シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

マルレーン・ゴリス監督「ダロウェイ夫人」(イギリス/オランダ、1997年、97分)

2022-04-30 00:05:08 | イギリス

20世紀の代表的女性作家・ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の同名の小説の映画化です。老いや死を意識し始めた女性の心の動きをとおして、人生の機微が映像化されています。

ストーリーラインは以下のようですが、この作品はストーリーを追うより、夫人の心象風景が映像化されていると思って観たほうがよいです。ストーリー展開の説明は、その助けにすぎません。

第一次世界大戦後、1923年6月のある晴れた朝。その夜、自宅で催す夜会のために、花を買いにでかける下院議員夫人クラリッサ・ダロウェイ(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)。歩きながら、青春時代に想いをめぐらします。

夜会では5人の子持ちとなったサリーやピーターなど大勢の客人を迎えまする。そこで知らされたのはセプティマスの飛び降り自殺でした。クラリッサは会場を離れ、青年の死について思いを巡らし、愛も苦しみも悲しみも時の流れのなかで霧散していくのを感じるのでした。
 
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ミシェル・マリー監督「クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代」(イタリア、2018年、90分)

2022-04-29 23:58:03 | 日本・戦前
19世紀末のウィーンを代表する画家、グスタフ・クリムトとその弟子エゴン・シーレの魅力をテーマにしたドキュメンタリー作品です。

舞台は19世紀末から20世紀初頭のウィーン。ロケは美術史美術館、アルベルティーナ美術館、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館、分離派会館、レオポルド美術館、ウィーン博物館、ジークムント・フロイト博物館で行われました。

「時代には芸術を、芸術には自由を」、これは、グスタフ・クリムトを中心に結成された芸術家グループ「分離派」が、1898年に建設した展示施設・分離派会館の入り口に金文字で掲げた標語です。
 
クリムトとエゴン・シーレは人間の不安や恐れ、エロスを新しい手法で描きクリムトとエゴン・シーレは人間の不安や恐れ、エロスを新しい手法で描き、それまでの絵画と異なる革新的な作品を生み出しました。

金箔を多用し、妖艶で死の香りを漂わせるファム・ファタルを多く手掛けたクリムト。ねじ曲がった体躯と苦悶に満ちた表情で克服できない傷みを描いたシーレ。

異端のテーマは、精神医学者ジークムント・フロイトが辿り着いた精神分析の誕生と軌を一にします。音楽や建築、文学にも新しい概念が見出され、女性たちはコルセットを脱ぎ捨て、自立を主張し始めました。封建的なウィーンで、抑えられていた人々の衝動が一気に爆発したのです。
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マイケル・ジャクソン監督「THIS IS IT.(Michael Jackson's This Is It)」(アメリカ、2009年、111分)

2022-04-29 00:00:53 | アメリカ・2000年~


タイトルの「This is it.」は「これで最後だ」という意味合いです。

2009年春、50歳のマイケル・ジャクソンは、10年ぶりに新しいコンサートを企画。4月、オーディションに合格したダンサーたちのインタビューが流れます。彼らはオーストラリア、オランダなど、世界各地から集まってきました。

コンサートのオープニング。炎が燃え盛る中、大型スクリーンに「グリンプス&フラッシュ」と呼ばれる映像が流され、クレーンに乗った「ライトマン」が登場。それはマイケル。

遡って2009年3月、ロンドンのO2アリーナにて新作公演「THIS IS IT」を行うことを表明したマイケル。彼のファンから熱狂的に迎えられ、全50公演分のチケットはすぎに完売。続いてダンサーのオーディション。大勢のダンサーがマイケルやスタッフの前で踊り、メインダンサーが発表されます。

合格したダンサーたちは、公演で使う映像の前撮りを始めます。それぞれの現場に顔を出すマイケル。さらにステージでリードボーカルやバンドメンバーと掛け合いや歌い方などを確認し、「Human Nature」を仕上げていきます。

観客にイメージ通りの音を聴かせたいと綿密に音楽を作るマイケルの気迫が伝わってきます。
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ジョージ・ルーク監督「ふたりの女王(Mary Queen of Scots)」(イギリス、2018年、124分)☆☆☆

2022-04-21 20:25:54 | イギリス


原作はジョン・ガイによる評伝「Queen of Scots: The True Life of Mary Stuart」(2004年)。

スコットランドでイングランドの王位継承権を持ち、カトリックとして生まれたメアリー・スチュアート(シアーシャ・ローナン)。生まれてすぐに女王となり、幼少時に渡仏。フランス王宮で育ち、15歳でフランス王太子と結婚。16歳で王妃になりますが、18歳で寡婦となって母国に王位として戻ります。

