートが歌っているシーン、そしてグレタ・ガルボの歌とダンス。

エリノア・パウエル、シド・チャリシーのダンスも見事です。

本作品のような旧い映画作品を観ていると、アメリカがもっていた進取の精神に溢れた明るい空気に共感します。

私見ではアメリカ映画が劣化し、瑕疵が目立ってくるのは、ベトナム戦争以降です。(伝統を受け継いだいい作品もたくさんありますが!)
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ジャック・ヘイリー, Jr. 監督「ザッツ・エンタテイメント(原題:That's Entertainment)」(米、1974年、132分)☆☆☆☆☆

2023-09-20 19:41:07 | 日本・1970年~
 
実に楽しい作品です。圧巻の約二時間。

ミュージカル映画で他社の追随を許さなかったMGM社(Metro-Goldwyn-Mayer)が、創立50周年を記念して製作した作品です。MGMの歴史は、さながら映画の発展のそれでもあり、この観点から鑑賞することができました。

この作品はジーン・ケリーが、かつて同社に所属していたスターに声をかけて出来あがったもの。フレッド・アステア、ビング・クロスビー、フランク・シナトラ、エリザベス・テイラー、ミッキー・ルーニーなどの往年の名優が出演しています。他に、エスター・ウィリアム、ジュディ・ガーランド、ライザ・ミネリなどなど。

内容は『ブロードウェイ・メロディー』(1929年)にはじまるMGMミュージカルから名シーンが抜粋され、プレゼンターがコメントをいれて紹介していきます。ミュージカルシーンで優れたものから名場面が採用され、この世界の歴史、魅力を学び、かつ愉しめます。

とくに関心をひいたのは、1920年代に入ってトーキーの時代に入り、いろいろなことが起きたこと、それまで訛りのある英語でも平気で俳優をきどっていられた時代が終わり、それゆえにこの世界を去っていた人が多数いたこと、また演技だけ出来ればよかった俳優が歌を歌わせられたり踊らされたり大変だったこと(クラーク・ゲーブルがダンスをしていました)、などでした。
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フランソワ・オゾン監督「スイミング・プール(原題:Swimming Pool)」(英・仏、2003年、102分)☆☆☆☆

2023-09-19 19:45:49 | 日本・戦前
 
サスペンス映画です。

標題は、主人公の女性推理作家、サラ・モートン(シャーロット・ランプリング)が出版社社長のジョン(チャールズ・ダンス)の紹介で赴いた南フランス山中リュベロンにある別荘にあったプールのこと。この別荘でサラは新作品の執筆にとりかかるのですが、このプールは本作品のストーリーの象徴的存在です。そして、「スイミング・プール」は、彼女が書き上げたジョンの秘密をあばいた本のタイトルです。

サラは、この別荘に到着して、辺りの様子をみておこうと散歩に出ますが、覆いのかかった大きなプールをみとめます。覆いをめくると、枯れ葉が浮いています。

静寂の中、持ち込んだラップトップのPCで執筆を始めたある夜、ジョンの娘と名乗るジュリー(リュディヴィーヌ・サニエ)がやって来ます。ジュリーは枯葉の浮いたプールで泳ぎ、音量を高くしたTVを見放題。静寂を乱されたサラは、この訪問者と衝突します。

サラが昼食に通うカフェのウェイター、フランク(ジャン=マリー・ラムール)は、隣村から来ているとのこと。

ジュリーの振舞いに関心を持ったサラは、執筆中の作品と並行して、ジュリーとフランクを主人公にした別の作品を書き始め、それをPCのデスクトップに作ったフォルダー名称「ジュリー」に納めます。

ここまでは登場人物とそれぞれの関係、そして設定の説明のスケッチですが、ここから話しは劇的に展開します。
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フランソワ・オゾン監督「エンジェル(原題:Angel)」(英・ベルギー・仏、2007年、134分)☆☆☆☆

2023-09-18 22:56:01 | イギリス
原作は英国の作家エリザベス・テイラー(女優のエリザベス・テーラーではありません)の同名長編小説。

舞台は英国の田舎町。エンジェル・デヴェレル(ロモーラ・ガロイ)は、そこで食料品店を営む母と二人暮らしです。

エンジェルは夢見がちな少女。学校にとけこめず、家で小説を書いて出版者に送っていました。そのうち出版人のセオ・ギルブライト(サム・ニール)のはからいで刊行が決まり、彼女は人気作家のスタートをきります。

しかし、その小説の内容は観念的で現実性に乏しく、一部の愛好家以外に受け入れられたものの、通俗的だとの評価も受けていました。当人はそのことを気にせず、同じパターンの小説を書き続け、高額の収入を得て、豪邸「パラダイス」を手に入れます。

