シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

森達也監督「福田村事件」(2023年、137分)

2024-03-30 20:40:30 | 日本・2010年~


理不尽で絶句!

関東大震災の混乱の中でおきた福田村事件(1923年9月6日)を描いた作品。

福田村事件とは、関東大震災後の混乱および社会不安のなか、千葉県東葛飾郡福田村三ツ堀(現在の野田市の一部)で起こった、自衛団による薬の行商団殺害事件です(15名中9名が自衛団によって虐殺される)。行商団の故郷は香川県です。
・・・・・
提岩里教会事件での日本の軍人による朝鮮人虐殺をかつて目の当たりにした主人公、澤田智一(井浦新)。妻の静子(田中麗奈)を連れ、日本統治下の京城を離れ、千葉県福田村に帰郷します。

村ではシベリア出兵で夫を亡くした島村咲江(コムアイ)や咲江と関係を持つ田中倉蔵(東出昌大)、父・貞次(柄本明)と妻・マス(向里祐香)の間柄を疑う井草茂次(松浦祐也)など、さまざまな事情,感情をもった人々が暮らしていました。

同じころ、沼部新助(永山瑛太)率いる香川県の行商団が関東地方の福田村に向って出発していました。

大正デモクラシーが喧伝されながらも政情不安な社会。朝鮮人に対する差別的感情が流布されるなか、関東大震災勃発。混乱と疑心暗鬼が広がるなか朝鮮人の非道に関するいわれないデマが飛び交います。

9月1日、関東大震災。震災による混乱のなかで、マスコミは内務省指導のもと世論を扇動した結果、朝鮮人、社会主義者による略奪、放火、集団的襲撃などの流言が世間に浸透します。不安にかられた人々は在郷軍人を中心とした自警団を組織し、朝鮮人殺害が起こります。

そんななか、行商団一行は些細なトラブルにまきこまれ(讃岐弁が朝鮮語と誤解される理不尽もあって)・・・・。
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本木克英監督「シャイロックの子どもたち」(2023年)

2024-03-30 20:11:47 | 日本・2010年~


原作は池井戸潤による同名小説です。

タイトルにある「シャイロック」は、シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』に登場する強欲な金貸し。本映画作品の冒頭で、その演劇が舞台で演じられています。
大金の行方をめぐるサスペンスタッチのコメディです。

事件の発端は「東京第一銀行長原支店」で起きた現金100万円の紛失(実際は盗み)。

この不祥事には布石があり、起こるべくして起こったもの。

それぞれの事情を抱えている銀行に勤務をする人、取引をする人がいます。

勤務先の支店のキャッシュボックスから多額の現金を抜き取り、それを競馬につぎ込んだ黒田道春(佐々木蔵之介)。競馬はやめ、検査業務にまわっています。

自身の所有する不動産の相続に関する相談に来た澤崎肇(柄本明)。応対する営業課長代理・西木雅博(阿部サダヲ)。

住宅販売の大規模プロジェクトを進めていた住宅会社「江島エステート」の経営者、石本浩一(橋爪功)。

彼に10億円の融資を依頼される同店勤務お客様一課・課長代理の滝野真(佐藤隆太)。偽造印鑑証明書で書類を整えたものの、稟議を通過したはずの与信審査に瑕疵があり、不良債権が発生します。

石本の詐欺にひっかかった滝野は、返済利子の穴埋めのため盗んだ(行内で拾った?)帯でまかれた100万を振込んでしまったため・・・。
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島津保次郎監督「兄とその妹」(1939年、102分)

2024-03-29 20:42:21 | 日本・戦前


演じている三宅邦子は岩槻の料亭「ふな又」が生家です。いまも営業しているとのこと。蓮田から近いので、来週でも行ってきます。

世渡りとか出世のことなどにまるで頓着のない生真面目な会社員、間宮敬介(佐分利信)は、東京の山の手で、妻あき子(三宅邦子)、妹、文子(桑野通子)と三人暮し。

帰宅がいつも遅い敬介。それは退社後、部長宅で碁の相手をしているからです。文子は貿易商社の秘書で、主に英文タイプの仕事をしています。給料もそれなりにとっています。

文子に縁談がもちあがります。会社にしばしば仕事で来る道夫(上原謙)という青年が彼女を気に入ったようです。オックスフォード大学出で英語が堪能。ところがこの青年、敬輔介と囲碁の相手をしている部長の甥でした。部長は文子が敬介の妹とはしらなかったのですが、彼女の写真を敬介にみせてそのことを了解し、彼に打診をたのみます。