メアリーの不在の間、プロテスタント教徒が勢力を拡大していました。摂政として国を統治していた異母兄・マリ伯(ジェームズ・アクアドール)、プロテスタント長老派の指導者ジョン・ノックス(デヴィット・テナント)、国務大臣メイトランド(イアン・ハート)らはカトリックの女王を忌避し、内乱を画策します。

イングランドでは、エリザベスⅠ世(マーゴット・ロビー)が25歳で即位。彼女を支えたのは。宰相ウィリアム・セシル(ガイ・ピアース)、レスター伯ロバート・ダドリー(ジョー・アルウィン)ら枢密院と侍女・ベス(ジェンマ・チャン)たち。王位継承者がいないため、エリザベスは世継ぎを産むことがもとめられていました。メアリー帰国の知らせに、枢密院内は緊迫した空気が走ります。

そんなおり、メアリーはダーンリー卿ヘンリー・スチュアート(ジャック・ロウデン)と結婚し、息子ジェームズを出産しますが・・・。
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イェジー・スコリモフスキ監督「アンナと過ごした4日間(Cztery noce z Anną )」(ポーランド、2008年、94分)☆☆★★

2022-04-19 21:20:02 | ポーランド


舞台はポーランドの地方都市。ひとりの孤独で個性的な中年男の奇行に近い愛の行動。絵画的な映像美が印象的。

病院の火葬場で働き、祖母と二人暮らしのレオン(アルトウル・ステランコ)。

数年前のある日、川で釣りをしていたレオンは釣果がなく、引上げようとしたとき大きな牛の死体が流れてきます。驚いていると雲行きが怪しくなり、土砂降りの雨にあいます。近くの廃屋にほうほうの態で飛び込みます。あろうことか、女性(後に出てくるアンナ)が行きがかりの男に暴行されていました。レオンは恐怖で立ち去り、警察に通報しますが、現場に釣り道具を置き忘れ容疑者として逮捕されます。

釈放されてから、レオンは自分の家からほど遠くない宿舎に住んでいる看護師・アンナ(キンガ・プレイス)の部屋をのぞき込むのが習慣になります。祖母が亡くなり病院から解雇され、ひとりになった彼は大胆な行動にでます。アンナが就寝前に飲むお茶に睡眠薬を入れ、熟睡している間に、部屋に忍び込むのです。

悪いことはしません。彼女が熟睡している間に、最初の晩はアンナの服のボタンのほつれを直し、二日目の晩は彼女の足の指にマニキュアを塗り、三日目の晩は彼女の誕生パーティがあったのですが、レオン自ら花束と指輪を届け、四日目の晩には壊れた鳩時計を回収するだけです。回収した時計を直して、もとに戻そうと再び彼女の部屋に忍び込んだその時・・・。
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スティーヴン・フリアーズ監督「あなたを抱きしめる日まで(Philomena)」(イギリス、2013年、98分)☆☆☆

2022-04-18 21:17:07 | イギリス


原作はマーティン・シックススミスによるノンフィクション“The Lost Child of Philomena Lee”。

10代で未婚の母となり、幼い息子と強制的に引き離されたフィロミナ・リーの「実話」です。

原題は主人公の老女の名前。

クリスチャンの彼女はまだ若かかった頃、未婚で妊娠。戒律によって修道院に収容されました。息子・アンソニーと修道院で定期的に会えましたが、ある日突然、アメリカのある家の養子となり以後、消息不明になります。

50年の年月が経過。息子の事を気にやんでいたフィロミナ(ジュディ・デンチ)は、娘のジェーン(アンナ・マーティン)にアンソニーの存在を告白します。

ジェーンは偶然、ジャーナリスト、マーティン・シックススミス(スティーヴ・クーガン)と知り合い、母の息子について本を書かないかと持ちかけます。

彼はフィロミナとともに息子を探す旅に出ます。ふたりは修道院に行きますが、息子関係の書類は焼失し残っていません。

隠蔽を感じとったマーティンは修道院近くのバーで聞き込み調査。すると、店員の話から修道院では子どもを、金銭と引き換えでアメリカに売って養子に出していたことを知ります。マーティンはフィロミナとともにアメリカ行を決行。

アメリカではジャーナリストであるマーティンの人脈から、アンソニーの新たな情報が得られましたが・・・。
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リターシュ・バトラ監督「ベロニカとの記憶(The Sense of an Ending)」(イギリス、2017年、108分)☆☆☆★