そんなおり、エンジェルの小説の愛好家のひとりで詩を書くノラ(ルーシー・ラッセル)がおしかけてきて、身の回りの世話をかってでます。そのノラの兄はエスメ(マイケル・ファスベンダー)。暗い色彩のない絵を描く画家でした。あろうことかエンジェルは、このエスメに一目惚れ。あげくのはてに結婚となります。エスメには下心があり、それはカネでした。

ノラは世間知らずのエンジェルの面倒を見続けます。その矢先、第一次大戦が勃発。エスメは志願し、出征。しかし、戦争で右脚を失い帰還。廃人のような日々を過ごし、とうとう・・・。
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チャールズ・ヴィドア監督「カルメン(原題:The Loves of Carmen)」(アメリカ、1948年、98分)☆☆☆

2023-09-17 22:57:56 | アメリカ・1940年~
おなじみのビゼーのオペラ「カルメン」を映画作品化したものです(原作の小説はメリメ)。映画化された「カルメン」はいくつかありますが、その中のひとつ。

主演のリタ・ヘイワースが際だって魅力的です。

舞台は1830年のスペイン・セビリア。

竜騎兵隊の新人・ホセ(グレン・フォード)は、妖艶なジプシー・カルメン(リタ・ヘイワース)と知り合います。彼女との関係に翻弄されるホセが描かれます。

ある日、仕事を終えたホセはカルメンの家で密会。しかし、そこに上官が押しかけてきて、押し問答するなかで互いに剣をぬき、逆上したホセは上官を刺し殺します。

ホセはカルメンとともに逃亡。上官を殺したかどで、逃亡を続けるホセに懸賞金がかかり、その額はあがる一方。

この間、ホセは彼女とともに逃亡生活するのですが、彼女の男とその手下が出てきたり、闘牛士のハンサムな男性がでてきたり・・。カルメンは奔放でわがまま、ホセをほったらかしにすることもしばしば・・・。嫉妬に灼かれるホセ。その結末は・・・。
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ジュゼッペ・トルナトーレ監督「ある天文学者の恋文(原題:La corrispondenza)」(イタリア、2016年、121分)☆☆☆☆

2023-09-16 22:59:39 | イタリア
原題は「文通」「書状」といった意味です。

著名な天文学者のエド(ジェレミー・アイアンズ)と教え子のエイミー(オルガ・キュリレンコ)は、師弟関係でありながら恋愛関係にもありました。彼女は大学で天文学を修め、さらに研究者として自立する希望をもっています。同時に、スタントマンのアルバイト(?)をしていて、始終、危ない場面に会い、スタッフともめています、

ある日、大学で授業を受けていたエイミーのもとに、出張中のエドから「もうすぐ会える」というメールが届きますが、エドの代わりに教壇に立っていた教授は、エドが数日前に亡くなったという訃報を学生たちに伝えます。

しかし、その後もエイミーのもとに、エドから手紙やメール、贈り物が届きます。絶望と悲しみのなかにありながら、不思議に思ったエイミーはエドが暮らしていたエジンバラの街を訪れます。

エイミーの携帯電話は、しじゅう亡くなったはずのエドからメールでよくなります。また、エイミーが行く先々で、それを予感しているかのような置き手紙、封書が届きます。封書にはCD―ROMが入っていて、再生するとエドが画面に現われ、語りかけてきます。

そのうち、エイミーは彼女自身が誰にも言えずに封印していた過去を、エドが調べていたという事実を知りますが・・・。
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ヴァレリア・バリージ監督「プラド美術館 驚異のコレクション」(イタリア・スペイン、2019年、92分)☆☆☆☆☆

2023-09-15 23:01:51 | スペイン
 


マドリードにあるプラド美術館を紹介したアート・ドキュメンタリー映画。この美術館は2019年に開館200周年を迎えました。そのことを記念して製作されたようです。わたしは20年ほど前に、この美術館を訪れました。再訪したいです。

本作品の案内人は俳優のジェレミー・アイアンズ。

15世紀から17世紀にかけて「太陽の沈まぬ国」とも呼ばれたスペイン王国。プラド美術館には、歴代の王族が圧倒的な経済力を背景に、絵画だけでも「知識ではなく心で選んだ」約8700点の美術品が収蔵されています。ゴヤの作品は932点あるそうな。

カール五世からフェリペ二世、フェリペ四世と連なるスペインの歴史紹介を背景に、ティツィアーノ、ルーベンス、ボズ、ヴァン・ダイク、ベラスケス、ゴヤ、エル・グレコなどの傑作群をカメラが映し出します。画家たちが描いた作品の解説をしながら、その筆遣いなども細かくとらえ、興味つきないところ。

ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」、男性中心だった17世紀の美術界に名乗りを上げた女性芸術家クララ・ピーターズの静物画など,全く知らなかった作品の紹介もあって興味深かったです。
 
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森谷司郎監督「赤ずきんちゃん気をつけて」(1970年、90分)☆☆

