シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

今井正監督「ここに泉あり」(1955年、177分)

2024-07-27 16:57:25 | 日本・1960年~
 


群馬交響楽団の黎明期の楽団経営の苦労、巡業公演の様子、東京交響楽団との共演、楽団員の確執を描いた作品。

指揮者として山田耕筰が、ピアノ演奏で室井摩耶子が特別出演しています。耕筰は有名な作曲家、摩耶子は戦後の代表的ピアニストで、100歳を超える現在も演奏活動をしています。

終戦直後、高崎市に結成された市民オーケストラは、働く人や子どもたちに美しい音楽を伝えようとの高邁な精神をもつ楽団。マネージャー井田亀夫(小林桂樹)の努力にもかかわらず、楽団員の生活は惨憺たるものでした。

唯一の女性楽団員はピアニストの佐川かの子(岸惠子)。音楽学校を出たばかりですが、このままでいいのかと悩んでいます。新しく赴任してきたヴァイオリニストの速水明(岡田英次)は彼女を励まし、子供たちの音楽教育をたずさわりますが、ソリストの道で身をたてる夢を捨てきれません。

楽団員のなかには喧嘩が絶えなくなり、経営不振のおり解散止むなしの状態に追いつめられます。

それでも利根源流の山奥の小学校へ行くと思いがけず、みんなで「赤とんぼ」を合唱して盛り上がり、勇気づけられます。草津にあるハンセン病療所にを慰問。歓迎されます。

速水とかの子の間に愛が芽生え結婚。難産の末、子どもが生まれますが、生活は苦しく将来への不安も大きくなるばかり。

井田は東京から山田耕筰指揮の交響楽団とピアニスト室井摩耶子を招き合同コンサートを開く計画をたてますが・・・。

ラストはベートーベンの「第九」!
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武田敦監督「沖縄」(1969年、195分)

2024-07-14 23:20:28 | 日本・1960年~

2部構成。第1部「一坪たりともわたすまい」は、貧しいながらも身を寄せ合って生きてきた故郷(農地)を米軍基地に強制接収される県民の抵抗と敗北を描いています。
第2部「怒りの島」は、米軍基地で働かざるをえなくなった彼らの苦悩と全面ストの経緯が描かれます。

〈第一部〉昭和三十X年。
主人公島袋三郎(地井武男)は、基地周辺の米軍物資を物色する日々。仲間の池原清(石津康彦)と基地周辺を物色中、玉那覇朋子(佐々木愛)とその弟でハーフの亘を知ります。

基地拡張を急ピッチで進める米軍は、平川部落の強制接収に乗り出します。「平川土地を守る会」の古堅秀定(中村翫右衛門)は、米軍将校に銃をつきつけられ、契約書にサインを迫られますが拒否。

演習が始まり、朋子の祖母カマド(飯田蝶子)が戦闘機の機関銃弾で倒れます。その保証は何もなし。白旗ののぼりをたてて連なる葬列、それは米軍への抗議の列で闘いは全沖縄の闘いへと拡がります。

〈第二部〉それから十年。三郎は父親の完道(陶隆司)と米軍基地に、朋子はドル買い密貿易に、そして亘(トニー和田)は軍用トラックの運転手として働いています。
ある日、三郎と朋子は米軍曹長より、模擬爆弾や薬莢の換金を頼まれます。朋子はこれらを買いたたき、三郎を驚かせます。

完道が足に負傷してクビに。軍労働者の怒りはストライキ闘争へと発展。米国は威信にかけてこれを弾圧し、三郎は米兵に拉致されますが・・・。
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小林恒夫監督「八月十五日の動乱」(1962年、95分)

2024-06-19 20:38:59 | 日本・1960年~


1945年、太平洋戦争での敗色濃厚の帝都・東京で、「ポツダム宣言」を受諾し無条件降伏の道をとるか、徹底抗戦で臨むかをめぐる対立の構造を描いた作品です。玉音放送の録音盤を隠し通すクライマックスまで、緊張感がみなぎります。