数日後の文子の誕生日、圭介はこの日も部長に碁をさそわれていました。家では文子の友達たちが集り誕生祝い。そこに道夫から贈り物の花が届きます。

日曜日、久しぶりに家族揃ってピクニックに出た敬介たち。昼食のおり、縁談を切り出す敬介に、兄の立場を考えた文子はその話しを断ってほしいと申し出ます。

翌朝、出勤した敬介は部長に呼ばれて係長昇格の辞令を受けます。しかし、課長から係長に異動させられた林はその人事を敬介の策動と誤解し、殴りかかります。敬介は憤然として辞表を書き、会社を飛び出しますが・・・。
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五所平之助監督「マダムと女房」(1931年、58分)

2024-03-27 20:44:14 | 日本・戦前

日本の本格的トーキー映画の嚆矢といっても過言でない作品で、今からみれば映像の拙さ、脚本の弱さは隠しようがありませんが、それを指摘してもほとんど意味のないことで、当時の観客がたのしみにしていたであろう活動写真にたいする憧れを想起しながら、この作品を観ました。俳優は生き生きと演じています。

「上演料500円」の大仕事を受け、静かな環境で集中して台本を書くため、郊外の住宅地で借家を探し歩いていた劇作家の芝野新作(渡辺篤)。そこで出会ったのは写生をしていた画家。芸術論議(?)で言い争いになります。銭湯からでてきた「マダム」(伊達里子)が仲裁します。

妻・絹代(田中絹代)、二人の子供とともに新居に越してきた新作でしたが、執筆をはじめようとすると、野良猫の鳴き声や、薬売りなどに邪魔をされ、仕事がはかどりません。

ある日、隣家でパーティが開かれ、ジャズの演奏が始まります。新作はこの音響にたまらず、隣家に怒鳴り込もうとしますが、応対にでたのがくだんの「マダム」。自身がジャズバンドの歌手であるマダムは音楽家仲間を紹介し、新作は誘われるままに隣家に上がり酒をすすめられエンジョイ。

絹代は窓越しに、この様子を目撃します。

鼻歌をうたいながら上機嫌で帰宅した新作を絹代はなじり、嫉妬心からミシンを空踏し、マダムのような「洋服を買って」とねだります。新作はそんな絹代に取り合わず机にむかいますが・・・。
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今井正監督「また逢う日まで」(1950年、111分)

2024-03-25 23:22:08 | 日本・1950年~


2003年に一度観ましたが、今回が二度目です。

ロマン・ロランの小説「ピエールとリュース」の翻案。学生と若い女性(画家)の純愛が戦争によってひきさかれる悲劇を詩情豊かに描いた作品です。

舞台は戦中(昭和18年)の東京。

主要な登場人物は、田島三郎(岡田英次)と小野蛍子(久我美子)。窓ガラスごしの接吻シーン♥は日本映画史に名高いです。

三郎は戦争に疑問を抱く学生。父(滝沢修)は法務官。長兄は戦死し義姉がいます。慕っていた次兄の、二郎が軍国主義に染まり、孤独を感じています。

蛍子は母(杉村春子)とふたりの生活のたしに画を売っています。

二人が初めて会ったのは、空襲警報が鳴るなか逃げ込んだ地下鉄のホームでした。逃げて来た人々と身を寄せ合う三郎は、目の前にいた女性に惹かれます。しかし、警報と空爆が止み外へ出た時には、彼女の姿は雑踏のなかに消えていました。

二人が再会したのは三郎が友人の兄を尋ねて印刷会社、白楊社を訪れたときでした。建物から出てきた蛍子。以後、二人は人目をしのんで待ち合わせをしデート(?)を重ねますが、彼女は彼がすぐにも戦地に行くのではないか、と不安を口にします。