2023-09-11 20:37:00 | 日本・1970年~


原作は庄司薫による同名の小説です。芥川賞受賞作品。この小説のすぐ後にこの作家は「白鳥の歌なんか聞こえない」「さよなら怪傑黒頭巾」を発表。

その頃、大学生だったわたしはこの「赤ずきんちゃん気をつけて」を読みました。面白い小説とは思いましたが、正直のところ、「え、これが芥川賞? 深みがない!」。

芥川賞作品といえば石川達三「蒼氓」、安部公房「壁」、遠藤周作「白い人」、松本清張「或る『小倉日記』伝」、吉行淳之介「驟雨」、北杜夫「夜と霧の隅で」、開高健「裸の王様」、大江健三郎「飼育」など、高校生時代、かなり読んでいましたが、当時のわたしの主観(!)では、その延長線上に考えられないテーマ、文体だったからです。(現在の芥川賞受賞作品は、「その文学的価値」をみとめつつ、しかしたぶんに「話題作り」に傾斜してますね)
その「赤ずきんちゃん気をつけて」が映画作品にあると知ったので、観ました。

舞台は東京。東大入試の中止が決定された1968年の冬。

卒業を間近にひかえた日比谷高校生・薫(岡田祐介)の一日を描いています。家族やガールフレンドとの関係が映し出され、観念的な(?)政治や世界観についての友人との議論、青春の悩みがほとばしります。

そのうち、街で偶然であった幼女に「赤ずきんちゃん」の絵本を選んであげ、ふれあう中、大学受験を断念します。
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前田陽一監督「虹をわたって」(1972年、88分)☆☆☆

2023-09-10 20:39:00 | 日本・1970年~

ある時代(1970年代前半)の世相を感じさせる作品です。

この作品で天地真理さんはタイトルの「虹をわたって」の他に、「小さな恋」「ひとりじゃないの」を歌っています。

本作品が製作された1972年、わたしは大学4年生。天地真理さんの「水色の恋」が小柳ルミ子さんの「瀬戸の花嫁」とともに大ヒットしていました。
往年の俳優が多数。有島一郎、日色ともえ、左時枝、武智豊子、なべおさみ、岸部シロー、沢田研二、萩本健一。みんな若い!

舞台は、横浜に流れるドブ川のような運河。そこに一隻のダルマ船・水上ホテル「レンゲ荘」がつながれています。有象無象の労務者風のはぐれものたちが宿代わりにつかっています。

ここに家出をした星野マリ(天地真理)が「一晩泊めてください」とたずねてきます。白い洋服の似合う、清楚な娘さん。後からわかるのですが、彼女の家出の原因は、父親が妻と死に別れ、その後、女性とつきあうようになったことです(嫉妬)。

船の持主おきん(武智豊子)は、この娘マリを泊めてやります。少し前に亡くなった長老(大杉侃二郎)が生きているうちに会いたいといっていた孫娘と偽わって。

マリと労務者たちとの交流が始まります。長老の鞄に入っていたかなりの遺産を使って競艇にいったり、たのしそうです。

数日後、マリは父(有島一郎)とレストランで食事。父親がそこで切り出したのが自分の再婚の話。相手はくだんの女性、恵子(日色ともえ)。多感なマリは、ショックを受け・・・。
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熊切和嘉監督「海炭市叙景」(2010年、152分)☆☆☆☆

2023-09-09 20:40:48 | 日本・2010年~
 


原作は夭折した小説家、佐藤康志による短編集。

市井の片隅でさまざまな事情を抱えながら生きる人間の交差、連鎖を描いた作品です。

舞台は海炭市(架空の都市の名称)、原作者の出身地、函館市がモデル。

冬。造船所に勤める颯太(竹原ピストル)とその妹、帆波(谷村美月)。会社側のリストラによって職を失います。元旦、二人は初日の出を見ようと、小銭を持って臥牛山へ。帰りのロープウェイ代が足りず、颯太は歩いて下山。帆波はロープウェイで降り、閉店時間の過ぎた麓の売店の前で、待ちますが、颯太はいつまでももどって来ません・・・。

街の開発のために立ち退きを迫られる老婆・トキ(中里アキ)。市役所に勤めるまこと(山中崇)が、説得に訪れます。家畜たちと昔からこの地域に暮らすトキは、立ち退きに応じません。ある日、トキの飼猫のグレがいなくなり、彼女はさがしまわりますが・・・。

プラネタリウムの職員、隆三(小林薫)。妻(南果歩)は、毎晩バーで働き、時々帰ってこず、隆三をいらいらさせます。中学生の息子は口もきかず、夫婦仲は冷え切り・・・。

そのプラネタリウムに通う少年、アキラの父・晴夫(加瀬亮)はガス屋の社長。浄水器の販売に手をだしますが、うまくいきません。父親から経営の不備を指摘される晴夫。その矢先、妻・勝子(東野智美)の子どもへの虐待に気づきますが、自身の不倫を地問われ・・・。

ストーリーが進むにつれ、これらの話、年末に同時進行していることがわかります。
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