8月6日、広島に原爆が落とされ、ソ連が宣戦布告すると、首相官邸での閣議では陸軍大臣(山形勲)が本土決戦を主張、首相はその無謀さを説いて対立。

この頃、連合軍は8月15日の正午までに「ポツタム宣言」受諾の回答がなければ、機動部隊の本土攻撃を通告してきました。

その頃、近衛連隊の加賀少佐(北山達也)、川崎大尉(江原真二郎)、事務局の小島少佐(木村文武)など血気にはやる将校達は陸相に「蹶起案」を示し、あくまで本土決戦を訴えます。敗戦処理の調整に万策つきた首相(宇佐美淳也)は、宮中に参内し
御前会議の開催を上奏。結果、会議は14日の午後1時ということになります。

しかし、抗戦派将校の往来が活溌になっているところから、会議を妨害される恐れがあるとして、秘書官の中島(鶴田浩二)は小宮侍従をたずね、御前会議の時刻を繰上げるよう要請します。御前会議は10時に繰上げられます。吹上御苑での会議室では、御前会議で激論の末、無条件降伏受諾の「聖断」が下ります。

深夜、宮内省の一室で、情報局総裁と放送協会会長立会いのもと、戦争終結の詔勅を読む天皇の声が録音されるはずでしたが・・・。
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小林恒夫監督「二・二六事件 脱出」(1962年、97分)

2024-06-17 20:43:15 | 日本・1960年~
昭和11年2月26日未明。降りしきる雪のなか、国体の擁護開顕を目的とした青年将校たちが武装蜂起。歩兵第1連隊、歩兵第3連隊、近衛歩兵第3連隊、野戦重砲兵第7連隊等の部隊中の一部を指揮し、岡田啓介内閣総理大臣をはじめ鈴木貫太郎侍従長、斎藤実内大臣、高橋是清大蔵大臣、などに狙いを定めて襲撃、首相官邸、警視庁、内務大臣官邸、陸軍省、参謀本部、陸軍大臣官邸、東京朝日新聞社を占拠しました。

このなかで栗林中尉(江原真二郎)率いる一隊は首相官邸を襲い、投宿中の岡田首相を射殺したはずでしたが、実際には義弟で、女中部屋の押し入れに隠れていた首相本人(柳栄二郎)は、後に救出されました。本作品はその顛末を描いた作品です。

事件当時、隣接の秘書官官舎にいた速水書記官長(三國連太郎)は急遽、麹町憲兵分隊に首相救出の救援を求めますが、断られます。一計を案じた速水は福井秘書官(中山正二)を従え、首相の遺骸に香華を供えると申し出、邸内に入ります。決起部隊が首相と信ずる遺骸が誤認で、杉尾大佐(志摩栄)と確認した速水は、さらに女中部屋の押入れに岡田首相が生存していることを認めます。

一方、ひそかに官邸内に潜入していて逃げ帰った篠原上等兵(千葉真一)から首相の存命を知った麹町憲兵分隊の特高係小宮曹長(高倉健)は部下二名と警戒線を突破。秘書官官舎の速水と図って、首相を救出しますが・・・。
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増村保造監督「卍」(1964年、91分)

2024-06-01 20:59:02 | 日本・1960年~


谷崎潤一郎による同名小説の映画化です。

美術学校で知り合った柿内園子(岸田今日子)と徳光光子(若尾文子)。園子は「日本画コース」、光子は「洋画コース」の生徒。二人はあってすぐに惹かれあい、友情の域を超え,性的関係に溺れていきます。

本作品では、園子が光子との関係をなれそめから破綻までを、ある先生(三津田健)に述懐するという手法をとっています。

園子は弁護士、孝太郎(船越英二)を夫にもつ人妻。光子は織物会社社長の令嬢。同性愛の関係にはまり、お互いを「姉ちゃん」「光子ちゃん」と呼ぶあい、愛し合う二人。ときには壮絶な嫉妬心をはらんで。

二人の関係に疑問をもち、ついに激怒する幸太郎。

そこに光子の恋人の青年(川津裕介)が絡みます。

志村美三代子氏はこの作品を解説している箇所で、次のように述べています。少し長いですが、引用します。「増村保造は(この題材を)独自の論理で両断した。増村によると、原作の「卍」には女同士が同性愛に至る前半の過程はヨーロッパ的性愛が見られるという、・・・そして後半部分を喜劇的に描いた谷崎の批評精神に注目し、・・・後半部分を喜劇的に批評して描いてみせている。・・・増村が放った壮烈な愛の追求は、若尾文子と岸田今日子が織りなす奇跡的ともいえる妖しいエロティシズムによって優雅かつ壮絶な官能の世界を創造したといえよう」(四方田犬彦・斉藤綾子編著『映画女優 若尾文子』みすず書房、2003年、327頁)
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小杉勇監督「東京五輪音頭」(1964年、93分)

