シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

デビッド・リーン監督「ドクトル・ジバゴ」(アメリカ/イタリア、1965年)☆☆☆☆

2020-04-26 21:35:31 | アメリカ・1960年~


時代はロシア革命をはさむ19世紀末から20世紀初頭にかけて。作家パステルナークの同名の小説の映画化。二人の女性への愛をとおして描かれる医師であり詩人のジバゴの生涯が、その内容である。

時は遡ること19世紀末、幼くして両親を亡くしたユーリ(オマー・シャリフ)は、モスクワに住む親戚のアレクサンドル・グロメコ夫妻の家に引き取られた。両親の遺品はバラライカという楽器ただひとつ。夫妻からの愛情を受け、ユーリは成長していく。1913年、医学生となったユーリは、医師免許を習得し、開業医になることを目指していた。詩人としても才能を開花させつつあった。結婚生活では、グロメコ夫妻のひとり娘トーニャ(ジェラルディン・チャップリン)と幸せな日々を送っていた。

そのユーリは第一次世界大戦で医師として従軍し、戦場で看護婦として働くララ(ジュリー・クリスティ)に会う。彼は彼女に心を奪われる。しかし、ララには革命に情熱を燃やす赤軍兵士の夫パーシャがいた。彼女は戦場に夫を探しにきていたのだった。二人の出会いは、運命的な哀しい結末を予感させる。
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川島雄三監督「あした来る人」(1955年)☆☆☆

2020-04-23 11:38:09 | 日本・1950年~


井上靖の小説の映画化。

実業家梶大助(山村聰)、その娘八千代(月丘夢路)と夫克平(三橋達也)、大助の若い女友達・杏子(新珠美千代)、研究者・曾根二郎(三国連
太郎)の男女が織りなす人間模様がテーマ。

大貫八千代と克平夫婦の関係はいつもぎすぎすしている。それと言うのも克平が趣味の登山に打ち込み、八千代の気持ちをほとんど意に介さないからである。
 
その八千代の父・大助は実業家で洋裁店に働く杏子とほどよいお付き合いをしている。
 
二郎はカジカの生態の研究者。研究成果を本にまとめるための資金援助者をさがしている。たまたま列車のなかでであった杏子の紹介で、父・大助に研究資金をもとめるところからこの作品は始まる。
 
個性的な面々がぶつかりあい、新しい絆がうまれたり、綻びたり・・。
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ヴィットリオ・デ・シーカ監督「ひまわり(I Girasoli) 」(イタリア,1970年)

2020-04-12 11:20:46 | イタリア


戦争が引き裂いた人間関係の切なさを描いて,多くの人々の心を震わせたのがこの作品である。第二次大戦下,ジョバンナ(ソフィア・ローレン)と軍人のアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)はナポリで結婚。12日間の結婚休暇を楽しんだ。

彼らは休暇が終わって離ればなれになるのをきらい,ある芝居を考え出した。アントニオがジョバンナに暴力をふるい,気がふれたとの狂言芝居をうち,狂気を装って脱走をはかるという計画である。アントニオは首尾よく精神病院に一時入ることができたが,結局芝居がばれ,懲役のかわりに,ロシア戦線に送られた。

アントニオは厳寒のドン河近くのロシア平原で敗走する途中,餓えと寒さの生き地獄のなかで倒れ,凍死寸前。意識不明で倒れていたところをマーシャ(リュドミラ・サヴェーリェワ)に助けられた。彼は記憶も喪失し,帰還がかなわないまま成り行きで,彼女と所帯を持つことになった。

ジョバンナは一人ミラノで待ち続けたが,彼女のもとに届いたのは,夫の行方不明通知であった。納得できない彼女はロシア戦線から復員してきた兵士の話から,夫が生きていると確信。単身,ロシアに夫を捜しに出掛けた。この結末は、あまりにも悲しい・・・?
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ダルトン・トランボ監督「ジョニーは戦場へ行った(Johnny Got His Gun)」(アメリカ,1971年)☆☆☆★★

2020-04-11 11:25:27 | アメリカ・1970年~


原作は,監督自身による1938年の小説。背景は第一次世界大戦。アメリカが参戦。「ジョニーよ,銃をとれ」の歌(この歌のタイトルが映画の原題である)に駆り立てられて戦地に動員された主人公ジョー(ティモシー・ボトムズ)は,戦死した敵のドイツ兵を埋葬しているさなか,攻撃をうけ,逃げこんだ塹壕で爆弾に吹き飛ばされた。

身元不明戦傷兵第407号としてアメリカ国陸軍医療部隊に運び込まれたジョーは,ティラリー大佐(エドワード・フランツ)の指揮のもとで治療を受けた。ジョーは,目,耳,鼻,あご,歯,両腕,両脚を失なった。頭の一部と胴体がのこり,包帯で全身ぐるぐるまきにされ,病院の暗い一室に横たわっているだけであった。延髄は正常,脳も働いていた。このため,心臓と呼吸中枢が機能し,思考をすることができた。
 
ジョーは奇跡的に命をとりとめていた。

ジョーは次第に周囲の状況に気付くようになる。過去のことを思い出したりする。しかし、治療室で、このまま生き続けるということはどういうことなのか・・・。頭に去来するものは、絶望でしかない。
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成瀬巳喜男監督「浮雲」(1953年)☆☆☆☆

2020-04-05 21:16:13 | 日本・1950年~


人間の業をあぶりだした作品。名匠小津安二郎をして「俺にできないシャシンは溝口の『祇園の姉妹』と成瀬の『浮雲』だけだ」と唸らせた。原作は林扶美子の同名の小説。

戦時中の1943年という設定。農林省のタイピストとして仏印(ベトナム)へ渡ったゆき子(高峰秀子)は、その地で農林省技師の富岡(森雅之)に会う。当初、富岡に好ましくない感情をもったゆき子だったが、やがて富岡に妻が居ることを知りながら、関係を結ぶ。

終戦。妻・邦子との離婚を約束して富岡は先に日本に戻った。ところが、ゆき子はあとを追って帰国するが、富岡が妻とは別れていなかった。失意のゆき子は富岡と別れる。富岡は節操のない男であった。

終戦後の混乱した経済状況で富岡は仕事が上手くいかず、よりを戻したゆき子を連れ、伊香保温泉へ旅行に行く。ゆき子にとってこの旅行でまたつまずくが、それも富岡の不埒がまねいたものだった。破綻がまた破綻をよぶ。宿命?


 
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成瀬巳喜男監督「流れる」(1956年)☆☆☆☆★

2020-04-04 21:11:21 | 日本・1950年~
 

1955年に出版された幸田文の同名の小説の映画化。わたしは高校生時代、幸田文さんの小説、エッセイを多く読みました。手紙を出したこともあります(返事がきました)。

この映画は華やかな花柳界と零落する芸者置屋の世界を描いた作品で、ほぼ原作どおり。出演は田中絹代、山田五十鈴、栗島すみ子、杉村春子、高峰秀子、岡田茉莉子他。

職業安定所の紹介で芸者置屋「つた家」で働くことになった梨花(田中絹代)。女将・つた奴(山田五十鈴)との面とおしを終え、住み込みで仕事に専念するがやがて、芸妓たちの哀しい人間模様、そして時代の中で日に日に傾いていく置屋の内情を知るようになる。さて、その内情とは・・・。
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