三郎は、二人でいる時に暗い話はやめようと彼女を諭し、自分の肖像画を描くよう彼女へ提案しますが・・・・。
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五所平之助監督「黄色いからす」(1957年、103分)

2024-03-25 20:46:26 | 日本・1950年~
舞台は戦争が終わって10年ほどたった鎌倉、そして江ノ島。

戦後、抑留地から戻った復員兵の家族をリアルに描いた作品。

冒頭、小学校の生徒たちが鎌倉の大仏のあたりで写生会をしています。担任の芦原靖子(久我美子)は、生徒の清(設楽幸嗣)が描く大仏の画をのぞきこみます。清の画に使われている絵具は黒と黄色がほとんどなので、靖子先生はもっとたくさんのクレパスを使うようにアドバイスします。清の暗い画風は心の様子を映し出していました。

戦後しばらく、清は母、吉田マチ子(淡島千景)と二人でほそぼそと暮らしていました。生活費は隣の博古堂からの下請け仕事がたよりでした。博古堂は松本雪子(田中絹代)という女主人がひとりで切り盛りしている鎌倉彫の工房。雪子には清と同じくらいの年齢の養女、春子がいたので、彼女たちは家族ぐるみの付き合いです。父親、一郎(伊藤雄之助)が戦地であった中国からが復員したのはかなりの時間がたってからでした。

父親、一郎と初対面同様の清。なかなかなじめません。一郎は復帰した職場に不満で、イライラしています。それが手伝って清に優しくなれません。やがて妹の光子が生まれ、清の感じる疎外感はますます強くなります。

そんなおり、清が保護した幼いカラスの子を父から放り出されたことが原因で、清は家出。豪雨のなか清は戻ってきますが、隣の雪子の子になりたいと言いだし・・・。
 
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川島雄三監督「新東京行進曲」(1953年、97分)

2024-03-24 23:23:56 | 日本・1950年~


首都・東京はかつて20年ほどの間に、二度焼け野原、灰燼に帰しました(1923年の関東大震災、1945年の米軍B29大編隊による東京大空襲)。それが戦後になって復興。この作品の冒頭でそういった説明があります。

舞台は1950年代初頭の東京、とくに銀座、上野、有楽町、日比谷公園のあたり。作品全体でこの頃の東京の街並み、人々の服装、人間関係(人情)がよくわかります。

現在とまるで違うのは言うまでもありません。

復興期の花形職業である新聞記者や同僚たちが織りなす人間関係、恋愛模様が描かれると同時に、主人公である新聞記者の真砂隆(高橋貞二)の小学校時代(銀座の泰明小学校)の友達5人のその後の人生が絡み、複雑な展開です。

真砂隆は都庁に勤める須田美代子(淡路恵子)とヒョンなことで知り合いになります。有楽町駅をでたところで彼女が通行人にぶつかり転倒したおりに、ハイヒールのかかとがおれ、そこにたまたまいあわせた真砂がそれに気づいて目と鼻の先にある庁舎までタクシーで彼女をおくったのがきっかけでした(当時の都庁はこのあたり[現在の東京国際フォーラム])。

同僚の女性記者、一ノ瀬文子(小林トシ子)は、真砂に好意をもっていますが、彼はそのことに気づいていません。

真砂は同僚文子と共同で汚職事件を調査。その汚職の主要人物が自分の小学校時代の恩師、須田昌平(須賀不二夫)と知って驚きますが・・・。
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小林恒夫監督「終電車の死美人」(1955年、91分)

2024-03-23 23:25:56 | 日本・1950年~


サスペンスです。「警視庁物語」の発端、原型となった作品。犯罪の発生から捜査、容疑者の特定、アリバイ崩し、犯人追及、逮捕までがドキュメンタリータッチで描かれます。

主要舞台は東京の中央線沿線(有楽町、新宿、吉祥寺、三鷹)、池袋。

ある豪雨の夜更け。三鷹駅を終着駅とする終電車内で殺人事件が起こります。殺されたのは若い女性。

赤木警部(伊藤久哉)ら警視庁捜査一課が乗り出します。手がかりとなったのは女性が身につけていたロケットのなかの男の写真と有楽町駅発行の乗車券のみ。そして乗車券の調査を調べるうち、被害者の後を追うように三鷹行きの切符を買ったもう一人の男がいたことがわかります。