2024-05-29 23:00:04 | 日本・1960年~

東京オリンピックを記念した三波春夫のヒット曲をモチーフにした歌謡ドラマ。

中央卸市場(ヤッチャバ)で割烹「藤源」の人気娘、藤崎ミツ子(十朱幸代)。彼女には悩みがあり、それは水泳のオリンピック候補にあがっていたものの、親代りの祖父の猛反対(上田吉二郎)でした。

三波春夫に似ているので評判の「松寿司」の主人の松吉(三波春夫)を初め、町内の人々はミツ子のオリンピック出場に期待をかけていました。割烹「藤源」の店員、勇(山内賢)を頼って上京してきた谷雅江(森みどり)が事情を知らず、ミツ子が水泳選手候補になったと源造に話したので大騒ぎ。源造はミツ子に水泳禁止命令。

ミツ子の友達のれい子(山本陽子)や、仲買人の「山宗」の店員正光、勇らの説得もむなしく、源造の考えは変りません。

数日後、ブラジルでコーヒー園を経営する正光の叔母キヨ(岡村文子)が、オリンピック見物をかね彼をブラジルへ連れていくために来日。

オリンピック強化コーチの河野(上野山功一)が源造を訪れ、ミツ子の合宿参加の説得にあたります。その結果、さすがの源造も折れます。

源造が頑固だったのは、ミツ子の父がベルリン大会の折り、オリンピック選手にもれ、以来大酒呑みになり事故死したことが原因でした。

ミツ子は合宿に入りますが、何故か記録が伸びません。精神的悩みがあると見抜いたコーチが、ミツ子の友達から耳にしたのは・・・。
 
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市川崑監督「東京オリンピック」(1965年、170分)

2024-05-28 23:02:45 | 日本・1960年~

第18回オリンピック東京大会が開催されたのは1964年。わたしは当時13歳。この映画は学校行事の一環として、翌年、観ました。

「人間」に焦点をしぼり、スポーツ選手たちの国際的祭典を描いた作品。

今回、改めて観て気がついたところ、中学生当時の鑑賞では記憶に残っていなかったシーンが多数ありました。
・開巻。ビルの破壊シーン。東京の旧い建物が解体され、首都の姿が変ったのは、このオリンピックが契機でした。
・統一ドイツ選手団入場の感動的シーン。
・独立して4年目のチャドからは選手が一人。彼の、選手村での生活、競技(陸上)をカメラが追っています。
・80㍍ハードルで依田郁子選手のスタートボックスにレモンが置いてあり、カメラがアップでとらえています。
・長島、王が並んで観客席にいます。
**********************
懐かしい選手がズラリ。チャスラフスカ(体操)、アベベ(マラソン)、ヘイズ(100㍍)、ヘーシンク(柔道無差別級)、ジャボチンスキー(重量挙げ)、円谷幸吉(マラソン)、遠藤幸男、小野喬(体操)、三宅義信(重量挙げ)、神永昭夫(柔道)、池田敬子(体操)、田中聡子(水泳)、「東洋の魔女」(バレーボール)などの有名な選手はもちろんですが、以下の選手を思い出させてくれました。

ラインハルト(棒高跳び)、ショランダー(水泳)、T.プレス(砲丸投げ)、ラチニナ、アスタホワ(体操)、フレーザー(100㍍自由形)、クラーク(10000万㍍)、オバネシアン(幅跳び)など。
フェンシング、カヌー、ヨット、射撃、馬術、競歩などの競技にも目配りがされています。

記録によれば、使われたカメラは103台、レンズは232本、録音済みテープは240時間。
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鍛冶昇監督「青春の鐘」(1969年、82分)

2024-05-17 19:57:35 | 日本・1960年~


タイトルは主人公である家庭教師、村瀬正吉の兄が故郷の新潟県長岡市にある小高い丘に建設した鐘(楼)を指しています。

主要舞台は東京、そして長岡。

小学生、春夫(𠮷田次昭)の家庭教師として、依田家に迎えられた村瀬正吉(舟木一夫)。成績優秀な子どもばかりの依田家にとって、中学受験する春夫が心配の種でした。

有名中学に合格させたい母親に村瀬は反感をもちます。春夫とランニングをしたり相撲をとったりしながら勉強を見てやります。村瀬の珍指導ぶりは依田家にとって心配の種がまた増えただけでした。