2022-04-16 21:13:17 | イギリス
原作はジュリアン・バーンズによる小説『終わりの感覚』(2011年)。人は得てして、自身の人生を編集して記憶していることがあり、思わぬ誤解がそこに挟み込まれている、ということを描いています。

舞台はロンドン。

主人公は年金生活者のアンソニー・ウェブスター(ジム・ブロードベント)。中古のカメラ屋(ライカ)を趣味でもち、熟年離婚した元の妻とも時々会い、シングルマザーで出産が近い娘のケアをしながら、穏やかな時間を過ごしていました。

ある日、大学時代(約40年前)に交際していた女性・ベロニカ(シャーロット・ランプリング)の母親が亡くなったと通知があり、そこには遺贈として500ポンドと書きためていた日記を渡したい、としたためられていました。

遺品の日記はトニーの学生時代の親友のものらしいのです。しかし、遺産相続人の弁護士は、ベロニカが保有している日記を渡してくれない、とトニーに伝えます。

トニーは過去の記憶をたどり、謎をひも解いていこうとします。

ベロニカと再会したトニーは、若くして自殺した親友、初恋の秘密など、長く忘却していた青春時代の記憶たどりますが、記憶は曖昧で、そこには思いもよらない誤解が・・・。
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ニール・ジョーダン監督「マイケル・コリンズ(Michael Collins)」(英・米・アイルランド、1996年、133分)☆☆☆

2022-04-16 13:16:06 | アイルランド

主要な舞台はアイルランド・ダブリン。

700年もの間イギリスに支配されていたアイルランド。その独立を目指した闘士、マイケル・コリンズ(1890-1922)の半生を描いた作品です。

1916年、デ・ヴァレラ(アラン・リックマン)を指導者とするアイルランド革命軍は、イースター蜂起の中でイギリスと交戦しますが敗北。捕らえられた首謀者は処刑され、蜂起は失敗に終わります。逮捕された兵士のひとりマイケル・コリンズ(リーアム・ニーソン)は釈放され、その後、独立運動の担い手としてゲリラ活動にかかわります。

刑期を終えたコリンズは、親友のハリー・ボランド(エイダン・クイン)とともに、ゲリラ戦のリーダーとして頭角を現します。抵抗活動のなかで、怪我をしたコリンズは、後に結婚を約束することになったキティ(ジュリア・ロバーツ)と出会います。

ダブリン市警察のブロイ(スティーヴン・レイ)から内部情報を得て抵抗を続ける中、イギリスからソームズ(チャールズ・ダンス)が派遣され抵抗組織(IRA)への締め付けが強められます。

その後の内乱でIRA側に多くの犠牲が出ます。デ・ヴァレラに説得され、コリンズはイギリスとの交渉団に参加。イギリス=アイルランド条約が調印されます。

1922年、イギリス=アイルランド条約は激論の末、議会で批准されますが、条約の内容をめぐって反対派が離脱し・・・。
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周防正行監督「カツベン」(東映、2017年、127分)☆☆☆★

2022-04-15 13:19:19 | 日本・2000年~
映画は当初、サイレントで映像のみ、せいぜいオーケストラの生演奏がバックにあった程度でした。日本では映画はかつて「活動写真」(シャシン)と呼ばれていました(映画会社「日活」は日本活動写真株式会社の略)。楽士の奏でる音楽に合わせ、活動弁士(活弁、カツベン)と呼ばれる語りの専門家が、うなりながら説明していました。

人気俳優に匹敵するエンターテイナーの活弁士がいて、それぞれにファンがついていました。

本作品は大正時代の活弁士を抱えた映画館とそこに生きる人間たちを喜劇的に描いています。

主人公は活弁士の染谷俊太郎(成田凌)。小さい頃から活弁士に憧れ、物真似から入って活弁技術を身につけたものの、ニセベン士として窃盗団の片棒を担がされます。

それでも一流の活弁士になることを目指す俊太郎。隣町のライバル映画館に客も人材も取られ閑古鳥が鳴く映画館・青木館に流れ着く。人使いがあらい館主夫婦(竹中直人、渡辺えり子)、傲慢で自信過剰な弁士・山岡秋聲(永瀬正敏)、気難しい職人気質の映写技師・浜本祐介(成河)といった曲者ばかりが残った青木館で、雑用にふりまわされる俊太郎。

そんな彼の前に、大金を狙う泥棒、泥棒とニセ活弁士を追う警察、そして幼なじみで女優になった梅子(黒島結菜)が現れ……。
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ロドリゴ・ガルシア監督「アルバート氏の人生(The Life of Albert Nobbs)」(アイルランド、2011年、102分)☆☆☆