後日、三鷹署にロケットの中の男、丸山(朝比奈浩)が現れます。彼は被害者、湯浅とし子(大谷怜子)の婚約者。とし子は三星書店の女店員で、丸山の使い込んだ公金の穴埋めに奔走していたことがわかります。

さらに被害者に関係のある場所をしらみつぶしに調べていくと、池袋の不動産周旋業、早川(東野英治郎)がとし子との取引きに立っていたことが判明。全力で早川の身許洗いが始められます。

すると、早川と懇意だったパチンコ屋の寄宿人、高野三郎(南原伸二)が事件当日以後、消息不明との情報が入り、捜査陣は、色めき立ちますが・・・。
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五所平之助監督「猟銃」(1961年、98分)

2024-03-22 23:27:37 | 日本・1960年~


原作は井上靖による同名小説。この小説は高校時代に読んだ記憶がありますが、内容は覚えていません(当時、井上靖は好きな作家でした。作品では「氷壁」「天平の甍」「闘牛」など)。調べてみると、この小説の内容は「一人の男性への三人の女性(不倫相手、男性の妻、不倫相手の娘)からの手紙」を通して、四人の男女の複雑な心理模様を描いているとのこと。

「猟銃」のタイトルは、主人公のひとり三杉の趣味が狩りで、コレクションの猟銃の手入れをしていたおり、そこに現われた妻みどりに猟銃を向け、彼女も猟銃をとりあげて彼に狙いを定めるシーンの象徴です。

主要舞台は阪神間と呼ばれる兵庫県芦屋市、西宮市、神戸市のあたり。

映画作品の内容は?

芦屋に住む彩子(山本富士子)の家に女(乙羽信子)が現れ、夫・門田礼一郎(佐田啓二)の娘だという少女・薔子[しょうこ](鰐淵晴子)を置いていきます。医師の礼一郎は学位を取るために大学の内科で研究中でしたが、その娘は礼一郎との間にできた子だと言うのです。少女を引き取り、離婚を決意する彩子。

その彩子は従妹のみどり(岡田茉莉子)の夫・三杉(佐分利信)と不倫関係に陥ります。

三杉とみどりとは見合い結婚で年齢が離れていて、夫婦関係は冷え切っていました。三杉と彩子との不倫関係に気づいたみどりでしたが、知らぬふりをして日々を過ごします。

彩子と三杉の情事も8年に及び、薔子も年頃の娘に成長し、三杉家とも家族ぐるみで付き合いが続きますが・・・。
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堀川弘通監督「白と黒」(1963年、113分)

2024-03-20 23:29:45 | 日本・1960年~


サスペンスです。橋本忍によるオリジナル脚本。

恩師・宗方弁護士(千田是也)の年若い妻・靖江(淡島千景)と内通関係にあった若き弁護士・浜野(仲代達矢)は、村松由紀(大空真弓)との結婚に支障をくわだてた靖江を絞殺します。

ところが宗方邸の近くをうろついていた前科4犯の男・脇田(井川比佐志)が宗方邸に押し入り、寝室で倒れていた靖江が身につけていた首飾り、指輪、などの宝石類を、そして側にあったバッグから現金を盗みだし、逃亡しようとしたところ、かけつけた警官に逮捕されます。

検察庁で、脇田は盗みを認めたものの、殺人ついては否認。担当検事・落合は靖江絞殺についても、脇田を数日間にわたって執拗に尋問。脇田は自暴自棄になって殺人の自供をします。検察側はこれをもって死刑求刑。結果、裁判は決着したかのようにみえました。

このあたりから話しが複雑になってきます。妻を殺された宗方弁護士はかねてから死刑廃止論者でしたが、その信念のもとあろうことか脇田の弁護をかってでます。その助手を務めることになった浜野は良心の呵責にさいなまれ、脇田を殺人犯として求刑することに難色を示す行動にでます。その浜野の言動に不審を抱いた落合は、秘密裏に補充捜査を開始しますが・・・。

展開は二転三転。そして衝撃の結末。
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早川千絵監督「PLAN75」(2022年、112分)

