シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

山川元監督「東京原発」(2004年、110分)☆☆☆☆

2023-08-31 20:18:53 | 日本・2000年~

アイデアマン、天馬東京都知事(役所広司)が東京に原発を誘致す

ることを施策として提案したことで起きた騒動を描いた作品。

主な登場人物。津田副知事(段田安則)、笹岡産業労働局長(平田満)、佐伯政策報道室長(田山涼成)、石川都市計画局長(菅原大吉)、大野財務局長(岸部一徳)、泉環境局長(吉田日出子)。個性派俳優がズラリ。

これらの面々が突然、臨時の会議に招集され、東京に原発を誘致する案をめぐって侃々諤々。

天馬知事がこの提唱をしたのにはわけが。東京は湯水のように電力を消費している、その電力需要を確保するために、地方の市町村に原発業務をおしつけている、みかえりとして国は膨大な補助金をバラまいている、危険極まりない原発は日本に50基以上、これによって地方の自然、景観は破壊され、危険と隣りあわせの住民の暮らし、核のゴミの処理も地方におしつけている、東京の企業、都民が膨大な電力消費するのならリスクも負わなければならない、したがって原発を東京・新宿にもってくるべし(用地はある)。

メリットがある。原発の稼働には冷却水が必要だが、そこから出る温排水を7割がた海洋に捨てている現状、東京に原発を作ればこの温排水を企業活動、市民生活に利用できる、地方への補助金は減るし、東京に建てられた原発企業から法人税があがる、というもの。

会議の参加者からは、知事提案に反対の声。都民は当然反対し都庁はデモ隊に包囲されるが、その場合どうするのか? 

質問、意見がでるが、次第に賛成となる雰囲気。

その頃、海外からのプルトニウムが密かに東京のお台場に入り、福井に運ぼうとする動きがあるなか、その運搬トラックがジャックされ・・・。
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田坂具隆監督「湖(うみ)の琴」(1966年、130分)☆☆☆☆☆

2023-08-30 23:09:37 | 日本・1960年~
 
原作は水上勉による同名小説。

無体は大正末期、滋賀県余呉湖の賤ヶ岳山麓の村、そして京都。

主演は栂尾(とがのお)さく役の佐久間良子、松宮宇吉役の中村賀津男。他に千秋実、中村鴈治郎、小暮実千代、悠木千帆(後の樹木希林)、田中邦衛。

若狭の山奥の貧農の家で育った栂尾さく(佐久間良子)。糸とり女として親許を離れ賤ケ岳の西山集落にやってきました。ここは三味線糸や琴糸の名産地。
ここで生産される糸は人間の悲しみや喜びの涙で出来たと伝えられる余呉湖の水で洗われるので、いい音色を出すと言われていました。

さくが働く家の主人、喜太夫(千秋実)もその妻、鈴子(小暮実千代)も親切で、なかでも同郷の男衆、松宮宇吉(中村賀津雄)はさくに難しい仕事を優しく教えてくれました。

宇吉が兵役のために金沢へ。この間に京都の有名な長唄師匠、桐屋紋左衛門(中村鴈治郎)が糸とりの見学に来たおり、さくの美しさに眼をとめ、京都で三味線の弟子にする、と半ば強引に決めます。

さくは、後日、西山に戻ってくる宇吉のことを考え躊躇しますが、成り行きで京都行きを決意。紋左衛門の三味線の稽古は厳しく、どうやら下心もあるようです。

宇吉が兵役を解かれ、喜太夫のもとに帰ってくると、そこにさくはいず・・・。
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是枝裕和監督「幻の光」(1995年、110分)☆☆☆☆☆

2023-08-29 23:11:39 | 日本・1990年~


原作は宮本輝による同名の小説。ひとりの女性の喪失の過去と再生の現在の物語。透徹さと穏やかさをあわせもった視点で描写した作品です。奥能登の景色が大変綺麗に撮れています。ヴェネチア国際映画祭で金オゼッラ賞(撮影賞)受賞。