ただ春夫の姉・久美子(松原智恵子)と祖母・さき(岡村文子)は、受験勉強のなかで意気消沈していた春夫が、村瀬の指導で明るさをとり戻す様子を歓迎しました。
久美子はこの野放図な村瀬に魅かれます。彼女にはすでに父(北竜二)の秘書をつとめる合田(小高雄二)と婚約中。しかし、両親が勝手に決めた縁談で、久美子には鬱陶しいものでした。

そんな依田家にきた快活な村瀬に、久美子の心は惹かれます。傲慢な態度むきだしの合田は、そんな久美子の感情を知って焦りの色を見せます。

年末の休暇。村瀬は春夫、久美子をふるさとの長岡に迎えます。スキーを一緒に楽しもうというのです。とくに喜んだのは春夫。村瀬は同級生だった洋子(山本陽子)と再会します。春夫は陽子を慕います。

ところが、久美子の母(室生文子)は村瀬に依田家への出入りを禁じ・・・。
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柳瀬観監督「北国の街」(日活、1965年、92分)

2024-05-13 21:08:24 | 日本・1960年~


いわゆる「青春もの」。わたしはこのような青春(恋愛 [笑] )はしていませんでした。(>o<)

原作は富島健夫による「雪の記億」です。

舞台は長野県北東部に位置する飯山。

この街に住む小島海彦(舟木一夫)。伝統芸術を継ぐ手織職人である父親の公平(信欣三)と二人暮らしです。高校に汽車で通学の日々。成績がよく、ゆくゆくは東京の大学に進学するつもりです。新聞配達をしてコツコツお金を貯めています。

通学のおり、汽車の中で毎日みかける可憐な女学生、雪子(松原智恵子)。雪子はこの町の医者・志野の娘で女子高校に通っていました。彼女も東京の女子大に入るのが夢です。

そんな雪子に目をつけている男の生徒は多く、海彦の同級生で札つきの藤田(山内賢)や、その兄貴分である和田(根岸一正)も例外ではありません。

しかし藤田はなぜか海彦と気が合い、今は海彦と雪子の仲を温い眼で見守るようになっていました。

ちょうどそのころ雪子に横恋慕する和田は自分を裏切った藤田に決闘を申しこんできます。当日そんなこととは知らず海彦は雪子に呼ばれていった彼女の家で過ごしていました。

神社の境内での決闘では新聞に報道され、海彦も取調べを受けます。

そのさなか、海彦の父が倒れます。病院での療養生活が長くなることがわかり、彼は進学を諦めます。

一方、雪子は白血病を患っていて、長く生きられないとの予感をもっていましたが、海彦にそのことを伝えられず・・・。
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西河克巳監督「北国の旅情」(1967年、82分)

2024-05-12 21:11:05 | 日本・1960年~


御三家といわれた舟木一夫、西郷輝彦、橋幸夫のなかで、映画出演が一番多かったのが舟木です。

役どころはいつも「まじめないい人役」です。イメージをこわせられない存在でした。歌を2,3曲、必ずうたっています。

本作品の原作は石坂洋次郎による同名小説。倉本聰がふたりの脚本家のうちのひとり。

東京の学生が、想いをよせる同級生の婚約を知り、彼女の実家を訪れその真意を知ろうとする過程がテーマです。

北国の駅に降り立った上村英吉(舟木一夫)。クラスメイトの金井由子(十朱幸代)の家を訪れます。

大学は冬季休暇に入っていて、由子が帰省中に河原健二(山内賢)と婚約したという手紙を英吉にだしたのが切掛です。

英吉の出現で、折角の良縁がご破算になるのではないかと、金井家の家族は心配です。

健二の父、河原吉之助(東野英治郎)も英吉の出現に動揺。また由子の父、半造(江戸屋猫八)も由子に英吉との関係を問いただします。

由子は英吉に、健二が好きだから婚約したといいます(半分ウソ)。英吉はそれを聞いて、由子の幸せを願い、金井家を後にします。英吉は由子を東京での生活で恋心を感じ、彼女も彼に愛を感じていたのですが・・・。