2022-04-14 13:22:37 | アイルランド
独身女性が自立して生きることが難しかった時代、自分が女性であることを隠し男性として生きたひとりの女性の物語です。

原作は、アイルランドの小説家ジョージ・ムーアによる同名小説です。

舞台は19世紀、アイルランドのダブリン。

アルバート・ノッブス(グレン・クローズ)は、ホテルのレストランで住み込みのウェイター。常連客や他の従業員の信頼を得ていました。若くして両親を亡くし一人で生きていかざるをえず、自らを男性といつわって働きました。

そんなある日、ホテルに泊まり込みで仕事に来たペンキ職人、ヒューバート・ペイジ(ジャネット・マクティア)と知り合います。実は「彼」も女性でした。互いに男性といつわって仕事をしていたふたりは、急速に親しくなります。

ペイジが女性と「結婚」していると知ったアルバートは、かねてより計画していたタバコ屋を同僚のメイド、ヘレン・ドーズ(ミア・ワシコウスカ)と営もうとします。

他方、ホテルのボイラー職人だったジョー・マッキンス(アーロン・ジョンソン)がいました。ジョーはヘレンと恋仲になります。アルバートがヘレンに交際を申し込んでいることを知ったジョーは、アルバートから金を巻き上げアメリカに行こうとヘレンをそそのかしますが・・・。
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キャロライン・トンプソン監督「黒馬物語(Black Beauty)」(米・英、1994年、102分)☆☆

2022-04-13 13:24:03 | アメリカ・1990年~


原題の「ブラック・ビューティ」は、主人公の馬の名前です。

イギリスの女流作家、アンナ・シュウエル(1820-78)による同名小説の映画化です。

ゴードン家の牧場で生まれ育った気楽な仔馬時代から、ロンドンでの辛い馬車馬生活を経て、田舎の牧場で静かな老後を送った黒馬の物語です。馬に対する細やかな愛情、観察が魅力です。

舞台は19世紀後半のイギリス。

牧場で生まれた美しい黒馬、ブラック・ビューティは母馬や牧夫の愛情のもとで育ちます。気難しいが美しい栗毛の牝馬・ジンジャー、小さいけれど利口なポニー・メリーレッグス、未熟な厩務員見習いの少年ジョーといった仲間に囲まれ、調教を受け、ゴードン家の厩舎で主
 
人の馬車馬や乗用馬として使役されます。休暇には広大で緑豊かな放牧地で仲間たちと楽しい時間を過ごします。

ゴードン一家が屋敷を手放して移住することになり、残された馬や厩舎の人々は離散し、ブラック・ビューティも人手に渡ることに。
最初はゴードン邸で伯爵夫人に手厳しく扱われ、次いで貸し馬屋に売られます。さらにロンドンの辻馬車屋ジェリーに買われます。
ジェリーはその後、体調を崩して辻馬車屋をやめ、ビューティーは穀物商人、再び辻馬車屋と主を替えます。重荷をひくなかで脚に大怪我。最後は5ポンドで心ある農場主・サラグッドに買われますが・・・。
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ケン・ローチ監督「家族を想うとき(Sorry We Missed You)」(イギリス他、2017年、101分)☆☆☆

2022-04-12 23:57:15 | イギリス


イギリスの宅配労働者とその家族の苛酷な生活をリアルに描いた作品です。

舞台はイギリス・ニューカッスル。

原題の「ご不在につき失礼」は、宅配事業者の不在標に記載されているメッセージです。

元建築労働者のリッキー(クリス・ヒッチェン)は、宅配ドライバー。妻アビー(デビー・ハニーウッド)は、パートの訪問介護士です。
マイホーム購入の夢を実現したかったリッキーは正社員希望でしたが、宅配事業者と個人事業主として契約。個人事業主とはなばかりで、理不尽なシステムによる過酷な労働条件をしいられ働き続けるリッキー。アビーは時間外にも働いています。家族のために身を粉にして働くリッキーを、アビーや子供たちは支えようと懸命です。

宅配事業を行うために必要となった車はリッキー本人が調達しなければならず、仕方なく妻の車を売却し、そのお金を自分の車の購入にあてがいます。

コンピュータによってがんじがらめのノルマが課され、すべてのリスクは彼に帰属します。リッキーの借金はじきに嵩み、家族は悲惨な状況に追い込まれていきます。

仕事により家族との時間が奪われ、高校生の長男セブ(リス・ストーン)と小学生の娘ライザ・ジェーン(ケイティ・プロクター)は寂しさを募らせると同時に、喧嘩が絶えなくなります。そんなある日、リッキーが事件に巻き込まれ……。
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イングマール・ベルイマン監督「叫びとささやき(Viskningar Och Rop)」(スウェーデン、1973年、91分)☆☆★