是枝監督の映画作デビュー作品です。

舞台は尼崎そして輪島。

ゆみ子(江角マキコ)は後悔をかかえて育ちました。12歳の時に、祖母が失踪。その祖母に街角であったのに、見失ってしまったのです。

その後、ゆみ子は幼馴染の郁夫(浅野忠信)と結婚。息子の勇一が生まれます。それでも、いまなお祖母がいなくなった日の夢を見るのです。

二人の生活は幸せで、子どもを預けて喫茶店でデートを楽しんだりしました。デートの翌日、郁夫は雨がひどくなりそうだ、と自転車を置きに自宅のアパートにもどり、職場に戻ってきました。

その日、夫の郁夫は帰って来ません。警察官が轢死したある男のことを知らせます。男は線路の真ん中を歩いていて、警笛にもブレーキの音にも振り返らず真っすぐ歩いていた、との事でした。

5年後、ゆみ子は石川県輪島市にある小さな漁港町に住む民雄という男性(内藤剛志)と再婚します。ゆみ子と勇一を出迎えたのは、民雄と娘の友子の二人でした。

民雄の家には舅の喜大(柄本明)もくわわり、家族5人仲良のよい暮らしが始まりますが・・・。
 
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伊藤大輔監督「徳川家康」(1965年、143分)☆☆☆★

2023-08-28 23:14:00 | 日本・1960年~

原作は山岡荘八による同名の長編歴史小説。

もともとは全5部となるはずでしたが、製作会社の東映の経営がかたむき、結局第一部のみとなった作品。本作品は家康の誕生から桶狭間の戦いまで。

織田信長役に中村錦之助、徳川家康役に北大路欣也(幼年時代:青木勇嗣)、木下藤吉郎役に山本圭。

時代は天保年間から永禄年間にかけて。

当時、駿府を居城とし、駿河、遠州、三河の三国で強大な勢力を誇っていた今川義元(西村晃)。西には織田信秀が東方を狙い、西三河は東西勢力の接触点。この地域にあった岡崎と刈谷は、両勢力のいずれかにつかざるをえず、刈谷の水野信元(原田甲子郎)は娘・於大[おだい](有馬稲子)を、和睦のしるしに三州岡崎の城主・松平広忠(田村高広)の許へ送ります。

天文11年、於大は男子を出生、名は松平竹千代。

竹千代3歳の春、於大の父が病死。城主となった信元は今川側から脱却。織田方と盟を結びます。於大は兄の差配で織田方阿久居の城主・久松俊勝(穂高稔)に嫁ぎます。病弱な広忠は竹千代を守れ、と於大に伝えます。

今川義元は伯父・雪斎禅師の進言を容れ、岡崎が織田進撃を喰い止める要路とみ、竹千代を人質に迎える旨、岡崎に伝えます。弱小国・岡崎のとる道はこれ一つ。

竹千代は七人の侍童に守られて駿府へ。しかし、途中、田原領主・戸田弾正の寝返りで、・・・。
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田中光敏監督「火天の城」(2009年、139分)☆☆☆☆

2023-08-27 23:17:52 | 日本・2010年~
 
安土城築城の物語。

原作は山本兼一による小説です。

安土城は、織田信長の命によって天正4年(1584年)に完成しました。信長がこの城を築城した目的は、当時の日本の中央拠点であった京に近く、琵琶湖の水運を利用できるという利便性があり、さらに北陸街道から京への要衝に位置していたので、「越前・加賀の一向一揆に備えるため」あるいは「上杉謙信への警戒のため」だったようです(門外漢なのでよくわかりません)。

安土城は大型の天守を初めてもつなど威容を誇り、その勇姿は地下1階地上6階建て、天主の高さが約32メートル、それまでの城にはない独創的な意匠だったようです。しかし、わずか数年で焼失しました(焼失の原因は諸説あり)。
本作品は大工棟梁だった岡部又右衛門(西田敏行)を中心に、指図(計画)から、木曽の杉の巨木の搬入、作事(工事)の艱難辛苦を、又右衛門の家族の葛藤を挟んでドラマチックに描いています。