河原家で婚約披露宴が開かれます。しかし、由子の妹妙子(小橋玲子)は、姉が本当は英吉を愛していることを知っていて、その不誠実を憎み、姿を見せません。
この顛末は・・・。
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山本薩夫監督「氷点」(1966年、107分)

2024-05-06 20:57:25 | 日本・1960年~

原作は三浦綾子による同名の小説です。

「氷点」とは、自らの出自(汚点)の象徴です。人間は誰でも過去(いまの存在に至る過去からの系譜)を遡ればどこかに決定的汚点があります。キリスト教の世界では「原罪」です。

主要舞台は北海道の旭川市。

この町に住む医師、辻口啓造(船越英一郎)の家族に起こった深刻な事件がテーマ。
事件は娘のルリ子の殺人。その事件が起きたとき、妻の夏枝(若尾文子)は村井靖男(成田三樹夫)と密会の不義をはたらいていました。

敬造は激怒し、あることを企みます。ルリ子にかわる娘が欲しいという夏枝に、啓造はそれとは知らせずに殺人犯の女の子を引き取ります。女の子は陽子(安田道代)と名付けられます。陽子は明るく素直に育ちます。

陽子には徹(山本圭)という兄がいました。徹はあるとき、敬造と夏枝が陽子の出自のことで大げんかしているのを立ち聞きし、驚愕します。

そして、あろうことか、夏枝は成り行きで、陽子と恋人(津川雅彦)の前で、陽子の出自を暴露します。動転、絶望した陽子は、自殺をはかります。

陽子が殺人犯の娘というのは偽りで(陽子を紹介した高木雄二郎「啓造」の配慮)、自殺をはかった陽子は蘇生しますが・・・。
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石井輝男監督「霧と影」(1961年、83分)

2024-04-15 23:26:18 | 日本・1960年~

原作は水上勉による同名小説です。展開が複雑です。

冒頭、能登半島の青蛾小学校の教員、笠原が観音崖の上から遂落死を遂げます。猿谷郷に住む長期欠席児童、宇田清の家庭訪問に行ったまま消息を断ったのです。自殺?
毎朝新聞地方版を読んだ記者の小宮(丹波哲郎)は能登へ。小宮は笠原、そして彼の妻と親交がありました。極端な高所恐怖症だった笠原がなぜ危険な断崖の上を歩いていたのか?

笠原とは学校友達で、妻、雪子の妹、良子とも面識があった小宮。地方通信員、坂根(梅宮達夫)と連携し、笠原の足取りを追います。

その結果、笠原はその日、富山の薬売りと一緒に猿谷郷から山を下っていたという情報を得ます。その薬売りは松本貞次郎(手形詐欺の野見山の偽名)という名で、もう一人の連れの男と東京へ発ったことが分ります。

また、宇田清の叔父、甚平(安井昌二)の身元調査をしている興信所の井関と名乗る得たいの知れない男の動きを知ります。

小宮は東京へ帰りデスクと連絡をとりながら、井関、宇田甚平の身辺調査にあたります。

井関の住所はでたらめで、その名刺に記載のあったビルでは直近に6000万円の手形詐欺事件があり、その取引を仲介したのが宇田甚平とわかります。

発端の事件は迷宮に入って、わかりにくくなりますが・・・。
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小林正樹監督「上意討ち-拝領妻始末-」(1967年、128分)

2024-04-14 23:31:03 | 日本・1960年~
滝口康彦による原作を橋本忍が脚色。

封建社会の理不尽な家族制度(人間関係、夫婦)を暴いた作品です。

舞台は1725年(享保10年)の会津松平家。

江戸時代の武士にとって、上からの命令(上意)は絶対命令。馬廻り役300石・笹原伊三郎(三船敏郎)は、藩の御側用人から長子・与五郎(加藤剛)に「藩主のお手付きの女性を貰い受けろ」と縁談を持ち込まれました。