2024-03-19 23:31:31 | 日本・2020年~
架空の話ですが深刻です。

高齢者問題の解決策として、75歳以上の高齢者で、申請すれば安楽死の権利を得ることができる法律(プラン75)が国会で採択されたという設定です。

78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は身寄りのないひとりもの。健康で身体は丈夫、ホテルの客室清掃員に従事。しかし、高齢を理由に解雇されます。生きていくための次の仕事として夜間交通整理員以外に見つからず、生活保護を受けるのに抵抗のあるミチは、プラン75の申請手続きをします。

役所の窓口で無料の「埋葬合同プラン」について説明する職員、岡部ヒロム(磯村勇斗)。他人とまとめて火葬・埋葬されれば、葬式や墓の費用の心配がないコースでした。そんなヒロムの窓口に幸夫(たかお鷹)が現われます。幸夫は20年間も音沙汰のなかったヒロムの叔父でした。

既に父親を亡くしており、叔父との交流を持とうとするヒロム。しかし、プラン75を心待ちにしていた幸夫は、75歳の誕生日に申し込みをします。多少の動揺を見せながらも、死に場所の施設に向かう幸夫。

死に場所の施設で診察台に横たわるミチ。酸素マスクからガスが流れれば、眠りに落ちて死亡するはずでした。隣の台で静かに死んで行く幸夫。だが、手違いからミチの
マスクにはガスが流れませんでした。

幸夫はせめて火葬は合同ではなく身内で行おうと奔走します。そして生き残ったミチは施設を抜け出し、・・・・。
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中江裕司監督「土を喰らう十二ヶ月」(2022年、111分)

2024-03-18 19:54:14 | 日本・2020年~
水上勉によるエッセイ『土を喰らふ日々 わが精進十二ヶ月』が原案。

グループサウンズ「ザ・タイガース」の歌手、ジュリーこと沢田研二さん、味のあるいい俳優になりました!

舞台は信州。

啓蟄、立春、春分、・・・、立冬、冬至。季節が移ろう自然を背景に、初老の作家ツトム(沢田研二)は愛犬「さんしょ」と信州の山荘でひとり暮らし。

9歳の頃に禅寺へ奉公に出され、そこで精進料理を学んだ経験から、自ら「土に育まれた」野菜と山菜を採り、まかない料理をつくっては、日々の生活を原稿に記しています。時々、ツトムの担当編集者で若い真知子(松たか子)が訪れ、彼が手をかけた料理を堪能しています。

そのツトムは13年前に亡くなった妻、八重子の遺骨をいまだ納骨できずにいます。八重子の母のチエ(奈良岡朋子)を訪ねたツトム。八重子の墓をまだ作っていないことを咎められます。

その矢先、チエは亡くなり、彼女の葬儀はツトムの山荘で営まれました。真知子も東京から駆けつけ,かいがいしく手伝います。

葬儀が終わり、ツトムは真知子に山荘で一緒に暮らすことを提案。真知子は「考えさせて」と応じました。

直後、ツトムは心筋梗塞を患い倒れます。案じて同居を申し出る真知子。しかしが、ツトムは断ります。

夜、死を覚悟して眠りについても、朝は変わらず訪れます。チエと八重子の遺骨を湖に撒くツトム。後日、真知子が別の若い小説家との婚約の報告にやって来ました。祝福して帰したツトムは・・・・。
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権野元監督「太陽の家」(2019年、122分)

2024-03-17 19:57:02 | 日本・2010年~


人情に厚い熱血漢であり大工の技術は超一流の棟梁、川崎信吾(長渕剛)。年ごろの娘(山口まゆ)としっかり者の妻、美沙希(飯島直子)と暮らしています。

彼は困っている人を見捨てておけない心持ちが常にあり、そのことで、家族の事情はやや複雑になっています。それというのも、かつて両親がいなく身寄りのなかった河井高史をひきとって、将来の棟梁に育てようとしていたものの、彼に部下をたばねる能力が無いと判断すると、左官として技術をもたせるために縁をきって独り立ちさせた過去がありました。

