シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

貞永方久監督「球形の荒野」(1975年、99分)☆☆☆★★

2020-11-12 21:36:46 | 日本・1970年~
松本清張による同名の小説の映画化です。「球形の荒野」の意味は、作品に登場する戦時中の国際的外交官で第二次世界大戦の終結に尽力していた顕一郎が見ていた世界(=地球【球形】)情勢が荒野に見えていた、ということに由来します。

舞台は昭和36年頃の、奈良、京都、神奈川、東京。

奈良の唐招提寺を訪ねた芦村節子(島田陽子)は、芳名帳に、大戦中に外交官であった亡き父・野上顕一郎に相似した筆跡を認めます。名前は「田上孝一」と異なっていましたが、筆跡は酷似していました。

節子は恋人・添田彰一(竹脇無我)、母(野上未亡人)・孝子(乙羽信子)にこのことを話しますが、取り合ってもらえません。野上顕一郎の死亡は、確認されている事実でした。

新聞記者である添田は、野上顕一郎の死亡前後の事情を調べはじめます。その矢先、当時の公使館関係者が、・・・。さらに、久美子の周辺で奇怪なことが相次いで起こります。そして、顕一郎(芦田伸介)が生きていることがわかり・・・。

久美子も添田も、一連の事件に見えない糸を予感します。
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五社英雄監督「櫂(かい)」(1985年、134分)☆☆☆

2020-11-12 21:29:36 | 日本・1980年~


宮尾登美子による同名の小説の映画化です。宮尾さん自身がワンシーンで出演しています。

舞台は大正末期から昭和10年代までの高知の下町。

緑町界隈で女衒・娼妓紹介業を営む夫・岩伍(緒形拳)に15歳で嫁いだ喜和(十朱幸代)の薄幸、波乱の半生を描いた作品です。

喜和を中心にこの特殊な世界に生きる夫、二人の息子、女義太夫・巴吉(真行寺君枝)、芸奴・染男(名取裕子)、土佐の顔役などをめぐる愛、憎しみの葛藤がドラマチックに展開されます。

生まれ育った環境の違いのため喜和は岩伍の稼業になじめず、彼女は重い病をわずらい、二人の関係は破局へ向かいます。観ていて、理不尽としかいいようがありません。

なんと言っても緒形拳の迫力がすごいです。対照的に喜和を演じた十朱幸代が儚く、哀れを誘います。他に、石原真理子、白都真理、草笛光子、島田正吾など多彩な俳優が脇を支えます。
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