気乗りしない伊三郎と与五郎。伊三郎の妻、すが(大塚道子)によれば、嫁候補・いち(司葉子)はもともと藩主のお気に入りで寵愛を受けていましたが、藩主が若い側室に乗り換えたところを逆上し、この側室に殴りかかったので、藩主にも平手打ちを食らわし不興を買い、このためいちを下げ渡そうとしているのだ、と言うのです。(事実はすがの言辞と異なり、いちには婚約者がいたにもかかわらず藩命一つで藩主の側室とならざるを得なかった不条理に対する怒りが原因でした。)

藩命には逆らえず伊三郎と与五郎は、しぶしぶ彼女を嫁に迎えます。 いちは気丈にふるまう良妻でした。与五郎といちは仲睦まじく、娘も生まれ幸せな時を過ごしていました。

幸せな結婚生活は江戸からの知らせによりぶち壊されます。藩主の嫡子が急病により他界、いちの子が新たな世継ぎの候補にあがったのです。いちは世継ぎの生母となったため、藩の上役から与五郎にいちを奥に戻せとの上意が下されます。

あまりに理不尽な藩命に伊三郎、与五郎は怒り心頭。いちも与五郎もこの藩命を断固拒絶しますが・・・。
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五社英雄監督「御用金」(1969年、123分)

2024-04-14 23:27:56 | 日本・1960年~
「御用金」とは、江戸幕府・藩などが財政が困窮したときにこれを補うため、農民、商人などに緊急に課した金です。

主要舞台は天保年間の越前国鯖井藩(鯖江藩を想起させる架空の藩)。

天保2年(1831年)10月。「神隠し」のために許嫁と父親を失い、身を落とした女つぼふり師、おりは(浅丘ルリ子)が鯖井の漁村・黒崎村にやってきます。彼女を待ち

受けていたのは、漁民30数名全員が一夜のうちに姿を消す事件でした。

それから3年後の天保5年(1834年)。鯖井藩士・流一学(西村晃)たちに命を狙われた江戸の浪人・脇坂孫兵衛(仲代達矢)。

刺客たちを倒したものの、この事件は義兄の鯖井藩家老・六郷帯刀(丹波哲郎)が再び「神隠し」を行なうため、その秘密を知っている孫兵衛の口塞ぎでした。

3年前の「神隠し」の真相は、六郷帯刀らによる村人虐殺。佐渡島からの御用金の横領を知る漁民全員を皆殺しにしたのです。孫兵衛は、この時の村人虐殺を許せません。

孫兵衛は、妻(司葉子)の兄であり親友の帯刀を責め、二度と「神隠し」を行なわないことを約束させます。しかし、彼はこの時、武士であることに嫌気がさし、妻と藩を捨て、浪人となります。

帯刀が再び「神隠し」を行なおうとしていることを知った孫兵衛は、これを阻止するために鯖井藩に向かいます。

孫兵衛の行動を察知した帯刀の部下・高力九内(夏八木勲)たちが孫兵衛を待ち伏せし、襲いますが・・・。
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内出好吉監督「さいころ奉行」(1961年、90分)

2024-04-13 23:32:48 | 日本・1960年~


町人に身をやつした江戸奉行、遠山金四郎が、将軍暗殺を企む老中一派の世直し党の陰謀を暴くという作品。

春の陽気が原因で突発性放浪病にかかった遠山の金さん(片岡千恵蔵)は伊勢路で花嫁(丘さとみ)を強奪した鬼金(進藤栄太郎)の身柄あずかり、桑名の三十石船にのって浜松に向かいます。

船中での二人の噂話は、江戸で不穏の動きを見せている世直し党のこと。

浪人風の男から素っ飛び小僧の安(東千代之介)がスリとった財布から、金さんは秘密の臭いをさぐります。

江戸に着いた金さんらは浪人の懐にあった紙切のあて先、料理屋八百松に下男として潜り込みます。

紙切を世直し党の連絡文とにらんだ金さん。世直し党は西丸老中駒木築後守が黒幕と目される将軍家慶を暗殺する隠謀を持っていました。

八百松の女将お蘭(青山京子)を恋しているスリの安ともども、これらのことをさぐり出した金さん。

金さんは駒木築後守の別邸にしのび込みますが、安が見張りに見つけられ窮地。一味の銃の狙い撃ちにあい、大川の暗闇に消えていったかのようにみえましたが?

将軍の上覧をあおいだ世直し党の資金源の一人、森田屋の華やかな舞台。そこで将軍を暗殺する計画がねられていました。そこへ現われた金さんは・・・。
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