織田信長役に椎名桔平、又右衛門・田鶴の妻に大竹しのぶ、又右衛門の娘・凛 に福田沙紀、他に夏八木勲、石橋蓮司、笹野高史、渡辺いっけい、緒方直人、山本太郎が出演です。
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木下恵介監督「野菊の如き君なりき」(1955年、92分)☆☆☆☆

2023-08-25 23:19:53 | 日本・1950年~


原作は伊藤左千夫による小説「野菊の墓」。

舞台は軽井沢(原作は千葉県)。

冒頭、老人(笠智衆)は小舟に揺られ、60年前の過ぎ去った甘い青春の想い出を回顧します。(回想シーンは楕円形のスクリーンが使われ、短歌が要所要所で挿入されています。)

ゆったりとした平和な郷で、いとこ同士の政夫(田中晋二)と民子(有田紀子)は、まるで姉弟のように育ちます。民子17才、政夫15才。

民子は、村一番の旧家の女主人で病身の政夫の母(杉村春子)の看病に、数里離れた川下の町からやって来たのです。二人は幼いころから、仲のいい友達。
ところが、こんな二人の仲を、村の人たちが噂し、同じ家にいる作女のお増や、底意地の悪い嫂のさだも、二人に悪恵ある嫌味をあびせます。

そんな二人を温く見守っていた政夫の母。秋祭が近づいたある日、政夫は、母の言いつけで、民子と山畑に綿摘みにでかけました。このころでは、周囲の噂が逆に二人を接近させ、心にほのかな恋心さえめばえていました。

人気のない山の中、二人きりになった民子と政夫は、仕事の終った後、時のたつのも忘れて一時をおくります。政夫は民子を「野菊」に、民子は政夫を「リンドウ」にたとえます。

家へ帰るとすでに陽は落ち、このことで二人はきつく叱られ・・・。
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小泉堯史監督「峠 最後のサムライ」(2020年、114分)☆☆☆☆

2023-08-21 23:24:45 | 日本・2020年~
原作はベストセラーとしていまなお読み継がれている司馬遼太郎による歴史小説。動乱の幕末に生きた最後のサムライ、河井継之助の最後の一年を描いた歴史作品です。

慶応3年(1867年)、大政奉還。260年余りに及んだ徳川幕府は終焉をまつばかり。しかし、薩摩藩と長州藩のいわゆる薩長勢力はそれでは満足せず、徳川家の権力の完全消滅を目的に、王政復古の大号令を発布し、明治新政府の樹立を宣言します。

その頃、越後国を治めていた長岡藩は藩主、牧野雪堂(仲代達矢)のもと、家老に就任した河井継之助(役所広司)が藩政改革をとりしきっていました。

翌慶応4年、鳥羽伏見の戦いを皮切りに戊辰戦争が勃発。越後の小藩、長岡藩の長老・河井継之助は東軍西軍いずれにも与せず、戦争回避を画策します。密かにガトリング砲などの近代兵器を備えて、長岡藩をスイスのような武装中立の藩にする準備です。

しかし、平和への願いもむなしく談判は決裂。継之助は徳川譜代の大名として義を貫き、西軍と戦う断を下しますが・・・。

出演は他に松たか子、田中泯、香川京子、榎木孝明、吉岡秀隆、佐々木内蔵之介、井川比佐志、など。
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田中光敏監督「海難1890」(2015年、132分)☆☆☆★★

2023-08-21 23:15:52 | 日本・戦前
 
トルコの人たちは比較的親日的です。イラン・イラク戦争中の1985年、日本政府がテヘラン在留邦人の救出を断念したとき、トルコの人たちが日本人にチャーター便のチケットを譲ったのはその証です。

その契機は1890年9月、台風到来にまきこまれたトルコの帆船、エルトゥールル号の海難事故にさいし、多くの日本人が遭難者の救出、救助、治療、介抱にあたったことにあります(69名救助、犠牲者は500名以上)。本作品はその2つの事件をあつかった力作です。