成人した高史(瑛太)と信吾とが対峙するシーンは重要です。

その信吾の欠点は一度惹かれた女性にとことん弱いこと。

ある日、建築現場を仕切っていた信吾の前を通りかかった保険会社の営業ウーマン・池田芽衣(広末涼子)。彼女はひとり息子の龍生(潤浩)と暮らすシングルマザーでした。

自宅でのお茶に誘う芽衣。川崎はそこで父親を知らずに育った龍生が気になります。そんな龍生を「俺が男にしてやる!」と、強引に触れ合おうとする川崎。以来、龍生の男同士の距離はどんどん近くなります。

その矢先、芽衣にガンが見つかります。しばしの病院生活。信吾の家族はこの間、隆生をあずかることになります。その後、芽衣のガンがかなり進んでいることがわかり、それを知った信吾は芽衣と龍生のために家を建てようと思い立ちます。

そこへ、龍生の父親と名乗る男が現れ・・・。
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五所平之助監督「挽歌」(1957年、117分)

2024-03-16 19:58:56 | 日本・1950年~


原作は原田康子の1956年に出版された同名の長編小説。爆発的ベストセラーになり、釧路在住の原田康子の名を全国に知らしめた作品です。

舞台は北海道の釧路。

厳しい道北の自然を背景に、男女3人が繰り広げる愛の葛藤劇です。

主人公は関節炎を患って以来、硬直した左肘にわずかな障害がある若い兵頭怜子(久我美子)。彼女は父親とばあや(浦辺粂子)との3人暮らし。母親は他界しています。

父親はそんな娘を不憫に思い、お見合いの話を持って来ては、優しく甘やかしてくれる存在でした。彼女の挙動を制するのはばあやの小言くらいです。怜子はそんな環境の中でコンプレックスと鼻柱の強さをないまぜた性格の女性になっていました。

怜子の救いはアマチュア劇団です。彼女はそこで美術部員としての仕事を担当。近くのカフェ、バーが団員や近くの住民のたまり場になっています。

ある日、怜子は中年の建築・設計技師で愛犬と散歩していた桂木節夫(森雅之)と知りあいます。油断したすきに犬が怜子の手を噛み、怪我をしたのが切掛でした。桂木は怜子に謝り、親しくなります。

桂木も妻、あき子(高峰三枝子)と娘の三人暮らし。夫婦関係は冷えきっています。そういうこともあって、桂木と怜子の関係は一気に縮まります。仕事で桂木が札幌に長期出張になると、怜子も追いように札幌へ。

ここから悲劇的結末まで、ストーリーは波乱含みで展開しますが・・・。
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杉山嘉一監督「ひと夏の隣人」(2016年、105分)

2024-03-14 20:00:36 | 日本・2010年~


観終えて、しばらく呆然自失でした。こんなこともあるのか、と。

もちろんこの作品の脚本は創作ですが、わけありの中年男と少女の関係をとおして、この少女の心のなかのみずみずしさ(幼さ)と共存するわだかまりをここまで踏み込んで描いたことに、驚かされました。

ある夏の終わり。中学2年生の赤石千織(山口まゆ)は夏休みが終わっても不登校で、自習で暮らしています。引きこもり傾向が濃厚です。

学校でトラブルに巻き込まれ、両親は母、祥子(西田尚美)の浮気が原因で最近離婚。父の克哉(斉藤陽一郎)が出て行った家で、母親との関係も上手くいかない千織は、窓にかかるブラインド越しに見える空家に引っ越してきた男(田口トモロヲ)に気づきます。鉢植えの「マグノリア」を育てている様子です。

鈴木という名のその男は社会との繋がりを絶ち、やはり引きこもっているようでした。ある日、鈴木が部屋で観ていた映画「愛の嵐」をきっかけに、ふたりは言葉を交わすようになります。

男は「いまを生きる」「ロミオとジュリエット」「キャリー」などの名画について勝手な持論を主張する千織にうなずきながら、しかし同意するでも否定するでもありません。 不思議な空気感をただよわせる鈴木に、次第に心を開くようになる千織。

そんなおり、学校の担任の星野先生(松本妃代)が訪ねてきたのをきっかけに、千織の周りの人々への鬱屈が爆発します。エキセントリックになり自殺を仄めかす千織に鈴木は、意外な言葉をかけますが・・・。
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