2022-04-09 10:59:03 | スウェーデン


舞台は19世紀末のスウェーデンにあった邸宅。心底にひそむ愛、孤独感、性の衝動、死の恐怖、狂気が、下記のような設定のもと、4人の女性たちの心理的葛藤をとおして描かれます。邸宅のなかはカーテン、カーペット、壁、掛け布団がすべて赤なのが印象的。

スウェーデンのある地方にある邸宅に召使いのアンナ(K・シルバン)とともに、ひっそりと暮すのは37歳のアグネス(H・アンデルソン)。彼女は子宮ガンが悪化しべッドに臥せていました。そのアグネスの見舞いに姉のカーリン(I・チューリン)と妹のマリア(L・ウルマン)が訪れます。

カーリンは既に20歳年上の優秀な外交官フレドリック(G・オーリン)と結婚、5人の子どもがいましたが、結婚後すぐ失敗を悟りました。子どもたちには母親らしい愛情を抱いたことがなく、夫に対する侮蔑と人生への嫌悪を抱いく日々。末の妹マリアは成功した商人ヨアキム(H・モリッツェン)と結婚し、5歳の子どもがいたものの、彼女自身は美しくして人眼をひくことにしか関心を示しません。

召使いのアンナは30歳ぐらいの素朴な田舎女。アグネスに献身的に仕えています。二人の間には主人と召使いの関係以上の性的つながりがありました。

暁方、アグネスの容態が急に悪化。彼女はそのまま息を引きとります。カーリンとマリアがアグネスの死後、彼女の日記を読むと、そこには・・・・。
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イングマール・ベルイマン監督「仮面 ペルソナ(Persona)」(スウェーデン、1966年、82分)☆☆★

2022-04-08 11:01:08 | スウェーデン
主に登場するのは二人の女性、患者・エリザベート(リブ・ウルマン)と看護婦・アンナ(ビビ・アンデショーン)。ふたりの対話、しかし喋っているのはほとんどエリザベートという設定で、ふたりの心の葛藤がつづられます。

エリザベートは舞台女優。名声と平穏な家庭を得て、幸せな日々をおくっていました。ところがある日、舞台の上で言語障害を起こし、セリフが出なくなってしまいます。医師によると、エリザベートの症状は身体的・精神的な異常ではなく、彼女の意思によるものではないか、と診断します。医師のアドバイスで、彼女は看護婦のアルマとともに海沿いの別荘で保養します。

エリーサベートはアルマのよき話し相手となり、アルマは自身の過去の体験をエリーサベートに打ち明けます。アルマはエリザベートの言葉にならない言葉を理解しようとし、エリザベスは健康なアルマに憧れを抱くようになります。

しかし、エリザベートが担当医師に宛てた手紙を偶然読んでしまったアルマは、エリーサベートがアルマを観察していたこと、アルマが過去を告白したことの記述があるのをみとめます。アルマは激怒し、エリーサベットを責めたてます。

次第にふたりは看護婦と患者という関係を超え、互いに内奥をさらけだしていきますが・・・。
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木下恵介監督「歓呼の街」(松竹、1944年、71分)☆☆

2022-04-07 20:45:45 | 日本・1940年~

監督の第三番目の作品。戦時中に公開されました。

舞台は敗色濃厚の戦時下の東京下町。東京を離れて疎開先に向かう四軒の家族の三日間をヒューマンなタッチで描いた作品です。

大陸にでかけていった父が帰ってくるかもしれないと、疎開にふみきれない吉川家。息子・慎吾(上原謙)は試験飛行士。隣の家の娘・たか子(水戸光子)と恋愛関係にありますが、危険な仕事をする男に娘はやれない、と母は結婚に難色を示します。

地域には、他に小さな印刷工場と銭湯。工場を経営する家族には新しい命が生まれようとしていました。また、銭湯の老夫婦は、娘夫婦から疎開で自分のところ(釜石)に来いと誘われますが、頑なに断わっています。

慎吾の父(東野英治郎)が10年ぶりに姿を現しました。きよ(信千代)は夫と連れだって歩きますが、話がかみあいません。そんな折、慎吾が飛行中に殉職。父親は結局、息子に会うことはありませんでした。

印刷工場を閉鎖した家族、銭湯を経営していた頑固親父、次々に疎開で町を去っていき・・・。

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