前半は「エルトゥールル号海難事故編」、後半は「テヘラン邦人救出劇編」。
1889年(明治22年)7月、トルコ帝国は大日本帝国に親善使節団を派遣します。ムスタファ機関大尉ら600余名の軍人が帆船に乗り込み出航。帆船は1890年(明治23年)6月、日本に到着。使節団はときの明治天皇への謁見を果たしました。

しかし、その帰路、9月15日、横浜港を出航した帆船は台風の直撃に遭い、紀伊大島沖で座礁。機関室の爆発で、帆船は沈没。爆発音を聞いた紀伊大島・樫野の村民たちが風雨のなか岸壁に向かうと、そこには帆船の乗組員の遺体が打ち上げられていました。村民たちは総出で救助にあたります・・・。

時をうつして、激化するイラン・イラク戦争のさなか(1985年)、各国の航空機が自国国民の救出に離陸するなか、日本政府は飛行機調達が出来ぬまま救出を断念。この危機のなか、トルコ航空のDC-10イズミル号が日本人を救出。
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田中絹代監督「お吟さま」(1962年、103分)☆☆☆★

2023-08-20 23:26:57 | 日本・1960年~
 
女優だった田中絹代が監督です。

原作は今東光による同名小説(直木賞受賞作品)。

千利休の娘、お吟の悲劇的生涯を描いた作品。

配役が豪華です。お吟役に有馬稲子(お会いしたことがあります)、高山右近役に仲代達矢、秀吉役に滝沢修、千利休役に中村鴈治郎。他に高峰三枝子、岸惠子、笠智衆、加藤嘉など。

時代は天正15年、豊臣秀吉が九州征伐を進めていた頃。石田三成たちを悩ませていたのは、キリシタンのあつかいです。三成は秀吉に同行している千利休に、利休の養女、お吟の縁談をもちかけます。相手は堺の大商人、万代屋宗安。

ところが、お吟は利休の茶道の弟子であるキリシタン大名の高山右近を慕っていました。右近の許しなしに嫁にいかないと誓っていた彼女は、右近が南宗寺で宣教師のために催した梅見の茶会のおり、右近に縁談の相談をします。

右近にその身をささげたいと思っていたお吟。しかし、右近はお吟の思いを拒み、嫁入りを勧めます。妻がいる右近とお吟が結ばれることはデウスの教えにより許されないこと。右近は自分の首にかけていた十字架をお吟の首にかけます。それは、お吟の侍女・宇乃が右近に返しそびれた扇子とともに、お吟の手元に置かれます。

天正17年、吟が万代屋宗安に嫁いで二年。お吟は店のためにまめまめしく働いていました。しかし、右近への思いは断ち切れません。夫・宗安との仲は冷え切っていました。

そして、天正18年正月、利休らを呼んで大規模な茶会を催した秀吉は、お吟の美貌に目をとめ・・・。
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ジョヴァンニ・ピスカーリャ監督「ゴッホとヘレーネの森(原題:Van Gogh - Tra il grano e il cielo)」(イタリア、2018年、89分)☆☆☆☆☆

2023-08-19 20:22:29 | イタリア
長く映画を観ていると、「この作品に出会えてほんとうによかった」という思いになることがあります。本作品がそれです。

ゴッホが亡くなったのは1890年(1853年生まれ)。生前はもとより死の直後は評価されませんでした。ところがヘレーネ・クレラー・ミュラーという女性がゴッホの作品に共感し、蒐集を始めたのです。ゴッホの作品は絵画、デッサンなどをあわせると2000点を超えますが、ヘレーネはそのうちの300点ほどを集めこれらをコレクションとし、クレラー・ミュラー美術館を建てて公開しました。

クレラー・ミュラー美術館はオランダのヘルダーラント州エーデ、デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内のオッテルロー村にあります。わたしは2003年に行きました。美術館のなかの配置まで記憶にありませんが、森のなかをとおって美術館にたどり着くまでの風景は何となく覚えています。

本作品はヴァレリア・ブルーニ・テデスキという女性(画像段)の語りで、ヘレーネがなぜゴッホに惹かれたのか、美術館を建設した経緯、ゴッホの絵画の変化(初期から晩年まで)とその本質などを絵画そのもの、また膨大な手紙を読み解きながら、解説しています。
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ウディ・アレン監督「タロットカード殺人事件(原題:Scoop)」(イギリス、2006年、96分)☆☆☆★★

2023-08-18 20:24:42 | イギリス
 
殺人事件といっても凄惨なシーンは皆無。

舞台はロンドン。

連続殺人事件が起こります。殺人現場には、必ずタロットカードが落ちていました。

おりもおり、凄腕のジャーナリストのジョー・ストロンベル(イアン・マクシェーン)が急死。死への船旅の途中、同じく死に旅の女性ジェーンに会います。彼女はライモン卿の息子ピーターの秘書をしていました、ジェーンはジョーに、ピーターが連続殺人事件に関与している、と話します。

シーンが一転。マジックショーの場面。何と監督のウディ・アレンが老マジシャン役を演じています。ジャーナリスト志望のアメリカの大学生のサンドラ(スカーレット・ヨハンソン)が、このショーの見物に来ていました。芸が佳境に入り、マジックボックスに女性を入れて消すというショーで助手としてサンドラが選ばれ、箱のなかに入ることになります。

驚いたことに箱の中にジョーの幽霊があらわれ、彼女に話しかけます。その内容は市民を怖がらせている連続殺人事件の鍵となる情報(スクープ)でした。

彼女は老マジシャンと協力し真相究明に奔走し、富豪ライモン卿の息子ピーター(ヒュー・ジャックマン)を追います。ピーターは金持ちで、プレイボーイ。その立ち居振る舞いに、サンドラはすっかりのぼせ・・・。
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ニール・ラビュート監督「抱擁(原題:Possession)」(英・米、2002年、102分)☆☆☆☆☆

2023-08-17 20:27:18 | イギリス
原作はブッカー賞(イギリスの権威ある文学賞)を受賞したA・S・バイアットによる小説。

上質の映画作品です。イギリスの田園風景、とくにヨークシャーの風景が綺麗です。大英博物館、ロンドン図書館でのロケも見事です。

19世紀の桂冠詩人、ランドルフ・ヘンリー・アッシュ(ジェレミー・ノーサム)。奔放な生き方でスキャンダラスな女流詩人として知られるクルスタベル・ラモット(ジェニファー・イーリー)。 同時代に生きた彼らは、言葉を交わしたことすらないというのが文学史上の通説でした。

アメリカからやってきた大学の研究員、ローランド・ミッチェル(アーロン・エッカート)は、アッシュを研究するため図書館で彼の蔵書を借り出します。そして、蔵書のなかのひとつに一通の肉筆の書簡が挟まれているのを発見します(投函しなかった?)。

ローランドはそれがラモット宛のラブレターである、と確信します。もし、この仮説が真実なら文学史上の大事件です。彼はアッシュ研究者の女性、モード・ベイリー(グイネス・パルトロウ)とともに、アッシュの愛の軌跡の調査に入ります。

100年前の二人の男女の詩人の情熱に巻き込まれるかのように、現代に生きるローランドとモードもまた、急速に惹かれ合っていくのですが・・・。
過去と現在を往還しながら、男女の二組の愛の形がシンクロします。
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デヴィット・リンチ監督「ブルーベルベット(原題:Blue Velvet)」(アメリカ、1986年、121分)☆☆☆

2023-08-16 20:29:35 | アメリカ・1980年~
 


炎暑の今夏。涼しさをもとめて夜はサスペンス劇場。

舞台はアメリカ、ノースカロライナ州の片田舎ランバートン。

アメリカの歌手、ボビー・ヴィントンでおなじみの「ブルー・ベルベット」がテーマ曲です。

父親の入院を期にジェフリー・ボーモント(カイラ・マクラクラン)は大学を一時休学し、故郷の田舎町ランバートンにもどってきました。

ある日、見舞いの帰途、野原で彼は切断された人間の片耳を発見します。
父親の友人であるジョン・ウィリアムズ刑事(ジョージ・ディッカーソン)のもとに、問題の片耳を届けたジェフリー。このことが縁で、刑事の娘サンディ(ローラ・ダーン)と知り合います。

ウィリアムズ刑事の話を盗み聞きしたサンディによると、今回の事件には、ドロシー・ヴァレンズ(イザベラ・ロッセリーニ)というクラブ歌手が関係しているらしいとのこと。

好奇心を覚えたジェフリーは事件解決の手がかりを得るため、サンディの協力も得て、ドロシーの暮らすディープ・リヴァー・アパートの710号室に、害虫の駆除をするという口実で入ります。そこで鍵を盗み、後日、無断侵入。クローゼットに身を潜めたジェフリーがそこで垣間見たのは、・・・。

これがきっかけで、ジェフリーは未知の不思議な世界へと引きずり込まれます。
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ヨハネス・ホルツハウゼン監督「グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状(原題:The Great Museum)」(オーストリア、2014年、98分)☆☆☆☆

2023-08-16 20:10:05 | オーストリア


西欧の伝統ある美術館のひとつオーストリアの「ウィーン美術史美術館」のリニューアルのプロセスを撮ったドキュメンタリー作品。

2016年に創立125周年を迎えたこの美術館。それを期して館内が大幅に改装されました。本作品は2011年後半から2013年3月までに撮影されました。

冒頭、「ウィーン美術史美術館」に赴任したザビーネ・ハーク館長は、大英博物館から訪ねて来たゲストを案内し、改装予定の館内を説明しています。ゲストの客人は、こんな素晴らしい収集品は大英博物館には無い、と称えます。

元宮廷の静まり返った荘厳な室内。一人の工事スタッフが現れ、大理石の敷かれた展示場の床を、大きなハンマーで叩き割ります。「ウィーン美術史美術館」の改装工事のスタートです。

本作品では、展示場などの改装の様子はもちろん、入館料の如何、予算をめぐる議論、修復のプロセス、寄贈品の整理、展示のさいの絵画の配置、スタッフからのヒアリング、新しい美術館のロゴの決定などのシーンが映し出されます。。

出てくる絵画作品は「フェリペ二世」(ポンペオ・レオーニ)、「マリア・テレシアと4人の息子」(ルイ・ジョセフ・モーリス)、など。

ラストショットは、壁に掛けられたブリューゲルコレクションの「バベルの塔」の移動。

この「美術史美術館」には2005年の夏に行きました。改装前です。
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ウディ・アレン監督「マッチポイント(原題:Match Point)」(イギリス、2005年、124分)☆☆☆★★

2023-08-15 20:12:32 | イギリス
 
アメリカのアレン監督がイギリスで撮った作品。全編、ロンドンロケ。

題名の「マッチポイント」は、スポーツで勝利を決める最後の一点・

クリス(ジョナサン・リース=マイヤーズ)は、アイルランド出身のプロテニス選手。プレイヤーとしてやっていくことを諦め、テニスクラブの指導員になります。オペラ鑑賞が趣味です。

テニスの技術をあげるためにやってきたトム(マシュー・グッド)と親しくなり、オペラ鑑賞にも誘われるうち、トムの妹クロエ(エミリー・モーティマー)と親しくなります。

その一方、トムのフィアンセで、アメリカからやって来た女優志望のノラ(スカーレット・ヨハンソン)にも強く惹かれます。

クリスは結局クロエと結婚し、義父の会社に就職、職を無難にこなし、おぼえめでたく昇格します。テムズ川に臨む新居も手に入れ、順風満帆でした。
くだんのトムはノラとの婚約をキャンセル。彼女はアメリカへ一時帰国しますが、再びロンドンに戻ってきたところで、美術館で偶然クリスと再会。

ここからクリスとノラはただならぬ関係になり・・・。

本作品は監督自身の映画「ウディ・アレンの重罪と軽罪」との類似点があり、また劇中でクリスが読んでいるドストエフスキーの『罪と罰』は殺人事件が起こることを予告するかのような伏線です。
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